「ハイスコアガール(TVアニメ動画)」

総合得点
87.2
感想・評価
795
棚に入れた
3297
ランキング
161
★★★★☆ 4.0 (795)
物語
4.1
作画
3.8
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
4.2

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ネタバレ

01oinaris さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ファミコンに育てられた1975-83年生まれBoyの哀歌(+妄想も♡)

ずばり、主人公のハルオは私です。

生まれ年しかり、ゲーム三昧生活、ゲーセン入り浸り、格ゲー対戦(…はケンカの元になるから好きじゃなかったけど、経験はそこそこあり)。
{netabare}安いゲーセン探して隣町に遠征、修学旅行の夜は誰かが持ってきたスーファミでゲーム大会(没収されませんでしたよw)、そしてスト2、ダッシュ、ダッシュターボ、スパスト、スパストXと格ゲーの進化に胸を熱くしてゲーセン入り浸ってたあの頃…
めくり強飛びゲリ→強アッパーキャンセル昇龍拳でピヨらせ、再度同コンボで計2/3HP削り、あとは波動昇龍拳で完膚なきまで痛めつけたあの頃(弟に対してのみ。ゲーセン対戦でやるとケンカになるからね…)。
豪鬼セレクトの裏コマンド、やったなぁ。ザンギのファイナルアトミックバスター、キメた時の快感たるや…(笑)ちなみにSS拡張RAMでX MEN vs Street Fighterまで堪能した世代。豪鬼瞬獄殺フィニッシュで『天』の快感は今でも両手の指先に染み付いている。 {/netabare}

本作に出てくるゲームの60-70%は知っており、40%はゲーセンなどで実際にプレイ経験があり、20%は実際にゲームソフト所有していた私にとって、
まるで四半世紀前の自分を見ているかのようで、第一話から没頭してしまった。

世代がずれている人にも、ゲーオタ男子とゲーマー女子のラブコメとして十分楽しめると思うが、特に若い人にとっては、時代背景がピンとこないだろう。
この世代当事者として、ハルオ世代の概要を解説しておきたい。
(長文ゆえ畳みます。興味ある人は覗いてね)
{netabare}
実はこの世代、子ども(特に男子)の遊び方が大きく変遷した時代に育っている。
これ以前に生まれた人にとって、ゲームといえばアーケードゲーム。
インベーダーゲームが嚆矢となったアーケードゲームの勃興は1978-9年ごろ。
この頃の小学生(大体1970年前半生まれ)のゲームとは駄菓子屋の店頭筐体(オレンジ)。
小学生男子のメイン遊びは野球や虫取り、プロ野球チップスのカード集めなど。
磯野カツオのような遊び方+駄菓子屋でたまにアーケードゲーム、といえば理解しやすいだろうか。

ところが1970年後半生まれ以降、特に1979-80年生まれあたりから、男子の遊びに革命が生まれる。
そう、ファミコンの登場。1984年(ハルオ5歳)、ついに家でTVゲームが楽しめる時代が来る。
集団生活や友達との関わり遊びが可能になる5-6歳児期に、ファミコンという革命(もとい、悪魔の箱)が生まれた世代。
外遊びを介して縦関係(長幼関係)・横関係(同級生関係)の繋がりを育んできた男子が、
家で少人数の同級生、もしくは一人遊びに興じるようになった転換期とも言える世代。

ゲーム好きの少年が集まってただひたすらファミコンに熱中し、
自宅でゲームができない日(当時は親から曜日でゲーム日を決められていた)は、
友人宅でゲーム三昧。そして友人同士協力して1週間の友人宅ローテーション。
誰もゲームができない曜日は、仕方なく外で遊ぶ。そんな世代。

この世代にとって、ゲームはキャッチボールと同じ。
「ケンカした男子同士が、ふとした拍子にキャッチボールで仲良くなる」
それと同じように、この世代は「ゲームして仲良くなる」。
ボールの投げ方、軌道、力強さが会話であり、無言で伝わるお互いの思い。
ゲームも同じ。キャラ選択、攻め方、受け方、一つ一つにゲーマーの個性があり、
戦っているうちに相手の性格がわかってくる。
まっすぐな正攻法タイプ、防御一辺倒で返し技狙いの手堅い狡猾タイプ。
格ゲーのキャラに自分の生き様を重ね、ゲームで殴り合ってお互いの気持ちを知る。

物心ついた頃にファミコンが颯爽と登場し、ゲーム機の進化とともに自身も成長した…
そんな世代にとって、ゲームは自分の半生を作り上げてきた思い出の一部。
ゲームに育てられた一番最初の世代…と言ってもいいだろう。

実はこの世代、サッカーではゴールデンエイジと呼ばれる。
(稲本潤一・小野伸二・遠藤保仁などがまさに同級生)。
サッカーできるヤツはJリーグ発足とともにスターダムに成り上り、女子からの人気も急上昇。
残念ながらゲームに没頭してしまった人は…私のようなアニオタゲーオタ痛中年に成り下がる…
{/netabare}

本作はそんな1991-6年の時代背景を、ほぼ忠実に完璧に再現している。
(原作者が1979年生まれなので当然かもしれないが)
ゲーセンで稼働している筐体の変遷から、ゲーセンの雰囲気の移り変わりまで、ほぼ完璧です。
{netabare}
中学生期は薄暗く不良のたまり場〜高校生になって明るい社交場&ゲーオタの巣窟…ていうゲーセン雰囲気の変化も忠実すぎて…涙
{/netabare}

当時を生きてきた人間(=私)にとって、一緒にゲームしてくれる女子をどんなに待ちわびたことか!
格ゲー対戦して通じ合えるような男女関係、どれだけ夢見たことか!
ゲーマー女子との恋物語、ゲーセンで出会いゲームで会話する、ライバルのような恋愛関係。
そんなゲーオタのささやかな妄想を、甘くて酸っぱい青春を、アニメにしたのが本作。
正直ゲーオタハルオがなぜこんなにモテるのか意味不明だが、
ゲームを中心にした絶妙な距離感、間の取り方、テンポ、そして時代背景の再現…どれを取っても完成度は極めて高い。
最初はキャラ画があまり好みでなく、若干敬遠してたが、見だすと1話目からもう止まらない。
格ゲーやりこんでた昔の若者(今のアラフォー中年)であれば、時代背景と主人公に自己投影して泣きそうになる。間違いなくオススメの作品です。

ちなみに当時、ゲーセンに女の子は基本的に居なかった。
不良のタバコ臭いゲーセンやゲーオタ巣窟に女子中高生が入り浸ることは、当時の常識としてありえない。
空気の淀んだパチ屋のにおい、といえば想像できるだろうか。そんなとこに女子が入ることはまずない。
不良がヤンキー彼女を連れてきて、彼氏のゲームを後ろから見ている程度。
ましてや超人ゲーマー女子なんてありえない。見たことない。
{netabare}女子がゲーセンに入り始めるのはプリクラブーム (1996-7年ごろ)から。そこも忠実に再現できていて…感涙{/netabare}

現場を見てきた世代だからこそ言える。本作はゲーマーのささやかな妄想だ。
でも、それでもいいじゃない。アラフォーゲーマーの夢と青春と思い出を、
「これでもかっ」てくらいにぎゅうぎゅうに詰め込んで、ご馳走として提供してくれる。
完食しても、まだ物足りない、食べたい、デザートが欲しい、続きが待ち遠しい…
そして気がつけば、何年もご無沙汰だったゲーム&コントローラーを手にしている。
→↓↘︎+強パンチを何度も復習してしまう。
懐ゲーオンパレードでファミコンとともに育った世代の心を掴んで離さない。
{netabare}くにおくん大運動会とか…もう涙しか出ない。
連合セレクトして、くまだの人間魚雷でバトルロイヤルでゴミ捨て即勝…悦♡
(わかる人にはわかるはずw){/netabare}
そしてゲーマー同士の甘酸っぱい恋愛に心が満たされる。
もうねぇ…我が青春に一片の悔いなし!って右拳突き上げて立ち往生できるレベルですよ。私にとって。

ちなみに本作、2013年にはアニメ化決定していたものの、紆余曲折あって今年ようやくアニメ化。
どうやらS■Kから著作権侵害申し立てがあったためのようです。
確かに、作者のカプコン愛が前面に出ているものの、餓狼伝説シリーズのプレイ画面がほとんどなく、当時の格ゲー2大巨頭(スト2VS餓狼伝)の片方だけ贔屓している印象。
まぁ、当時圧倒的人気はスト2、餓狼伝説はその半分くらいのプレイヤーて感じでしたが。
その埋め合わせか、罪滅ぼしか、A/Bパートのアイキャッチ代わりに、S■KオールスターズなどのS■Kゲーム販促宣伝付き。
でもこれがまたいいっ!久々に餓狼伝プレイしたくなりますね!KoFアツいね〜!
S■Kもこれで大満足じゃないでしょうか?

最後に、私の生き写しみたいなハルオに心から言っておきたい。
{netabare}
このあと1997年ごろから、家庭用ゲーム機で遊べる声優ボイス付き恋愛シミュレーションゲーム(通称ギャルゲー)が続々と発売される。プリメ、ときメモ、ぴあキャロ、さらには「To Heart」、そして「君が望む永遠」などなど、今のアニメ史に繋がるゲームが目白押しだ。
気をつけろっ!!やっちまったら俺みたいなダメ人間確定だぞ!!ガイルさんが泣くぞ!!
大野さんも日高さんもドン引き確定!ギャルゲー、ダメ、ゼッタイ!
{/netabare}

来年3月のOVA、本当に心待ちにしています!
よ〜し、それまでの時間つぶしに、ニンテンドークラシックミニ買って子どもと対戦だ〜!!

投稿 : 2018/10/10
閲覧 : 278
サンキュー:

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