なばてあ さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
孤食窓前とした盆揺さ
原作未読。
たぶん原作が連載を開始した当初は、目新しいほどの完成度があったのだと思う。ただ16年経って、いまとなってみると、物語構造やキャラ設定に古さが際だつ。逆にいうと、この作品がラノベのひとつのメインストリームとなって、フォロワが粗製濫造された結果、オリジネータの価値も毀損されたという顛末なのかもしれない。
わたしが一番つらかったのは、上条当麻とインデックスのふたりにみじんも魅力を感じなかったこと。当麻の性格や主義主張というのは、約めていうと、ただただイノセントな正義感しかない。世俗権力や宗教権力が練り上げた論理や原理を前にして、愚直で素朴な正義感のみを得物に斬った張ったしていく構図は、もはや古色蒼然。
{netabare}たとえばほぼ同時期に発売された『Fate/stay night』の衛宮士郎のキャラ設定は、上条当麻のそれにすこし似ている。イノセントな正義感のみで、スケール違いの大きな論理や原理と対峙するのは一緒。ただ型月は、士郎のその性格や主義主張を、一種の闇で呪いに貫かれた病であると断じた。その救いのない自己言及が、士郎のキャラ的命脈をかろうじて保った。{/netabare}
それとくらべると、ただただ、イノセントで、ただただ、正義感に終始して、その裏付けもなにもない本作の主人公は、有り体にいうと「うすっぺらい」印象が否めない。彼の能力的にも、物語の最後はゲンコツで殴るという大時代的な展開に収斂せざるをえず、それこそ、ハリウッド映画で無限に繰り返されてすり減ったクリシェそのものでしかない。
腹ぺこ大王のインデックスにしても、大食いのロリッ子という設定は、いまとなっては見るべきものがほとんどなにもないのは衆目の一致するところだろう。「10万3千冊」の設定が活かされてくればまたちがうのかもしれないけど、わたしはまだその瞬間を目撃していない。でも、現在のやや退屈な印象が覆される予感はほとんどない。
・・・さて、コアたるふたりはひたすら(ふたつの意味で)凡庸なのだけれど、そのまわりのキャラが魅力的だというのは、世評通り。エピソードとしては「レベル6シフト計画」がたしかにグッと引き込まれる。刊行当時としては異例なほどハードな展開だったのだろうと推察する。その展開に加えて、一方通行と超電磁砲のふたりが千両役者なので、いまでも全然見られるくらい、ここはおもしろかった。
ただ、・・・そこだけだったのかな、やっぱり。科学と魔術というふたつの領域を掛け合わせた世界観はなかなかおもしろいけど、結局、科学サイドのおもしろみに魔術サイドがほとんど太刀打ちできていない。結果、・・・科学サイドのみで展開する『超電磁砲』がしっかりと物語の醍醐味を独占してしまう結果になっていると言わざるを。
衝撃:★
独創:★☆
洗練:★☆
機微:☆
余韻:☆