「HELLO WORLD(アニメ映画)」

総合得点
72.5
感想・評価
220
棚に入れた
1012
ランキング
1107
★★★★☆ 3.7 (220)
物語
3.7
作画
3.9
声優
3.3
音楽
3.7
キャラ
3.7

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ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

ラブストーリーマトリックス。本気で面白いSFでした。

 びっくりしました。SFでこんなに面白い作品があったなんて。SF設定の秀逸さはもちろんなんですが「面白い」というほうの比率が高いです。脚本が本当に良くて、頭を使って考察しながらも見られるし、キービジュアルで分かる通り、恋愛ストーリーとして楽しむこともできます。

 超ネタバレなので、できれば作品を先に見てください。

 さて、ストーリーは量子コンピュータ内で記録として生きている主人公のもとに、現実世界から来たと名乗る10年後の本人(先生)が現れます。そして、主人公がつきあうことになるヒロインが不幸な事故にあうのを防ぐよう伝えます。
 
 主人公はなんとかヒロインを助けたと思ったら、先生によりヒロインは消されてしまいます。ヒロインの人格を現実世界の昏睡状態にある10年後のヒロインに移すことで目覚めさせるためで、そのたくらみは成功します。この操作のためにヒロインが主人公と恋愛関係にならなければならなかったという事です(目ざめた時に好きじゃないと意味がないと取りましたが、ひょっとしたら精神の整合性みたいな話かもしれません)。

 10年後の現実世界のヒロインは目覚めますが、ちゃんとコンピュータ内での記憶を留めており、先生を拒絶します。その間、主人公はヒロインを追って現実世界にきますが、ここで主人公が登場することでこの世界も現実ではなく、コンピュータ内のシミュレーション空間だと分かります。

 この操作によって暴走したコンピュータから逃れ、主人公とヒロインは別の世界に移ります。この世界は量子コンピュータ内の情報処理が暴走した結果ビッグバンを起こした結果生まれた世界でした。
 そして、本当の現実世界において、先生が目覚めます。そこは月世界でした。先生をよみがえらせるために尽力していたのは、ヒロインでした(後でいいますが、ここで目覚めたのは先生すなわち10年後の本人であり主人公ではないと思います)。

 さて、おそらく一番初めの舞台で出てきた、ピンクのリボンの茶髪のミスズちゃんという女の子。あれは月世界の現実世界のヒロインということなんでしょうね。結構露骨にピカピカ光ってたので多分合ってるでしょう。そうでないと2人の関係を見守っていた描写に意味がないですから。
カラスもヒロインで姿を変えていたということなんでしょう。

 主人公が買うと言っていた古本ですが、あれが燃えているところをヒロインは確認しているはずなんですが、不思議に思わなかったんですかね?若干引っかかるような描写をわざわざ入れているので、また考察したい部分です。

 ラストで月でよみがえったのは先生であって、一番初めの高校生2人は無限の計算能力を持つ量子コンピュータ内で生まれた宇宙の中で新しい世界に生きて行く、という解釈を取りたいですね。
 高校生の2人が月世界によみがえったというのでは、HELLO WORLDという題名が薄くなります。哲学的な話でもこの世は上位の存在が行っているシミュレータだ、という考えもありますので、そういう事でしょう。

 というわけで、いっぱい書きたい事がありますが、本気で面白かったです。マトリックスと同じ題材ですが、換骨奪胎して壮大なラブストーリーに仕上げたこの分野では最高峰の出来だと思います。


 で、ちょっとだけ欠点を。バタフライエフェクトという概念が間違っています。バタフライエフェクトは初期値の微小な影響が指数関数的に大きくなっていくことを表したカオス理論です。修復ができるならバタフライエフェクトの対象にはなりません。

 量子コンピュータがやっているのは、過去の記録の再現のはずでシミュレーションだという説明ではありませんでした。ただ、この話の趣旨からいって因果関係をシミュレートしているはずです。でなければ先生が登場したところで結果を変えられないのでは意味がないからです。その場合、先ほどのバタフライ効果の問題または量子論的に考えればラプラスの悪魔の問題がでてきますので、同一の結果にはならないはずです。
 といいますか、あの量子コンピュータが何をしたいのか、が説明しているようで説明していない。イマイチわかりませんでした。
追記;シミュレーションならタイマーをリセットすれば良いはず。時間が10年ずれている意味は?無限の計算能力があるからアクセスした時点を都度シミュレートしてる?人格のサルベージしても別人だという設定は良かったです。ただ、コピーはできないのか?元の世界とのずれで修正プログラムがはしるならシミュレータでなく現実の再現しかできないじゃん等。

 せっかくのハードSFなのでこのあたりにもうちょっとこだわりがあってもいいかなあ、とは思いました。まあ、それだけ奥が深い作品ということでしょう。

 あと、最後の1秒で…というレビューをたまに見ますが、この言葉だけで、最後の結果はある程度予想は出来てしまいます。究極のネタバレになるので人に語るときには注意したほうがいいでしょう。

 追記;そういえば「クリスティーナの世界」の絵がしつこいくらいに描かれていました。あれは確か脳がやられる病気で半身不随になった女性の絵ですので、先生の病気はこの絵の病気と同じということでしょうか。

 追記2;HELLO WORLDって、プログラムを習うときにプリント関数みたいな構文で習う奴ですよね。始まりを予感させる言葉です。
 また作品の最後でHELLO WORLDのロゴが真ん中で別れて白黒反転になっていました(キービジュアルもそうですね)。陰陽なのか分割なのかわかりませんが、やっぱり、月とは違う、新しい世界で高校生の主人公とヒロインはちゃんと恋人同士になれたんでしょう。

投稿 : 2021/07/23
閲覧 : 261
サンキュー:

6

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