「スパイ教室(TVアニメ動画)」

総合得点
66.5
感想・評価
241
棚に入れた
762
ランキング
2774
★★★★☆ 3.3 (241)
物語
2.9
作画
3.5
声優
3.5
音楽
3.2
キャラ
3.3

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ネタバレ

螺旋常連からくり剣豪 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.4
物語 : 1.0 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 1.0 状態:観終わった

(クソアニメとして)極上だ……

2クール目に備えて2週目視聴中
良い点
・主題歌は良い
OPはアニメーション、曲ともにカッコいい。普通に神曲だし、アニメーションも作品の雰囲気を崩さず活かしており、サビのキャラクターの特技を披露するシーンは思わず唸らされました。
EDはチェンソーマンみたいに回ごとにコロコロ変わる。その回で主役を務めたキャラクターのキャラソンが流れる。いずれもそれぞれのキャラクターをしっかりと捉えた曲になっている。不可能任務回や5話はキャラソンじゃないけどそちらも良曲。

・作画が良い
演出の面から戦闘シーンなどに問題はありますが、キャラの顔が崩れたりなどはなく、今期の中でもアニメーションは総合的には良質な部類。なので推しキャラさえ見つけられれば見続けることは難しくないと思います。わたしの推しは某駄女神を彷彿とさせるリリィです。

・コメディ回自体は悪くない
4話以降の話はメインストーリーの停滞感にさえ目を瞑れば及第点。馬鹿馬鹿しいギャグとして見るなら楽しいです。

悪い点
・シリアス回が絶望的につまらない
この作品最大の問題点。本来本領を発揮しなければならないシリアス回が致命的に面白くない。心理戦による駆け引きがキモなのに設定がガバガバ、世界観が雑、急ピッチで話を進めたことによるキャラクターの掘り下げ不足などが原因です。

・時系列シャッフル
4話以降、思い出したように急に不可能任務前の話を始め、これまでカットだらけだった3話までの辻褄合わせを始めました。しかしながら設定の矛盾や穴を増やすばかりで効果的なやり方には見えず、時系列がメチャクチャになったことによりかえって話の把握が困難になっています。
時系列シャッフルは他にはプリンセス・プリンシパル、ピーチボーイリバーサイドや探偵はもう死んでいる、物語シリーズなどで使われていた手法ですが、効果的に扱えている作品は少なく、当作品もその悪例に漏れてはいません。


以下話数ごとの評価

原作は富士見ファンタジア文庫のライトノベル。
話の流れとしては最強のスパイであるクラウスが見習いスパイたちを招いてチームを組ませ、一流のスパイですら死亡率九割を超える不可能任務に挑ませようとする、といった感じ。
なんでも感覚で完璧にこなすゆえに、クラウスが実は指導下手だったり、見習いスパイたちも全体的にへっぽこなキャラクターになっていたりと、キャラクター関係は1話時点でかなり良質。コメディとしては結構面白いです。
悪い点だと思ったのはリリィとクラウスの船上での策の応酬の部分。クラウスがリリィの毒を浴びてやられたふりをし、隙を突いて彼女を嵌めるというのが大まかな流れです。これまでスパイとしては完璧なキャラとして描かれていたクラウスですが、なぜかここでは毒をわざと浴びるという非効率、かつ泥臭い真似をしています。いや、相手がまだ仕込みをしているかもしれないのにガチで戦闘不能になってどうすんねん。リリィが過激な性格だったらクラウスの話を聞かずに池に突き落とす可能性だってあったし、会話で隙を作って反撃できたのはもはや結果論でしかない。これを擁護するならクラウスがリリィの性格まで見抜いていて、即座に殺されない前提でシナリオチャートを組んでいたと考えることになるけど、正直言ってクラウスにキャラぶれまでさせるだけの価値はこのシーンには無い気がする。毒にやられた演技をした方がどう考えてもスマートでかっこいいですし。
一応リリィの戦い方は指導者ということで把握しているはずだし、一流のスパイなら対策として解毒薬とかガスマスクとか持ってないんでしょうか。
リリィの特異体質もなかなかのファンタジー。少なくともプリンセス・プリンシパルのゲイバーライトみたいなルールを明確にした緻密な設定ではないです。一人だけなら一芸特化ということもありストーリーを盛り上げる上で長所にできますが、他のキャラの特異体質も絡んでくるとなんでもありになりそうな懸念があります。

キャラを愛でるアニメとしては良作。ストーリー重視だと今のところは微妙です。船上のシーンで駆け引きには期待してはいけなさそうな雰囲気を醸し出しています。

2話
伏線撒いてるのか知らないけどひたすら地味な回。当作品とは対照的に堅実な作品だったプリンセス・プリンシパルの比じゃないくらい。
展開を飛ばし過ぎ。リリィたちの修行シーンまるまる飛ばすとかとんでもないことしてて草。おかげでキャラへの感情移入の機会が一つ奪われたし、修行の成果を見せてやるとか意気込まれてもこっちはついていけません。一応ジビアやサラ、グレーテ、ティアの特技は辛うじて分かったけど、以前の彼女たちをこちらはほとんど知らないので今がどう違うのか測りようがない。
クラウスとの訓練はともかく、任務中にもなぜかコメディみたいなノリになることがあるので緊張感も無い。コメディに寄せているSPY×FAMILYですらシリアスだと割と真面目なのに、こっちは半端にコメディを気取るから雰囲気をぶち壊してる。緊張をほぐすためとはいえ、敵地で決起会をするのもキャラたちの正気を疑うレベル。どうしても決起会しなきゃダメなの?テーブルゲームとかでこじんまりと遊べば良いじゃん。
不可能任務の概要も1話からやたら恐ろしい恐ろしいと言われるだけで中身が一切分からないから話に入り込めない。任務の目的は2話終盤になって明かされたけど、どうして死亡率九割を超えるくらいやばいのかはやはりというか何も語られない。今後の展開に用いるトリックのために現行の任務の内容を隠すにしろ、話に入り込みやすいように今回の話に出て来たクラウスの過去を映像化すべきだったのではないかと思わずにはいられません。
クラウスの過去が語られたのは好印象。台詞での語りだけなのは残念だったけど、1クールしか無いのに未だに掘り下げすらされない他のキャラよりは断然感情移入しやすくなりました。

変な台詞回しがそこまで無いからたんもしよりはまだ良いけど、話の内容はどっこいどっこいな気がする。

追記
じっくり楽しむつもりで3回観ました。伏線はちらほらあります。
それにしても説明口調が多い割に実になるような情報がほとんどない回ですね。
この話においては、情報集めに重点を置いてるくせに視聴者に情報がほとんど提示されないのが一番ダメな点になると思います。いわば虚無回。

3話
粗探しなんてしなくてもほぼ全部おかしいのが分かるシナリオの歪さ。
元焔のメンバーであるクラウスの師匠、ギードが敵国に寝返っており、焔を壊滅させた犯人も彼だと判明。彼は危険分子であるクラウスを釣るために生物兵器、奈落人形を餌にして始末しようとします。
任務中、予想外にも灯火の見習いスパイたちとギードが鉢合わせし、ギードは彼女たちを人質にクラウスを誘き寄せようと画策します。
ここまでのあらすじ自体はまだ理解できるんですが、話の持って行き方が強引で、たんもしを彷彿とさせる出来になっています。
突入前にじゃんけんするの草。嫌な予感がするんならもっと緊迫感を出せ。隊列(?)組んで一箇所に固まりながらゾロゾロ走るのもスパイとしてどうなん?
奈落人形を餌にするギードたち帝国の計画がめちゃくちゃ回りくどい。クラウス一人を殺すためだけに敵国から盗んだ強い兵器をあえて撒き餌として使うとかジュラル星人かな。囮だとしても、入手が難しかったであろう奈落人形をわざわざ置いておく必然性が何も無い。名前だけ出してクラウスを釣れば良いし自前で量産できる兵器や薬物の密売とか諸々、他にも危機感を煽れる餌はいくつも思い付くはず。奈落人形を囮にすることに固執する理由が分からない。
灯火があらかじめ敵の全てを見抜いており、その上で計画を練っていたとか言っていたけど、この辺りの描写も杜撰。生徒たちがギードに殺されないことを灯火が見抜いていたなんてことは多分無いと思う。クラウスを始末しようとするギードの思惑を知ったとしてもその過程において人質を取る確証は無いし、もし人質を取ったとしても人質を誰一人殺さないなんてことを願うのは希望的観測にしか見えない。また、敵をクラウスよりも圧倒的格上だと承知していて直接戦闘を挑む展開にするのはリリィたちを特攻の駒にしているのと大差ない。敵があえてこうなる展開にしたとも読み取れないからイレギュラーという線も無いし、これのどこがまともな作戦になっているのか教えて欲しい。
クラウスを誘き寄せたいならギードは極論、生徒たちの命を考えずに痛めつけるだけで良いし、なぜ殺されないと確信しているのか。
ギードの仕掛けた盗聴器のくだりもかなり怪しい。この展開は屋敷内の駆け引きだけで話が全部完結しているのがおかしい。屋敷の盗聴器に限らず外にはギードの配下のスパイを常時尾行させておけばほとんどど素人のリリィたちのデータを得るなんて難しい話じゃないと思う。これを踏まえ、なぜ灯火のメンバーは盗聴器が無いという理由だけで外なら安全と確信しているのでしょうか。普通自国に紛れた敵国のスパイも警戒するでしょ。1話冒頭で言われてたはずだけど、国家間でスパイ同士による水面下の戦いをしているんじゃないのか。そもそもクラウスよりも格上とされるギードがデータ不足の相手を徹底的に調べようとせず挙句侮るのは不自然極まりない。外の駆け引きまで織り込んでギードを欺く展開なら納得いくんだけど。
戦闘も雑。作画自体は良いものの、演出がなろうクソアニメ並みにザルです。終始ギードが生徒たちを殺さないように不自然に舐めプしててお遊戯会みたいになってました。師匠のその剣、敵を斬らんなら要らんやろ。
偶然接敵してやむを得ずなら分かるけど初っ端から顔見せ合って撃ち合いしてんのもよく分からん。あんたらスパイじゃないのか……顔割れたらダメだろ。
緊張感は相変わらず無いです。ずっと続く重たい空気を変える時のカンフル剤としてコメディに頼るのは良いと思うけど、この作品はキャラがやたらとヘラヘラしていてピクニックでもしてんのかと言いたくなる。
こういったシーンで多分見せたいであろうリリィたちの団結も積み重ねをカットしているから薄っぺらい。2話の訓練カットのツケが回ってきています。
実は8人目がいました!っていうのは張られていた伏線とかだけで見るならなかなか良いんだけど、既存キャラが掘り下げ不足の現状で新キャラを出しても驚きは薄かったです。だからなんで屋敷のやり取りを巻いたんだ。
ギードが射殺されるくだりも雑。仲間を皆殺しにした裏切り者相手にクラウスが戻ってこいって言うのはスパイとして論外だし、ギードが撃たれた後留まるのは間抜けの極み。

ゆえにアニメ版のみの評価ではありますが、総合するとこの作品のウリであるトリックもしょぼかったと言えます。
これは第二のたんもしですね……

4話 
3話でベールを脱いだ8人目のスパイ、エルナの掘り下げ回。時系列は2、3話で描写された不可能任務から20日前になります。話の質としては3話よりは楽しめます。
最初は極上の墓参り。そこから過去に遡ります。
エルナの能力は不幸を招き寄せる力。ある程度感知もできるようです。幻想殺しかな?とにかくこの能力はリリィの毒耐性よりも異能力感が凄いです。3話のギードを狙ったパイプ落下もおそらく彼女の力によるものですね。最初はリリィの腐食系の毒だと思っていました。
とまあ余計なことは置いておいて、この力のせいでエルナは間接的に家族を殺してしまい、以来他人とは距離を置く臆病な性格になったのだと読み取れます。
今回の話はコメディ主体。エルナが能力を活かし、一人でクラウスの暗殺に臨みますが、クラウスはやはりというか超人的な身体能力で降りかかる不幸を回避していきます。ここら辺はコメディというのもあり、そうはならんやろの連続ではあるものの、ツッコミどころはそこまで気にならなかったです。いやまあ、それでも許容しかねるレベルのものはいくつかありますが。
まず、ギードなら後述する大立ち回りを含めてあんな目立つ動きの一つや二つ拾っていてもおかしくはなさそう。なぜだか知らんけど自国であるリーン共和国には尾行がいないという無理筋な前提で話が強引に進んでいる雰囲気が強い。このツッコミを否定するのは世界観の否定に繋がるし、ましてや最強クラスのスパイであるギードに灯火は目をつけられているので、この前提を成立させるのは至難の業になっています。
もう一つ、エルナは語尾になのって付けている特徴的なキャラなので、3話での屋敷内の盗聴の話で女の子8人いるから区別つかねえって理屈はあまりに無理があります。これを擁護するとなると盗聴側が無能と考えなければならなくなり、敵の魅力がガタ落ちしてしまいます。
最後のエルナを狙ったチンピラを相手にしたリリィたちの大立ち回りもスパイらしさのかけらも無い正々堂々の正面突破でギャグにしか見えない。スパイならマスク付けるなり変装するなり灯り落として敵から顔見えないようにするなりしないのでしょうか。この点は殺すならまだ良いんだけどなぜか殺さない。生かすならせめて後方から不意打ちして気絶させてくれ……正体バラされたらどうするんだ。

楽しめなくはないけど真面目に見るとやっぱりめちゃくちゃガバいです。

5話
極上おっぱい教室。エルナの話と違って完全にコメディなので粗は目立ち難かったです。どうせシリアスやっても3話までと同じように破綻するのでこのまま突っ走ってくれた方が見やすいですね。
まあ設定は相変わらずガバガバ。隠すべきエルナがやたらと喋っていたり、他のキャラも盗聴器を気にする素振りがほとんど無く普通に生活している。気にし過ぎるのも不自然だけど、もうちょっと気にするべき。ティアのお色気が得意なこととかモニカへの詮索、アネットの罠の話にはあまり触れない方が良いのでは?ギードに対してブラフを張っているような描写も無いのでただの間抜けに見える。
ターゲットに取り入るために使えるであろう料理やビリヤードのスキルを磨く描写はまあ良かったです。狙った感じではありませんでしたが。

リリィのアホキャラが面白かったのは本当です。

6話
ジビア回。時系列は不可能任務前、会話内容からエルナの話より後と思われます。
クラウスを狙ったスリの少女とジビアの出会いをきっかけに、孤児たちを犯罪の道具に使う元スパイに辿り着くという筋書き。
付き纏う盗聴器問題はもう突っ込んでもキリが無いので置いておいて、今回も粗が多いです。
ジビアがスリの少女に騙されて毒入りの飲み物を飲んでしまうんだけど、いくら子供とはいえ、クラウスにスリを働こうとした前科持ちの相手なのに油断し過ぎでは。他の灯火メンバーならまだしもスリの経験者であるジビアなら彼女の行動の一つ一つくらい大概読めるだろうに。
もしも即死するような猛毒だったら死んでるし、仮に自分と似た境遇の彼女に同情した結果飲んで確かめているにしてもジビアは解毒薬を持っていないからこの説だと仮定しても説得力が無い。そもそもスリの子とジビアの間に密接な繋がりも無いからこの流れにする必要性を感じないです。
あと元スパイの前でジビアが堂々とコードネームを叫ぶのもスパイとしてどうなんだろう。ここは1話、3話にてリリィが敵前で口上を述べたのと同じ問題点になる。
クラウスがチートなのもこの話では問題。元スパイの経歴をすでに洗い出してあらゆる手を打ってるとか結構なご都合主義。もうクラウスがなんでも知ってるいわゆる神視点みたいな立ち位置になっているし、導く立場とはいえジビアに下駄を履かせ過ぎていると思う。
現にサブタイにジビアと冠しておきながらジビアがあまり活躍できておらず、クラウスが彼女の出番を食ってる。ゆえにこれをジビアの成長回と考えるのはいささか無理があります。あの戦闘シーンだけで成長したとか抜かすなら冗談はよしてほしい。
コメディシーンは比較的見れる出来。リリィはもはやスパイじゃなくてエンターテイナーですね。

やっぱこの人らスパイに見えないです。

7話
過去編なげー!また幻術なのか……!もはや無限列車編ならぬ無限過去編です。

サラ回。時系列は不可能任務の二週間前。日々の生活で傷んだ屋敷を生徒たちとクラウスが肉を賭けて勝負するという形で修繕していくエピソード。
サラは訓練学校で良い成績を残せなかったゆえに他の生徒に引け目を感じており、自分は裏方でのサポートに回る方が合っているとクラウスに告げます。
これを聞いたクラウスはおそらく彼女に自信を持ってもらおうと、彼女が裏方で頑張っていた掃除を主題にした勝負を提案したのだと思います。
今回の話はこれまで以上にギャグ一辺倒だったのもあり、盗聴機絡みを除けば破綻はほとんど無かったです。ただ、サラのエピソードとして考えると弱い。あの程度の描写じゃただの可愛そうな娘にしか見えなくて個性不足。全キャラ出してるせいで描写が散漫としてるからだと思う。やはり8人もいるのが足枷になってるかな。
いくらギャグ回といえど、サラの描写が淡白なのは個人回という観点で見るといただけない。あれだと落ちこぼれなのを憂いているという表面的な部分しか受け取れないからどうにもサラに愛着が持ち難い。エルナ回みたいに他のキャラの描写を削ってでももう少しメインのキャラの掘り下げをした方が良い。一方、リリィの道化ぶりやクラウスの茶目っ気が垣間見えるといった部分はこの話における良い点になります。
で、ED後には灯火メンバーが不可能任務成功の報酬で得た休暇を利用してバカンスに行ったことと、ギードを射殺した犯人が属していると思われる蛇なるスパイ集団が帝国にいることが示唆されました。

たんもしリスペクトの無限過去編からわたしたちはついに解放されるのか。

8話
グレーテ回その1。
共和国側のスパイや政治家を標的にし、暗殺しているコードネーム屍を止めるべくクラウスに依頼された新しい不可能任務について、クラウスは上から生徒たちと協力するように要請されているにもかかわらず、彼女たちを守るべく単身で任務を実行することを決意しました。

前々からクラウスを気に掛けている生徒の一人であるグレーテが、焔の件を反省し過ぎるあまり自分を酷使し続ける彼に一計を案じ、自分たちをもっと頼って欲しいと言葉だけでなく実力をもって伝えるという流れは完成度が高かったと思います。
ツッコミどころは今回は少なかったです。一応ありますが。
クラウスが報告書もまともに書けないくらい不器用というのは流石にやり過ぎかな。自分の任務の経過も纏められないのはいくら現場での実力が高かろうとプロ失格だと思う。
465日もクラウスが働かなきゃいけないくらい現場がブラックなのも笑いました。クラウスに全部丸投げしなきゃまともに帝国に食らいつけないくらい人材不足が深刻なのは敗色濃厚ではないでしょうか。灯火以外に使える組織はいないのか?
帝国にクラウスがマークされちゃったのもスパイとしてはもはや使い物にならないと思う。敵に顔覚えられたらもう諜報活動できないだろ。それに共和国の命運を左右するであろう最強スパイならなおさら顔バレしたらダメじゃないか?最強なのに脇が甘過ぎる。

まあ話の質は今回が一番ですかね。

9話
グレーテ回その2……のはずなんだけど実際にピックアップされているのはジビアです。暗殺者を倒すべく、クラウスは生徒の中で特に優れた四人……リリィ、ジビア、グレーテ、サラを伴って、命を狙われている政治家の護衛、襲ってくるであろう暗殺者の迎撃をすることになりました。ちなみに生徒たちの選定基準はこの作品お得意の結果だけを残すキングクリムゾン式の展開の仕方により不明で、脳内補完するしかないです。

今回はツッコミどころが多いです。
『無駄』を省く政治家が他の政治家の顔を窺うという理由だけで使用人に扮したジビアたちを受け入れるというのはちょっと無理があると思う。暗殺者だったらどうするんだ。
ジビアが怪しい動きをした際も政治家はクビにして済ませるだけという聖人ムーブ。だから暗殺者だったらどうするんだ。
しかも暗殺者に抵抗する気満々なのに全く護衛がいないのは変。慈善活動家として死ぬわけにはいかないと豪語しているのに丸裸って矛盾してる。おかげで警戒心強いのか弱いのかよく分からん奴になってる。
夜の暗闇の中、鳥目というバッドコンディションなのに彼が正確に暗殺者のいる位置を割り出し、付近を射撃しているのも笑いどころ。あんた鳥目なの嘘だろ。
このエピソードは演出も珍妙。こち亀のオチみたいな画面が黒くなっていく演出に始まり、なんか銃弾が着弾した時のSEが変な感じになっていたりと、綺麗な作画とのギャップが凄まじいです。

とほほ〜もうスパイなんてこりごりだぁ!

10話
グレーテ回その3。この回はグレーテが主役。伏線は前回からあったんだけど、グレーテは男性恐怖症で男と面と向かうと胃が痛くなり、そのせいで能力自体は問題無いもののスパイ学校での成績が酷く、落ちこぼれの烙印を押されました。男性恐怖症になった理由は幼い頃に実の父親から酷い虐待を受けていたからで、スパイ学校に入ったのは親に事実上捨てられたから。彼女のコードネームである愛娘は自称というのもあり、皮肉がたっぷりと感じられました。
ここら辺はしっかりとした掘り下げであり、グレーテというキャラクターの魅力を出すのにしっかりと繋がっています。
反面、この回のストーリーは残念極まりない。相変わらずシリアスになるとおかしな点が目立ちます。
敵と思われる使用人の動きがあまりに謎。彼女と政治家との関係が全く分からないから行動の意図が悪い意味で意味不明過ぎてツッコミどころになっています。
前提として、いつから彼女は雇われていたのか。もしも前々から雇われているならグレーテたちが来る前に政治家を暗殺しないのはおかしい。政治家の方針で護衛がいないんだからやり放題だし、この機を逃すのは間抜けでしかない。一応、ジビアたちと同時期に雇われているなら足がつかないように警戒してるって読み取れるのでこの問題は無くなります。
しかしながらジビアたちと同時期に雇われていると考えると、今度は短期間にどうやって政治家をたらし込めるのか気になる。短い時間であの気難しい政治家を堕とすのは難しいだろうし、そもそも使用人による政治家の籠絡に関連した描写が無く、暗殺未遂のシーンで使用人が政治家を唆そうとしている場面の説得力に欠ける。
これを踏まえると使用人がジビアたちを怪しいとか言ってるけどお前も怪しいって普通ならないかな。つまり使用人の暗躍に関して最低限必要な描写も足りなくて訳の分からないくだりになっていることを指摘したい。ここに説得力を持たせるなら最低でも使用人による密告のシーンや政治家が使用人を大層信頼しているのが読み取れるシーンなどは入れるべきだった。
グレーテと使用人が話すシーンも、グレーテは帝国製のブローチのことを声高に言わなくていいと思う。見ただけで黙って去れば良いのにわざわざ言ったせいで睨まれてちゃ世話無いです。
あと使用人襲撃のシーンで手榴弾をベッドで防御ってなんやこれ。あんな至近距離の爆発の前では木製ベッドなんて盾にもならないと思うんですが。ここまで酷いと猿でもこれはおかしいって分かるし、いくらフィクションでももう少しまともなシーンにして欲しい。これ普通に窓破って脱出とかで良いでしょ。

シリアスになると意味不明になるのは相変わらずです。

追記2
10話までを振り返ると、これ本当に中身薄いと思う。下手な日常系より薄い。物語の進展が遅過ぎる上、どうでもいい話ばかりをピックアップするため、最近はどちらかというとクソアニメより虚無アニメと呼びたくなるくらいには中身が無です。
この作品は良質な作画と女の子が可愛いという長所だけで全部を押し通そうとしてるのが見え見えなのがなおさらタチが悪い。美少女プラス見栄えが良ければなんにでもオタクが食い付くと思ったら大間違いだと思う。

11話
正体を表したオリヴィアとグレーテたち生徒四人の戦い。ジビアとリリィの戦闘シーンは3話と同じく顔を見せ合いながらの撃ち合いがメイン。だからそれやったらもうスパイじゃなくて良いだろ。なんで重要な局面が正面切っての得物での対話ばかりなんだ。SPY×FAMILYの方がまだバリエーションあるぞ。
オリヴィアについての掘り下げもある。彼女は元娼婦だったんだけど屍ことローランドのこれまでに見たことの無い雰囲気を持つ目に惹かれ、彼についていくことを決意。ローランドもぱっと見彼女にベタ惚れになるんだけど彼の方が好意を持つ理由はいまいち分からないから感情移入が難しいです。
戦闘中の会話はやはりというかふざけてる。なんでオリヴィアがリリィたちに屍の本名をバラすんだよ。それ敵に情報という名の塩を贈ってるからな。
その後リリィたちはオリヴィアに返り討ちにされるんだけどこれはオリヴィアを欺くための演出。狙いとしては屋敷で待つグレーテとの一騎打ちに持ち込むこと。
狙い通りグレーテとオリヴィアが一対一で戦うも戦況はグレーテが不利。オリヴィアに銃を突きつけられ、絶体絶命に陥るんだけど、なんと政治家ウーべさんにグレーテが自分を殺し屋に扮することで銃で狙わせ、それを避けることで殺気の無い一撃をオリヴィアに与えることに成功しました。
グレーテによるとウーべさんは夜目じゃなければ銃が上手いらしいです……いや、どこから読み取れるんだそれ。
暗殺者騒動の時にウーベは発砲し、暗殺者ことグレーテの側を銃弾が掠めた伏線らしきシーンはあったけど、あれだけで分かったらマジもんのエスパーだからな。夜目の時点であれだけ正確に狙えるとかギャグにしか見えないし、せめてウーベが銃をよく使うシーンとか見せろ。
最後は肩を撃たれたオリヴィアが傷跡がある素顔を晒したグレーテにローランド来るから覚えとけとか恨み言をほざいてる最中にローランドを詰めたカバンを持ったクラウスが登場、勝利確定ルートに入りました。オリヴィア……たす……けて……。
とどめにローランドの無様な姿を見て泣きじゃくるオリヴィアもしまっちゃうおじさんと化したクラウスによってカバンに詰め込まれてしまいます。しまっちゃおうね〜

これ考えた人はこれをギャグ作品にでもしたいのか?

まあ一応、グレーテの失恋のくだりは良かったです……

追記3
回想にて明かされたオリヴィアのウーベ邸潜入の時期の描写について纏め忘れていたので書いときます。
回想によると、オリヴィアはグレーテたちが来る前から屋敷に潜入していたようです。細かい時系列は不明ですが、彼女は使用人を装いながらウーベから情報を引き出すことを目的にしていました。あの気難しいウーベが彼女を側に置いている辺り、それなりに前から来て任務を遂行していたと予想できます。にしても彼女がどれだけウーベに取り入っているのかは重要な情報なのにふわふわしてるなぁ。
ここで思ったことはオリヴィアたちの異様な回りくどさ。これがまるでグレーテたちが来るまで殺しませんと言わんばかりのあからさまな制作者側による作為的な描写に映ります。こんなにキャラに血が通っていないと思えたのは初めてです。
ローランドたちは多数の政治家を暗殺して回ってるんだし、たかが一人に固執してないで邪魔が入る前にとっととウーベを監禁して情報を吐かせ、始末した方が早くない?護衛を追い払うなどのお膳立てをし終えて安心してるんならプロ失格なただのアホだし、これがわざと留まることによってクラウスを釣る罠だとしてもウーベ邸に彼をライバル視しているローランドが構えていない点が不自然になる。罠じゃないと判断すると他の政治家と違ってなんでウーベにはじっくりと時間を掛けているのかが分からなくなる。つまりウーベに対してローランドたちがそこまでする価値が視聴者に示されていないのが致命的。
それにしても1クール目はあと1話か。日常回で無難に〆るのか、それとも愛娘編の後日談をやるのか、気になるところではあります。ちなみに分割2クールらしいです。

12話
グレーテ回その5。1クール目最終回です。
時系列は1回目の不可能任務の後に遡ります。クラウスが足繁く通っているミートパイ屋がミートパイのレシピを安値で買い叩こうとしてきた悪徳会社から嫌がらせを受け、店を畳もうとしていたことを聞いたグレーテが仲間たちと協力し、そこの社長を叩こうとする話。
グレーテが愛しのクラウスのために頑張るっていう点では良いエピソードだと思いますが、展開にケチをつけたい部分は多いです。会社の社長は悪い人間と付き合っているのですが、彼自体は部下たちから総スカンを喰らうくらいに会社運営の手腕が終わっています。悪人でもそんな奴といつまでもつるむのはちょっと謎。そんな悪い点しか目立たない奴と付き合うのはデメリットばかりでメリットが無いし、会社から金をできるだけ巻き上げてからとんずらとかしないのでしょうか。悪人だって人間なんだし、損切りとかはして然るべきと思うのですが、違うのかな。あとミートパイのレシピを教えてもらってから用済みだとか言って社長が銃でリリィを殺そうとするのもしょうもない。たかがレシピがらみで無駄な血を流そうとするとか……こんなしょうもないくだり初めて見た。レシピを手に入れる目的なら銃突きつけて脅すくらいで良いだろ。リリィが知っちゃいけない重大な秘密を握ったとかでもないんだからわざわざ殺す必要が無いし、リスクばかりな短絡的な手段にしか見えない。それに近くに部下いる描写無いところから見て社長一人しかいないだろうにやった後の死体の処理とかどうするんだよ。足が着くだろうが。こんなんじゃなろうの悪役より頭悪いですよ。
事件解決も鬼戦車さんが言っていますが、ゴールまでの話運びがあまりに杜撰。リリィの毒で相手を卒倒させる終わらせ方だとグレーテが葛藤しつつも着々と解決までの過程を積み上げてきた意味が無い。短絡的な暴力であっさり解決できるなら最初からやれば良いのになんでやらないのか。
スパイらしいやり方としてなら会社内部に忍び込んで弱みを握って社長に脅しをかけるとか、悪印象を吹聴して部下たちの不満を爆発させて内部崩壊とか、アクションを活かすなら密かに悪人を片付けて社長に敵の存在を印象付けて怯えさせるのもアリだと思う。
仕掛けられそうな部分は本編中の描写から見てもいくらかあったのに活かさないのはもったいない。
最後はモニカがティアに銃を突きつけて灯火を裏切るように脅しをかける引きで終わりました。ここら辺は特に問題無いです。

全体を通して
ふざけているようにしか見えない珍妙な演出や尺の大部分を取ってしまっているコメディシーンのせいでシリアスシーンの腰を折られるので、盛り上がりどころが極端に少なく、虚無感を煽られるのが一番の問題ですね。こんな感じで頻繁に梯子を外された気分にさせられるのは進化の実に通ずるものがあります。作画も終わってるあれと比べるのもどうかとは思いますが、話の質はぶっちゃけどっこいどっこいかな……キャラクターのノリも割と似てるし。
ヒロインキャラの格差も目立ちます。リリィ、グレーテ、ジビアばかりを取り上げ過ぎてて他のキャラが薄い。個人回をやっていないティア、アネット、モニカはまだ挽回できるから置いといて、エルナとサラは個人回以外あまり目立たないし、サラに至っては個人回でもいまいちパッとしない描かれ方になっていました。エルナは一応、アネットとの交流があったからまだ救われてるけど、サラは生徒たちの中でもとりわけ個性的な特技を持っている割に扱いがなんだか微妙過ぎる気がします。
逆にリリィは毎回目立ち過ぎ。一番目立つべきリーダーだし、自分としては彼女のことは好きなんだけど、もうちょっと他のキャラに尺を分けてあげて欲しい。
クラウスは終始作者にとっての便利キャラだったかなという印象。いくらなんでも強過ぎる場面が目立って生徒たちの出番を喰ってる。彼と生徒たちのバランスが一番取れていたのは作中一二を争うトンチキ回であるギード戦という皮肉。

総括して、言動や態度が不快なキャラとか極端な鬱展開は無いから完走難易度は低い部類なんですが、中身はスパイ系の作品の中では最底辺、賢者の弟子などに並ぶ虚無アニメなので、物好きな人にしか勧められないですね。

投稿 : 2023/06/24
閲覧 : 1198
サンキュー:

12

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