「ID:INVADED イド:インヴェイデッド(TVアニメ動画)」

総合得点
76.3
感想・評価
416
棚に入れた
1515
ランキング
713
★★★★☆ 3.6 (416)
物語
3.7
作画
3.4
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.6

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nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 5.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

新本格ミステリ小説という概念をメタ的に見た話?

 イメージとしては「秘密(トップ・シークレット)」+「サイコパス」です。それと「羊たちの沈黙」の人気キャラサイコパス、ハンニバルレクターが閉じ込められている牢屋にそっくり。そして、7という数字のやり取りは「すべてがFになる」の西之園萌絵と真賀田四季のやり取りを思い出します。

 そう考えたときに、なぜここまで分かりやすい模倣感を出しているのかが気になります。何といってもこの作品の原作は舞城王太郎氏です。
 メフィスト賞作家です。森博嗣氏、清涼院流水氏、西尾維新氏…2000年以前のこの賞のイメージは、スタイリッシュ、新本格からの脱却、そして「メタ視点」です。

 本作は殺人鬼を作るフィクサーを追う話になります。そして、殺意から生まれるイドに潜ると名探偵となる。現場にはいつも「カエルちゃん」と呼ばれる殺人被害者がいる。
 その一方、推理・サスペンスの体裁は取っていますが、どうもそれらしい筋立てにはなりません。つまり、読者への手がかりから論理的に積み上げて行く構造になっていない感じです。

 この「カエルちゃん」のイメージが主人公の妻と娘に似ているのでキャラの書き分け何とかしてよ、と初めは思います。名前も苗字もややこしくて全然頭に入ってこないし。けど「ん?瞳の色、妻+娘でカエルちゃん?」という感じの印象を持ってきました。

 となったときに、あれ?カエルちゃんってひょっとして「殺人事件被害者の集合的無意識的な元型?」と連想されます。彼女は常に色んな手段で殺され続けます。

 そうなると殺意の世界に入ると名探偵が生まれる意味が分かってきます。そこは常に新しい世界。必ず被害者がそこにいる。名探偵が自覚して捜査する。そしてジョニーウォーカーは「殺人者を作るもの」です。警察を象徴する百瀬室長がなぜ被害者を救済できないか。

 なぜ殺人しないとイドに入れないかは、第一印象では殺人を妄想するのは作家ですから、名探偵は作家の分身ということでメタ視点な気もします。

 それは本作でいうところのイドとは、どちらかと言えばスーパーイド…つまり超自我のことで推理小説を取り巻く、作家、読者、出版社そして推理小説という概念が産み出した世界ということだと思います。つまり、本作は「推理小説」をメタ的に見ている話ということでしょう。もっといえば「新本格ミステリ」ですね。突飛で残酷な殺人方法。そして名探偵。訳の分からない数字の象徴。何を言っているか読者がポカーンとするような推理展開。そういうところです。

 頭に穴をあける…統合できないということは名探偵のそばにいても解決できないアシスタントのようにも見えますし、推理小説を読まない人間とも取れます。小春も富久田(穴あき)も、サイコパスのように見えますが、後半になってまともな言動をするのは彼らです。

 冒頭、なぜ主人公のイメージ、家のイメージがバラバラなのか。それは話が進むまで見えてこない名探偵の推理のプロセスか話が、読み進めるとキャラや状況が形になるという小説のイメ―ジにも取れます。
 名前も苗字もややこしいのはメフィスト賞というか新本格ミステリの作家たちは実在しないような面倒くさい姓名を使います。

 ということで、作品の内容というかストーリーそれ自体は受け入れるしかありませんし、無理に謎解きをしなくてもいいと思います。ただ、推理小説家が原作なので、じっくり見ればヒントがあるかもしれませんが、そっちの視点では見ていません。

 この作品のテーマやアナロジーがどういう人に面白くて、どういう人につまらないかは全く分かりません。が、かなり明確な意図をもって作られた作品だと感じます。そこを面白がれるかどうかでしょう。もっと隠れた意図があるかもしれませんが、メフィスト賞作家の面倒くささまで再現されているので、本作の視聴は疲れることは疲れます。

 なお、サイコパスの常森好きな人は、小春ちゃんに萌えるかもしれません。

 で、肝心なことですが、普通に面白いです。考察しなくてもストーリーに力があるのでかなり楽しめると思います。

 評価としては作画は人物描写が一見拙く見えるのがどこまで意図的かわからないので、3.5にします。キャラとストーリーは私にとってはごちそうでした。声優さんの演技は迫力があってよかったと思います。


追記 書き忘れ ジョンウォーカーから、清涼院流水氏のジョーカーも連想しました。

再追記 カエルちゃんなのは「イド」「井戸」だからですね。井の中の蛙大海を知らず…です。
 また、イドがテーマの作家といえば「村上春樹」です。氏はユング派の日本のトップともいえる故河合隼雄氏と対談本を出すくらいその辺に関心があるみたいです。カエルくん東京を救うという名作がありますが、これを結びつけるのは牽強付会です。今のところ村上春樹との関連は見つけられていませんし、無い気がします。

投稿 : 2023/05/22
閲覧 : 152
サンキュー:

9

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