「TARI TARI(TVアニメ動画)」

総合得点
88.5
感想・評価
4473
棚に入れた
20678
ランキング
106
★★★★☆ 4.0 (4473)
物語
3.9
作画
4.1
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.0

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

夢破れたり また見つけたり 高校生はかくも眩しく輝かしい

【物語 4.0点】
P.A.WORKS制作による1クール(全13話)のオリジナル青春アニメ。

高校はまだまだ夢を描けたりする頃でもある。
一方で例えば、この部活で続けて来た競技ではプロにはなれないだろうから、
高校卒業までと踏ん切りを付けてみたりと、進路を見極める時期でもある。

それらの葛藤で生じた、燃えカスだったり、燻ったりしている青春エネルギーなどの諸々をかき集めれば、
何か面白いことが起きたりするのではないか?

“合唱時々バドミントン部”などという本作の少年少女が拠り所にした活動は、
何かに打ち込んでいる側からすれば、いい加減だったり、ふらついたりしているように思える。
ですがこの適当さこそが、やり場のない青春のモヤモヤを外部化して発散したりするには効果的だったりする。


こうした青春劇を{netabare} 僧侶の親父に禿げろ{/netabare} と毒づく反抗期だったり、
怪しい外国人?({netabare} 和奏の母と旧知のミュージシャン{/netabare} )に追いかけられる自転車少女だったり、
訳が分からないんだけど、何か分かるw
ピーエーの青春アニメ特有の掛け合いの妙で紡いでいく。

独特なリズムを掴めれば、学生時代に整理が付かない、付かなかったりした、
忘れ物に想いを馳せたりできる良薬として重宝します。


【作画 4.0点】
江の島を描写した映像作品は数多いですが、
本作の主人公・和奏に至っては、江の島の自宅から自転車通学したりと
江の島度が半端ありません。

P.A.WORKS作品の聖地効果は長続きする傾向がありますが本作も同様。
和奏自宅のモデルとなった島の茶屋あぶらやに昨年足を運びましたが、
放送から10年以上経った今なおポスター掲示したり、巡礼ノートが続いていたりと『TARI TARI』尽くしで、
多くの巡礼者が訪れて記念撮影したりしていました。


そんなピーエーのご当地アニメですが、必ずしもリアリティ重視ではありません。

本作でも、本土と江の島を結ぶ弁天橋だったり、江ノ電の鎌倉高校前駅だったり、
この2箇所についてはリアルの風景写真からそのまま起こしたりもしていますが、
メインの舞台となった“白浜坂高校”校舎など多くの舞台設定は素材を基にした創作。

ロケハンも素材をただ切り取りに行くのではなく、
江の島周辺の空気を感じたり、イメージを掴みに行ったりするのがピーエー流。

聖地を忠実に再現したアニメというのも巡礼の際、没入感があったりして良いのですが、
極論それなら実写ドラマ化でも良いよね?となったりもしますし、
下手なご当地アニメになると、物語より聖地巡礼ゴリ押しがメインなの?と疑問に思ったりもします。

その点ピーエー流なら、過度な巡礼推進による押し付けがましさも少なめですし、
むしろこの土地の空気感から、あのアニメ世界が構築されたのかと、想像力を掻き立てられるプレミア感を堪能できたりもします。

舞台との適度な距離感が、ピーエーご当地アニメ聖地、長続きの秘訣なのではないかと思ってみたり。

私のお気に入りの背景美術は、和奏たちの通学路。
海が見える高台から伸びる絶妙な坂道カーブが絵になるこの背景も、
ロケハンで拾った道をアレンジしたりして構築したという味わい深い創作です。


【キャラ 4.5点】
序盤、シナリオを引っ張るのは主人公・坂井 和奏(わかな)ではなく、宮本 来夏(こなつ)
来夏が声楽部から脱退したり、“合唱時々バドミントン部”を設立したりして、
自身の中で燻る歌いたい衝動を具現化し、{netabare} 母の死のショック{/netabare} により音楽をやめてしまった和奏を牽引。
中盤以降、主役交代気味に和奏が自身の過去と音楽に向き合うメインシナリオを展開して行く変則的なキャラ構成。

もっとも和奏と音楽というメインテーマが直線的に進むわけではなく、
道中、ひとりバドミントン部でプロを目指したい田中 大智の{netabare} 最後の夏{/netabare} に付き合ってみたり、
騎手志望の沖田 紗羽の{netabare} 親子バトル{/netabare} に巻き込まれてみたり、
ドイツからの帰国子女・ウィーンの{netabare} 熱き戦隊ヒーロー魂で商店街を盛り上げ{/netabare} てみたりと、
掴みどころのない合唱時々バドミントン部は構成員を増やしながら、方方に脱線しつつ突き進む。

キャラクターもフラフラしてネタを取っ散らかしているようで、
最後は関わった人々と大団円だったりするのがある意味凄いです。


そんな合唱時々バドミントン部を最初は問題児の集まりと疑問視したりもしていた周りの大人たちが、
その青春エネルギーに感化されて目覚めたりする。
これもまた大人になってからも青春を振り返る視点を提供したりして作品価値を持続させる良キャラ。

声楽部顧問で教頭の高倉先生も、{netabare} 和奏の母{/netabare} に関して未整理な青春もあったりもして、渋みが効いていましたが、
{netabare} 廃校{/netabare} の危機を前にしても尚、事なかれ主義だった校長先生も終盤は魅せてくれました。
{netabare} 金の亡者となり大切な何かを失っている理事長{/netabare} に楯突いた校長先生格好良かったです。


【声優 4.0点】
坂井 和奏(CV.高垣 彩陽)、宮本 来夏(CV.瀬戸 麻沙美)、沖田 紗羽(CV.早見 沙織)
田中 大智(CV.島﨑 信長)、ウィーン(CV.花江 夏樹)※以上敬称略。

説明不要なくらい今も第一線で活躍する声優さんたちが
若手だった頃のエネルギーがほとばしるキャスト陣。

CV.瀬戸 麻沙美さんVS堅物な教頭(CV.田中 敦子さん)
CV.早見 沙織さんVS石頭で不器用だが熱い親父(CV.木下 浩之さん)
など清楚キャラの印象もある女性声優が、
本作ではちゃんと口汚く反抗期バトルしたりするのが青くて良好。

CV.島﨑 信長さんは直球スポーツ少年だったりしますが、
CV.花江 夏樹さんは誤った日本知識に基づくヘンテコな言動も多々あったりw
それでも{netabare} “ガンバライジャー”口上{/netabare} では、後に熱きヒーロー魂を提供する片鱗を見せてくれたりもします。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は浜口 史郎氏。
合唱が題材とあってピアノによる心情曲が目立つ本作。
印象的だったのが中盤、{netabare} 和奏がもう使わないからとピアノを片付ける件で、
むしろピアノBGMを鳴らしたりして未練と哀愁を強調するカット。{/netabare}
夢を捨てなきゃならない、でも簡単には捨てられない。
少年少女の葛藤をカバーする良い仕事でした。

コンドルクインズ登場回では陽気なアステカ風?を奏でてみたりと、劇中歌も多彩。
私の胸を一番打ったのは、後半、{netabare} 来夏たちが、紗羽を呼び戻すために電話越しに即興で歌った{/netabare} 歌詞ベタベタな応援ソングだったり。


OP主題歌はAiRi「Dreamer」
パワフルなボーカルで明日を掴みに行く青春アップテンポナンバー。

ED主題歌は白浜坂高校合唱部「潮風のハーモニー」
部員の構成に応じて歌い手が変わったりするシナリオ展開追随型。
EDアニメで、序盤、来夏たちが歌う様子を遠巻きに眺めたりしていた和奏が、
徐々ににじり寄って来て、最後は皆と一緒に合唱したりする流れが微笑ましいです。

各種アニメ誌の水着グラビアだったり、Tシャツだったり、抱き枕カバーだったり、
萌えを意識したメディア、グッズ展開は女子3人がメイン。
EDについても、男子2人にも歌わせるか、スタッフの間でも葛藤があったりしたそうで。
結果男女5人での合唱を決断。私は英断だったと思います。


【余談】
作品タイトル『TARI TARI』は“~たり”から。
「空回ったり、見失ったり」などと各話タイトルにも“~たり”を仕込んで、
アレコレ抱えてワーっとなったり、迷走したりもするけどそれも青春さをカバーする好表現。
“~たり”ってホント便利な日本語です。

以上、脱線したり、ネタに走ったり、“~たり”60連発超の濫用乱発レビューw
ご清聴どうもありがとうございました♪

投稿 : 2024/02/21
閲覧 : 706
サンキュー:

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