「パプリカ(アニメ映画)」

総合得点
72.1
感想・評価
830
棚に入れた
3941
ランキング
1176
★★★★☆ 4.0 (830)
物語
3.8
作画
4.3
声優
3.9
音楽
4.0
キャラ
3.8

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ネタバレ

hiroshi5 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

主観で見るアニメ

基本、私は今敏監督の作品が嫌いだ。
彼の現実と虚構を対比させ、その境界線を極限まで薄くする技法と実力は素直に尊敬する。
だが、彼はいつも最後の答えをあえて暈す。視聴者に問題提起する形で終幕を迎える。彼自身答えなど持っていないのではないかと思うことすらある。

彼のそのスタイルは「オハヨウ」のような短編作品では魅力を増すが、長編大作になると手抜きしていると感じてさせる部分もある。

そして、何よりも彼の作品を受け入れがたいとするものは現実と空想の輪郭をあえて混同させていることだ。
この表現技法には「視聴者に事態の深刻さを主観的に伝えることができる」という最大のメリットがある。
実際、「パーフェクト・ブルー」の現実と妄想、「パプリカ」の現実と夢というものが混同することがもし起これば、人間が主観的に区別することは不可能だろう。
そういう意味でも、彼の技法には一理的を得ている部分はある。

しかし、アニメはリアリティーだけを追求すれば良いというものでもない。

これは単なる勘にしか過ぎないのだが、今敏監督は押井守監督に強い影響を受けているのではないかと思う。今敏が始めて監督を務めた「老人Z」を見てそう思った。アイデアなどが押井守監督の「機動警察パトレイバー」に非常に似ていたからだ。

その今敏監督に強い影響を与えたであろう押井守監督は「映画の50%は音楽だ」と言っている程に音に拘っている。
彼は宇宙空間で音がないはずのシーンでも、あえて重厚な音を演出するように指示したことについて「リアリティーの追求だけではアニメを完成させることができない」と説明している。

どちらかが正解などと判断できる訳もなく、また答えなど存在すらしないのだろうが、私はどうしても「リアリティーを追及し、答えを他者に委ねる」今敏風演出よりも「臨機応変に現実と空想を使い分け、最後には自分の答えを提示する」押井守風演出の方が演出のあるべき姿としてしっくりくる。

という訳で、私は今敏監督の作品が苦手な訳だ。特に「パプリカ」は彼の作品の中でもっとも現実と空想が入り混じった作品であるといって良いと思うデキだった。

作品内容は途中からお手上げ状態。最後に至っては不満を抱く以前に理解すら出来なかった。
{netabare}
夢の世界が現実世界に物理的干渉することがどうしても理解できない。夢なのだから人間の脳内で問題が起きたり、視覚に影響を与えて現実世界でも夢の問題が起きているように見せかけることは可能だろう。しかし、夢の中の人物や物体が物理的にビルや道路を破壊したりは出来ない筈だ。
{/netabare}

まぁ文句をゴタゴタ並べているが、実際のところ「パプリカ」には今敏監督の「リアリティーを追及し、答えを他者に委ねる」方法がマッチしていると思われる。
前述したように、彼の技法には「視聴者に事態の深刻さを主観的に伝えることができる」という特徴がある。
DCミニを悪用して夢の中に人が介入し、精神を崩壊しようとする一種のシュミレーションとしてアニメ映画を作っているとしたら、彼の技法は誠に成功していると思われる。
要するに、エンターテイメントとしてアニメを作成しているのか、実験作として制作しているのかで、使われる表現技法が違ってくるということだろう。


私はこの作品が面白いとは思わないが、アニメファンとしては必ず見ておくべき作品だとは思う。

投稿 : 2012/12/10
閲覧 : 356
サンキュー:

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