「さんかれあ(TVアニメ動画)」

総合得点
82.1
感想・評価
2264
棚に入れた
12305
ランキング
370
★★★★☆ 3.6 (2264)
物語
3.5
作画
3.7
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.8

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

死ぬことによって得る、生きる喜び

 原作は未読。
 あえてジャンル分けするなら、ラブコメということになるのだろうけど、まあ笑えない。
 その理由は幾つか考えられるが、一つはメインヒロインである礼弥の実家である散華家の
内情がかなりひどいこと。
 あらゆる面で抑圧されていた礼弥は生きている喜びをまったく享受できず、逆に死んで
ゾンビになることで、生きる喜びを得ることができるとはなんと皮肉なこと。
 この礼弥の家庭問題に関して、父の団一郎は娘を溺愛する変態で、母の亜里亜は世間体
のみを考える人でした、で終わるなら話自体は簡単なのであるが、終盤でそこに至るまでの
いきさつが描かれると一概に悪い両親という言葉で片づけられなくなってしまう。
 とはいえ、団一郎が礼弥に対して行ってきたことは決して肯定されるものではないが。

 一度死んだキャラクターが意識を持ち続けるケースは、この作品のようなゾンビパターンを
始め、幽霊になったり、サイボーグとして機械化されたりと多々あるが、この作品においては
礼弥の体に関する当面の課題が腐敗に対する対処だったり、感覚がないこと、排出行為がない
こと、ゾンビ化した当初に死後硬直が始まるなど、やけに生々しい。
 ゾンビ化したことで自由を得た礼弥は日々を楽しげに暮らすが、ことあるごとに前述の
腐敗の問題などが描かれると、その肉体は単なる死体であることを否応もなく突きつけられて
しまう。

 通常のゾンビものにおけるゾンビは人を襲って食べるのが大概のパターン。
 この作品での礼弥は生者の頃の意識を持ち合わせているが、主人公の降谷 千紘の知る
限りにおいては人がゾンビになることは前例のないことで、礼弥も人を襲うようになるかも
しれない可能性を秘めている。
 ミスリードも含めて、そういった描写が挟み込まれることで、多分に緊張感を感じさせる
ものになっている。

 こういった要素によりコメディ要素は弱く、むしろシリアスな空気感を強く感じる作品。

 降谷 千紘のゾンビに対する異常な傾倒振りは過去にきっかけとなる出来事、特に母の死
辺りが起因するのかと思っていたが、特にそういったことはないみたいで、母の生前から
ゾンビ好きだったみたい。要は単なる変態?(笑)。恋愛対象にまでゾンビ要素を求めるとは、
なかなかフェチ度が強い。

 そして、もう一人のヒロインである左王子 蘭子。
 明るくきさくでサバサバした性格、テニス部に所属する行動派、グラマーなスタイルなど、
こういった特徴はいずれも礼弥が持ち合わせていないものだが、単にタイプの違うヒロインと
いうだけでなく、これらの特徴は「生きている」ということを非常に感じさせるもので、
蘭子と対比させることで、より礼弥が死者であることを強調している効果を持っているように
思える。

 ストーリー展開はゆっくりとした感じで、礼弥がゾンビになるのは3話の終わりになって
から。全12回だが、ストーリーだけを描くなら、半分以下でまとめられそうな感じ。
 そういう意味ではストーリーを楽しむと言うより、雰囲気や絵を楽しんだ方がいいような
作品かな。
 その絵だが、キャラの感情や立ち位置に根ざした構図や演出など、細かい部分が凝って
おり、全体的にていねいな作りの印象でした。
 失礼を承知で書かせてもらうと、他のスタジオディーン制作の作品に較べて、やけに
センスの良さを感じる。

 ラストに関しては唐突感が拭えないが・・・。
 よくホラー映画で主人公達が危機を脱して平安を得たと思いきや、突然の恐怖が訪れて
突き放したように終わってしまうことがある。一種の脅かしエンドだが、そういったものの
パロディ的感覚もあるのかなと思ったりして。

投稿 : 2013/04/18
閲覧 : 192
サンキュー:

3

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