「Angel Beats!-エンジェルビーツ!(TVアニメ動画)」

総合得点
90.1
感想・評価
14637
棚に入れた
48165
ランキング
64
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

Knockin' on heaven's door.

「死んだ世界線戦」
“ゆり”と呼ばれる赤い髪の女の子が自信満々に言った。ここにやって来たばかりの音無には記憶が無かった。
だからといって自分が一旦死んでからここにやって来たのだと言われても信じられなかった。
彼はこの世界を見定めるため、わけのわからない戦線のメンバーに協力し、「天使」なるものに抵抗することに決めた。

―ベルが鳴る。さあ、終わりの始まりの幕を上げよう。― (『ハチミツとクローバー』9巻より)


何かに抗い続け、戦い、生き残ろうとするお話です。
ところが話が進むにつれて色んなことが明らかになっていき、彼らもそれに合わせ変わっていきます。
この作品の見どころはおそらくここにあるのでしょう。目の前にある事実に何を見るか、また何をすべきなのか。
それぞれに委ねられた真実を掴もうと少年少女は走り続けます。

理解力のない僕にはストーリーはあやふやに終わってしまいました。まあ追及する気も特にないんだけど。
全13話というのが短いくらい面白いことをやってくれます。なかなか笑えるし、楽しいです。
でもその話数にしてはストーリーを詰め込み過ぎたために急展開に次ぐ急展開と、消化しきれないものもありました。
それでも人気の高いこの作品。そう、面白ければ些細な事柄はどーでもいい。逆に言えば、ストーリーに多少の欠陥部分があったとしても、もっと大事な大きな流れさえしっかりと描いてあればそれを観る僕らとしては満足なのです。
でも僕にとってはこの「大きな流れ」さえも本作は真に迫ったものとは言えない代物でした。残念。
だから登場人物ひとりひとりにフォーカスを当てて観てみるといいのかもしれません。人によっては深い感動を得られるかもしれません。



{netabare}

3回くらい通しで観ているのだけれど、まあ相変わらず最後の謎の男との会話は僕には分かりませんでしたw
んー、ダメだなあ。


改めて考えてみると、この作品は凄惨な過去を基盤としたお話です。
個人的に辛い目にあう描写だけに感じる感動というものは空疎であり、簡易なカタルシスのためにあるに過ぎないと思っています。
『ハチミツとクローバー』の7巻で修繕工事の棟梁がこう言っていました。
「不幸自慢禁止。そこ張り合いだしたらキリがない。みんな不幸目指してよーいドンだ。それになんの意味がある。」おっしゃる通りです。
本作ではそこに比重がかかっていて、それをどう受け止めるかについては甚だしいほどアバウトではなかったかと思います。
作品としては面白く多くのキャラも魅力的だったのに非常にもったいないと思いますし、また表現者としてそこに注目しない無頓着さあるいは愚かさが露呈していたと思います。人の生死、辛い経験を題材にするときには、特に今回の場合においてはそここそ描くべきところであります。そうじゃなきゃ暴力的な映像を作ったということにだってなり得ます。個人的にはここは許せないところです。それを面白おかしくして食い物にしないでほしい。でももしかしたらそれをすることは「アニメ」のサイズを超えてしまい、エンタメでないととやかく非難されるのかもしれません。仮にそうだとしたら描くものを変えるべきだ。簡単なこと。
だから本作の表現は表面的な言葉で作業のように空白を埋めていくだけで過去の自分とまた、世界と和解できたようにはとても思えません。少なからず今まで自分に納得できずに生きてきた人々がここは消えるためにあるんだよ。と言われて、そうなのか。じゃあばいばい。と消えることができるはずがありません。本作では感動的に魅せていますがまったくこの通りでしたよ。

ただ、ゆりの過程だけはしっかりしていたと思います。
弟、妹たちを皆殺しにされた十字架を背負い、戦線を立ち上げ最前線で戦う。
そこで友情や愛を感じるけれど、私はあの子たちより誰も愛してはならないと自分を抑圧しまう。
でも最後、夢の中で彼らに直接言葉をもらいました。「もういいいんだよ?」と。



(真剣な)余談

凄惨な過去について簡易なカタルシスを生むためだと述べたがそれはこのアニメに限ってのことである。
「悲しみ」あるいは「哀しみ」は僕らにとって何をもたらすのだろうか少し考えてみた。
本質的なところではそれはおそらく村上春樹氏がよく小説で語っている、また表現している、
何かの加減でそれはたまたま僕ではなかっただけなのであり、まったく自分に降りかかってもおかしくはないということなのだろう。
立場や条件がほんの少し変われば何も問題なく、突然に、暴力的にそれは自分の身に起こる出来事なのだ。
そしてそれは僕らの近くにも、ごく普通に見えている人にもそういう恐ろしさが含まれている可能性があることを多分に示してくれる。
もちろんそれは自分の中にもだ。
決してそれに同情することの自己満足やまさにカタルシスのために存在するわけではないだろう。
もちろん当事者にとっては望むものではなかったし、その関係者も事実を前にして気持ちが明るいはずがない。
あくまで傍から見て、第三者から見てということだ。そこから受け取るものは人それぞれであり、どこに行き着くかも各々の本質に赴くところだ。
ただここでそれについて非難したのは上記にある通り、それだけで興味を引こうとしているように見えたからだ。
過去と閉鎖空間の謎にばかり焦点が当てられ傷ついた彼らにはまったくと言っていいほど施しがなかった。
キャラクターたちに記号的アイデンティティを添えられただけのような気がしてならない。
もう少しまともなストーリーの中で生かしてあげるべきだったと思う。そうでなければ―そうである彼らを―非常に不憫に思う。
ただその凄惨な過去は物語と絡み合うことに関して上手くは機能していなかったが(ゆり以外)、自立して僕の中で息づいていることは皮肉にも財布の中のドナーカードが示していてくれている。

ここで述べた「悲しみ」「哀しみ」の存在とその周囲にもたらす作用は僕の未熟な仮説である。
今後いつ終わるとも知れぬ生涯の中で、生き続ける限りはこの考えは多くの変遷を辿り、様々なかたちへと姿を変えるだろう。
もし変わらないとしても今の僕に知る由はない。あくまでこれは今現在の僕の見る世界の解釈のひとつに過ぎない。


{/netabare}

投稿 : 2015/01/11
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