「Kanon カノン[京都アニメーション版](TVアニメ動画)」

総合得点
84.9
感想・評価
1833
棚に入れた
10354
ランキング
258
★★★★☆ 3.9 (1833)
物語
4.0
作画
3.8
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.9

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るぅるぅ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

奇跡を紡ぐストーリー

恐らくこの作品を視聴する方は、事前情報を仕入れている方が多くハードルを上げるのではないでしょうか。それもアニメ化された『Air』,『CLANNAD』,『Angel Beats!』,『リトルバスターズ!』からKey作品にふれる度に期待せざる負えないと思います。

それらの共通事項として、ファンタジー設定、独特のキャラデザイン、世界観は人を選び、嗜好と合致するほど強く余韻を残し心を駆り立てる作風に仕上がっています。

2006年当時から人気があったのか怪しいところですが、京都アニメーションの匙加減が上手く作風を壊すことなく、荒削りだけど伝えたいメッセージは反映されており、今尚、色あせない作品となっております。

今作は『奇跡』を紡ぐ4つのストーリーを軸に閉ざされた記憶が綻び、主人公・相沢 祐一の過去と現在を辿り奇跡の証明が描かれている。結末を評価すると奇跡の安売り・ご都合主義と判断されるかもしれないですが、人は生まれつき岐路に左右され選択の渦中にいる、その光明として状況打破・変わる兆しを奇跡と感じるのかもしれない。それらを体現するキャラの個性は、許容・逃避・抵抗・現実と理想の乖離と幾重にも重なり偶然が必然となる奇跡がKanonの持ち味です。

ファンタジー設定・中2設定に目移りしがちだが、祐一の内面・行動力から魅せるストーリー展開は理想の形であり、当事者の願望が含まれたスタンスが最も浮き足立つ描写でありながら作品価値を高めている要素でもある。その一方、主人公属性ゆえにダメ男に見えるのがネックかもしれない。
これは今の典型的なラノベ主人公にも多いのだが、なぜコイツが好かれるのか分からないハーレム展開とも捉われ兼ねない特徴だが理由付けはされており、祐一の内面に惹かれているとわかるがストーリーが進むにつれ尻軽に感じるかもしれない。1つのシナリオが終わると次のストーリーへと軸が構築され余韻に浸る前に世界観に動かされている演出は否めない。だが、祐一の特徴として記憶の欠如によって帳尻あわせをしているつもりである。

時間軸で考えると過去の記憶・思い出を取り戻す為のストーリー展開となっており、現在の時間軸のなかでは人柄の良い主人公でしかないことが浮き彫りになっている。思い出から目を背けていた真実を受け入れ、既知感から行動に違和感を覚えつつも手探りに辿り着く終着点は無意識に最善策を選んでいる。その軌跡が重なり合うからこそ最後の奇跡へと導かれるのだと感じる。話は逸れるが、主人公を演じる杉田さんの真面目な声を聴くほどギャップしかなく笑ってしまう部分もあって、ハルヒのキョンと変わらないがウェル博士を思い出したりするとシリアスがギャグに見えてしまうのが辛い(苦笑)

それはさておき、作品価値を高めている要素として、先ほど取り上げたキャラ付けが秀逸です。
メインヒロイン・サブヒロインを含め不の感情・意味深な影をさり気無く見せており、対人関係と同じく人との距離間を保ち親しき仲でも見せない心情・主人公に好意を抱くも核心は後退りとなります。それぞれが抱える問題が大きく不安を取り去ることもできない状況と理解しているだけに、祐一との距離間に歯がゆさが生まれ嘆き・憤り・苦しみが悲劇となるからこそ、見入ってしまうほどに気持ちがざわつき揺さぶられるのだろう。

また、本作は1999年発売されたゲーム原作を忠実に再現しているわけだが、アニメ放送時期の2006年を振り返るとアニメとゲームの時代背景に溝があったように感じる。Kanonは泣きゲーの先駆けとして有名である一方、アニメ業界では浸透されるわけもなく異彩を放っていたと想う。だが、2006年アニメ業界ではコードギアス、ハルヒといった今までにない作風があふれ現在の基盤になっている。ラノベ・ゲーム原作・オリジナルアニメ・漫画原作といった4つの媒体からジャンルの幅が利くと同時に2番煎じのような作品も大量生産されていることも確か。
それだけに今更今作を観る必要があるのか? と尋ねられるとYESでありNOである。
それでも私はゲーム原作のシナリオライター(脚本家)麻枝 准に思い入れがあるだけに、これからも見返すだろう(笑) キャラ立ち・BGM・細かい伏線・演出と今の世代の方が視聴しても見劣りしない構成は、切なくも雪解け誘う心温まる作品として覚えてもらえると嬉しいですね。

投稿 : 2014/06/22
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