Tnguc さんの感想・評価
4.5
未来に胸馳せるスペースドリーム
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「電脳コイル」から約15年。磯光雄(いそ・みつお)監督の待望の新作は宇宙ステーションに住むルナリアンの少年と、そこへ社会見学に来た少年少女たちの出会いを描く。高度に発達したAIをとりまく、子どもと大人、それぞれの目線から描いた宇宙規模のファンタジーが全6話の中でさんざめく。吉田健一(よしだ・けんいち)によるキャラクターデザインを、井上俊之(いのうえ・としゆき)らが率いるアニメーションで高品質に描き、さらに、観念的だけど馴染みやすい電脳世界のエフェクト描写など、プロフェッショナルな作りは相変わらず健在だ。作画以外にも電脳コイルから引き継がれた要素は沢山あるものの、さすがに15年の歳月も過ぎれば二番煎じ感も少しは和らぐが、ある意味「ゆりかご」から抜け出せていないようにも見える。ただ、コスミックな劇伴や、藤原夏海(ふじわら・なつみ)や和氣あず未(わき・あずみ)といった新人女優賞役者の起用、さらにはネット配信の文化を上手く取り入れた物語など、コンテンポラリーな嗅覚は電脳コイルから更に精錬されている。映画前後編(サブスクだと6話)というやや特殊な話数ということもあり、各キャラの紹介や掘り下げが物足りなかった点は否めないが、近未来宇宙という題材は至極丁寧に扱われ、全くと言っていいほど無駄のない展開がシームレスに生み出されている。なお、電脳コイルでも感じたことだが、サイバーな部分が色濃くなる度、ビジュアルに反して専門的な知識が要求される。だが、可視化された通信描写の面白い表現力もあって、眺めているだけでも簡単に乗り切れる。これがなかなか絶妙。さらに、近未来的な設定もカジュアルな外見で至るところに配置されているため、視聴後には工学に対して興味が沸き立つ感情を覚えるだろう。そういった知性に訴える内容と、宇宙を舞台にしたサイエンス要素も相まり、とくに、そのような環境で成長する主人公たちの姿に共鳴した同年代の視聴者にとって、この作品は極上のセンスオブワンダーとなる。
個人的評価:★★★★☆(4.5点)