「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲(アニメ映画)」

総合得点
80.7
感想・評価
724
棚に入れた
4192
ランキング
435
★★★★★ 4.1 (724)
物語
4.4
作画
3.9
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
4.2

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ネタバレ

takarock さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

20世紀(昭和)との訣別、そして21世紀へ

2001年公開の「クレヨンしんちゃん」劇場版の9作目で、
監督は「河童のクゥと夏休み」を手掛けた原恵一監督です。

クレしんについては原作(全50巻)のおそらく40巻くらいまで読んでいる。
TVシリーズはちょこちょこ視聴していた。
劇場版は初期作品を観ている。
とはっきり言ってにわかですw

ただ、そんな私でも今作「嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」と
次作の「嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦」は劇場版クレしんの中でも
別格中の別格であり、アニメ好きのみならず映画好きならば
この2作は絶対に視聴しなければならない作品という評価を受けているのも
視聴前から分かっていました。
そしてこの2作があまりに偉大過ぎて、今年で22作目を迎えた劇場版クレしんですが、
今なお比較されてしまうというある種呪縛となっていることもです。

視聴前から偉大な作品ということは分かっていたので
変にハードルを上げずフラットな視点でということを心掛けたのですが、
そう思う時点で意識しまくりということなのかもしれませんw

では、ここからはネタバレありで語っていきたいと思います。


{netabare}20世紀博によってひろしやみさえを始めとして
大人たちが豹変してしまうというのは
まさに「いつもの日常」の否定であり、子供の視点からだと相当の恐怖ですよ。
名作と呼ばれている劇場作品には実にこのフォーマットが多いですね。
「いつもの日常」の否定、そして「劇場版の非日常」
物語の導入部としていかにここで魅せるかというのはもう演出の勝負ですね。
大人たちには懐かしい昭和の歌謡曲やギャグも
それを知らぬ子供たちからすれば
ただただ不気味なものとして映ったのかもしれません。
夕日をバックグランドとしてチャルメラの音が聞こえてきそうな
昭和の町並みはそこに足を踏み入れたら二度と帰ってこれないような
そんなおどろおどろしさがありました。
そういった演出意図があったのかもしれませんが、
大人たちにとってはただ懐かしいだけなのかもしれないですねw

壁をよじ登ったり塀の上を駆け抜けたりできるというのは
「クレしん」の強みですね。
アニメーションならではの疾走感だったりを存分に表現できます。
「これ、死人が出るんじゃ?」ってアクションシーンも
コミカルな表現によってそんな風に感じること自体が野暮と思ってしまいますw

21世紀である現在を憂いており、冷静な口調ながらも切々と「古き良き昭和」を
語っていく秘密結社「イエスタデイ・ワンスモア」のリーダーであるケンは
どこか「劇パト2」の荒川茂樹を彷彿とさせましたw
異物感すら感じるこのキャラなんですけど
そんな存在も受け入れてしまう「クレしん」の懐の深さはすごいですね。
作品の強度とも表現できるのかもしれないですけど、
こういう世界を作り上げた故・臼井儀人先生に改めて敬意を表したいです。
「クレしん」はすごい作品です!!

催涙シーンとも表現されることがある
ひろしの回想シーンはもう反則でしょうw
当時家族サービスとして仕方なしに劇場に足を運んでいた世のお父様方の
涙腺は間違いなく崩壊したと思います。
かけがえのない日常は何ものにも代え難い宝物なんです。
そして劇中のひろしの名言
「俺の人生はつまらなくなんか無い!
 家族のいる幸せをあんたたちにも分けてあげたい位だぜ」
もうさ、格好良すぎるだろ・・・
昭和の夢から醒めたひろしは
まさに一家を支える大黒柱として非常に頼もしかったです。

そして、しんのすけが階段を駆け上るシーン。
転んでは起き転んでは起きそれでも必死に階段を駆け上っていき
最後は輪郭が荒々しくなっていくのですが、
線に高密度の情報を付加するということはこういうことか!?と目から鱗でした。
その線の歪みから必死さや様々な思いを鮮明に感じることができ、
劇伴と相まってテンションをクライマックスまで引き上げてくれます。
お見事の一言です。{/netabare}


本作のテーマは本作が制作された時期を考えても
「20世紀(昭和)との訣別、そして21世紀へ」ですね。
人は過去でなく今現在、そして未来へ生きていくべきということなのでしょうし、
それはまさにその通りです。
しかし、ふと思うことがあります。
しばし過去を回顧すること自体が悪とされることがありますが、
過去を振り返ることも重要なことなのではないだろうか。

個人商店は消え、コンビニが溢れかえり
多機能携帯電話であるスマホで大抵のことはできちゃいます。
昔に比べて便利にはなったけど豊かになったのか?

「クレしん」連載当時はひろしは
極平凡なサラリーマンの父親像として描かれていたのでしょうけど
現在では家族を持ち埼玉県春日部市に一戸建ての家を持つ
勝ち組なんて形容されるのかもしれません。

そしてそれが上記の問いに対する答えになってしまうのかもしれませんね。

真の豊かさとはなんて大仰なことを言うつもりはありませんが、
昭和から学ぶべき点は多いとは思っています。

投稿 : 2014/11/08
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サンキュー:

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