「SHIROBAKO(TVアニメ動画)」

総合得点
91.4
感想・評価
3718
棚に入れた
15364
ランキング
32
★★★★★ 4.2 (3718)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.1
音楽
3.9
キャラ
4.2

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ネタバレ

OZ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

アニメの今が此処にある

P.A.WORKS×水島 努監督との事で
期待して観てみたら
文句無くお気に入りとなった
2014秋~2015冬にかけての2クール作品

■アニメの今が此処にある■
学生時代に交わした約束を夢見て
日々 アニメ業界で奮闘する女性5人を中心に描いた
アニメ業界の裏側をアニメにした『SHIROBAKO』

高校生をメインに据えた学園系アニメが多い中
社会人にスポットを当てた今作品。

制作現場の忙しさが伝わってくる内容だけれど
「アニメを作るのはこんなに大変なんだよ」と
押し付けがましい美化されたアピールはなく
エンターテインメント性溢れるドラマ仕立てとなっている。

人物が多く登場するものの
その場限りの存在感に留まっておらず
一つの作品に携わる様々な職種全員に
不安 葛藤 情熱 生き様があり
各キャラクターそれぞれが等しく
物語の主人公と言えるだろう。

一人一人キャラクターが立っているのは見事である。

特に宮森 あおいの立ち位置が良く出来ていて
形としては成長していく姿を追っていける主人公だが
制作過程において視聴者の目線も持っており
物語のナビゲーターとも言える
作品と視聴者を繋ぐバランスが絶妙なのだ。

また 音楽面も素晴らしく
中でも後期OP「宝箱-TREASURE BOX-」は
壁にぶち当たっても乗り越えていこうとする
メッセージの込められた歌詞が
メロディー共にお気に入り。

サビに入る直前
ずかちゃんに光が射すカットで
毎回目頭を熱くさせられ
何度も観てしまった飛ばせないOPの一つ。

気になった点はこれと言って見当たらないが
強いて挙げるなら資本やスポンサー等
アニメを作る上での金銭面には触れられていない事。
その点の現実味が曖昧にボカされている為
リアリティに若干欠けている印象が残るくらいだ。

とは言えシナリオとキャラクターが上手く噛み合い
夢に向かって困難な壁を乗り越えようとする姿に
勇気をもらい励まされた。

アニメ業界の今はどうなっているのか?
多くの作品が作られては淘汰されていく現在。
たかがアニメであり されどアニメだからこそ
観る側も出来るだけ作り手の情熱を感じていきたいものだ。

業界と視聴者に一石を投じる
アニメの今が詰まった作品である。

■貴重なタローの存在感■
女性キャラクターの活躍が目立つ今作品であるが
男性キャラクターの存在感も見逃せない。

『SHIROBAKO』に無くてはならない存在と感じたのは
終始 鬱陶しく無責任な印象であったけれど
作品にアニメらしさをもたらした
タローこと高梨 太郎である。

少々 足を引っ張ろうとも
メンタルの強いタローが持つコミュニケーション能力は
場の空気を明るくするだけではなく
無気力な態度で心を開かなかった平岡ですら
徐々に打ち解けるまでの関係を築いていく。

勿論 仕事をする上でスキルや責任感は大切だ。
けれど それだけが全てとは言えず
時間をかければ技術は身に付いてくるものだが
人との接し方はその人の積んできた経験によって
自然と培われてくるもの。

もしも彼がいなかったら
お堅いドキュメンタリー作品となっていたかもしれない。
そう考えるとタローの存在は
今作品に娯楽をエッセンスした
極めて貴重な人材と言えるだろう。

■今わたし 少しだけ 夢に近づきました■
名場面が数多くあった中で
もっとも印象に残ったのはどの場面か?と聞かれたならば
新人声優のずかちゃんこと
坂木 しずかが夢に一歩近づけた
第23話「続・ちゃぶだい返し」である。

いくら練習を積み重ねてきても
オーディションでは緊張から失敗してしまったり
ガヤの演技では張り切り過ぎて空回りしてしまったりと
周りの仲間達が一歩ずつ先へ踏み出しているのと比べて
唯一 くすぶっている日々を過ごす坂木 しずか。

声優業界は狭き門だとしても
若手声優がTVで活躍するのを見て
酒をあおりながら愚痴をこぼし
一人取り残されている現実に
彼女は何を思うのだろうか。

何度 壁にぶつかっても
諦めず挫けずに明るく振舞う彼女には
却って痛々しくも悲壮感が漂い
ただ 報われて欲しいと願うばかり。

『第三飛行少女隊』の収録も終わり
「このままずかちゃんは報われずに・・・」と
救いのない展開を想像していたが
最終話に急遽リテイクが入り
追加された新キャラ ルーシー役に
まさかのずかちゃんが抜擢されるのだ。

そしてルーシーの台詞
「今わたし 少しだけ 夢に近づきました」

ルーシーとずかちゃんの姿が重なり
こみ上げてくる抑えきれない感情は
みゃーもりの瞳から涙となって溢れてくる。

迷いから立ち止まっていた
『第三飛行少女隊』の主人公 ありあのみならず
宮森 あおいにも言える事で
ありあ ルーシー みゃーもり ずかちゃんの心情を共有する
非常に多くの意味を含んだ台詞として印象に残った。

直前にりーちゃんが
「台詞 一行だけ使ってもらえました」と言っており
アリアの台詞だったのか?ルーシーの台詞だったのか??
詳細は明かされていないが
おそらく最後の台詞「今わたし~」がそうなのだろう。

第1話 山形県 上山高校アニメーション同好会の一室で誓った
遠い日の約束が実現するのである。

最後までずかちゃんにスポットが当たらなかったのなら
それはそれでリアルさが増すのかもしれないけれど
ここまで彼女の苦労を観続け
頑張りが報われた姿を見ると
声を押し殺し 台本で顔を隠して涙するみゃーもりと同じく
一緒になって感極まってしまったものだ。

ようやくずかちゃんに光が射した
このエピソードが強く胸を打ち
今作品のハイライトとなったのである。

■あとがき■
終わってしまうのが寂しくなる程
期待以上に楽しめた全24話でした。

中盤以降からは
ずかちゃんに感情移入をしていたので
「少しだけ 夢に近づきました」の台詞には
素直に感動してしまって涙が止まらなかったよ。
予定調和の展開だったとはいえ
本当に報われて良かったな。

最終回ラストに
携わった全員の集合写真カットでは
勝手ながら一つの作品が
創り上げられるまでの道程を共にしてきた様で
「お疲れ様」と思うのと同時に感慨深かったです。

他に観てみたかったのは音楽制作の現場。
制作進行 作画については満足出来たけれど
どうやって作品のイメージに
主題歌やら音を想像して作り上げていくのか?
興味があった分野だけに
そこだけがちょっと心残りだったかな。
尺の都合もあるので仕方ないが
音楽制作も描かれていたら満点になっていた気もするよ。

それと おそらく多くの方も知っていると思いますが
みゃーもりのアドレスにメールすると
ストーリー紹介の返信がくるので
小ネタとしてメールしてみてるのも面白いかも。
ちなみにアドレスはmiyamori@musani.jp です。


最後になりますが
制作に携わった多くの方々
並びに武蔵野アニメーションスタッフの皆様
「アニメを好きで本当に良かったな」って
感じられる素晴らしい作品でした。

今作品と言えばやはりこの言葉で締めたいと思います。
ドンドン ドーナツ ドーンといこーう♪

満足度 ★★★★★★★★★☆ (9)

投稿 : 2015/04/27
閲覧 : 479
サンキュー:

71

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