STONE さんの感想・評価

3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

「ケーキぐらい、自分で焼け」と

　原作は未プレイ。
　ベースとなっている世界観は異世界ファンタジーもののそれで、異世界ファンタジーというと
多くの作品が冒険譚やバトルものだったりする。
　この作品もそういった要素が加味されているが、それ以上に強く感じるのが癒し要素で、
この辺は主人公であるエスカ・メーリエの優しさと同時に、コルセイトという田舎を舞台に
人々の触れ合いが多く描かれているのも大きいみたい。
　そういう意味では異世界ものではあるが、「のんのんびより」や「ばらかもん」などに通じる
部分もあるのかなと。
　人々の触れ合いという部分ではほとんどのキャラがいい人だったのも大きい。バトル要素が
あっても、いわゆる悪役然としたキャラはリンカのイチ姉さんぐらいだったし。

　ストーリー的にはエスカとロジックス・フィクサリオ(以後、ロジーと表記)のコルセイト支部
開発班の活動を中心に描かれていくが、ここで印象的だったのがいずれの課題も皆の協力が
あってこそ成し遂げられたもので、それに対比するように単独で行動した過去のロジーや
フラメウの結果がいずれも失敗に終わるなど、問題解決に関しては人々の協力が不可欠だと
いうことが徹底して描かれている。
　この人々の協力が横軸とするなら、リンゴ園に象徴されるような長きに渡って受け継いでいく
という部分が縦軸といった印象。
　劇中で語られていたようにこの作品世界では大半がたそがれの大地と呼ばれる荒れ地のようで
人が生きていくのは困難な世界みたい。
　それだけに皆が協力して事にあたり、先人が育んだものを受け継いで、それを次世代に伝えて
いくというのは、作品に登場したキャラだけに限らず、この世界に生きる人々の共通認識
なのかもしれない。

　主人公であるエスカに関しては典型的な主人公キャラといった感じだが、こういう前向きで
優しいキャラはやはりいいなって思う。あの脱力するような鼻歌も慣れるとやけに癖になるし。
　フィクション作品における錬金術師は、実在した錬金術師より拡大解釈されて、様々なものを
作り出す存在となっており、もはや魔法使いと変わらないような存在だったりすること多いが、
まさか錬金術でケーキを作るような作品が出てくるとは思わなかった。「ケーキぐらい、自分で
焼けよ」とツッコミを入れたくなったけど。

　一方のロジーだが、当初はクールなキャラかと思いきや、意外と普通の好青年であった。
序盤においては多少、地方を下に見ているような感はあったけど。
　序盤のクールな印象は過去の傷を引きずっていたのが大きかったのかな。
　この二人、随所に互いに好意を抱いているような描写があったが、結局は何もなくて終わって
しまった。本社のエリート社員が地方の支社に配属になり、地元採用の女子社員といい感じに
なったが、告白前に本社復帰になっちゃったみたいな。
　他のキャラも印象的なキャラが多かったが、アトリエシリーズの他作品とリンクしている
キャラが多いようで、その辺を知っているとより楽しめるようなエピソードが随所に描かれて
いたが、残念ながらその辺は判らず。

　飛び抜けたところはなかったが、色々な要素がそこそこ盛り込まれており、展開的にも
1クールできれいにまとめられていて、佳作的ではあるが、それなりに楽しめた作品。