「星を追う子ども(アニメ映画)」

総合得点
66.2
感想・評価
645
棚に入れた
3186
ランキング
2907
★★★★☆ 3.6 (645)
物語
3.5
作画
4.1
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.4

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

新海監督のジブリっぽいファンタジー。テーマは素晴らしいが、冒険活劇としては今一歩

「秒速5センチメートル」に続く、新海誠監督の第5作目。約2時間弱です。
「初期のジブリ・宮崎駿作品」を意識させるファンタジーが特徴です。
大切な者を失った少女が、なんやかんやあって、異世界を冒険するお話。

近年(本家の宮崎駿監督が作りたがらない)正統派ファンタジーを、2010年代の新海監督が全力で構築、ファンタジーとしては良い感じです。
…テーマも非常に素晴らしく、考えさせられるのですが。
冒険活劇としては、凄く面白い!とまではいかなかったです。
※ちょっとネガティブ寄りな感想。

{netabare}『物語』
小学生高学年くらい?の女の子・アスナちゃんが、秘密基地とか鉱石ラジオでひとり過ごしていると、謎の怪物、そして謎の少年と出逢い…
色々あって、異世界に冒険に行くお話。
舞台は現代日本(ちょっと一昔前くらいか?)…から、異世界に移行するタイプ、「ラピュタ」や「ナウシカ」のようなハイファンタジーでは無いです。

シュンとの運命的な出逢い…だが突然の別れ。
シュンの死を受け入れられないアスナ…
…いや、実は私(視聴者)もあんまり実感無いんですよねぇ。
森崎先生の古事記の授業、そこには禁断のニンジャ真実もとい地下世界アガルタの秘密が!
…冒険に移行するまでの展開が些か強引というか、不自然な気が。
「アスナが、積極的にアガルタに冒険に行く動機が分からない」
のが、終始モヤモヤしました。

※ジブリの「天空の城ラピュタ」の場合、パズーがドーラから覚悟を問われシータを救いに冒険する説得力は抜群でした。
「親方空から女の子が!」と衝撃的出逢いから少しずつラブコメの波動…
視聴者は(パズーが命懸けでシータ助けに冒険に行くのも分かるわー)

…この点、アスナには、シュンの為に大冒険に踏み切る程の説得力が無いのが惜しいです。
まあ命の恩人だしイケメンだし、孤独だったアスナが好きになるのは理解できる。
でも、謎の異世界に危険な冒険の旅には、普通行きそうにない…と思えてしまった。
…終盤、一応はシュンに感じていた想いは分かるのですが、些か観念的に思える。
「それは、“さよなら”を言うための旅。」
というテーマは非常によく分かるし素晴らしいのですが…
「まず、テーマありき。でキャラクターはテーマに動かされている」ように感じてしまった。

世界観は良い感じです。
滅びゆく地下世界アガルタの幻想的な雰囲気は中々。
…ただ、凄くワクワクする!とまではいかない。
地上の人類には無い超テクノロジーとか、超魔術とか、もっとビックリさせてくれるギミックが欲しかった。
空飛ぶ船は中々でしたが、船が空飛ぶのはアニメでもゲーム(ファイナルファンタジーとか)でも、ありがちですしね。
あと、ファンタジーとしては良くも悪くも「妙に生々しい現実感」も感じました。
武装ヘリとかアサルトライフルの兵士とか。
ここら辺を活かせば結構私好みの作風になったかも(聖戦士ダンバイン好き)
…ダンバインといえば。
地上人(ちじょうびと)という単語で真っ先に聖戦士ダンバイン連想する♪
アガルタはさしずめバイストン・ウェルかな?

冒険は、主に夷族(イゾク)が脅威としては良かったのですが…彼らだけでは地味。
先生と淡々と旅をしつつ、冒険活劇的にはあまり盛り上がるイベント無かった。
…ここら辺が本作もう一つの弱点で、ラピュタやもののけ姫程には「ワクワクしない」んです。
オジサンと二人旅じゃなぁ…。
ジブリの名作たちがおしなべて「ボーイミーツガール」なのに対し本作は少女と成人男性。
これはこれで良い組み合わせ…の可能性はあったのですが、如何せん先生があまり心開かないので、旅が面白くない!

終盤の展開、そこに至るテーマの伏線(失われた命を求める事の是非、それでも生きる意味、的な?)は丁寧かつ、分かり易いのは良い。
途中で立ち寄った村の老人と先生との対話も深く、先生の主張もあながち間違っているとは思えない。
それでも、やっぱり命は大きな流れの中にある…という価値観が綺麗に描かれていて、色々と考えさせてくれる内容は素晴らしいと思ったです。
…「分かり易い」のは本作の良い点で、いかな高尚なテーマも分かり難ければ意味が無い(と常々思っている)ので。
その点では、本作はちゃんと監督の主張が伝わったので、テーマ性は優れていると思った。


生と死について色々と考えさせてくれる深いテーマ性
2時間ほとんど飽きさせない構成
まずまず印象的な世界観
が良かった。
一方で、アスナの心情やモチベーションにあまり共感出来ない
異世界冒険活劇としては地味
なので、総じて「まずまずは面白かったが、何度も繰り返し観たい程では無い」
ラピュタやナウシカは今なお幾度も繰り返し観てもその度にワクワクさせてくれる、本作は「ワクワク」が足りなかった。
あと「ラブコメの波動」もやや足りない。

…多分なんですけど。
新海監督が描きたかったテーマと、冒険ファンタジーは「食い合わせ」が悪かったのかも?
…いやいや、でも、「大切な人を生き返らせる為に大冒険」というのは案外古典的なテーマ(古い文学でも、ゲームにもある)
であり、本作のテーマでも、作り方次第ではラピュタ並みにワクワクするお話もあり得たような?
素人のいい加減な予感ですけど、ラノベ作家やゲームシナリオライターの方が得意っぽいジャンルかも?

…私がジブリっぽい冒険ファンタジーに期待しているのは
「ワクワク冒険」と「ボーイミーツガール」なのだ!!!
宮崎駿監督も、冨野由悠季監督も、往年の自分の作風をもう古い!と切り捨てちゃってますけど。
…全然古くないよ!今なお色褪せてないよ!(むしろ最近の両ベテランの作品つまんない)
新海監督の「星を追う子供」はイマイチだったけれど、こういう作風はもっと挑戦して欲しいです!!


『作画』
流石に素晴らしい。異世界描写も美しい。
ただ、異世界を大冒険している!なワクワク感はあと一歩及ばなかった感も。
戦闘シーンもハイクオリティー、技巧派で魅せてくれますが、やや地味かも。
…ネガティブなコメント多いですが、総じて水準以上ではありました。
何気に、アスナちゃんの入浴シーン多かったのは良い♪色気は皆無ですけどw
夷族に攫われそうになる怯えた表情も良いですねぇ(ゲス)

『声優』
この手のアニメ映画には珍しく本職声優中心なので安定感あり。
アスナは「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」のカナタと並び金元寿子さん初期のヒロイン、新人とはいえ門外漢とは一味も二味も違います。
大泣きする演技、あれは並みの素人じゃムリですよ…
後の大人気声優、やっぱり金元ボイスは非凡な可愛さありますねぇ。

シュンの入野自由さんの少年役も流石の安定感、見事です。
先生はベテラン・井上和彦さん。ベテランらしい深みのある演技は素晴らしかった。
アスナ母の折笠富美子さん、先生の亡き妻の島本須美さんも素晴らしく、非常に豪華声優陣!

…やっぱり声優は素人よりもプロの方が良い気がします。
ラピュタもナウシカもカリオストロも声優陣の好演が大きいですし。
まあ、はまり役なら素人も悪くは無いとは思いますけど、沢山アニメ観ていると、やっぱり人気声優は伊達では無い事が実感出来ますし…。

『音楽』
主題歌はまずまず主題伝わった。
BGMもまずまず…悪くは無いけれど、強く印象に残る程でも無い。
…ファンタジーで名作級は、やっぱり音楽非常に大事だと実感。
ググッ!と盛り上がるシーンには綺麗な音楽欲しいですから。

『キャラ』
主人公・アスナちゃんは優等生で良い子なんですが、ちょっと心情が分かり難かった。
主人公がストーリーを動かすというより、ストーリーに主人公が動かされている感が。

シュンとシン兄弟は中々イケメンでしたが、ボーイミーツガールとしては印章薄い。
…なんだか「タッチ」みたいな兄弟ですなぁw

先生が一番共感できるキャラ、実質彼が主人公でした。
「性格の良いムスカ」ですな。
非情に徹しきれない中途半端さはある意味人間らしい。

アスナ母と先生の妻が良い女性。地味だけど。

シンを好きな少女(伊藤かな恵さん)は殆どモブじゃないか…
多分もののけ姫のオマージュなんだろうけど、あまり意味ないような。{/netabare}

投稿 : 2015/09/18
閲覧 : 336
サンキュー:

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