「乱歩奇譚 Game of Laplace(TVアニメ動画)」

総合得点
61.7
感想・評価
663
棚に入れた
3148
ランキング
5155
★★★★☆ 3.3 (663)
物語
3.1
作画
3.4
声優
3.4
音楽
3.4
キャラ
3.2

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ネタバレ

photon さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6
物語 : 1.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

必死なエログロナンセンスはエログロナンセンス足り得るのか

江戸川乱歩の作品で良質な部分を削った作品。
乱歩を利用しているということで、関係ないものとするならもっと酷い評価になるのだけれど、関係のあるものとするなら上記のように多少まともな評価ができるかな。

その確証らしきものとして、手段の目的化。
推理小説が探偵小説と呼ばれていた時代、探偵の推理って行為は心理追究の為の手段に過ぎなかったのだけれど、これが推理小説時代に移行すると手段に過ぎなかったものが大仰な持ち上げられ方をするようになった。
そんな作品は今の時代ちょっと辺りを見渡せば簡単に手に取ることができるのだけれど、そんな作品群に埋もれるということは探偵小説家たる乱歩を描くことに失敗したということになるわけで。

それでも数式(笑)で上手く煙に巻けていれば別作品として多少の評価はできたのだけれど、決定論やコペンハーゲン解釈すら過去のものとなりつつある(決定論は既に過去のものかも)時代に敢えてラプラスの悪魔を使う意味は言葉に泥酔しているからか、ラプラスの悪魔が流行した時代で思考がストップしてしまっているかのどちらかになるんじゃないかな。

最近この手の不勉強な作品が多いのは市場拡大化の先の単価安で、食べる為に量産化した結果だと思うのだけれど、情報インフラが隆盛期を迎えている時代に商用化した娯楽が今どんな状況に向かいつつあるか一旦冷静になって見渡してみた方が良いと思う。

個人的に作品内で最もやらかしているなと感じた箇所は、ラプラスの悪魔、それとパノラマ島における産業革命前後辺りのイングランド臭。
ポーはアメリカ人だよ。イギリスの小説の翻訳もしていたけれど、ラプラスなんてメジャーな言葉を持ち出すならポーでしょう。
例えば不法入国の移民でも使えば多少の繋がりはあったかもしれないけれど、ヒロインがスマホ弄ってる時代にどブラックな企業の足がつかないなんて無茶な設定は乱暴過ぎて苦笑いしかできない。

それでも子供なら騙せるのかも知れないけれど、乱歩没後50年作品と銘打っている以上、メインターゲットは子供じゃないのでしょう。これで子供をターゲットにしているとしたらマーケティングの段階で既にやらかしていることになるわけで。
いくら脳が硬化してるからって高々ディファレンシャルやインテグラルで誤魔化される層でも時代でもないでしょうに。

それでもどうにかエログロナンセンスを醸し出そうって必死な感じは伝わってきた。乱歩作品にはこのエログロナンセンスを心理追究の為の副次的テーマとして扱ってるものが多い。ただ、副次的な部分での繋がりしか無いから気持ち悪い感じしか残らない視聴者も多くなるわけで。

結局乱歩と関係のある作品として前向きに評価できる箇所は必死なエログロナンセンス。関係無い作品として評価するならマーケティングミックスは失敗だったけれど諸要素のプロモーションはまあまあかなという商業的な部分で本編にはない。

もし、乱歩の再評価などさせないという理念の下に作成されたものだとしたら破壊の限りを尽くしたその効果は小さくはないと思う。
没後50年をたった11話で斬って捨てるところなんか乱歩など矮小な存在だったといわんばかりの皮肉なメッセージを込めているという印象を抱くには充分過ぎる。

冗談はさておき、没後50年と銘打つなら「二重面相の娘」の方がもう少し良い評価をできたかも知れない。


最後に小言を二つ。

アニメでは優秀(笑)な人間がわらわら登場するけれど、人を制御、管理する能力に長ける為の学問だけ存在しない、他の学問と両立しないなんて設定は既に矛盾になってるしもう無理がある。
それから、数式(笑)を多用するなら乱歩よりも久作が良いと思うのだけれど、I.G辺りならそれで売れる作品が作れるんじゃないかな。

投稿 : 2016/03/23
閲覧 : 322
サンキュー:

4

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