HG anime さんの感想・評価

5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

ずっと忘れられない美しい嘘

　5年前まではアニメに偏見を持っていたのを考えると、この4，5年間でアニメへの偏見をとりはらって理解と愛をよく培えたと思ってる。でもどうやら私はまだアニメというものを過小評価していたらしい。私は放送当時この作品をクラシック音楽とアニメというものがそう簡単にマッチングするわけないだろうと思ってスルーしていた。ここにきて日本だけでなく世界的に評価がとても高いので観てみたが、この作品がどうこうというレベルを超えて、日本の『アニメ』そのものへの評価すら変わった。物語、音楽、作画　どれをとっても圧倒的すぎる出来。正直言って未熟な私なんかはこの作品を評価する文章を書くことが恥ずかしいと思ってしまうくらい出来がいい。


　偉大な作曲家の残したマスターピースをどう演奏するのかってすごく難しいんでしょうね。今のところ私はクラシック音楽の中ではモーツァルトのセレナード第10番 Gran Partita が一番好きなんですが、その曲だけでも、演奏してる指揮者や交響楽団が違うCDを9枚持ってます。一番好きな盤は、サー・チャールズ・マッケラス指揮のものですね。指揮者や楽団が違うだけで全然印象が違ってくるんです。個性を出そうと思っている・いないに関わらず、個性が出て時にその曲を台無しにしてしまうこともある。そこらへんが難しいんでしょうね。作中でも過度な個性を嫌う権威主義の審査員がいますけど、素人ながら気持ちは分かります。でも、かをりが奏でる自由奔放な音色は美しい。ガチガチに楽譜に固められた公正が衝撃を受けるシーン、好きです。楽譜に忠実に弾くことってすごくすばらしい。でもかをりみたいな演奏も人肌のぬくもりがあって感動する。この葛藤を上手く描けている。
　先に言ってしまいますが、私この作品でティッシュ箱まるまる1つ使い切ったくらい泣きました(笑)　物語前半はうるっときそうなシーンもあったけどけど耐えてました。が、13話はもう吹っ切れたように大号泣してしまった。公正のお母さんの愛情が痛いほど伝わってきて涙が止まらなくて、ずっとほっぺの上にティッシュ常駐させてました＾＾；　人生の残り時間がない中で何を残せるかよく考えて、恨まれようとも心を鬼にして公正にありったけのやさしさを注ぎこんでたんですね。優しさって何か、考えなければならないと思った。自分への印象をよくするために人に優しくするなら、それは相手のためでなく自分のためなんだよね。ラフマニノフといえばソチ五輪開会式でも演奏されたピアノ協奏曲第2番があまりにも有名ですが、彼が編曲したこのピアノ版『愛の悲しみ』も実にいい曲。作中の物語ともすごくマッチングしていて素晴らしすぎる。かをりが意固地にこの曲を推したのもまた切ない。公正のお母さんとかをりが優しさと悲しさで公正を包んで成長させるこの13話は本当に言葉にならない。このあたりからの物語後半は泣きまくった。
　18話もすごいですね。公正と凪の競演ヤッバイ。公正かっこいいですね。
　最終話はもう・・・。かをりは昔から公正をみていたんですね。好きな人に直接は近づけなくて、その人の友達に恋をしていると見せかけて近づくというのは私経験あるからかをりの気持ちがすごくよく分かった。治って欲しかったけど・・・物語的には亡くなってしまったことで儚さが出て美しい。バッドエンドじゃないよね。さわやかなエンディングだった。


　原作は2011年から2015年2月まで連載。このアニメは2014年10月から2015年3月に放送。原作の完結をみこしたこのなめらかな製作でこれほどのアニメ作品がよく作れたな・・・。
　「・・・私もがんばろう。」　そう思える物語だった。今日の午後から夏休み突入した私、9月いっぱいまでのありあまる時間を無駄にせずにしっかり努力しようと改めて思えた。超神作だった。
2016/7/26

　
　追記（2016/7/27）
OVA観ました。本編最後のあの写真がどう撮られたかとか、登場人物の過去について描かれていましたね。正直重要度が低いOVAですが、本編観たならみんな観るでしょうね。はぁ～名残惜しい。全22話＋OVA1話、良かったなぁ～四月は君の嘘・・・(*´Д`)