「宇宙よりも遠い場所(TVアニメ動画)」

総合得点
93.4
感想・評価
2770
棚に入れた
9641
ランキング
12
★★★★★ 4.2 (2770)
物語
4.3
作画
4.1
声優
4.2
音楽
4.1
キャラ
4.2

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ネタバレ

ドリア戦記 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:今観てる

「俗物」の青春狂騒曲

簡単な感想です。

評判が良かったのですが手を付ける気にならず放置していました。
週末にやっと見たのですが、放送終了から1年以上経っているのに
Amazonプライムの再生が回線混雑で止まって苦労しました。
人気の高さが窺えます。

本題に入る前に少しよもやま話を。
あまり関係ないので畳みます。
{netabare}

色々な評価で書いているのですが
感情型の脚本家と理性型の脚本家というのはまあいます。
実際はきっぱり分かれないのですけどね。

物凄く乱暴で危ない分類なのですが人もまあ理性重視型と感情重視型があります。
それ自体は問題ではなくて、合う合わないはあっても共存しているもんです。
ただ誤解があるのですが、感情型の人が常に感情的とは限らない。
むしろ自身や人の感情を常に見つめているので感情のコントロールが上手い人が多い。
辻褄の合わないことを言っていても、困った行動を取っていても
気持ちの切り替えができる人が多いです。

逆に理性的な人の感情が暴発した時が一番怖い。感情のコントロール方法を知りませんから。
その中でもっとも怖いのが自身の怒りを外化して他人の過ちに転嫁する人です。
いわゆる品行方正な「正義マン」です。
自分の感情を見つめないで、理性的に他人を悪と見做して責める。
清廉潔白な人間より俗物の方がむしろ付き合いやすいとはよく言うのですが
そういう人間の怖さを体験した人ではないかと思います。
誰しも人間ですから薄皮一枚下には、腐った欲望が大なり小なりある。
その欲望の存在を認めうまく付き合える人間は実はあまり危険ではない。
暴発しませんから。
まあ俗物にも程があって金貨を菓子箱に入れる人間がいまだに関西に居てびっくり仰天しましたがw

私の同僚で別れ話が揉めたケースがあるのですが、
男性側が堅物な清廉潔白人間で女性が窮屈で浮気して逃げた。
その後、男性側の非難が凄まじかった。
まあ、最初は男に同情が集まったのですが、
非難だけでは飽きたらず周囲にその女性の行為を宣伝しだして大騒ぎになった。
まあ、本人は正しいと思ったことをみんなに「布教」したかったんでしょう。
悪人は罰せられるべきというね。しかしやり口が執拗で残酷過ぎた。
しかも決して追及をあきらめない。
その女性は私の部下だったので事態の収拾に一枚咬んだのですが
本当にヤバイのは、こういう感情をコントロールしようとしない人間だと思ったものです。
そもそも感情的な反応を今自分がしているとも思ってもいないでしょう。
相手を非難するのも理路整然としているので相手は逃げようがない。
しかし世の中常に一方が正しいとは限らないもんです。
このパターンも女性には女性の言い分があった。
同じ理性型でも自身で解決する一匹オオカミタイプや応用が利く柔軟なタイプはまだいいんです、
他人を巻き込んでの地獄になりませんから。
人間関係を理性的に処理する方法も知っている。
それ以来そういう人間に出くわしたらさっさと逃げることにしています。
私は濁った沼に棲む俗な鯉なので、俗物の方が楽です。


で、このお話に戻ります。
物凄く感情型のお話です。

しかも登場人物たちはザマー見ろ発言に見られる自分勝手な「俗物」か、
いい子で馬鹿なお人好しが何も考えずに相手のプランに乗っている。
シビアに見ればそうでしょう。
ただそれぞれの生い立ちを描いているのですね。
扱いにくい「脛に傷持つキャラ」になった理由がお話において提示される。
この設定を納得して受け入れるか入れないかでしょう。
私は過去が提示されれば受け入れられるタイプです。
なぜその人間がそのようなキャラになったのか提示されていれば基本的に受け入れられる。


ただお話の流れは感情の糸で紡がれ正直私でも乗りにくかった。
更にしんどかったのは、時折挟まれるしらせのアップでした。
アップよりは引きのカメラワークの方が好きなタイプなんですよ。
私はどちらかというとバランスを取ろうとしてドツボにはまって
「知に働けば角が立つ,情に棹させば流される」
と1人でもんもんとしている漱石のような馬鹿な人間を「カワイイ」と思うタチです。
めんどせくせえ奴だなと思いますがw


まあ、この作品や『永遠の0』のように観客や読み手の感情を強引に揺さぶって持って行くような作風は
昔から賛否が分かれます。
でも戯作はそもそもこんな作風ばかりですし、こういう作風は昔からあります。
「知に働けば角が立つ,情に棹させば流される」と理性と感情の狭間を
オロオロと右往左往するのが日本の近代文学なのでしょう。
この作品では登場人物の感情は爆発していますが、ヤバイ暴発ではないと思います。
脚本の流れは視聴者を感情の波に乗せるよう計算され尽くしています。
だから乗れないと余計に困るんですがね。

これも余談なのですがただ1つ不安なのは
何か「あいまいさ」というのが最近の作品から無くなりつつあることです。
昔、東西ドイツが統合する時に、フランスではドイツ帝国の復活を恐れる声が盛んに出た。
その時にある有名フランス女優が
「好きなドイツは2つある方がいい」
と言ったことが記憶に残ります。
直截に要望を言わず、相手を立てつつオブラートにくるんで言いたいことも言う
これが角が立たない文化的な方法なのですが
「あいまいさ」が好まれない世の中になっているなあと思います。


{/netabare}

投稿 : 2019/11/30
閲覧 : 194
サンキュー:

7

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