「メイドインアビス(TVアニメ動画)」

総合得点
92.5
感想・評価
2235
棚に入れた
9219
ランキング
19
★★★★★ 4.1 (2235)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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ネタバレ

くろゆき* さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 2.0 作画 : 4.5 声優 : 1.5 音楽 : 4.5 キャラ : 2.5 状態:観終わった

空を飛べぬ、壁も走れぬ。我々のような弱者は、取って食われるだけさ。弱者は弱者の道を選ぶほか無いのさ

子どもが大冒険に乗り出す物語は今まで数多く作られてきましたが本作品も一応はその係累に属します。
ただ、このアニメについては一般的な少年少女冒険ものと異なるシビアで過酷な内容や過激な表現が含まれており、そこが一番の特徴と言えるでしょう。
本作品への高い評価は総じてこの部分に対するもののようです。
しかしながら、本作品はまさにその特徴ゆえに少年少女冒険物語が持っていた美点を消し去り、非常に不快な作品に成り果てています。
また、ストーリー展開にも少なからぬ無理があると言えます。


本作品の舞台は様々な古代の遺物や不思議な生物が存在する大穴、アビス。多くの危険があるアビスを探検調査し貴重な遺物を持って帰る探窟家が活躍する世界で物語は展開されます。
アビスは単なる巨大洞窟ではなく人体に害をなす上昇負荷という現象が存在し、下にもぐれば潜るほどその危険が増したりとそのため苦しい状況であっても迂闊に引き返すことができません。
また、アビス内部の生態系も危険な生物だらけであり冒険の舞台としてはよく考え抜かれていると思いました。
そんな場所に挑む探窟家の精神も単に勇敢というよりもどこか狂気じみているようにも見え、確かに本作品は一風変わった冒険物語でした。

しかし、このシビアすぎる設定はストーリー展開上大きな問題を発生させていたと評せます。
まず、主人公のリコとレグがあまりにも力不足であり、悪い意味での単なる身の程知らずにしか見えない、リコは見習の探窟家にすぎず、能力も大したことがなく、性格も後先考えずに動く傾向がありました。
実際、彼女は失敗ばかりで相棒のレグに負担をかけまくっており「そらみたことか」と思うことが再三でした。
一方、ロボットのレグもリコの未熟さをカバーできるほどの圧倒的な力を有しているわけではなくロボットのくせに人間みたいな弱点が多すぎました。
この2人だけで行ったきりで引き返すこともできないアビスの底に挑むというのですから、話に無理がありすぎます。
しかも、その動機も母親がアビスの底で待っているかもしれないからというものであり、ろくな備えもなしに最大級に危険な場所にアタックするにしてはあまりにも薄弱。視聴している側から見れば「それでいいのか。あまりにも無謀」と言いたくなるレベルでした。
正直、このような2人が冒険に臨むとすれば頼れるメンバー(誠実で有能な大人)を後2〜3人パーティに追加してやっと許容できるかどうかというところでしょう。
また、リコの周囲のキャラクターもどうかしている。
半人前のリコがアビスの底を目指すなど単なる自殺行為にすぎないにもかかわらず、本気で止めようともしない。
仮に奇跡的に最深部までたどり着いても上昇負荷がある以上、もうリコは戻ってこられません、普通ならばぶん殴ってでも止めるべきでしょう。
リコの友人たちは彼女が死んでも構わないと思っていたのか?また、途中で出会ったハボルグが2人を連れ戻そうとしないのも不自然であり、この辺はキャラの性格設定がおかしくなっています。
と言ってもこの辺の問題はまだまだ序の口で本作品最大の問題はファンシーなキャラデザインとはまるで似つかわしくない惨たらしい描写にあります。

・上昇負荷で体中から血を吹き出すリコ
・アビスの獣タマウガチに毒を打ち込まれて膨れ上がるリコの腕
・レグがリコを救うために骨を砕いて腕を切り落とそうとする描写
・ナナチによる麻酔無しの手術等々

と、このようにリコ関連だけで気分が悪くなる描写が連発され、さらに極悪人のボンドルドによって行われていた子ども達を用いた人体実験の表現、特にミーティが上昇負荷で破壊され人ならざるものに変異していく様は、目をそむけたくなるほど惨いものでした。
これらの表現に関しては、この過酷さこそ本作品の白眉であり凡百の冒険物語と一線を画す素晴らしい部分であるとの評価もあります。
だが、これらは極めて悪趣味な描写であり、断じて好意的に評価できるものではありません。
延々と子どもが苦しむ姿を見せて何がやりたかったのか。正直、「児童加虐趣味」の産物のように思えます(なお、しばしば子どもをお仕置きで「裸吊り」にする話も不快だった、これも下劣な趣向にしか見えない)。
せめてボンドルドが完全に滅ぼされこれ以上の悲劇が食い止められたのならばまだしも、本作品ではそれすらなく(おまけに原作通りならボンドルドは完全に倒せない相手らしいのだが、だとすると子どもたちの無念は晴らされず、同じ悲劇がまた起きることになるだろう)視聴者はひたすら不快感とストレスをため込むことになります。


この作品は物語の途中で終わってしまいました。
現在、このような中途半端なラストを迎えるアニメは増える一方であり深夜枠の通弊となりつつありますが「またこのパターンか」とうんざりしてきます。
アニメとしてスタートした以上はアニメの枠内できちんと完結させるべきかと。(なお、オリジナル展開・結末も厭うべきではない)
本作品は確かに見るべき部分も少なくなかったですがこの作品の問題点は美点を覆滅して余りある。
冒険物語のくせに「ドキドキワクワク」ではなく「イライラムカムカ」を観る者に与えるというのでは話になりません。(この作品を観て「リコやレグみたいになりたい、あんな冒険をしてみたい」と誰が思うのか)

投稿 : 2020/08/18
閲覧 : 380
サンキュー:

10

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