「Sonny Boy サニーボーイ(TVアニメ動画)」

総合得点
69.8
感想・評価
284
棚に入れた
793
ランキング
1668
★★★★☆ 3.4 (284)
物語
3.3
作画
3.4
声優
3.5
音楽
3.5
キャラ
3.4

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ネタバレ

ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

「希」が主人公に残したもの、「希」の本当の意味、「瑞穂」の本当の役割

この作品は、全体を通して最後に静かな感動が待っています。
それは、漂流中の1話1話で、何かを判断できるものではないからです。
主人公も現実に戻った時「漂流は本当にあったのかな?」と言っています。
それだけ主人公にとっても漂流は、全部ひっくるめて「何か」だったからです。

自分は、最後の2話は、すばらしかったとしか言いようがありません。
それは、「希(のぞみ)」と言うヒロインの本当の存在理由が分かるからです。

現実に戻った先の希は主人公「長良(ながら)」のことを覚えていませんでした。
主人公自身もたとえ希がいたとしても別人の可能性があることは理解していました。
ただ、漂流中にあれだけ心が通じ合った仲なのにこれではあまりにも残酷です。
しかし、主人公の心の中には今まで持ったことが無い気持ちが芽生えていました。
それは、「なんとかなる、なんとかしよう、これからだ」と言う「希望」です。

漂流前の主人公は、これから先、何処へ行っていいか分かりませんでした。
人生に諦めを感じ、何事にも無関心で気力がなく、「ながら」で生きていました。
まるで針がぐるぐる回って示す方向が分からないコンパスのようです。

しかし、自分の進みたい方向を「希」と言うコンパスが指し示してくれたのです。
それは、「希」が最後に主人公に残した「希望」と言う「光」だったのです。
この瞬間、主人公の中のコンパスの針がピタリと方向を指し示して止まりました。
「希」が主人公に残したもの、それは「希望」を持つことだったのです。
希は、主人公のことを覚えていなくても、とても大切なものを残したのです。

考えてみれば、希は第1話から暗中模索の主人公に対して、問いかけていました。
「そう言うやつに限って結局どこにもいくところないの!」
「それとも、本当は、どこかに行きたいと思っている?」と。
そして、「今いる場所よりも眩しく見える場所があったら行ってみたいか?」
と尋ね、「暗闇」の中の1点の「光」を目指して駆けだしていたのでした。
この作品では、最初から最後まで、このテーマを貫き通していたのです。

自分は、戻った先で希が主人公のことを覚えていることを最初は期待しました。
でも、それではダメだと気づきました。なぜなら、簡単に結論が出てしまうと、
「まだ形のない未来に対して希望を持つ」ことの重みが失われてしまうからです。


幸いなことに、瑞穂が主人公のことを覚えていたのは、救いでした。
主人公は、漂流は実際にあったのかと最初は信じられませんでした。
つまり、暗闇の中をさまよっていた自分が、今は希望を見つけることができた、
と言うことが、本当に事実だったのかと疑っていたのです。
しかし、瑞穂が主人公を覚えていたので、それは事実だったと確信するのです。
同時に主人公の希への気持ちも本物だと確かめられたのです。
瑞穂は、主人公のそんな気持ちを「確定」するための観測者的役割だったのです。

このあたりは、たびたびアニメのネタになる「観測理論」です。
つまり、「誰かが観測することにより存在が確定する」と言うことです。
最初は主人公が観測者だったはずなのに、最後は自分が観測されるなんて面白い!


この作品は、哲学的なことを織り交ぜ一見分かり難いように思えます。
しかし、終わってみれば、伝えたいことは驚くほどシンプルだったと思います。

投稿 : 2021/10/04
閲覧 : 277
サンキュー:

29

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