「魔女の宅急便(アニメ映画)」

総合得点
89.2
感想・評価
1592
棚に入れた
11138
ランキング
87
★★★★☆ 4.0 (1592)
物語
4.1
作画
4.1
声優
3.8
音楽
4.2
キャラ
4.0

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ネタバレ

栞織 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

コミケ活動の頃の思い出と重なる

ジブリでもうひとつあげておきます。

本作は、劇場にかかった当時、コミケが盛り上がりだした頃で、私もはじめてコミケの出店したりした時期でした。そのため、宿泊施設から同人誌の宅配を頼んだ時、このキキの箒に乗った絵柄のクロネコヤマトの袋に入れてもらった思い出があります。もちろんクロネコヤマトがスポンサーだった本作なので、それはおかしな出来事ではなかったのですが、その一端だけで、この作品はそういったコミケ狂想曲に乗って作られたものと思われます。出てくるエピソードの数々が、コミケに行った人なら「あるある」と共感できるものばかりです。むろんこの話は、表向きは自立するためにパン屋で働く少女の物語ということになっています。従って、仕事がつらかったり、一人暮らしのアパートがこんな風だったという部分は確かにあります。しかしおそらくそれは本筋ではないのです。労働のつらさや自立の困難さを描くための物語ではありません。

それが端的にわかるのが、キキがウルスラと知り合って、女の子同士の「お泊り会」をし、そこで「血で飛ぶ」という、何やら創作の秘密めいた話をする部分です。そういった部分も含めて、はじめて二次創作に手を出し、同人で商売をはじめた少女が一山当てる話という風に私には見えます。しかも面白いのが、キキの母親もまた、同人少女であったという風に描かれていることです。これはその当時の社会では、母親たちの世代はそういう少女ではなかったという風に言われていました。しかし宮崎監督は、そういったものは連綿と受け継がれてきたものだ、という風に描いています。そこに断絶はないのだという風にしています。これは今から考えると画期的だったのです。

これも宮崎さんたちジブリの人たちが、もともとは少女小説の名作劇場を手掛けていたからだと思います。この手の小説は、元同人少女の海外の女性作家が書いたものである事が多いからです。それだからでしょうか、もちろんBLを全面的に後押ししているわけではありませんが、そういった年若いクリエイターに非常に優しいまなざしを向けて描いているように思います。コミケ列車で牛に足をなめられるような痴漢に会ったり、おのぼりさんで初めてのコミケで私を見て見てと有頂天になったり、これこそはと出したニシンのパイがこんなのいらないと言われたり、それらは創作活動をする人には等しく思い当たることばかりです。そういう風に誰もがキキであったあの時代を、コロナ禍の今、私は本作で懐かしく、甘酸っぱく思い出すのです。

投稿 : 2022/02/24
閲覧 : 187
サンキュー:

5

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