「ラーメン大好き小泉さん(TVアニメ動画)」

総合得点
74.9
感想・評価
569
棚に入れた
2287
ランキング
844
★★★★☆ 3.5 (569)
物語
3.3
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.4
キャラ
3.5

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

そうだ、今日のお昼はラーメンにしよう

OPの3Dラーメンに「おいおいグルメ作品なのに大丈夫か……?」と思ってしまうのだが、そういう要らぬ心配をかけるくらいに3Dを躊躇なく使う所がStudio五組なんだなとこのアニメで確信した。本編はばっちり手描きなのでご安心ください。

【ココがエロい:美少女が!頬染めて!ラーメンを完食!!】
タイトル通り、本作はラーメン大好きな小泉さん(フルネームは不明)が主人公。物静かで細面な美人であり、とてもラーメンなんて食べ物とは縁遠そうな彼女の頭の中は常にラーメンのことで頭がいっぱい───というギャップにやられてしまう良作だ。
普段は無愛想で周りから「冷たい」と評される彼女は一度ラーメンを前にすると変貌する。髪を結んで袖を捲り「いただきます」の挨拶をすればそこから必見。くわっと目を見開いて肉ダブル野菜増しにんにく増し油辛めの二郎系ラーメンを豪快に貪る女子高生を先ずは拝めるのである。
ヂュルルヂュル!と麺をすする音が妙に生々しい(笑) ちょうど本作の放映年あたりから「ヌードル・ハラスメント」なんて言葉が出てきて麺を音立ててすする行為を批判する風潮が生まれたが、そんな批判者に真っ向から喧嘩を売るように華奢な女性からズルズルと音を立たせていて笑ってしまう。
しかしまあ、ここは譲らない部分だろう。豪快な食事に相応しいズルズル音を立ててこそラーメンを扱うに値する“整合性”が生まれ、ラーメンの描写が際立つ所だ。ここで虚偽報道(フェイクニュース)に屈して無音にしたり音を控えめにしたりしていたら豪快な食事の画に合わず、本作の批判点になっていたに違いない(「すする音がうるさいから1話切り」なんて意見もあったけど……汗)。
そしてラーメンを食べる表情。熱くて美味しいラーメンを食べる間はクールな美少女の頬が常に朱に染まる。スープまで飲み干して完食した時の恍惚とした顔と「んはあっ……」と喘ぐような息継ぎがまるで愛人に手篭めにされたようなエロスを感じさせる。可愛らしく癖もないすっきりとしたキャラデザも相まって正に「眼福」と評せざるを得ない素晴らしい画となっていた。
いかにもラーメンを食べそうなキャラではなく「ラーメンなんて食べなさそうな美少女」が食べるからこそのギャップが一種のギャグにもなっており、本作は様々な方向性の魅力が詰まっている。

【ココがためになる:今日から使えるラーメン知識】
基本的には2~3本のショートストーリーで1話が構成されている本作。もちろんすべて「ラーメン」がテーマであるのだが家系やご当地・変わり種といったラーメンの「種類」だけでなくラーメンを食べる「お店」を主軸にも取り扱っている。
あの有名なラーメン店「天下一品」のこってりスープで延ばしたカルボナーラ風ラーメン、「蒙古湯麺 中本」の激辛ラーメンを美味しく食べるトッピングなど実際にあるお店の全面協力で作られたストーリーに親近感が湧く。ラーメン専門店のみならずコンビニやレストラン、回転寿司チェーン店にあるラーメンもピックアップすることで視聴者が今日のお昼から実践できるラーメンネタを披露してくれる。
そして小泉さんのラーメン愛はオタクではなく「マニア」の領域にある。バラエティ番組『沸騰ワード10』の人気コーナーの1角『取り憑かれた芸能人』に登場するようなキャラであり、学校の昼食は学食ラーメンがカップ麺だしラーメンのためなら試験をほぼすっぽかして旅行に行ってしまうという強者だ。そんな彼女のポイントを押さえた程好い解説──例えば一緒に食べる同級生のちょっとした疑問に答えるだけ──がとても聴き心地が良い。
訊いてもないのに過多な説明や食レポを始めてしまうグルメ作品もある中で本作は、小泉さんの「無感情な振る舞い」や「周りとは一歩距離を置く社交性」でシンプルな解説と感想を引き出しており、うるさくない。バラエティのような過剰な演出でラーメンが提供されることもなければ食事シーンが彩られることもない。飽くまでも小泉さんたちの日常の中で訪れる店で広がる自然なストーリー、その中で自然とラーメンの知識を得ることができる。

【他キャラ評】
大澤悠(おおさわ ゆう)
俗に言う「クレイジーサイコレズ」。個人的にこのテのキャラは『のんのんびより』の蛍ちゃんみたいに「どうしても好きな気持ちが押さえられないが、世間一般的にはおかしいことなので隠しておく」スタイルの娘の方が好みなので、周りをはばからずアタックを続けるこの娘はちょっとストライクゾーンには入ってこなかった。小泉さんに夢中なのも単なる容姿目当てみたいだし……。
ただネタとしては面白い。いつでもどこでも小泉さんの傍にいる執拗さと神出鬼没さは正にマンガチックであり、小泉さんの塩対応も自分の都合の良いように解釈してしまう思考は『ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD』のポジティブ版にも思えて笑える。
{netabare}第4話では料理上手の設定で店ラーメンより美味しそうな手作りラーメンを連続披露し、ボーイッシュな見た目に反した女子力の高さでギャップ狙いが図られていた。{/netabare}

中村美沙(なかむら みさ)
高橋潤(たかはし じゅん)
「悠が受け付けない」という人用の受け皿かな……。
ミサは辛党で自分の可愛さに自信過剰、潤はやや流されやすい委員長タイプというだけで後は普通。悠みたいにグイグイとは来ないお陰か、小泉さんのラーメン愛と解説に拍車がかかり悠に絡まれる時とはまた違った一面を見せてくれる。{netabare}とくに潤に天かすをあげる時の小泉さんの表情は多分、悠には一生引き出せないだろう(笑){/netabare}
本作は良くも悪くも「ラーメンを食べているだけ」と言われがちな作品であるが、やはり小泉さんと一緒にラーメンを食べる人が変わると若干程度だが話のテイストも変わるので、そこが視聴のモチベーションとなる。そういう意味では非常に貴重な立ち位置のキャラクターだと評する。


【総評】
飽きっぽい人、麺類のすすり音が苦手な人、そしてラーメンが嫌いな人には全く向かないが、それ以外の人に細やかな物語の楽しみと「ラーメンへの食欲」を与えてくれる良作だ。
内容自体はただラーメンを食べているだけ。そこに壮大なバックストーリーや青春物語があるわけではないが、平凡な日常の中で「ラーメン好きな女の子」に様々なキャラクターが影響され、釣られるようにラーメンを食す。そんな「ミーム」現象のようなオチで口角が上がると同時にラーメンという食べ物の底知れぬパワーをも感じさせてくれる。
何しろ食欲不振だった娘がラーメンで食欲を取り戻したり、ダイエット中だった筈の娘が背脂ラーメンの虜になってすっかりそのことを忘れてしまったりするのだ。流石に「いやそうはならんやろ」とツッコみたくなるところだが、1度でも家系や背脂チャッチャ系を食べたことがある人なら美味しいラーメンに魔性の魅力が備わっていることは理解しており、そこに激しく共感しツッコミの手を下ろしてしまうだろう。
作画・音楽も良好だ。アニメーション制作はStudio五組×AXsiZで共同制作。まだこれといった“ウリ”は持ててない会社ではあるが本作ではラーメンやキャラクターの作画を頑張ってくれた。
音楽は主題歌・BGMともに印象的で、とくに各エピソードの間に挟まれるアイキャッチで流れる「ララララーメン大好き、小泉さん♪」というジングルが妙に頭に残る(笑)  あとEDの『ラーメンホリック』は歌詞のフレーズが全てラーメン関連、映像の前半は即席麺のコマーシャルをパロディしているという面白さもあり、毎話の楽しみとなっていた。
嘗ては『ゆるキャン』と共に「木曜日の飯テロタイム」を築いていたと言われるだけあって、観ている最中はお腹をグーグー鳴らしてしまうある意味では問題作。視聴の際は是非、戸棚に美味しいカップ麺を備蓄してからご覧になっていただきたい。

投稿 : 2022/04/02
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サンキュー:

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