「バブル(アニメ映画)」

総合得点
67.8
感想・評価
81
棚に入れた
274
ランキング
2258
★★★★☆ 3.6 (81)
物語
3.1
作画
4.4
声優
3.3
音楽
3.8
キャラ
3.4

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ネタバレ

ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

このまま「じゃあね」で終わるの?この宇宙が紡ぐめぐりあわせは、いつかきっと「またね」につながるよ・・・。

劇場で観ました。
まず、エンターテインメントとして、純粋に面白かったです。
最初から最後までテンポよくてハイテンションなストーリー。
それをきれいな映像で繋ぎ 、おしゃれでビートが効いた曲で盛り上げます。
ただ観ているだけでも、とても楽しい作品でした。

この物語は、空から突如降り注いだ泡「バブル」により重力が壊れた東京が舞台です。
この「バブル」とは、いったい何でしょうか?
公式ホームページには、「未知の生態」とだけあります。
この物語の中でも、それ以上のことについては、具体的には語られません。
しかし、圧巻の映像美が情報不足を補って余りあるものでした。


■「未知との遭遇」の音階言語と「バブル」のハミング
{netabare}
この作品を観ていて真っ先に思い浮かぶのは映画『未知との遭遇』です。
スティーヴン・スピルバーグ監督の人類と宇宙人のコンタクトを描いた映画です。

『未知との遭遇』のあらすじを少しだけ
{netabare}
世界各地で不思議な現象が発生します。
それと同時に「5音」からなる不思議な歌が聞こえるようになります。
人々は、その不思議な音に誘われているように感じました。
そこで、これはなんらかの音階言語なのではと解析を進めます。
その結果、地球上の経緯度だと分かります。
そして、その場所を訪れると、巨大な宇宙船が現れます。
人々は、音階言語で交信を試みます。
すると宇宙船からも音が発信され、一つの音楽となり鳴り響きます。
交信に成功したのです。
そして、ついに人類は、宇宙船から現れた宇宙人に会うことになるのです。
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この「バブル」でも、同様に音階言語が使われています。
これは「ハミング」と呼ばれ、「4音」で構成されているそうです。
この物語では、主人公がこの音階の鳴る方に誘われていきます。
そして、「バブル」と遭遇するのです。

未知の生態とのコンタクトに音階言語を使うのは夢があっていいなと思いました。
{/netabare}


■「にんぎょ姫」
{netabare}
この物語のモチーフになっているのがアンデルセンの「にんぎょ姫」です。
公式ホームページにも翻訳版がフルに掲載されています。

この物語では、モチーフと言いつつ、実は、大切な部分はそのままです。
それもそのはずです。
物語の中でもこの「にんぎょ姫」を語りつつストーリーが進行するからです。

ハミングに誘われた主人公が遭遇した「バブル」は、少女にその姿を変えます。
少女の名前は、「ウタ」。
そして、主人公の名前は、「ヒビキ」。

「ウタ」が人類とコンタクトをとるのは初めてです。
最初は、言葉を話すことはできません。
でも、本を読んでもらい、言葉をおぼえ、話せるようになります。
その時に読んでもらった本が「にんぎょ姫」でした。
「ウタ」は、それがまるで自分のことのように思えるようになります。
そして、主人公を王子様に重ね、彼に恋をし、彼の世界を愛すると決めたのです。

しかし、「にんぎょ姫」は、ハッピーエンドではありません。

「にんぎょ姫」のラストは以下の語りかけで終わります。
{netabare}
「「にんぎょ姫、あなたの美しい心は、さまざまな苦しむ人々をいやし、
 幸せをもたらすでしょう。
 そして、あなたは天の門をくぐり、三百年の命のかわりに、
 永遠の命を手に入れるのです。」
 にんぎょ姫の魂は、終わりのない大きな愛となり、
 空高くのぼっていったのだった。」
{/netabare}

そして、この物語もまた同じ結末を迎えるのです。
「バブル」とは、本来、人類に危害を与える存在、いわば敵です。
しかし、「ウタ」は、主人公とコンタクトをとったことによりその考えが変わります。
「ヒビキ」とその世界を守りたいと思ったのです。

もちろん、「ウタ」は、「にんぎょ姫」のラストを知っています。
それでも、覚悟を決め、自分を犠牲にすることにより、この世界を守ったのです。

結構、ウルウルきちゃいました・・・。
{/netabare}


■「じゃあね、またね。」と「崩壊と再生」
{netabare}
「じゃあね、またね。」は、エンディングテーマ曲です。
「崩壊と再生」は、この物語のテーマです。

「ウタ」は、最後、泡に戻り消えてなくなりました。
もう主人公には、会うことはできないのでしょうか・・・。
このまま「じゃあね」で終わってしまうのでしょうか?
そして、「またね」は、永遠にやってこないのでしょうか?

ここからがこの物語の面白いところです。
他のどの物語でも描かれていないスケールで「またね」を語ります。

残念ながら「ウタ」と「ヒビキ」は、この世界で会うことは叶いません。
でも、また会うことができるのです。

それは、「来世」でしょうか?
そもそも、「ウタ」は、人類とは違う未知の生命体。
人間にしか通用しない輪廻思想なんて持っていません。
もっと、科学的でスケールが大きいことです。

私たち人類はおろか、この宇宙空間内の物質は、元素で構成されています。
また、この宇宙では、ビッグバン以降、「崩壊と再生」を繰り返しています。
その中で、私たちの身体を作る元素は何度も集まり、星となります。
そして、燃え尽きては収縮し、放出され、また、繰り返します。
それは、まるで「泡」を作って混ざり合い、やがて分かれるようにです。
それこそ、「ウタ」が手を突っ込んだ鍋の中で泡がブクブク煮えたぎるお湯のよう。

「ウタ」と「ヒビキ」は、別の星の生命体です。
でも、同じ宇宙にいることには変わりありません。
二人の身体が朽ちたとしても・・・、
その元素は、「崩壊と再生」を繰り返す中で再び巡り合える可能性があるのです。


そればかりではありません。
時間や空間も元素と同様にビックバンで生まれたと考えられています。
絶対的なものではないので、時間と空間は、飛び越えられるものであるかもしれません。
また、この宇宙の過去、現在、未来のすべての出来事は、
「波動」として、ホログラム的な構造で量子真空上に保存されている説もあります。
「魔法少女まどか☆マギカ」の最終回で「まどか」が語っていたことです。
もし、この説が正しければ、前世の記憶や生まれ変わり(輪廻)、タイムリープ、
シンクロニシティ、集合的無意識等も説明できるかもしれませんよね。

今回、初めて出会った二人だって、昔どこかで会っているかもしれません。
それは、元素レベルかもしれません。
もしくは、量子真空上の過去、現在、未来の交差点かもしれません。
「ハミング」がどこか懐かしく感じるのは、そこに理由があるのかもしれません。
二人の出会いは「未知との遭遇」ではなく、すでに出会っていたのかもしれません。

いずれにせよ、この宇宙にいる限りは、再び巡り合うことができる可能性があります。
「じゃあね」と「またね」がつながるのです。
夢がありますよね。
{/netabare}


■まとめ

この物語のラストは、「にんぎょ姫」のラストと同じです。
そして、これは、「魔法少女まどか☆マギカ」の最終回に近いものがあります。
どちらも虚淵玄さんが脚本されているので根底にあるものは同じなのだと思います。

確かに、この物語は、内容的には少し浅い部分があるのは否めません。
でも、それは、あくまでも表面的な部分のことです。
それよりも、この物語の裏に広がる世界観は、それこそ宇宙のように広く奥深いです。

「めぐりあわせ」の裏には、宇宙がある。
そして、過去、現在、未来の時間の流れの中でめぐりめぐって、まためぐりあう、
そんな、スケールの大きさを感じさてくれる作品でした。

「まどマギ」のような思想が好きな方は、きっとこの物語にも共感できるでしょう。
この宇宙に思いを巡らせていると、なぜか懐かしさも感じる、そんな物語でした。

投稿 : 2022/05/25
閲覧 : 219
サンキュー:

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