「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊-ゴーストインザシェル(アニメ映画)」

総合得点
86.4
感想・評価
1095
棚に入れた
6497
ランキング
198
★★★★★ 4.2 (1095)
物語
4.2
作画
4.2
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

SFなら本作、エンタメならSACですね。機械人形破壊リョナ性癖?

 もともと原作はちゃんと日本だし登場人物がもっと明るいです。素子ももう少しエロかった気がします。押井守が香港好きなのか、サイバーパンク的な演出なのか知りませんが、明らかに香港っぽい街並みにも公安9課の設定からいって、今見ても違和感はあります。映像的な出来はさておいて。

 初見のときは正直に申し上げて、面白くなかったです。私が望むSFアニメあるいは映画としてのエンタメ性や明るさが不足していたからです。トランスフォーマーを見るつもりがブレードランナーだった。スターウォーズを見るつもりがガタカだったという感じです。

 その後、作家性がデオドラントされ、映像も見やすくなったTVシリーズのSACスタンドアローンコンプレックスを見て、こういうのを見たかったんだよ、と思ったものです。
 私は本作については、あれ期待と違う?→アメリカでの評価→日本での評価→なるほど、もう1度見てみるか、で再評価したクチです。

 その時点ではSF通気取りだったので、もともと難解というか読み下すのが面倒な士郎正宗の原作、かなりサブカルよりのオタクコンテンツを上手くSF映画に仕立てたなあ、という印象です。 
 現在では更に、アニメーションの見方が変化してきて、もちろん評価が変わっています。SF的には良い方に、押井的にはちょっと押井臭の押し付けがましさで悪いほうにです。

 本作をSFとして評価するなら、人形遣い=ネットの世界の情報を素子(そし)として考えて、自然発生的に生まれたというSF的に見ることもできるし、集合的無意識としてユング的なオカルトを見てもいいと思います。
 その前提となる世界感はSFの知識やAIの社会になってその秀逸性が更に理解できるようになりました。官僚や警察・軍の組織まで相当緻密にデザインされていると思います。

 以前サイバーパンクと言えば、ブレードランナー的なディストピアにおける人間性とか反社会性とかAIの人間性の獲得などでした。
 膨大な情報のつながり=ネットワークに新たな世界を見出したのが素晴らしかったですね。同時期にエヴァに人類補完計画も登場してきますので、それこそ共時性なんでしょうか。ウインドウズ95とかニフティとか新しいツールからの未来を想像=創造力はすごいと思います。シリアルエクスペリメントレインなどの後継を生んだ、秀逸な視点だったと思います。

 ブレードランナー→本作あるいはSAC→マトリックスという日米の映像作家がSF的に影響を与え合いながら発展した歴史も面白いです。

 ただ、草薙素子の内面が見て取れなくはないですが、説明不足すぎて感情移入できませんでした。バトーに乗るのが正しいんでしょうか。ですが、バトーって押井守の分身な気がしてちょっと彼に乗るのが嫌でした。ですのでちょっと距離を置かざるを得ないのが、楽しめない理由にもなっています。


 映像としては、作家性というよりも性癖が匂いますね。香港フェチはブレードランナーの影響があるのでサイバーパンクといえば香港なのはいいでしょう。ただ、少々過度なグロシーンやエロシーンを素子(もとこ)の義体をいいことにやり散らかしているのがちょっと性癖かなあ、と。イノセンスでも同じような感じでしたね。機械人形破壊リョナ趣味?あまりやりすぎると作家のオナ〇ーのオカズを見せられている気がしてきます。

 あと、あの犬は作家性というより押井守ブランドの乱用の気がしますので、犬出し過ぎ問題はちょっと控えて欲しいところです。
 バトーが押井なのかなあ、とみているといつも思います。素子に憧れていても自分のものに出来ない。いつも素子を探して彷徨っている。しょうがないから犬と酒飲んでねるか、みたいな。

 ちょっとセリフがカッコつけすぎなのも今なら攻殻機動隊芸ですけど、初見はちょっと恥ずかしかったですね。

 総評すると、1995年という時代の映像としての新しさは相当なものでしょう。今見てもかなり丁寧で迫力がある作画です。香港の作り込みはすごいし、メカの書き込みも相当です。アクションシーンも迫力がありました。
 SF視点は原作者のものだったにせよ、映像化したところと翻訳して2時間の映画にまとめた脚本は秀逸だと思います。

 ただ、エンタメ性でいえば圧倒的にSACです。SACになかなか手が出なかったのは正直本作の初見の印象が悪かったせいが大きいです。再評価はできますけど、楽しむならTVシリーズだなあ。

投稿 : 2022/05/28
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サンキュー:

13

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