「カイバ(TVアニメ動画)」

総合得点
67.7
感想・評価
219
棚に入れた
1019
ランキング
2279
★★★★☆ 3.9 (219)
物語
4.0
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.9
キャラ
3.8

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 2.0 状態:観終わった

昭和風なSFアニメ。

【概要】

アニメーション制作:マッドハウス
2008年4月10日 - 7月24日に放映された全12話のTVアニメ。

監督は、湯浅政明。

【あらすじ】

記憶がデータ化され、古い身体から記憶を取り出し新しい身体に記憶を移し替えたり、
嫌な記憶を削除して、本人が経験してない別の誰かの楽しい記憶をダウンロードできたりする世界。
身体や記憶は高額なので買えるのは上流階級に限られていて、
貧しい者は生きていくために逆に自分や家族の身体や記憶を売って金銭に換えていた。
社会がそうなっているので、違法な売買、身体や記憶の盗難などの犯罪が横行し、
この世界は荒んで停滞していた。

ある時、上半身が胸に物理的に穴の空いた少年のカイバが目を覚ますと、
そこは壁が破壊された部屋で、彼は記憶を失っていた。
自分の首にかかっているロケットを開くと、そこには一人の少女の写真があった。

戦闘機械に襲われたのを二本足で走る鳥に助けられたカイバは、
ポポという少年の助言でパームとう女性に身体を売却し、
自身は簡易型ボディの「カバ」に記憶を移し替えて、宇宙船に密航をした。

カイバは記憶を失ったまま、身体を乗り換えながら宇宙を旅して、
いろんな人々に出会って、自分の記憶を取り戻そうとするのだった。

【感想】

クリエイターの理想ってなんでしょうね。

「今のアニメ業界はオタクのいうことを聞きすぎた過剰品質・演出過剰。
クリエイターは自分の好きなものを誰からも縛られずに自由に作って一流だ!」

みたいなことがtwitterで目に入ったのですが、実際にそう主張する人が作ったアニメを見てると、
昔のギャルゲーのバストアップ会話シーンみたいなのがずっと続いているCGアニメでして、
単に素材を口パク中心に動かしているだけで、まともにアニメーションしてない。
よそでは、アイドルアニメのライブシーンやロボットアニメのアクションシーンや、
背景の素材作りなどでCGで実績を出している作品もあり、CGアニメも使う人次第です。

かたや、主張している人は単純に楽をするためにCGを使っていて、
作画にせよ演出にせよ人に評価されるだけの努力をしていない。
自分が持たないものを人が持ってて世の中に評価されていることへの妬ましさでしょうか?

具体的に言うと『ファンタスティック・プリズン』て2022年のアニメなんですけどね。

他にも、
「今アニメは『絵』の綺麗さばかりを追いかけ、『演出』の力を軽んじる方向にあります。」
と主張してアニメ演出塾の生徒を募集した6年前まで業界にいたアニメ演出家がいるのですが、
希望者が一人も来ませんでした。実際にその人の演出が評価されていないという事でしょう。

これらの話は、クリエイターを名乗りながら声高に主張する人ほど手より先に口を動かす人たち。
御託を並べるのは良いですが、実績や見本を見せて自説の正しさをで証明する前に、
自分の理想と違うものを言葉で脱価値化しても、その人の地位があがるわけではないということです。

視聴者も、理屈や能書きに賛同するためにアニメを見てるのではなく、
どんな技法であれ見てて実力が感じられて面白いかどうかが重要でして、
ギミックの効いた紙芝居もあれば、映像や美術の表現力で人の心を伝える方法もあるわけで、
その正解にたどり着くルートがいくらでもあって良いわけでして、
あとは受け手である視聴者の好みの問題でしょう。
また、時代とともに視聴者の好みも変わり続けます。
90年代の美少女アニメが今見れば巨眼であるように、
今あるアニメだって何十年も経てば後年の人々に違った受け取られ方をするかもしれません。

その時代の流れの中で、自分のやりかたを通し続けている湯浅政明氏は、
クリエイター志望・クリエイターに幻想を持つ人たちの理想を叶えたヒーローかもしれませんね。
若手時には亜細亜堂に独特のセンスが認められたのか、湯浅氏は個性を矯正しない方向で起用されて、
そのまま今どきでは珍しく作品に自分の色を強烈に出す、尖ったままのアニメ監督になってしまった。
マッドハウスの元代表で名プロデューサーの丸山正雄氏の眼鏡にかなったこともあって、
自由にアニメを作ることが出来たのも幸運だったかもしれませんね。

そんな湯浅氏は時代時代の流行を取り入れること無く、独自のアニメーションを作っているのが、
異才であるようにみえるのですが、その根本にあるのは徹底した懐古趣味ではないでしょうか?
『ケモノヅメ』では昭和のプロレスアニメや妖怪アニメらの影響が見られるように、
『カイバ』では作画に手塚っぽさや赤塚っぽさが、
そして、ストーリーの流れとしては『銀河鉄道999』のオマージュ的なものが見られます。

湯浅氏の個性や感性は、彼の少年時代の楽しかった漫画やアニメの記憶の集合体をベースに、
自分なりに咀嚼して昇華したものであり、
彼の好みには今どきのアニメ好きが喜ぶ要素が含まれていないでしょう。

アニメ作りでも、原作サイドからの縛りが機能していた『ピンポン』以外は、
多くが自分の好みだけで作っているくせに、やたら他人からの評価を気にしていますよね、
小松左京さんの『日本沈没』を読んで原作のテーマ性を理解せずに、
パニック災害モノとして映像化した『日本沈没2020』が大不評に終わったことへの憤慨。
見るひとの気持ちを理解したり自分の作品を客観視することが不可能なのでしょう。
その気質だからこそ異質なアニメを作り続けて評価されることもあればコケることもある。

この『カイバ』もSF作品としてはそれなりには面白かったものの、
登場人物の感情面では特に良いところのない作品でした。

作中で美少女キャラ設定のクロニコという健気な女の子がいて、
業者に騙されて記憶を抜き取られて捨てられて、
本来の中身を失って抜け殻となったクロニコの身体にカイバの記憶を入れて、
カイバinクロニコが太っちょの悪徳保安官のバニラと旅をするわけですよ。
バニラにも悪徳保安官をやってる切実な理由あるのですが、
中身が男のカイバであるクロニコに一目惚れして別人のように猫なで声でデレデレして、
塩対応されているのにつきまとい続けて、外面しかみてないわけね。
最後は追い詰めされて逃げられない大ピンチにバニラが自分の生命を捨てて、
中身がカイバであることをしらずにクロニコ(カイバ)の身体から記憶だけ抜き出して転送して、
抜け殻となったクロニコの身体と心中みたいな最後でして、

夢や未来、自分の身を捨てて愛に殉じた男のいい話風に感動的な音楽と演出で盛り上げてるのですが、
魂と記憶を騙されて捨てられた挙げ句に残った身体も、知らないオッサンに熱いキスさせられて、
最後は爆散したクロニコの扱いがストーリーの小道具に過ぎなかったのが凄く残酷で可哀想過ぎて、
おじさん目線の主観的なこういう話なんだなと思うと、ドン引きで感動なんて全然なくて、
これが素晴らしい物語と思えず、最後までそれが抜けきれませんでしたね。


自分がこの作品に対する読解力があるとは思いませんし、
ただ感じたことを書いただけですが、これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2022/06/01
閲覧 : 241
サンキュー:

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