STONE さんの感想・評価

3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

設定を越える、ヒロインの魅力

　原作は未読。
　12人の未来日記所有者の中から一人の勝者を選ぶというバトルロイヤル的ルールで
あるが、あまり日記所有者同士が多局面で戦うような展開は少なく、主人公である1st 天野
雪輝と2nd 我妻由乃が、他の日記所有者と順次戦っていくような流れが強かった。
　主人公視点を中心とした演出のため、それはそれでいいんだけど、1st、もしくは2ndが
積極的に狙われるような理由、例えば1st、2ndを倒すことで得られるアドバンテージや、
他の日記所有者にはないウィークポイントなどが欲しかったかな。
　一応、他の日記所有者の正体が分からない中、序盤の3rdとの戦いが元で1stの正体が
知られ、そこから連鎖的に1stの正体が分かってしまうような流れにはなっているみたい
だけど、展開によっては強引な感じもあったし。

　ゲーム的にはデスゲーム(殺し合い)ということで、規制が入っているとはいえ、
それなりにグロい描写もあり。
　日記(携帯電話など)自体を破壊すると、日記所有者が消えるので、マイルドな描写も
できたのだろうが、我妻由乃などは直接所有者を殺傷するのがお好みみたいで(笑)、
結果的に彼女関係が一番グロいシーンが多いかなと。
　作画に関してグロ以外だと、露骨なファンサービス描写が少なかったようだが、逆に
生々しさを感じさせるようなエロ描写が結構あったような印象。キスシーンなど離れ際に
唾液が糸を引くような描写とか。あとやけに女子が用を足すシーンも多かったような。

　バトル自体に関しては、未来日記による予知能力以外の特殊能力はないため、日記
所有者が未来を知ることで行動を変えていくという頭脳戦の要素が強くなる。そのため
非力な者でも駆け引きによっては充分に勝機があり、この辺が通常の能力バトルものとは
ひと味違う面白さがあった。
　もっともリアリティがあるかというと、それは別モノといった感じで、中学生である
1stと2ndがカーチェイスを繰り広げたり、どうやって手に入れたのかマシンガンを
駆使したり。小学生にも満たない5thが毒薬や毒ガスを持っていたりと、かなりハチャ
メチャ。この辺はエンターテイメントとしてのご愛敬ということで。

　ゲームシステムもそれなりに個性的であるが、それ以上にこの作品を面白くしたのは
メインヒロインの我妻由乃。いわゆるヤンデレキャラだが、ここまでやってくれるとは、
といった感じ。
　何の躊躇もなく他人を裏切り、殺すという狂気に満ちた部分と、いかにも少女らしい
純情な部分の二面性が見られるが、いずれも根底には雪輝への愛があり、そういう部分で
まったくぶれていないキャラ。
　また、由乃は単に病んでいるだけでなく、色々と謎も多いキャラであるため、ストーリー
展開は「ゲームの行方」と「彼女の謎」という二重構造になり、よりドラマとしての
面白さが増していた。
　ためらいなく殺人を犯す由乃に対して、雪輝はなかなか腹をくくれないキャラ。デス
ゲームである以上、ストーリー的にはやはり後ろ向きばかりだとイライラさせられる。
　かと言って、あまりにも嬉々として殺人に興じるようなキャラは視聴者としては共感を
抱きにくい。　
　その点、コンビを組むことになった二人は、由乃が積極的なゲームプレイヤーの役割を、
雪耀が人間の良心的部分を担っており、設定上もうまくできたコンビといった印象だった。

　キャラに関しては、主人公が中学生だと、競争者も同じような年齢や身分であることが、
他作品だと割と多いが、この作品の日記所有者は老若男女多士済々といった感じで、
なかなか個性的なメンツが楽しかった。
　序盤に関しては由乃の印象が強く、彼女の独壇場といった感じだったが、後半になると
9thの雨流みねねの存在感が増してくる。登場時こそ冷酷なテロリストといった感じの存在
だったが、元々持っていた面倒見の良さからか、雪耀を助けるいい人といった立ち位置に
シフトチェンジ。由乃とは異なる魅力を見せてくれた。

　あと日記所有者ではないが秋瀬或も印象的。なんか「新世紀エヴァンゲリオン」の渚
カヲルを思い出すが(笑)。
　当初、雪耀が積極的にゲームに参加する気がないため、主人公でありながら第三者的
視点も兼ねていたが、後半になり雪耀自身が積極的にゲームに参加するようになると、秋瀬
或が代わって第三者的視点を担っていたように思える。そういった演出的部分でも重要
だったような感じ。
　実際、設定上もデウスの作った観測者だったみたいだし。