「装甲騎兵ボトムズ(TVアニメ動画)」

総合得点
73.7
感想・評価
206
棚に入れた
1136
ランキング
967
★★★★☆ 3.8 (206)
物語
4.0
作画
3.5
声優
3.8
音楽
3.9
キャラ
4.0

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

タイトルなし

リアルロボット、ここに極まれり。
そんな感じのする作品でした。ロボットが世界観の前面に押し出されているのではなく、あくまでも世界観に溶け込んでいる。(埋没しているワケではない)
リアルロボットなので当然、ロボットに対する認識や扱いはリアル。キリコなんてとくにそれが顕著で、ATを兵器の一つとしてしか認識していないし、ロボットは現地調達が基本とか、普通のロボットアニメならまず考えられない。
ついでに言えば、現実的に考えて一人一人に合せた調整なんてしてらんねーよね。

さて、では本作の良かった点をば。

本作の魅力を語るうえでまず挙がってくるのがこれ。素晴らしいの一言に尽きる。
ボトムズの世界は、非常に過酷だ。一日を生きるだけで精いっぱいなところも少なくない。そんな中で結ばれる人間関係は、損得勘定が当たり前。自分に利があるか、相手に価値があるか、それが行動原理の大半を占める。
キリコを取り巻く人間も、それは例外ではない。

ゴウト、バニラ、ココナ。ウドで出会ったこの三人とも、最初はキリコにそれぞれ異なる価値を見出して関わって来たんだもの。
だけどこれ以上に信じられる関係もない。なんたって、価値有る限り、その人との関係は約束されたも同然なのだから。
キリコには、命を賭けるだけの価値がある。そう踏んだからこそ、ゴウトもバニラもココナも、キリコを幾度となく助けてきたんだ。
その下心を隠そうともしないところがまた、人間臭くて魅力的だ。偶然出会ってなんだかんだで信頼関係を築くのもいいけど、互いを利用する関係から信用する関係に変わって最後は信頼関係になる。こうやって段階を踏んでいったのが、観ていて気持ち良いところだったなぁ。

ウド編だけでなく、クメン王国編でもそれは健在で、キデーラは最初こそ嫌味なヤツだったけど、キリコが口だけじゃない存在と分かってからは良き戦友としての一面も魅せてくる。
親交を重ねてみて、初めてみえてくるキャラの魅力というのも、本作の美点だ。
下心や打算だけでなく、貸し借りといった義理で動くときもある。「貸し一つだ」や「借りが出来ちまったな」といった科白は印象的で、とくにキデーラが死の間際に言った「へへっ、結局、借りは返せず仕舞いだったなぁ!」はグッとくる。
他にも、カン・ユーのようないっそ可愛いとさえ思えてくるウザさ、双子オネェの無能っぷり、ロッチナの胡散臭さ。

こういった、キャラクターから感じるむせるような人間臭さは、今観てもまったく薄まるどころかより一層深みを増していってる気さえしてくる。
今のアニメのキャラが悪いとは言わないけど、今の作品にはない魅力なんだよ。


本作のロボットはガンダム以上に地味だ。ビーム兵器はなく、ただの銃火器のみ。もちろん、サーベルだってありゃしない。
しかし、それでも本作の戦闘シーンは迫力満点。
まず、随所に見られるロボットへの拘り。降下してきた時に膝で衝撃を緩和させる1アクション、手でぶん殴ると空になった薬莢が飛び出したり、頭部のカメラが絞られるところとか、ロボット感を表す数々の表現に胸躍る。

そして、肝心の戦闘シーンだが、これが凄い。なにが凄いって、その規模だ。
一度の戦闘で破壊されるATの数が凄い。地上戦がメインの為か、ATに当たらずとも常になにかが爆発するので、画面内は常にド派手。銃撃音が鳴りやまない。
破壊のカタルシスとでも言うのか、爆発の中を駆け巡るATの姿は、ビジュアルからは想像もつかないほどのカッコ良さがある。
加えて、本作は明確な章分けをされており、章の最後には大規模な戦闘が起こっている。その最終戦なんてもう、「これでもか!」ってぐらい爆発するんだ。量より質ではなく、質ではなく量の戦いは、単純な迫力に満ち溢れており、見応えは抜群だ。

これが宇宙戦になると今度は、被弾する対象がATしかないからか、一度の戦闘に登場する機体数が地上戦以上になる。
サンサ編では1話の中で四十機ものATが破壊されてるんだぜ。ここまで破壊ありきのロボットアニメって、そうそうないよなぁ。
本作は、「リアルロボットだから」と言い訳せずに戦闘シーンもしっかり工夫している。


ここからは悪い点。といっても僕が言えるのはこの一点のみ。
クエント編が面白くなかった。この章では、それまでと一転してキャラドラマではなく、ストーリーが主体となった。
そのせいか、キャラのドラマは薄味であり、戦闘シーンもオマケみたいな扱いとなってしまっている。僕が感じた本作の魅力がこの二点だった為、非常に悔やまれる。

これまで魅せられてきたキリコの凄さは「異能者だから」の一言で済むレベルになってしまったのもそうなのだけど、色々と説明不足が粗が目立つ。
ワイズマンが後継者を望む理由は不明だし、結局、秘密結社の活動目的は不透明なままだったし、そもそもワイズマンの関わること自体がポッと出の印象を拭えないんだ。
それでも今まではあくまでキャラドラマがメインだったから多少の粗も気にならなかったんだけど、ストーリー主体となるとそうも言っていられない。

支配への欲求よりも支配への反発を選んでワイズマンを破壊して世界を混沌にしたキリコが、ギルガメスとバララントの戦争には参加せずに安息の地を求めるというのも腑に落ちない。
安息の地が戦場にしかなかったからこそ彼は苦しんでいたはずなのに、どういう心境の変化があったのかが分からない。
他にも、「フィアナを必ず人間にしてやる」というキリコの決意はいつの間にか無くなってるし、クエント編に入ってからフィアナは「キリコ」と叫ぶか呟くかだけのキャラと化してしまったりと、なんだか色々と残念だった。
ワイズマンが世界を裏から支配して異能者の覚醒を待っていたというなら、例えばどこかで【ATはみんな当たり前のように作ってるけど、そもそも誰がいつ考案したのか明らかにされていない】ぐらいの設定があれば、また違ったんだけどなぁ。

投稿 : 2015/08/15
閲覧 : 311

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