「機動警察パトレイバー2 the Movie(アニメ映画)」

総合得点
78.6
感想・評価
353
棚に入れた
1816
ランキング
534
★★★★★ 4.2 (353)
物語
4.3
作画
4.3
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.2

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ネタバレ

雷撃隊 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

わが青春の中二病アニメ

この映画も「パト1」同様アニメが幼稚だと偏見持った連中にこそ見て欲しい作品だ。トレンディードラマばかり見ている腐れ一般人どもよ、貴様らにこの高尚なストーリーが理解可能DEATHかー?(凸守風に)

当時中学生、そろそろアニメ卒業かなーと思い、洋画(とはいってもキャメロンやバートンとかのおたくっぽい映画だけど)を見まくっていた時期、この映画を見た。結果あまりにも面白すぎて卒業に失敗した。同年のジュラシックパークよりも遥かに強烈だった。

当時社会問題になっていた自衛隊のPKO派遣やソ連崩壊、それに伴う日米関係の変化などタイムリーな政治問題を真っ向から扱った野心作だ。前作よりも押井守の個人作のカラーが濃厚だ。今回の主役は後藤隊長。これまで影の主役だった彼がついに表舞台に立った。おっさんのインテリ会話劇に心酔してしまった。こんなインテリっぽい映画見てる俺ってカッコイイと。今思えばこれが中二病だったのか・・・。

前作の都市論、組織論に加え国防論、国家論までさながら討論番組の如く展開される推理ドラマが最高に魅力的だ。

冒頭、カンボジアで自衛隊のPKO派遣部隊が壊滅、数年後、隊長の柘植行人は首都東京を部隊に戦争を計画する。横浜ベイブリッジの爆破を皮切りに警察と自衛隊は対立。そして東京上空に出現する不審な戦闘機、飛行船、正体不明のレーダー反応の数々。ついに政府は首都に自衛隊の実戦部隊を治安出動させるが事態は悪化するばかり。その混乱の最中、特車2課の後藤喜一、南雲しのぶ両隊長は柘植の存在を察知するが・・・。

後藤さんとしのぶさん、自衛隊の諜報員荒川茂樹とのやりとりが映画の肝だ。「俺たちが警官として、自衛官として守るべき平和とは一体なんなんだろうな、他所の国の戦争に支えられた血塗れの経済的繁栄だ」「真実としての戦争、虚構の平和か、でもね、柘植が作り出した戦争もまた偽物にすぎない。この街はね、リアルな戦争するには狭すぎるのさ」「戦線から遠のくと楽観主義が現実にとって変わる。そして最高意思決定においては現実なるものはしばしば存在しない」「だから、遅すぎたといってるんだ」「しのぶさん、いま降りちゃ駄目だ、勝負はまだついてない」「でもどうやって?もう2課にも戻れないし」「2課は壊滅したよ、でも第2小隊は健在だ」いやー、珠玉の名台詞のオンパレードだ。

風景描写は後の攻殻機動隊に繋がるカメラアングルが多い。公開当時はCGが凄いと評判だったが今見ると作画のレベルがかなり高い。90年代ってCGが本格導入される直前の作画が良かった時期だ。中盤の戦車が東京の各所に配備されるシーンは圧巻だ。死者がでない「静かな戦争」とでもいうのか、異様な迫力だ。前作同様に東京の光と影、虚構と現実を余すことなく表現している。川井憲次の音楽もさらに独特の雰囲気に拍車をかけている。最近はこの人、ひぐらしやFATEでいい仕事してる。


戦闘シーンについて   今回活躍するのは戦車、戦闘機、飛行船、攻撃ヘリといった実在するマシーンがメインでロボットは脇役だ。イロイロなマシンが登場するが実際に発砲するのは攻撃ヘリだけだ。一回見ただけではこの事に気付かなかった。流石だ。NHKやら築地聖路加やら新宿やら見慣れた光景でドンパチやらかす戦闘シーンは異様な迫力がある。この1年後にオウム真理教の事件が起こり聖路加が「戦場」と化したのですげー衝撃的で怖かった。飛行船からガスが噴出す場面とかオウム事件そっくりだ。新型レイバーは斜め上からヘリの機関砲で寝たまま蜂の巣に。これじゃ確かに出渕裕怒るわけだ。河森正治とカトキハジメの車両、航空機だけが大活躍。この演出はロボットアニメに対するアテツケないし揚げ足取りともとれる。人によっては不快に感じるかも。まあ監督のスポンサーのバンダイグループに対するイヤミがひしひしと伝わって来るね。でもイングラムによるECMを使った電子戦は20年前とは思えないほどの先見性で魅力的だ。しにぶさんが3号機に搭乗するのは衝撃だった。

野明や遊馬たちのドラマは最終回特有のお別れムード全開ですげー切ない。あれほどイングラムが好きだった野明が「もう乗らなくていいんだ」とか「あたし、いつまでも女の子でいたくないし自分に甘えていたくないの」と言い切る。さびしいことこの上ない。でもアナログ人間寄りの野明が最新のオートメーションマシンに違和感を感じつつマニュアル車に近いイングラムに一体感を感じるのはやはり安心する。度を越えた機械化は人間性の欠如に繋がる、というのはどの作家も警告する。遊馬は相変わらず情報分析に活躍。第2小隊の頭脳だよ。後藤さんの招集に応じて最後の出動に臨む第二小隊の面々はさながら同窓会のよう。それぞれ別部署に配属されたけど彼らにとっては結局2課こそが本来の居るべき場所なのだと感じられて安心感がある。後藤さん、しのぶさんには振られちゃったけどあなたには素敵な理解者がいて羨ましいですよ。「結局俺には連中だけか・・・」野明たちとの絆、大切な宝物なんだろうな。

この製作チームの警察もの、面白すぎて困る。おいしすぎる料理を食わされると普通の料理じゃ満足できなくなるのと同じだ。どうもわが国では最新の映像技術やSF的設定を利用した社会派ドラマは実写よりアニメのほうが向いているようだ。攻殻機動隊、サイコパスと共にアニメに偏見持ってる人こそ騙されたと思って見て欲しい作品群だ。ちなみにレンタルビデオで見ていたとき、覗き見していた父親が「すげーおもしろかった」と感心していたっけ。

投稿 : 2014/02/11
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サンキュー:

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