「GJ部(TVアニメ動画)」

総合得点
73.7
感想・評価
1282
棚に入れた
7081
ランキング
966
★★★★☆ 3.6 (1282)
物語
3.4
作画
3.6
声優
3.6
音楽
3.4
キャラ
3.8

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ネタバレ

レトルトテイまー さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

鉄腕アトム以来から脈々と受け継がれてきたTVアニメ媒体における最高傑作

GJ部。まずはその名を口にすることから始めるべきではないか。
その次に叫ぼう。「さらばGJ部と言おう」と。
こう我らが叫ぶことで、GJ部は途端に崩壊を描く。
しかし我らがGJ部で手に入れた絆、友情は紛れもなく強固で堅牢なものであり、GJ部は永遠である。

GJ部とは日常系全てに対する総決算であり、アンサーである。
幾多の日常系があってこそGJ部は生れ出づるものであるし、またGJ部はそれら日常系全てに祝福を与えるものであった。
なのでGJ部を語る際には様々な日常系作品を同時に把握せねばならないし、また日常系を語る際にもGJ部は必要不可欠な存在となるだろう。

日常系を全て語るとなると膨大な量の言を弄さねばならず、それを行うには私の知識は端的に言って不足であり、またGJ部にとっても衒学的になることは望ましいものではないだろう。故に、近年の高名な作品のみに対する語であることをここに詫びたい。

まずは日常系大傑作「らき☆すた」から見ていこう。
らき☆すたはいち早くニコニコの流行やオタク的なオマージュを取り入れることでまさに「その時代に彼女たちが生きていた」という実存性を高めている(無論、空虚であるが。しかし確かにそう感じられたのだ)
らき☆すたにおける友好の関係は学校に縛られるものではなかった。言ってみれば、彼女たちは学校に友情を依存していないのだ。彼女たちは学校とはあまり関係のない場所で出会い、遊び、交流を深めていく。故に彼女たちの卒業は劇的なものになりえない。本来、卒業に別れはつきものなのだが、彼女たちは友好を学校に依存していないため、卒業をしても別れるということはないのだ。実際、彼女たちは卒業をして大学生になっても、変わらぬ友愛を持ち続けている。嗚呼、素晴らしき友情である。それがらき☆すたが叩きだした新機軸の帰結であった。

次に「けいおん!」を見よう。
言わずもがなであるが、彼女たちは友好の”全て”を部活に依存してしまっている。彼女たちは部活がなければ会うこともしないし、一緒に遊ぶことだってしない。だから彼女たちにとって卒業はまさに彼女たちの関係の終焉を意味するものだったのだ。モラトリアムが終わるわけではない。関係が、終わるのだ。けいおん! にとって卒業とはそういうものであった。(まあ大学でまた同じような生活をグダグダやるわけだが)しかしそこにあずにゃんはいない。何故なら、学校が違うからである。
学校、部活という両要素に固く閉ざされた彼女たちの関係は排他的かつ脆弱と言わざるを得ないだろう。私はこのけいおん! という作品を、最も貧弱な日常系アニメである。と断じたい。
ちなみに私は漫画版の方が好きです。

次は「ゆるゆり」だ。
先に述べておくが彼女たちの物語は終わりを迎えない。
何故なら、彼女たちはサザエさん時空に存在しているからだ。
故に彼女たちは年を取らず、しかし経験は重ね日々を過ごしている。
このご都合的な時空について意見を述べることもやぶさかではないのだが、GJ部を論ずる際には不要と判断しここに切り捨てる。
彼女たちの物語は終わらない。ならば彼女たちの関係性にフォーカスしてみよう。
彼女たちは「ごらく部」という部室で楽しくワイワイやっている。
この事実を鑑みれば、一見ゆるゆりは友好を部活に依存しているように見えるが実はそうでない。
彼女たちは部活の外でも生徒会メンバーと触れ合ったり、とかく遊びを学校という空間に閉じ込めていないのだ。
つまりゆるゆりは部活ものでありながらも、行動を部活に委ねない画期的な部活もの。ということになるだろう。赤座あかりは聖人である。


そして「キルミーベイベー」である。
いや、これは素晴らしい作品でしたね。
この作品については様々な解釈が行えるし、実際そのように作られている。その把握をする際には「Baby,please kill me. 「キルミーベイベー」ファンブック&アンソロジーコミック (まんがタイムKRコミックス) 」の所持は不可欠となるだろう。
しかしそれらの考察は今回、一切関係がありませんので省略する。
人間の脳の数だけキルミーベイベーの答えがあるのだ。

キルミーベイベーの人間関係について見ていこう。折部やすなさんはソーニャちゃんに「友達になりたいから」ただそれだけの理由で接触を試みる。
なんと果敢な有り様であることであろうか。口で言ったり妄想するだけで満足する(このあにこれでレビューを書くような雑魚)オタク共に爪の垢を煎じて飲ませたいものだ。
またあぎりさんもソーニャの関係者というだけで、本来折部やすなさんとは一切関わりがないのにも関わらず、折部やすなさんと友好を紡いでいる。これは十分考察に値する自体であるといえよう。
本来彼女たちが友情を演じることはなかった。それを折部やすなさんの圧倒的果敢性によって友情を手に入れてしまっている。
まさに今まで全て「関係性」が前提にあったキャラクター像を根底からひっくり返してしまう素晴らしい作品、それがキルミーベイベーなのだ。

さあ、そしてGJ部である。
GJ部における集まった理由、部活の存在意義。そんなものはどうでもいいのだ。
ただ、彼女たちはそれぞれ欠陥を抱えている。
天使真央さんは性格が異常に子供っぽく、紫音さんは一般常識が欠落しており、恵ちゃんは何かあればすぐお姉ちゃんに追従してしまうし、キララは人間性がズタボロで、キョロくんは意志が弱くすぐ周りに流されてしまう。
そんな彼らが、だからこそ寄り添い、共同体として心を育もうとするのがGJ部の(描かれない)目的であると言えるだろう。
例えばキョロくんは成長して、背も伸びて、心に芯を持てるようになるし、天使真央さんは少し大人びる。紫音さんは少しづつ常識を身につけたし、恵ちゃんはお姉ちゃんっ子を少しだけ卒業できた(卒業式のサプライズを用意した)し、キララはほんの少しだけまともな人になった。
GJ部において彼らは成長し、育ったのだ。
だからいつまでもそこにはいられない。高校生活は、3年で終わってしまう。GJ部という映像はそれを12話という限られた話数で描ききる。
我々はその終焉に涙してしまうのだ。


総括しよう。GJ部のテーマとは「一度きりの青春」である。青春が終わったら、今度は社会に向かって走りださないといけないぞ! というモラトリアム人間を正面から殴りに行く構成になっている。当然、キャラは皆大いに悩む。いつもの日常を過ごしているつもりなのだが、視界にはゴールが見えてしまうから悲しくなってしまうのだ。
よくあるだろう、楽しかったゲームがラストに近づいてきて「やっとクリアできる」という喜びと「楽しかったゲームが終わってしまう」というやがてくる喪失への予感である。
そして、GJ部部員全員が、眼前に迫った別れと向き合うことを決意したとき、我々に示される最終回のタイトルが「さらばGJ部と言おう」なのだ。

だから、GJ部とは別れてしまうものなのである。
いや、人はGJ部から去らねばならないのだ。そこは、とても居心地のいい空間でもあるけど、それは幻想だから。モラトリアムなのだから、いつか終わりが来てしまう。GJ部はやがてくる終焉を決意し、そして乗り越えた。これは卒業という別れから目をそむけ続けた日常アニメに対する楔である。
まさに万物の金字塔となるべき大傑作。それがGJ部なのである。
そして私も、GJ部から去らねばならない。
人はいつまでもGJ部に留まってはいけないのだ。
確かにGJ部は私たちの全てだった。でも、それじゃあ駄目なんだ。人は未来に向かって走りださないといけないんだ。

(眼前のPCディスプレイが暗闇に陥る。あなたはディスプレイに埋め込まれた電源ボタンを押すが光は灯らない。やがてディスプレイにはあなたに背中を向けて光に走りだすGJ部部員の姿が映る)

そう、私たちはGJ部に導かれて走りだす……その先には、きっと――

(建物が四方から崩れ落ちる。GJ部部員の背中を移していたディスプレイも共に倒れだす。不意に崩れ落ちた壁の先を見ると、そこは花が咲いていた。しかし花園ではない。荒野にぽつり、ぽつりと小さな花が咲いている。その数は四つであろうか)

真実はいつだって残酷だった。社会はいつだって私たちを待ってはくれなかった。そんなことばかり考えていた。だけど、だけどGJ部の息吹は今ここに訪れ始めている!

(あなたは身体を動かし、走りだす。どこへ行くのだろうか。それは誰にも分からないものであった。しかしあなたは確信していた。自分が走りだしたその先には、必ずGJ部が待ってくれていると。何故なら、GJ部は永遠であった)

さあ行け! 僕たちは、ただ名ばかりでシャボン玉のようにふくらんでしまった…そんな空想の恋人に恋焦がれている。
さあ、君、取りたまえ。
この空想を、そして本物に変えるのは君だ
僕は恋の嘆きとかを書き散らかしたけど…
彷徨う鳥の留まるのを君は見ることのできる人なんだ
さあ、取りたまえ!

(津波がどこからか襲い来る。先ほどまであなたがいた荒野は波に飲み込まれていく。しかし、そんな中波をかき分け進む者がいた。彼らはきっとGJ部部員なのだろう。ならばと思い、私もあなたも、そうであろうとした)














参考 http://d.hatena.ne.jp/thk/20130223
   http://blog.livedoor.jp/chimpo_joinus/archives/26430542.html

投稿 : 2014/04/29
閲覧 : 240
サンキュー:

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