サイボーグで未来なアニメ映画ランキング 6

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のサイボーグで未来な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月01日の時点で一番のサイボーグで未来なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

75.9 1 サイボーグで未来なアニメランキング1位
イノセンス -INNOCENCE(アニメ映画)

2004年3月6日
★★★★★ 4.1 (766)
4232人が棚に入れました
草薙素子(少佐)がいなくなって3年後の2032年。
少女型の愛玩用アンドロイド(ガイノイド)「ロクス・ソルスType2052 “ハダリ(HADALY)”」が原因不明の暴走をおこし、所有者を惨殺するという事件が発生した。被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから公安9 課で捜査を担当することになり、公安9課のメンバーであるバトーは新しい相棒のトグサとともに捜査に向かう。

イシカワ(辻斬り) さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

あなたのハダリにゴーストは宿っているか

 記載されているレビューに対する反論・論戦を行いたい人は、メッセージ欄やメールで送りつけるのではなく、正しいと思う主張を自らのレビューに記載する形で行ってもらいたい。
 なおこれらのレビューは個人的推論に則ったものである。言い切っているような台詞も、独自の解釈の一環であり、一方的な決め付け・断定をしているのではないものだと思ってもらいたい。

『少女型のアンドロイド・ハダリが原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生した』
 イノセンスのストーリーを非常に大まかにいうとこういう形になる。
 義体化。体の大部分を肉体ではなく、代替品でまかなえるようになったSFの世界の話である。

 ストーリー上、ゴーストという概念が非常に重要性を帯びてくるため、そこだけwikiから文章を拝借した。

ゴースト
 あらゆる生命・物理・複雑系現象に内在する霊的な属性、現象、構造の総称であり、包括的な概念である。作中においては主に人間が本来的に持つ自我や意識、霊性を指して用いている。
 要約すると人間の肉体から生体組織を限りなく取り除く、あるいは機械で代行していった際に自分が、自分自身であるために最低限必要な物、又はその境界に存在する物こそゴーストであり、生命体の根源的な魂とも表現できる。

 人形と人間の境界線をゴーストで隔てる、そういう考えが攻殻の世界にはあるようだ。
 では人間と人形の差は何なのか。また人が人形に求めているものは何かである。
 筆者はあるハーレムもののアニメを視聴していたとき感じたのだが、まるでキャラクターが生きているようには思えず、まるで人形に見えてしまったのである。なぜ、人形に思ってしまっていたのか。
 まず、女の子特有の、異常なまでの情報伝達の速さがある。人によっては光の速さで噂が伝わるとまで表現している。ハーレム状態で、主人公の男がそのうち特定の誰かと交際関係を始めたら、一挙手一投足、更には太腿や胸元などに視線を一つ向けたことまで、下手をすると一週間も経過しないうちに、見知らぬ女性にまで伝わってしまうことである。驚異的な噂話好きの女性達にとって、その程度は日常茶飯事なのだし、もっといえば生理現象といってもよい本能だと筆者は強烈に感じ、またそう思っている。
《「女」の字を三つ合わせるとやかましい意の「姦」の字になるところから》女はおしゃべりで、 三人集まるとやかましいという意味があるほどだ。
 それが起きるとどのような事態に変化するのか。何かあるたびに噂のネタにされ、ツツき回され、念入りに人間性を審査され、あること無いことまで吹聴され、話に尾ひれをつけられる。日常生活において支障を来たしてしまうのは無理からぬ状態になると容易に推測される。それがないのだ。
 また、ハーレムでも女性はちゃんと一人一人心を持っている。なので、相手にされず放置を続けると、不満が溜まる一方になっていく。そしてあるとき、見境も無く爆発したりすることがあるのだ。出物腫れ物ところ嫌わずという。だからといって、男が特定の女性一人に決めて行動すると、選ばれなかった他の女性の不満が爆発してしまうときがある。それがないと心を持っていないように感じるのだ。
 男性主人公からすると……
 誰にも女性の暴挙に対する愚痴一つ漏らせない。漏洩した瞬間から女性陣の一斉攻撃が始まるだろう。そして、いつ爆発するかもわからない不満を和らげるために、いつも周囲に気を使う仮面をかぶり、常に自制し続け、自らの意見が周囲にどう映っているかを考え、女性にとって都合の悪いことは何一つとして話すこともすることもできない。針のムシロ。恐るべき閉塞感の中で悶々とした生活を送ることになる……というのが筆者の考えだ。しかし、ハーレムものの中心にいる男性キャラクターにそういう経験したというのを見聞きしたことがない。もし誰か一人の女性だけに交際を定めた場合、女性同士の陰湿ないじめ、果ては自殺などに発展する可能性がある。ハーレムアニメの中でそのような事態になったというようなことも、筆者は見聞きしたことがない。

 ある女性アイドルの男性ファンが『○○ちゃんはウンチなんてしないんだ』といったという話がある。それを話題にしたところ、普通の人間なら、花くらい摘みに出かけることもあるはずだという反論も出た。
 アイドル業はファンあってのものなので、事務所側は汚いものは見せない、イメージダウンに繋がることなどさせたがらない。それは、ある女性アイドルの話を偶然仄聞した事項まで連想させた。アイドル自身、その人を演じていた。あの人はこういう人なのだという言い回しをしていたのを思い出す。等身大の人間ではなく、ドラマの中の登場人物のように演じているのだと。アイドルの語源は偶像である。
 ハーレムアニメのキャラクターは生きているようには見えず、単なる人形・マネキンだと自ら表現したことに対して、同じく自ら反証するとしたらどうなるのかと自問した。答えは、お約束によってアニメが成立するため、人形であろうと問題ない。噂話に興じるような女性特有の生理現象と思えるものがなくてもよい。問題ないという結果になった。
 その矛盾点がないとストーリーとして成立しないのならかまわないのである。それはお約束なのだ。
 単なる手抜きであったとするのなら、そういう矛盾点がなくてもストーリーとして支障を来たさないどころか、あるとストーリーが破綻したりする類のものだろう。
 女性的な生理現象としての噂話、光の速さで浸透する情報はなくてもよい。
 そういう思考にたどり着いて以来、筆者は生理現象のない人、極端な話、花も摘むこともない人の形をしたものでも気にしなくてもよくなったのである。
 筆者がなぜマネキンと評してしまったのかは、生理現象が無い=生きていないと感じたからだった。

 涼宮ハルヒの声優さんが、スキャンダルを起こした、起こさないで揉めたという話が出たことは筆者の記憶に新しい。声優さんとキャラクターは別の存在であり、非難するに値しないという解釈は十分成り立つ。しかし、中の人という表現もある。騒ぎになってしまう原因は、声優とキャラクターを同一視するか、それに極めて近い感情を有している人々がいるからだと推察できる。
 こうしてみると、ハーレムもののアニメはメタ的な作りになっていることに気付いた。まず男性視聴者がアニメの女性キャラを求め、アニメの女性キャラたちは一人の男性キャラクターを求める。その男性キャラクターは男性視聴者の分身として製作されているのではないかと思える。男性キャラクターは一人だけだが、男性視聴者は大勢いてかまわない。この特殊な構造を生み出すことによって、男性視聴者を満足させる試みがなされているのではないか? 以前なら、アイドルの恋愛はタブーのような人気業種だろうし、今でもあまり変わり映えがしないように思える。声優さんの例を挙げるまでもなく、恋愛対象などいないことが好ましかった。それをアニメというジャンルによって、アイドルを擬似的に恋愛させる、恋愛対象は男性視聴者の分身という形に変化したのではないだろうか。
 当然例外は存在するものの、基本的にハーレムものの女性キャラクターは男性視聴者を落胆させるような作りにはなっていないように思える。落胆するかどうかの基準についても、視聴者の目線は主観的であるため、確実性があるとはいえない。
ここまでのまとめとして、アニメのキャラクターも、人気女性アイドルも、同じく偶像的という類似点があるといっていいのではないか。
 男性視聴者の嫌がる生理現象を行わないため、結果として生きているように見えず、マネキンと思われてしまうことがある、ということだ。

 偶像化の類似種として登場するハダリ。
 アイドルも、人形・ロボットのハダリも同じように偶像の類似種としてみることはできるのだろう。ハダリそのものは、女性アイドルの代替品として存在しているような感覚を筆者は覚えた。求めるものを具現化する、というやり方はアニメもアイドルも、類似点がある。
 筆者が想起したもの。ハダリの存在理由は、俗に言う嫁ではないかという感想である。アニメの女性キャラクターを指して、自分の嫁だと思うことだ。嫁が画面から出てこないという表記があにこれにもある。あれだ。
 イノセンスの最初の場面を視聴していたとき、筆者の頭の中では、ある想像、いや妄想といってよいものが起きていた。

 以下妄想。
 俗に言う嫁を脳内で愛おしく思っている男性視聴者の学生が、いそいそと塾から戻ってきて、夜食を取りつつ、お気に入りの嫁の映っているアニメの視聴時間が来たのでテレビにスイッチを入れた。
 アニメの主人公の男性はあまり冴えない容貌で、これといった特徴もない人柄。人によってはへたれと呼ばれてしまいそうな性格である。そして、思春期の学生らしく、女性に自意識過剰になってしまいがちで、リビドーを押さえることが難しい感覚を受ける。
 嫁の傍に近寄って、欲情の視線で盗み見た瞬間……
 なぜか嫁は、激しく暴走し、信じられないほどの腕力で主人公の男性を素手で滅多打ちにし、撲殺してしまう。血塗れだ。鮮血が飛び散って文字通り周囲を塗り尽くしている。付近の壁によりかかるようにして斃れた男性主人公の頭蓋骨は陥没し、はみ出た脳が地面に垂れ下がっている。
 溜まりに溜まってきた怒りか、堪忍袋の緒が切れたように爆発したのか。
 周囲にいた人々は怯え、警察を呼ぶ。嫁は路地裏に逃げ込み追い詰められる。路地の突き当たりにまで行き着いた嫁は逃げ場を失っていた。
 そこにやってくる一人の刑事らしき大男。大男と対峙した嫁は叫んだ。
「私は我慢してただけよっ!私は男の奴隷じゃないっ!男のいいなりになんかならないっ!」
 大男は無言で拳を嫁に叩きつける。逃げ場を失った嫁は、どこから持ってきたのかわからない包丁で自分自身の体を切り刻み、自害した。
 凄惨な現場で取り調べが始まる。テレビ画面を見ていた学生の男は呆然として、一言いった。

「俺、殺されてる」

 以上妄想終了。

 ある若手の女性ニュースキャスターが、自分のいいたいことを表現したところ、職場の男性陣からいろいろといわれたという。あいつは生意気だ。人から言われたことをやっていればいいのだ。女が自分の考えをニュースでいうなどおこがましい、と。結局その女性はニュースキャスターを辞めたという。
 男性視聴者の手前、職場からいわれている手前、規制されているような状況と類似した不満。それが爆発したかのような……その記憶との連想を想起させる事件がイノセンスでは起きている。
 筆者のした妄想を、攻殻という形で表現したら、作品としてイノセンスができあがった。そんな感じがしたのだ。事実としてそんなはずはなかった。先に作品はできあがっているのだから。
 筆者が注目したのは、事件を起こしたのが人間ではなく、女性型ロボットのハダリであったことだ。人間型であっても、人ではないはずだ。しかし、どう考えても筆者からみてハダリは「生々しい女」だった。
 ロボットは怒りで人を殺さない、ロボットは逃げたりしない、ロボットは追い詰められたからといって自壊しない、……そのはずだ。それとも前もってプログラムされていたのか?
 男性視聴者の嫌がる生理現象を行わないため、結果として生きているように見えず、マネキンと思われてしまうアニメの女性キャラクターは、飽くまで人という設定だ。生身のはずなのだ。なのにイノセンスでは人形であるにも関わらず、ハダリは生身の女のように思えたのだ。
 それは様々な人々によって意図的に隠蔽されてきた、剥き出しの人間性が露出していたからではないか?

 イノセンスのワンシーンが回想される。
「ああ、俺もよくやるよ、感想」
「あんた出世しないな」

 義体化率が90パーセントを超えてしまう人間が闊歩する世の中で、人と人形の差は縮まり、曖昧なものになっている。それが攻殻の世界にみえる。では人と偶像の明暗をわけられるものがあるとしたら、それは一体なんなのか?
 そもそも、なぜそのような事件が発生してしまったのか、原因は何か?
 それを追っていくのが、筆者から見たイノセンスである。

 もし、嫁が暴走をしはじめたらどうするか?
「カオがよくてお金持ちで性格のいい若い男なら」
「今まで素振りもみせなかったけど、ほんとは冴えない男と付き合いたくないよね」
 人間からみたロボットの立場は、奴隷だという人もいた。ゴーストを持たぬ奴隷。ではその奴隷が人間性・ゴーストを持ってしまったらどうなるのか。
 アニメの女性キャラは決して男性視聴者の奴隷ではない。ゴーストはすべての女性キャラに宿っている。そういう人もいるだろう。しかし、アイドルとアニメの女性キャラを比較すると完全にそういい切れないところも出てくる気がするのだ。アイドルは実際にいるし生きている。アニメのキャラは生きているとはいえない、と言い切る人も出てくるだろうし、意見が分かれてしまうだろう。
 規制されていたものがなくなったとき、男性視聴者の予想外の言動が出てきてしまったらどうするのか。その時、若手の女性ニュースキャスターの職場にいた男たちのように、お前は黙って男の望んだとおりに動いていればいいんだ、といえばいいのだろうか?
 それとも、受け入れてやるのだろうか?
 薄い本が好きな、アニメ好きの男性たちの欲求を商品化するとどんなアンドロイドが作られていくのかと想像する。答えは、アニメのキャラそっくりのセクサロイドが作られるのではないか。キャラクターが描かれた抱き枕の発展版かもしれない。それと極めて類似するハダリ。
 ハダリから感じた……剥き出しに露出した人間性、そうみえたものが、ゴーストのように思えてしまったのである。ご主人様を殺害してしまったハダリにはゴーストが宿っていた。
 やたらと夜のオカズにされたりしているアニメの女性キャラは暴走しない。
 そこに、ゴーストは宿っているといえるのか?
 その話をしたところ、

『まぁ当然ゴーストが宿っていたから暴走したというのは間違いないですw』
『ゴーストがやどっていて大人しくしているとしたら、よほどのマゾですね』

 という意見が返ってきた。
 嫁に殺されるご主人様を題材にしたアニメを作るあたり押井監督はえぐい。しかし、その意図はどこまで一般視聴者に読み取られているのか。いや、筆者の勝手な想像にすぎないのか?

 そのようなことを夢想していた。忘れてもらってもいいのだが、心のどこかで筆者は問いかけてしまうようだ。


 あなたのハダリにゴーストは宿っているか、と。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 26
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

ほんとうはイノセンスであり続けたい。

前作『GHOST IN THE SHELL』の続編にあたる映画です。
この映画を初めて観たときにはピンと来ることはなく、むしろ分からなくて、というか伝える気もないその映像に呆れしまい「もう二度と観るかよ」と吐き捨てるくらい不快感を覚えたものでした。
しかし、2年の時を経て見返すきっかけがあったので時間を無駄にする勇気を出して観てみたところそんなに分からないことだらけではないなと思いました。なんだか不思議なものです。

本作は本編の前に15分のプレビュー解説がありますが前作を観た人にはまったく必要はないと思います。
肝心の本編はCGをこれでもかというくらい駆使した映像の中、草薙素子のいなくなった9課の様子を描いていきます。「2501」この再会の合言葉が使われるときが来るのかというところに期待を持てます。
作品の雰囲気はあんまり明るいことはなく、いつもみんな下を見ているようなそんな感じです。
だれの頭の片隅にも常に少佐がいて任務に出る度、何かを考える度に彼女がいればと口にしてしまいます。

ストーリーにもそんなに捻ったところは見受けられないところをみるとやはりバトーと少佐の再会を最も重視していることが分かります。
でもラストのシーンになってようやく話の内容にとりあえず頷くことはできますがいささか無駄が多いような気もします。
本作が何を意図しているかをとりわけ真剣に考える人にとってこれは厄介です。
本当にそうでもしない限り語ることができないのか、難解であるかどうかは別としてももっとスマートに描くこともできるのではないかと思いました。
これもこれから下に書く混乱の要因として多分に影響していると僕は思います。

情報量のとても多いことが1つの特徴でもある押井監督作品ですが本作でもそれは同じ。
けれど本作を観ていてする混乱の一番の原因はそれではなく度々口にされる引用にあると思います。
本作の登場人物たちは人生の警句や人を端的に比喩した言葉を諭すのに使いジョークのようにも使います。
これらが出てくる度に僕らは何を意味しているか考えるのだけれど会話は止まってくれません。
そこにいつまでも引っかかっているとストーリーは川のように流れて行ってしまって見失ってしまいます。
言っていること自体は難解というほどのことではないのだけれど、この会話のリズムに慣れていない、あるいはすぐにこれらに反応できないがために他のことまで整理できなくなり「わからない」と手を離してしまう。これが一番の混乱の元ではないかと思います。僕はそうでした。
ハラウェイやキムの難しい語りよりもむしろこちらの方が厄介に思えます。

初見では僕はこんな感じでしたが、2度目は割とすんなり観ることができました。
やはり押井監督作品は『パトレイバー 2 the Movie』でもそうだったように何度か観ることを自然と強いられます。
厄介な部分が表面化したところで、これから見返す人は短いスパンでしたのでは新たな発見はあまりないかもしれません。
忘れたころに見返すか、嫌悪感がある程度消えてからか、または脳の中である程度整理されてからの方が内容の理解はスムーズにできるかと思います。


この作品に嫌悪感を持っている人も少なくないはずです。
エンタメ要素は皆無だし、内容も鬱屈としている。
けれどもう一度だけなら観てみてもいいのではないかと思います。もう一度だけ。
初めての人はもういっそのこと、「わからないモノ」として観た方がいいかもしれません。あるいは。

イノセンスがいかに大切であるか。それをアニメーションという形で表現した物語です。


{netabare}

押井監督の持つ哲学や人形の考察は他のレビューで語られているので(ロクに読んでいないけど)僕は”イノセンス”に注目したい。
というより本当はその辺は割とどうでもいい。なんとなく掴むことができればいい。がっつりと注目するところではない。
それがどんなに難しく、かっこよく、あなたの頭にこびりついていようとも、それは所詮細部のことだから。
あなたが一番思考する部分や悩まされる部分が主題ではなく、自分自身で作品から拾い集めて考えること、悩むことが主題を見抜くことに繋がるのだから。
よって主題は表面的な意味での「人と人形の違い」ではない。と僕は思うのですが。

まあ色々ありますが、要するにこの映画は何が言いたかったのだろうと表題の通り”イノセンス”を中心に考えてみる。
あまり参考にはならないかもしれませんが。

 ハラウェイやキムが難しいことを淡々と述べたいたのを観た通り、人は知識あるが故にたくさんのものごとを思考する。とりわけ人間に興味を持った彼ら(先駆者含め)はそれぞれの行動に名前をつけその起源を分析する。その行動が何に基づき、何のためにされているのか。さらにそれが進めば僕たちすべての人間は、有効的かつ合理的でもっとも利益を生むことのできるようにプログラムされた遺伝子を運ぶキャリア(乗り物)であるとそう言えるだろう。でもまたそれが違うことも僕らは知っている。恋やセックスが子孫繁栄のためだけの欲望の発露ではないことは少なからず実感している。こんなことは言うまでもない。
 さらに彼女らのその行き着く先はとても寂しい場所だ。ついに彼女は、私はいったい何者なのだろうと自分に問いかける。だんだんと大事なものがぶれ始め、最後には失ってしまう。そして一度失ったものは死んだ後でも取り戻すことはできない。
 イノセンスであること。もしかすると幸せであることの答えのひとつはこれではないか。
 これは考えなしに馬鹿であればいいという単純なことではない。目の前にある事実を、その嬉しさ、楽しさをそのまま受け入れればいいというイノセンスであること(無垢であるまたは素直であることと言ってもいい)を指す。「何のために」なんていちいち考える必要はない。「ここでこの行動をした人間Aに生まれる利益は?」なんて考察する必要もない。あなたが感じることをありのまま抱きしめることこそが人であるということであり、イノセンスの喜びなんだろうと思う。でもそれはすでに失われてしまっている。
 それをもっとも象徴したシーンがラストでバトーが子どもに向かって激高したあのシーンにある。思いもよらないその台詞と怒りの方向にはきょとんとしてしまった人も多いはず。「自爆した人形がどうなるかは考えなかったのか」とセクサロイドのゴーストのために利用された女の子に言うこのシーンはどう考えても普通ではない。
 ここでのバトーの心情を探るのは僕には難しい。でもこれだけは言える。バトーはその生きている生身の女の子より人形の方を大切に思ってしまったのだ。それを「イノセンス」の一言で気づかされた。「わたしだって人形になりたくなかったんだもん!」
 なぜバトーが生身の生きた女の子でもなく、自爆の際に巻き込まれる人間でもなく、まず人形を気にかけたのか。それはやはり草薙素子だろうと僕は思う。バトーは前作から少佐を誰よりも人として扱ってきた。彼女が裸であれば自分の上着を肩にかけ、着替える時には目をそらした。現在彼女はネットの一部であると同時に全てである。バトーは彼女が問題の人形に入り動いているところも見、共に行動した。だからなのだろう。ネットにアクセスできる全てのものは彼女であるようにまた、どの人形にも少佐は入ることができるということ、つまり人形は少佐自身なのだ。身体を持たない少佐にとってそれが「肉体」であるのだから。それに元々は少佐も全身義体であったのだ。それゆえに、彼にとって人形はとても大切な存在であり、それが無暗に壊されることに議論の余地はなかったのだろう。
 しかしその後に少女のイノセンスのこだまに自分が何を愛でているのかを知る。それは人形。おいおい、そんなもんより生きた生身の人間が目の前にいるじゃないかと彼はそこでやっと気づく。
沈黙が降りる。イノセンスの象徴とイノセンスを失ったものと草薙素子の入った人形が静寂を守る。
 バトーの言葉を草薙素子も聞いていたのだろう。バトーはなんとしても彼女のことを弁護したかったのだろう。今現在少佐の入っている人形がでたらめに壊されることは許せなかったのだろう。目の前のこどもを前にして彼の倫理観は揺れる。答えは女の子の言葉にハッとしたときにすでに出ていたのにだ。
 「行くわ」と女は去る。ガラクタは音を立てて崩れ落ちる。その音はバトーの耳に普通ではありえないくらい大きく聞こえたに違いない。


 本作で言いたかったことはおそらく失われたイノセンスの哀しみだ。特にハラウェイは多くの実験の分析結果と明らかになりつつある事実に、その高度な思考ゆえに背負う苦しみを嘆いていたに違いない。たくさんの思考がいろんなことの妨げになることは僕らにだってたとえ、作品内でされた難しい考察なんかしなくともよく分かる。だって生きることに悩まずにいられればもっと簡単に過ごせるだろうし、迷走することもクレイジーな行動も少なくなるはずだから。一神教やオウムやテレビやカリスマの言葉や誰かの言っていたことでも何でもいい。そこに思考を預けることができたら、そこは正しさに満ちていてとても平和で幸せなんだろうなと思う。でもそうしないのはそれが間違っている(あるいは自分が望むものではない)し、自分の足で歩いていない以上生きた心地はしないだろうと思うからである。僕はハラウェイとは違い、救いがためにイノセンスに憧れたりはしない。イノセンスの温かさはもっと別のものであるし、傷ついても強く、タフに生きていくことの方が僕にとって何倍も意味のあることだから。だから僕は進んで砂嵐に入る。たくさん血を流し、骨が折れても歩むことだけは決して止めはしない。人間がどのようなものであれ、失われたイノセンスと共にその苦を背負い自分なりの幸せの答えを探し出す、少なくともその日までは前を向いていようとそう思う次第です。




余談
バトーの感情の考察はあんまり正しくないかもしれません。ごめんなさい。
でも、あの女の子が叫ぶシーンの動きはあれはダメですよね。あんな動きされたら笑っちゃいますよw
そのせいかなー。そこで切れちゃったのかもしれない(人のせいにする最低なヤツw)。

「イノセンス」ということについて僕は色々考えてもみるんだけどなかなか掴めません。すごく難しいです。

『GHOAST IN THE SHELL』はこれからも何度も観ることになるけれど『イノセンス』はもういいかな。
考えてみたら好きなところないしね。まあでも呆れていた人ももう一度くらいは観てみて下さい。
それでは、あでゅー。

{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12
ネタバレ

Tuna560 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

『INNOCENCE』作品紹介と総評+考察「心と身体の観念②」

押井守監督の代表作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の続編。
TV版(SACシリーズ)との繫がりがないため、前作を観ていないと話に置いていかれる事間違い無しです。
前作レビュー:http://www.anikore.jp/review/381599/

(あらすじ)
前作から4年後の2032年が舞台。
少女型の愛玩用アンドロイド「ロクス・ソルス社製 Type2052 “ハダリ(HADALY)”」が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生した。被害者とメーカーの間で、示談が不審なほど速やかに成立し、被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから公安9課で捜査を担当することになり、公安9課のバトーは、相棒のトグサとともに捜査に向かう。(wikipedia参照)

理解が非常に困難だった前作同様、今作も非常に頭を使わされました。ストーリーはより難解に、テーマはより不鮮明に、印象はよりダークに…敷居が相変わらず高い作品です。セリフにも過去の偉人の名言などが引用が多用されているのも、さらに敷居を高めてますよね。ただ、押井監督の独特の世界観・台詞回しは健在で、個人的には非常に引き込まれました。

映像や作画に関しては、前作から9年もの期間が経過しているという事もあり、凄く進化していますね。全体的にCG主体の作風に変わり、前作に輪をかけて美麗になっています。東南アジアを連想させる様なエスニックな風景描写もとても好みでした。また、キャラデザに関しては『SACシリーズ』に近い印象を受けましたね。共通の世界観を持たせたいという事でしょうか?

ここで、『イノセンス』という題名の考察をしたいと思います。
本来ならば『攻殻機動隊2』といった、続編的な題名を付けるべきですが、なぜこの題名なのか?

{netabare}一つ考えられる事は、主役が素子からバトーに変わった事。
前作の続編ではなく、スピンオフ作品という意図があった事が考えられます。

そしてもう一つは、題名からその作品の内容を感じ取らせる事。
本作の題名『イノセンス』の意味は”無罪や無心”という物があります。個人的には、後者の方がしっくりしますね。

本作の結末は、アンドロイドに人身売買でさらわれた少女達のゴーストをコピーした事が発端です。自らの人格を失いたくないとアンドロイドに細工をし、救助の糸口を作ろうとしたのです。その行為はもちろん自らが助かりたいがためで、人を傷つけるという可能性については考えていませんでした。つまり”その事以外に心がなかった”ととる事も出来ます。{/netabare}

さて、ここからは『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のレビューでの続きになります。
哲学的解釈になりますので、お堅い話が苦手な方は「戻る」ボタン推奨です…。
今回のテーマは「人の概念」についてです。

{netabare}前作のレビューでは電脳・義体とゴーストを”二元論”を用いて、”心と身体”の関係で考察しました。その結果、”人間と機械の境界線”が曖昧になってしまったというお話でした。

しかし、”人間と機械の境界”が曖昧になった事により、さらに曖昧になってしまったものがあると私は考えます。
それは”人の概念”です。


・死の定義
まずは死の観念について考えていきましょう。
前作のレビューでも比較した”人間と機械”の死について比較したいと思います。

機械についてはそう難しくはないですね。機械の”死=故障”、つまり動かなくなればそれは死を意味すると言ってもいいでしょう。しかし、機械は故障箇所が分かれば、パーツ交換や修理をする事で再び動く事が出来ます。ある意味”永遠の身体”があるともとれますね。

問題は人間の死についてです。一般的には、”生命活動が止まる事”を指すと思います。
人間の場合、年を重ねるごとに老いが生じ、寿命をもって死に至ります。これは如何に医療技術が進歩しようと、超えられない壁だと思われます。つまり、人間は機械とは違い、”永遠の身体(命)”という物が叶わないという事です。

人間の死の定義について論ずれば、”その境界線”をどう捉えるかという問題が生じますが、それについては医学的なお話しになるので…深くは語らないでおきます。


・”二元論”の観点での”死”とは
前作のレビューでも述べましたが、二元論とは”心(魂)と身体(肉体)がそれぞれ存在し、それらの相互作用によって人間の行動は為されるという物です。つまり、人間は”心と身体”が存在してこそ”生きている”と言いう事を体現し、どちらか片方が失われればそれすなわち”死”を意味しています。しかしながら、もちろんこれは”生身の人間”での話です。

本作の世界観では身体は義体化(アンドロイド化)、脳は電脳化(バイオネット化)がされており、体が失われてもパーツを交換する事で修復する事が出来ます。上記にも述べましたが、機械の特性である”永遠の身体”を手に入れてしまったということを表していると思います。

しかし、二元論的観点から考えると、心(魂・ゴースト)が失われれば人間は”死”へと向かうため、”永遠の命”は実現出来ない…と思われるでしょう?
今作ではなんと”ゴーストの複製”が登場してしまいました。人間が生まれながらにして、唯一無二である”魂”までもが複製可能になってしまったのです。これすなわち、”魂”までもがバックアップ(復元)可能ということですね。

こうなってしまうと、人間はまさしく機械と同じく”永遠の命”を手にしたも同然なのです。”人間と機械の境界”が曖昧になると、その存在の定義までが曖昧になってしまう、と私は感じました。

その事が最も顕著に感じられたのは、アンドロイドが自らを壊した現象の呼び方です。
”自殺”なのか”自壊”なのか…行為は同じでも、その意味は全く違うと私は思いました。


・狂った人間の意識
”人間と機械”が混同した事により、死の概念だけでなく”人の意識”も曖昧になり、そして狂ったのではないかと感じてしまいました。それは、人間とアンドロイド(人形)との関係性です。

この事については、本作の登場人物であるハラウェイとキムが語った対称的な人形の美学に注目したいと思います。
子供の人形遊びは子育ての練習ではなく、むしろ子育てが人形遊びの快感の再現だと語る未婚のアンドロイド技師ハラウェイ。そして、人がアンドロイドを愛でるのは、両者が完全なる無意識の存在だからであるとし、自らも意識のない人形になろうとするキム。

両者の意見は異なりますが、その本質は”無意識への愛情”。
”魂”ある人間が、”魂の入っていない(イノセンスな)”人形を愛でるという事です。

”機械に限りなく近くなった人間”は自身の存在の曖昧さの為に、無意識の内に”人間に限りなく近い人形”を愛でる。
”人間と機械”の境界線の曖昧さは”愛情”といった感情までをも狂わすということだと思われます。

そう、狂せるのは人形や機械ではなく、人間の方ではないでしょうか。
人が招く災いは堪えないのかも知れないですね。{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 27

66.2 2 サイボーグで未来なアニメランキング2位
マルドゥック・スクランブル 排気(アニメ映画)

2012年9月29日
★★★★☆ 3.9 (177)
998人が棚に入れました
『天地明察』で2010年本屋大賞に輝いた人気作家・冲方丁の出世作にして2003年日本SF大賞受賞の傑作サイバーパンク小説『マルドゥック・スクランブル』を、原作者自らの脚本でアニメ化する全3部作の映画プロジェクト、その第3弾。

賭博師シェルの犯罪に巻き込まれた少女娼婦バロットと、委任事件担当官のネズミにして万能兵器のウフコックは、宿敵ボイルドとの激闘後に訪れた“楽園”にて、シェルの移し替えられた記憶は彼が経営するカジノの百万ドルチップの中に隠されていることを知る。

バロットは、シェルの罪状を白日の下に晒すため、チップを手に入れることを決意。
シェルの経営するカジノへ乗り込んだバロットは、ウフコックとの見事な連携により、伝説の女性スピナー、ベル・ウィングをも制した。

しかし、そんなバロットの前に、最強のディーラーにしてハウスリーダーであるアシュレイが立ち塞がる…。

最後に挑むゲームは、“ブラックジャック”。
果たして、バロットはアシュレイを破ることが出来るのか?

そして、ボイルド、シェルとの戦いの行く末は?

命をかけた最終決戦がはじまる-。

声優・キャラクター
林原めぐみ、八嶋智人、東地宏樹、中井和哉、磯部勉、藤田淑子、土師孝也
ネタバレ

やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

心に焦げ付く重厚サスペンス作品★

本作およびレビュー内容にはR18になりそうな過激な言語表現が含まれていますので、嫌な方は読まないで下さい。

■評価
テーマ性 :★★★★☆ 4.1
エログロ度:★★★★  4.0
純愛度  :★★★★☆ 4.3
シリアス度:★★★★☆ 4.3
おススメ度:★★★★☆ 4.1

■ストーリー
未成年売春婦のバロットは専属の雇い主であるカジノオーナー・シェルに突如焼殺される。しかし、生きる希望を持たぬバロットに救いの手を差し伸べたのは一匹のネズミであるウフコック・ペンティーノだった。そして、一命をとり止めたバロットは自身が焼殺された謎をウフコックたちと共に追っていくストーリー。『圧縮』『燃焼』『排気』の全3話 劇場版作品。

■感想
本作は著者:冲方丁さんの日本SF大賞を受賞した小説をアニメ化したもので、私は原作小説をすべて既読済です。本作はSF作品となっていますが、科学的な考察などは皆無であり、あくまでSF設定を用いたハードボイルド・サスペンス作品となります。(攻殻の様な世界観は求めない方が良いです)

個人的な感想としては、原作小説は超えられなかったが、難しい言語表現がならぶ小説の世界観を巧みに表現した良作だと思います。本シリーズは『生きる事とは何か?』というシンプルなテーマを持ち、一つの殺人未遂事件から真相を追う過程を、肉弾戦・頭脳戦・心理戦を用いて楽しませてくれる内容になっています。
そして、未成年売春・幼児虐待・強姦・近親相姦・暴力・ドラッグ・汚職・金・権力という人間の汚物と血反吐にまみれた世界観の中で、そのストーリの本質が生きる苦しさ、そして純愛という人の生臭さを描いているので本シリーズのテーマが光ってみえます。

また本作を鑑賞すると『生きる事は何なのか?』と考えさせられ、それは『自身や他者の存在を必要とし、必要とされる事』そんな分かりきった答えを理解しながらも、想い通りにはいかない人生の虚しさ(焦げ付き)や他者に愛される幸福感を本作品は感じさせてくれます。これぞハードボイルドの真骨頂です。

ただ、尺が足りない事でエンターテイメント性が薄れている点は残念です。個人的に本シリーズ通しての見所は、カジノでの頭脳戦・心理戦になりますが、このシーンでのバロットやウフコックの心理描写や、結果に対する過程の説明が少し足りないので、緊張感や悲壮感に物足りなさを感じます。
非常に惜しいです。

総じて、本シリーズはエログロ鬱なので、万人受けする作品ではありませんが、個人的には本作の続編(前章譚)であるボイルドが主人公のマルドゥック・ヴェロシティーのアニメ化も強く祈願しております。みんな~オラにパワーをぉぉぉ!!

レビューはここで一旦しめさせてもらいます。
ご拝読有り難うございました。


-------
■本作の謎とポイント
ネタバレになりますので、興味のない方は
読み飛ばしてくださいましm(_ _)m
{netabare}
Q1:バロットはなぜシェルに焼殺(未遂)されたの?
A1:原作小説から引用すると、生きる実感を得るために
  バロットは思いつきで自身の身元を確認してしまった
  事で、マネーロンダリングの秘密に触れたと思われ
  シェルに殺害される事になります。
  (本シリーズではよく描かれていませんでした)

Q2:ウフコックって何者?
A2:世界大戦期に楽園にいた三博士の一人に設計開発
  された人口知能をもったネズミ型万能兵器です。
  (ドラえもんのネズミ版です)
  仕組みは全くわかりませんが、異次元に物体を
  無限・永久的に保存し、必要なときに現次元に
  呼び出す様な構造になっていたと理解しています。
  そのためウフコックが銃になれば弾は無限に供給され
  続けます。

Q3:シェルって何者?少女達を殺害した動機は?
A3:オクトーバー社と結託し、身寄りのない少女達の
  戸籍を利用したマネーロンダリングを行う悪党です。
  そして、シェル(殻)という名の通り、過去の母親殺し
  という罪と苦しみから逃げるために、マネーロンダリ
  ングの証拠隠滅と併せて、自身の記憶の抜き取りを
  繰り返し、結局は中身のない殻の様な男に成り下がり
  ました。また動機ですが、どの少女も自分の事を
  知ろうとしてしまう事でシェルの過去の罪の苦しみや
  恐怖をフラッシュバックさせてしまい、A1の内容と
  あいまって動機となり殺害に及んでいました。

Q5:ボイルドって何者?
A5:彼は元々は戦術爆撃機のパイロットであり、過度の
  過労と処方されたオクトーバー社製ドラッグが要因
  で、誤って見方を爆撃してしまう罪を犯します。
  そして楽園に人体改造のモルモットとして送られ
  ますが、ウフコックという愛を与えてくれる存在と
  出会い希望を見出した人間でした・・・。

Q6:バロットはなぜ人体改造の順応率が高くて強いの?
  主人公だから?
A6:半分合っています。
  バロットは幼少期から大人の欲望に蹂躙される経験を
  もち、その経験から無意識の防衛本能により、自分の
  体の感覚を自由に無感・無心にする術を身に着けて
  いました。そのため、繊細なコントロールが必要な
  スナーク機能とバロットの愛称がよく順能率が
  あがった事になっています。

Q7:ボイルドは重力を操って弾丸をはじく程、無敵なのに
  なぜバロットの銃弾が当たったの?
A7:バロットが持つ能力はスナーク機能となっており
  電子機器の遠隔制御やハッキング、そして自身の肌
  から放出する電磁波をソナー代わりにして、物体の
  接近や動作を察知します。
  この機能を駆使してボイルドが銃を撃つ際に
  重力の壁に隙間ができる事を察知し、その隙間に
  銃弾を打ち込む事でボイルドは初めて被弾したのです。
  そのため、終盤のボイルドはチャクグレネードを使い
  バロットのスナーク機能を封じようとしたのです。

Q8:ボイルドのもっている銃は何?威力ありすぎでは?
A8:65口径のモンスター・マグナムです。通常の人間が
  撃てば両腕が脱臼するほどの威力ですが、ボイルドは
  重力でその衝撃を抑えて使用しています。
  現代でも55口径の拳銃が最大です。
  詳細はヴェロシティーで!!

Q9:ボイルドとウフコックは過去に何があったの?
A9:ボイルドとウフコックは楽園からでてからも
  マルドゥックスクランブルO-9の有用性を証明する
  ために、相棒として日夜事件と戦っていました。
  しかし、オクトーバー社の陰謀によりマルドゥック
  スクランブルO-9の遵守が難しい(ウフコックが処分
  される)と思った彼は、その陰謀を潰すため
  自分たちに不利な証言をする一般人たちを口封じの
  ために次々と暗殺したのです。
  その事が原因でウフコックはボイルドと離別し
  単独で任務に励みますが、実はボイルドのお陰で
  存在できているのです。そんなボイルドの愛を
  知っているからこそ、ラストシーンでウフコックは
  あんなにも落ち込んでいたのです。
  ここで何でボイルドはオクトーバー社側に
  ついてるの?という疑問が沸きますが、詳細は
  ヴェロシティーで!!

Q10:冲方丁さんは虚淵玄さんの二番煎じの脚本家
  じゃないの??
A10:私は違うと思います。
  冲方丁さんは数多くのアニメ作品を手がける私の
  好きな脚本家さんですが、私は虚淵玄さんも好きです。
  このお二方の共通点は触れ幅の激しいストーリーと
  鬱展開だと思っていますが、決定的に違う点が
  あると思います。
  それは虚淵さんは、容赦なき『死に様』を描いて
  強烈な心の傷(印象)を残しますが、冲方さんは
  主人公の過酷な『生き様』を描いて、苦しみと絶望を
  心にジワリジワリと染み込ませてきます。
  この似ているけど異なるすばらしき脚本家さん達の
  活躍に今後も期待しています。

少しでも本作を楽しむ糧にして頂いたら幸いです。
{/netabare}
-------

投稿 : 2024/06/01
♥ : 17

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

アニメ史上もっとも汚れたヒロインはもっとも純粋でした。

 対アシュレイ戦です。運に左右されないすべて計算と技術で勝てる超強敵になります。アシュレイはバロットの後ろにウフコックがいることを何となく感じ取っています。

 場を全てアシュレイのコントロールされて勝ち目のなくなったバロットにベルウィングがアドバイスをします。チップが目的じゃないだろう?と。一方でアシュレイの生きざまは100%誰かから奪う事。それをバロットに語るアシュレイの恫喝にバロットは立ち向かいます。

 カウンティング…アシュレイと同じ戦い方では勝てないことを悟ります。バロットが以前から持っていた、狭いとか広いとかの感覚=女の戦い方になって行きます。
 つまり対アシュレイ戦は男=計算・思考と女=感覚の戦いになって行きます。これが女として消費され社会から虐待差続けた女の生き方を学んだ結果…つまり、ベルウィングとの戦いとバロットの交流の意味になります。女を磨け…と。

 そして、最後はバロットが自分の戦い方の意味を知り、欲を捨て目標の達成を優先した結果、バロットは勝利を勝ち取ります。謙虚さが運を産みます。つまり、バロットは自分で「選択」できるようになります。

 原作ですと、この後まだカジノの戦いが続くのですが、そこがカットされたのが残念です。

 そして、生命保全プログラムは理不尽な要求をバロットに突きつけます。ウフコックはバロットを守ろうとしますが、バロットは自ら戦う選択をします。

 バロットは、シェルの歪んだ心や過去が明かされることで、また小児性愛・娘をレイプしていた人間に出会い、自らを重ねてしまいます。そのトラウマを乗り越え、そして、最後は…というストーリーです。

 
 一見、エログロを全面に出した、分かりづらいサイバーパンクモドキに見えますが、少女娼婦・死の淵から辛うじて生かされたバロットが出会った人たちとの交流、戦いを通じて成長して行く物語です。
 弱弱しい存在だった、バロットがどんどん気高くなってゆく=純粋性が増すことに注目でしょう。
 ダブルダウンでトリプルセブンからのイーブンマネー…長いカジノの戦いで、バロットの謙虚さ、無欲が生んだ感動の勝利の瞬間でした。


 ということで、近親相姦・少女売春婦というもっとも汚れていたバロットは、ウフコックの力を借り、もっとも純粋なヒロインに成長して行きます。ルーンバロットは、まさに現代のマグダラのマリア。そして声を失った人魚姫でした。


 この作品の原作に出合えて非常に幸せでした。アニメも雰囲気をかなり再現できていると思います。林原めぐみさん、ダークヒロインの感情表現が素晴らしかったと思います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 5
ネタバレ

burn さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

バロットはかわいかっこいい、ストーリーもSF好きには魅力的、だけど……

全三部見終わってのレビューです。

小説は未読なのですが、おそらくアニメは原作に忠実に映像化されているのでしょう。SFの設定やバロットのアクションなど、魅せる要素は沢山あるアニメに仕上がっていると思います。
ただ二部から三部に続くカジノのシーンは全体から見て多く尺を取りすぎな嫌いがあるのが惜しいところ。心理戦を{netabare}勝ち{/netabare}進んでバロットが色々と成長する重要なパートではあるのですが、ここまで多くの場面が割かれていると本作がカジノバトルアニメのように思えてしまう。地味なシーンなのにストーリー的にも重きが置かれているので、バトルアクションものとしての魅力は半減しています。ここはあえて構成を変えたほうがよかった。無敵系サイボーグ少女となったバロットのバトルが格好良いだけあって、なぜもっと多くそのシーンがないんだろうと残念に思ってしまいます。
あと、ラストがちょっと気に食わない。{netabare}なにか尻切れトンボで、B級映画を見た気分。ラストはバロットの心の変化を示すシーンを入れてちゃんと締めてほしかった。{/netabare}

まぁ、15歳元娼婦非処女でもバロットは美少女、万能ネズミ兵器、ウフコックに依存してしまうところも可愛いです。そんな彼女は戦闘では無敵のサイボーグ。だけど人生を捻じ曲げられた儚げな美少女は、様々に思い悩みます。視聴者に対して惜しげもなくポンポンスーを晒してくれますけどね(笑)

SF設定で上手いと思ったのは、サイボーグとなったバロットの高い反射神経。石ノ森章太郎「サイボーグ009」の加速装置をリアリティを突き詰めて現代風にすると、その一つの形は「脳の情報処理の高速化」になると思います。そういう設定は木城ゆきとの漫画「銃夢」でも少しありましたが、この作品は上手い具合に映像化しています。

設定や世界観は本当に良いと思うのです。しかし、この三部作が後にも続くシリーズのファーストエピソードならまだラストの{netabare}中途半端{/netabare}さも分かるのですが、続編は実現していないわけで。
林原めぐみさんの演技と、本田美奈子さんの歌も光っており、良作なサイバーパンクSFアニメであるとは思うのですが、私としては上記のような作品の重要な要素である二つの部分に対して減点せざるを得ないため、ひたすらに惜しいと思えるのです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 2

63.7 3 サイボーグで未来なアニメランキング3位
アップルシード APPLESEED(アニメ映画)

2004年4月17日
★★★★☆ 3.5 (177)
957人が棚に入れました
公安警察組織に所属しているデュナンとブリアレオスの活躍を描いた近未来サイエンスフィクション作品。
22世紀。世界は第五次世界大戦を経て荒廃し、北大西洋(アリゾナ州とカナリアの間)の人工島オリュンポスに設置された総合管理局が台頭、世界をその影響下に置いている。主人公である女性隊員デュナンと戦闘サイボーグであるブリアレオスは総合管理局の内務省部隊、ESWAT(ESpesialy Weapon And Tactics)に所属して対テロ作戦などに加わる。その中で巨大な計画、旧大国の策謀が明らかになっていく。
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

テーマ性や設定はいい。ストーリーはまあまあだけど単調です。

 本作は2004年ですが、原作は1980年代です。テーマである人類の滅びについては、1999年以前は不思議なリアリティがありました。人類の滅亡は何が原因でおこるのか、ということを今よりもみんなが真剣に考えていたのではないでしょうか。もちろんノストラダムスの予言という戦後日本最大のオカルト都市伝説があったからこそです。
 現実には今現在の方がいつ核兵器が飛んできてもおかしくない状況ですけど。

 オカルト、コンピュータ問題、東西問題などいろんな視点で語られ、創作物でも作られていました。その中でもSFはかなり多角的な視点で人類の滅びを描いていました。本作もその一つです。リアルタイムではないですが、2005、6年には見たと思います。

 本作については、戦争による人類の滅亡が予言される中、{netabare} 遺伝子操作…というか遺伝子を組み合わせて作られた新たな人類に世界を明け渡すかどうかが、テーマでした。新たな人類に生殖機能を付与しメンテナンス不要にし、逆に人類の生殖機能を停止させることで安楽死を迎えよう、{/netabare}というのが本作のメインテーマです。
 で、その舞台になるのは戦争で荒廃した世界の中に作られた人工の都市でした。

 このテーマについては、初めは「ん?」と思うのが、新人類を作る必要があるかどうかでしたが、人類が滅びるときに生活出来なきゃ困るし、穏やかに最後を迎えるためには優しい新人類が必要なのでしょう。

 この人間-新人類-ロボット彼氏という3種類の人類の在り方プラスAIという構造が、生殖問題と相まって愛情とか感情についての多様性と可能性を示唆していました。が、示唆どまりだった気もします。

 本作は、滅びや人類の愛情の形問題は解答を必ずしも出しません。考えようによってはバッドエンドです。が、多分ここでの問題提起が攻殻機動隊にもつながり、ネット、情報、魂、集合的無意識などの「人間とは何か」という問題につながってゆくのでしょう。

 ストーリーは、開始24分くらいのドライブのシーンから始まる10分くらいで世界観や設定など丁寧にセリフで説明してくれますし、その後の展開もさらに10分くらいで理解できます。非常にわかりやすく説明されたあと物語が展開します。その後の話もほぼセリフでの説明があるので攻殻機動隊のようなめんどくささは無く、非常にわかりやすいです。

 その分、ストーリーそのものについては、面白みに欠けるのも事実です。ヒロインに感情移入することで、サラッと見る分には十分面白いんですけど、奥行きがある映画かといえば、そうでもないです。

 それと冒頭の20分くらいがかなり冗長なバトルシーン等で占められていました。この冒頭のシーンの冗長感でかなり損している感じもあります。

 キャラについては、ヒロインもいいんですけど、初めモブの案内役かと思ってたヒトミやメカニックの男がかなり重要でしたし、なかなか新人類の性質をキャラに落とし込んで良くできたキャラだったと思います。ただ、ロボット彼氏がちょっと内面が残念だった気がします。

 本作の結末近くのパスワードの場面については、まあネタバレになりますので描きませんが、ヒトミの役割というか正体についてはちょっと考えますね。単純にその役割だけということかもしれませんけど、なんか乗っかってないと浅い感じですし、その余白は十分ありそうですけど。

 テーマや設定、キャラは良かったんですけど、ストーリーがちょっと単調だった気もします。原作は1980年代ですが本作は2004年ですから、その辺はちょっと古臭さを感じました。

 で、本作で外せないのが、3D表現ですけど、無機物(メカ、建物など)は非常に迫力がありました。これは素晴らしかったと思います。ただ、キャラですね。「3DCGとしては」カッコ付きのすごさでしかありません。本作の人物を2D作画したほうが10倍いい絵になったと思います。

 ただ、ヒロインの戦闘時、顔から立体感を無くしたのっぺりしたレンダリングの時はかなり良かったと思います。つまり、アニメっぽくしたときは、コスチュームの硬質感は3DCGとマッチしていたのだと思います。ただ、通常の衣服の時はやっぱり残念でしたけど。そもそも色っぽくないですね。各キャラが。

 メカニカルデザインは後…というか映画的にはこれ以前の攻殻機動隊とほぼ同じデザインコンセプトですね。ただ、世界観を共有しているかというとどうなんでしょう?ちょっとAIや世界観の方向性は違う気がしますので、世界観の統一性は感じませんでした。

 ちょっとエイリアン2のような映画の影響が感じられました。拾っていけばハリウッド映像の影響が大きいと思います。それが既視感につながって新鮮味が無かった気がします。


 ということで総評すると、コンセプトは素晴らしいと思います。テーマ性は2022年現在の状況を表したようなテーマで普遍性があるテーマだと思いますし、結論を見せるのではなくオープンエンディングにして考える余韻があるのもいいでしょう。

 ストーリーとしてはちょっと単調だった気もします。中だるみというよりも前弛みですね。
 ただ、分かりやすくテーマが織り込んであり、1時間40分の中で主義主張についてはかなり深い話だったと思います。物語が軽いですけど。セリフの説明が多いですけどね。

 映像はバトルシーン多目で迫力があります。が、既視感もあります。人物の3DCGはやはり3Dとしてはがんばったんでしょうけど、2Dのような魅力がないのは残念です。

 ということで、人類の行く末については1999年以前の世紀末感が今は薄れているので、若干ピンとこないかもしれませんが、逆にほぼ第3次世界大戦の真っただ中の状態の今、改めて見る価値があるかもしれません。

 ただなあ…なんか単調で飽きるんですよね。全体的に…構成かなあ。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6

HIRO さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

荒牧伸志さんの監督デビュー作品。

2004年劇場映画アニメ

原作は士郎正宗さんのマンガ作品です。
アップルシード APPLESEEDは荒牧伸志さん監督デビュー作品です。
フル3Dライブアニメという表現手法によって映像化された作品です。

(フル3Dライブアニメ:3DCGをセルアニメのような画風に変換するトゥーンシェーダーと、登場人物のリアルな動きを可能とするモーションキャプチャ技術を融合させた手法を示す造語である。セルアニメに近い画風でありながら、従来のアニメーションと比べ、自由なカメラワークやよりリアルな動きが表現できる。)

まず驚いたのは2004年作品での画像クォリティーの高さ。2014年にアップルシード アルファを発表していますが、さらに進化しています。

難を言えば、3DCG作品全般に見られる機械の描き方や動きの速さに人の顔の表情がついてこれず主人公、ヒロインが人形のように感じてしまうところです。
そうはいえど2014年製作のアップルシード アルファにおいてはアバターやタイタニックの監督のジェームズ・キャメロン氏が「もはや新次元の領域だ」と言わしめているように次の時代を担っている荒牧伸志監督デビュー作は観ておいて損はないと思います。

あらすじ
世界大戦後の廃墟で生き延びていた女性兵士デュナンは、人類への奉仕者として肉体・感情を制御されたクローン人間バイオロイドの管理する理想都市オリュンポスに連行され、そこで全身サイボーグ化していた恋人ブリアレオスと再会する。彼の所属する元老院ESWATの一員となったデュナンは、やがてバイオロイドの開発とオリュンポス計画に自分の両親が関わっていた事実を知り、自身もバイオロイドの軛を解き放つ鍵「アップルシード」をめぐる陰謀に巻き込まれていく。

・スタッフ
監督 : 荒牧伸志
脚本:半田はるか、上代務
絵コンテ-:秋山勝仁、九市、吉田英俊、荒巻伸志
製作 - アップルシード・パートナーズ(ミコット・エンド・バサラ、TBS、ジェネオン・エンタテインメント、やまと、東宝、TYO、デジタル・フロンティア、MBS)

キャスト
デュナン : 小林愛
ブリアレオス :小杉十郎太
ヒトミ :松岡由貴
ウラノス将軍 :藤本譲
ハデス :子安武人
アテナ :小山茉美
ニケ :山田美穂
義経 :森川智之
ほか

投稿 : 2024/06/01
♥ : 13

h02dvvd さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

作画が気にならなければアリ

【萌え】★☆☆☆☆ 【シリアス】★★★★★
【ヒューマンドラマ】★★☆☆☆ 【アカデミック】★★★★☆
【ギャグ】☆☆☆☆☆ 【演出】★★★☆☆

・目がでかい
 全編フル3DCG(フル3Dライブアニメっていうらしいです)でお送りしているこの作品。かなりリアルです。でまあリアルな分には問題ないのですが、キャラクターだけはアニメ絵です。そのため目の大きさがアニメキャラのそれに近い。「どこぞの少女漫画なみにでかい」ということはないのですが、周りの風景がリアルなだけに違和感バリバリ。最初のシーンでデュナンがゴーグルを外した時に「凛々しい!」と感じるか「ん!?」と感じるかでその後楽しめるかどうかが変わってきそう。ただ慣れるに越したことないです。ファイト。

・他は素晴らしい
 上に書いたキャラクター造形など「いかにも作り物」みたいなCGに抵抗がなければ、もしくは慣れてしまえばとても面白い作品。テーマは「人間とアンドロイド」(作中にバイオロイドという言葉が出てきますが要するにアンドロイドのことです)という古典的なものですが生殖機能の有無を中心に絡めてくるのは「ほほー」といったところ。そして特筆すべきはやはりアクション。モーションキャプチャーを使用しているということで動く動く。キャラクターが大きく映っていなければ3Dであることを忘れるほどです。

・アクションSFロボ映画
 基本的なつくりは「いかにしていいタイミングでアクションシーンを持ってくるか」というハリウッド映画のようなものなので、同じシロマサさん原作の攻殻機動隊(特にSAC)を期待して観るのはやめましょう。きれいにまとまっている良作です。ロボットがたくさん出てくるのでロボ好きはぜひ。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

61.6 4 サイボーグで未来なアニメランキング4位
トワノクオン 第1章 泡沫の花弁(アニメ映画)

2011年6月1日
★★★★☆ 3.6 (154)
834人が棚に入れました
近未来の東京――。ベスティアと呼ばれる特殊能力に目覚めた少年少女が確認されるようになっていた。自らの能力に飲み込まれ、暴走するそんなベスティアたち。そのベスティアを人知れず鎮圧するためのサイボーグ部隊を擁するクーストースが暗躍する。ある夜、ベスティアの少年が追いつめられた時、獣のようなベスティアが現れ、深手を負いながらも、少年を連れ去る。それはインサニアと呼ばれ、クーストースがかねてから狙っている謎のベスティアだった。翌朝、ベスティアの少年――ユーマは目を覚ます。そこはファンタジアム・ガーデン。ベスティアとなった少年少女が集う場所だった。そしてユーマは、クオンという少年と出会う……。

Baal さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

能力に目覚めしモノたち

アニメ監督・飯田馬之介とアニメ制作会社・ボンズ

によるオリジナル企画として全六章の劇場アニメ

制作された作品です。これはその第一章です。


異能の力を覚醒させてしまった人たちの

それらを人知れずに排除しようとするものたちと

それらを救おうとする人たちの戦いが描かれて

います。


第一生は能力に目覚めてしまったアトラクターと

呼ばれる存在をすべて救おうとする主人公クオンと

新たに目覚めてしまった少年やキリという少女

が出会う物語です。


まだ第一章ということでどうして能力に目覚めてしまった

人が現れていくのか、現れる理由とは。そして

なぜ排除しようとするものと守るものがいるのか

というようなことはほとんど物語の中には出ていません。

どちらの存在も秘密裏に動いているとのことで

戦いが周りを封鎖した状態にしてから始まり、

その戦いが異能によって体を異形の存在とした

クオンたちとその秘密裏に動く異能に目覚めたもの

を排除しようとする組織のサイボーグととなっています。

あまり異能といっても魔法のような感じではなく

相手もサイボーグということでかなりが肉弾戦と

なっていて派手な演出とかは感じられなかったですが

その肉弾戦の動きは結構よかったと思います。

まだ存在等の理由が明かされていないので

これからそういうことにも焦点が当てられた

彼ら彼女らたちの物語も見ることが出来るのかなと

思うので第二章以降も楽しみです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 14

りんご さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

劇場放映6分割にした意味が後に生かされればいいですが。

サイボーグ 対 生まれ持った特殊能力を持つ者の戦いのお話。

最初の印象は、攻殻 対 ZETMAN でした。
主人公クオンの能力解放後の姿がZETMAN系だったので、
そういうキャラデザが好みに合わない私としては、
「もしかしてこれが主人公とか言わないよね?」と思ってしまいました。

ところが、変身後の姿は置いておくとして、
クオンはとても可愛いです。
「みんなを守らなくちゃ」とか、
助けたい子に対して「やめるんだ!」と言う場面は、
どうしてもアンパンマンを思い出しましたが、
その強い思いがどんな経験から来ているのか、
彼の過去に興味を引かれます。

クオンを演じる神谷さんの声域が、
個人的に好きなところドンピシャでとても嬉しかったです。
きゅんきゅんしました。本当素敵な お声です。

ストーリー的には、何故6分割45分にしたのか謎です。
これといって引きが特殊、どうしようもなく気になるということはなく、
全編映画館でコンプした人は、ストーリー目当てではないのかな。
いても少ないかな、と思います。
一章ということで、登場人物たちを
とりあえずパズルのピースのように出したところまで、といった感じです。

放映の間隔と値段が気になりました。
まさか2時間映画と同じ値段を取ったとは思いませんが、
一月に45分一章ずつか……。
一章だけ劇場で観て残りはDVDで、という人も多かったのではないでしょうか。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 2

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

2011年を代表する・・・ってか今年最高のアクション超大作!!!

『08MS小隊』などでお馴染み、飯田馬之介監督の遺作となってしまったオリジナル映画


近未来の東京を舞台に、異能者となってしまい謎の組織から命を狙われる若者達
これを救うべく立ち上がった変身ヒーローの戦いを描くミュータントバトルアクションです


全6章の連続公開モノということで、
この第1章自体は導入的な要素が強く、見終えても映画を一本見たという感じにはならない
空の境界的なものを期待しても無駄です
最近なんか多いですね、こーゆー映画っぽくまとめない映画
普通にハイクオリティなOVAの1話、という感覚


ただこの第1章を少しでも面白いとも思っていただけた方・・・グロ描写に耐性のある方・・・バトルアニメが見たいと思っている方・・・
是非に全6章の完走を目指してください!


乱戦&高速なバトルシーンや圧巻の変身シーンなど、
作画的な見どころは多数あり
今年のアニメ全ての中でも最高の正統派アクションに仕上がっております^q^


豪華声優陣の演技は丁寧だし、キャラクターデザインも可愛い!
後半はロマンスを感じるお話の比率も高くなってきますよ
マジ、スクライドとか見てる場合じゃねーっす!w

投稿 : 2024/06/01
♥ : 18

66.8 5 サイボーグで未来なアニメランキング5位
クラッシャージョウ(アニメ映画)

1983年3月12日
★★★★☆ 3.7 (54)
209人が棚に入れました
 宇宙のなんでも屋“クラッシャー”であるジョウとその仲間たちの活躍を描いた、SF冒険アクション。原作は高千穂遥の同名小説。本作の脚本も同氏が執筆。キャラクターデザイン・脚本・監督を、原作小説の挿絵を担当している、安彦良和が手掛けた。時は未来。人類は宇宙へと進出し、他惑星への移住を開始していた。クラッシャーを生業としているジョウたちは、休暇中に飛び込みで依頼された仕事を“クラッシャー評議会”を通さずに引き受けてしまう。仕事の依頼人はバレンスチノフという男性。依頼内容は、病気の治療のために冷凍保存されている大企業の令嬢・エレナを、手術のできる医師が待つ星へと送り届けて欲しいというもの。だが、航行中に機体が原因不明の事故に遭い、全員が気絶している間に、エレナとバレンスチノフが消えてしまう。実はこれら一連の事件はすべてバレンスチノフが仕組んだ芝居だった。依頼人バレンスチノフは本当は海賊の一味で、エレナも彼が誘拐していたのだ。しかも、彼女はエレナという女性ですらなく…。果たして事件の真相は? ジョウたちは汚名をすすぐことができるのか?

声優・キャラクター
竹村拓、佐々木るん、小林清志、小原乃梨子、二又一成、武藤礼子、大塚周夫、納谷悟朗、小林修、久米明

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

宇宙が、熱い

<2021/6/13 追記>
CSで放送されてたので久しぶりに見ました
あらためて面白いですね。

アニメとして、そしてSFとしての出来が良い。
クラッシャーという稼業がカッコよい。

ただ一つ残念なところとして
本作(映画版)は原作に比べ少しストーリーが薄い感じがするのです。
原作の複数のストーリーの面白いシーンをつなぎ合わせたような気もする。
なんかぎこちないんですよね。
トラブルに巻き込まれていく必然性や
ゲストヒロインとの関係性や
キーとなるテクノロジーのヤバさや
そこら辺の掘り下げが物足らないからラストのカタルシスが物足らない

原作はそこら辺が丁寧によくできてる印象があって。
同じく宇宙海賊を敵に回す原作第2巻「撃滅!宇宙海賊の罠」なんかは物語にズンズン引き込まれました。

他にも第3巻「銀河系最後の秘宝」、第6巻「人面魔獣の挑戦」、そして第4巻「暗黒邪神教」と第7巻「美しき魔王」の話なんかは大好物でした。
タイトル安っぽいけど笑

でも総じて面白いですよ。
今のアニメにはなかなかない「スペースオペラ」としての面白さがあります。。

<2017/12/12初投稿>
昔映画館で観ました。
原作が好きで。
映画も好きでした。

そんな好きだった作品をうろ覚えでレビューしてみます。

ワープ航法が開発され普及し人類が地球から銀河の各地へ飛び出して数十年後。
極端なガス状のものを除くあらゆる惑星がテラフォーミングされ、いろんな恒星系の惑星に人は移り住み、無数の太陽系国家が形成された時代。
そこには犯罪以外のあらゆる荒事を生業とするクラッシャーと呼ばれる猛者達がいました。
元々はテラフォーミング作業を主業としていたクラッシャーは時代が移るに連れ、宇宙空間の巨大デブリの除去から要人警護、重要物の搬送、人探しなど仕事は多方面に広がり、比例して軍には及ばないものの強力な武力と高度な戦闘力を得ていきます。

そんなクラッシャーの一つ、チーム・クラッシャージョウが大暴れする痛快アクション・スペースオペラです。

クラッシャージョウは最高のSランクを誇る凄腕チーム。
若干18歳にしてリーダー、超腕っこきで技術も根性もある、ぶっきらぼうなイケメンの「ジョウ」。
パイロット兼リーダーの補佐兼後見人、全身の90%をサイボーグ化しているクラッシャー経験値∞の大男「タロス」。
紅一点で元王女とは思えないようなやりたい放題の「アルフィン」。
元浮浪児で15歳と経験は浅いがすばしっこいムードメーカーの「リッキー」。

こんな凸凹チームがとある大きな依頼を受けるところから物語は始まります。

ジョウのチームは受けた依頼を淡々とこなそうとしますが、そこには巨大な陰謀を背景とする巧妙な罠が。
彼らは騙され、窮地に陥っていきます。
そして、そこからの・・・!
あとは観てのお楽しみですが、とにかくハラハラ、ドキドキしたのを覚えています。

クラッシャーはそのルーツからならず者と見られがちですが、実は厳しい掟に縛られ、犯罪に加担したとみなされるとクラッシャー業界から追放されてしまう。(と言いながら裏社会から巧妙に情報を入手したりなんだりするんですけど 笑)
そんな縛りがあるせいで追い込まれ感がさらに増していきます。

そして、クラッシャー達が使う装備などがまた子供心をくすぐる♪
・同サイズの宇宙船では銀河中でも最高性能を誇るミネルバ
・ミネルバに搭載された複座型戦闘機のファイター1とファイター2
・おなじくミネルバ搭載の汎用型戦車ガレオン
・防弾耐熱で、あらゆる物質を燃え上がらせるアートフラッシュを胸のボタンにあしらった多機能スペーススーツのクラッシュジャケット
・小型の小惑星を一瞬で消滅させる分子爆弾
・宇宙空間でも発砲できる無反動ライフル
・ライトセーバーやビームサーベルを思い起こさせる電磁メス
・口径により破壊力が異なる戦艦兵器のブラスター砲
・通常航行の加速によるGを無効化していく慣性中和機構

などなど。

声優も覚えてます。
ジョウは竹村拓、アルフィンは佐々木るん(他にどんな作品出演されてたかはすみません。知りません)
タロスは次元大介の人。リッキーは元祖のび太。

スピード感あふれるアクションとダイナミックな宇宙での戦闘が安彦良和クォリティで楽しめます。

書き忘れてました。
安彦良和の初監督作品です。

うろ覚えなので雑な感じになってしまいましたが、数年前に映画館でリマスター・リバイバル上映してたようです。

こういうの好きな方は是非お試しくださいませ。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 31
ネタバレ

kororin さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

旅に終わりはない~Oh! Our trip would never end♪

昨今はGA文庫・MF文庫J・角川スニーカー文庫等々ラノベ繁盛で人気が出るとすぐアニメ化されてますね。
かくいう本作も朝日ソノラマ文庫(現在は解散)で人気が出てアニメ映画になったようです。

原作は高千穂遙先生。クラッシャージョウシリーズ第1作目「連帯惑星ピザンの危機(1977年)」がデビュー作らしいです。
シリーズ全編の挿絵を安彦良和先生(もう漫画家だから)が担当されておられます。
時おりしも第1次アニメブームの真っ只中、特にSFに飢えていた青少年たちは文庫本「連帯惑星ピザンの危機」の表紙のカッコ良さそうな雰囲気に思わずジャケ買いした人も多いはず。
SF活劇でイラストカッコよくて創造と妄想を夢見ていたアニメファン(この頃はまだオタクという言葉はなかった)は「アニメになんねーかなー・・・」と思ってたら6年後に劇場映画に!
監督・キャラデザは安彦先生。メカデザインは「スタジオぬえ」。戦艦コルドバをデザインした(マクロスの)河森正治さんは自慢してましたが動画はマンはかなり泣かされたというのは有名な逸話。
ゲストキャラに当時の注目されてた漫画家のデザイン協力もあり、かなり期待されてたんですが・・・・・受けは今一つだったようです。
私もあまり見る機会というか縁が無かったので公開から三十余年たちますが「1度」しか見ていません。偉そうに言うつもりは無いのですが感想として・・・なんか盛り上がらなかった感じが。
安彦先生も後年、制作にはあまり乗り気じゃなくてスペオペの面白さがよくわからなっかったとおっしゃってました。
でも作画は全然手を抜いてないのでプロ作品としては尊敬に値します。

舞台は宇宙開拓が進んだ未来。そこで「クラッシャー」という職業で活躍するジョウのチームの物語。

【クラッシャー】
報酬さえ払えば何でも引き受ける宇宙の何でも屋。但し犯罪は絶対引き受けなない。ボディガードや用心棒・災害事故のある管轄行政が出来ない人命救助や危険物処理など様々。
スパイミッションとかもあるので身を守るための武装は自前の特注品。しかし地元治安組織(警察・軍隊)とソリが合わないのが悩みのタネ。(「他所モンが偉そうにするなっ!」ってゆうアレ)
特に連合宇宙軍とは犬猿の仲。

【ジョウのチーム】
ジョウ:若くして特Aクラスのクラッシャー。クラッシャー創設者ダンの実子。度胸のいい行動と判断力は絵に描いたようなヒーロー像。ガッチャマンでいうところのケンとジョーがミックスした感じ。
タロス:見た目がドズル・ザビ。かつてダンの右腕だったベテランクラッシャー。チーム専用機ミネルバの操縦士。ガッチャマンでいうところのリュウ。
アルフィン:惑星ピザンの元王女。ピザン事件でジョウに一目惚れ。ミネルバに密航してまでついてきてクルーになったお転婆娘。ガッチャマンでいうところのジュン。
リッキー:チーム最年少でお調子者のムードメーカー。アルフィンとは姉弟みたいな仲でタロスとは喧嘩仲間。ガッチャマンでいうところのジンペイ。
ドンゴ:サポートロボット。リッキーをよくからかったりする人間クサイところがある。ヤマトでいうところのアナライザー。
{netabare}
物語は1度しか見ていないので記憶があやふやなんですが、ジョウが謎の積み荷をミネルバで運搬中、船が勝手にワープして気を失うことに。
気が付いた時には積み荷が消えており、納得がいかないジョウは独自に調べると宇宙海賊マーフィーパーレーツが「宇宙船を外部からワープコントロールする装置」を手に入れたけど未完成で、完成のカギを握る女性、ドクター・マチュアをめぐっての大活劇。
ラストでマーフィーパーレーツを掃討し装置を破壊した今回の事件はジョウは何も知らされず仕向けられたことにプンスカ怒り、エアカーでアルフィンと共にハイウエイを猛スピードですっ飛ばすシーンでは背景がフル動画でスゴかったような記憶が・・・{/netabare}

機会があればもう一度見直してみたいものです。

日東・タカラが出してたプラモ。ミネルバ・ファイター1・コルドバ・ガレオン・パワードスーツetc、欲しかったなあ・・・・

投稿 : 2024/06/01
♥ : 5

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

対象はスペースオペラ好き、SFアニメ史に興味がある人…くらいですね

 最近の背景が精密で人物が簡素な画面ではなく、背景が簡素でメカに気合いが入っている感じなのが古さを感じます。人物とメカは丁寧ですけど、当時の日本はアニメにまだ金をかけられなかったのか、動きは単調でした。だからでしょうか。瞳の動きで演技をさせていましたね。

 安彦良和氏がキャラデザ、作画なのでガンダムっぽいのはもちろんですが、スタッフに河森正治氏とか板野一郎氏が入っているせいか、メカはマクロス感があります。キャラの鼻の下の影もマクロスっぽいです。そういう優秀なスタッフが集まったので、画面は綺麗でした…画面の止め絵だけは。というより妙に色が綺麗でしたね。宇宙もちゃんと黒かったし。

 ストーリーはジュブナイルですから極めて単純です。宇宙空間や様々な星で主人公たちが陰謀に巻き込まれ窮地に立たされますが、大活躍で勝利ということです。小学生の時、原作が好きでよく読んでいたので、レンタㇽ屋で借りてみたら、内容の浅さに驚いたものでした、というレベルの内容です。ナウシカ以降でアニメ映画の意義が変わりましたからね。本作は旧時代の遺物でしょう。
 スペースオペラって、宇宙を舞台にしたソープオペラ(安っぽいメロドラマの事)っていう意味ですので、その浅さが大事なんですけどね(今は違う意味とされています)。要は活劇です。

 裸も出てきますのでターゲットはミドルティーンでしょう。今のラノベよりキャラ達は背伸びして大人の世界感はありますし、物語の組み立てもしっかりしていますが、その「大人の世界への憧れ」の単純さに違った意味での幼さがある感じです。

 アルフィンの造形も非常にティーン受けするだろう非常に可愛い造形です。ただ、マスコットというかなんというか、彼女じゃなくても置き換え可能なキャラですよね。お姫様設定が全然活かせていません。ここも子供向け感がある原因です。ただ、アルフィンのデザインはいいですね。今見てもときめきます。ガンダムのメンバーにいたら大人気だったでしょう。

 設定の説明不足も感じます。私は原作を何度も読んでいたので困りませんでしたが、要するにファン向けなんでしょうね。だから話の作りもジュブナイルの読者層であるミドルティーン向けなのでしょう。
 せめて設定の緻密さの説明があればもう少し奥深さがあるんですけど。原作よりも更に子供っぽい原因はこの辺りでしょうか。
 
 アニメ史的な位置付けとしては、当時のアニメの状況や著名なスタッフをエンドロールで楽しむとか、声優さんに歴史を感じるとかくらいしかないですね。当時としてはかなり出来がいい作品だと思いますけど。

 私にとっては思い出深い作品ですが、本作を名作・秀作と強弁する気はありませんし、面白いかと言えばスペースオペラ好きならまあまあ面白いかもしれません、という感じです。

 2022年2月現在、アマプだとレンタル料が発生します。DアニメにもネトフリにもUNEXTにもないみたいです。まあ、そういう作品です。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 9

62.4 6 サイボーグで未来なアニメランキング6位
アップルシード アルファ(アニメ映画)

2015年1月17日
★★★★☆ 3.7 (33)
205人が棚に入れました
世界大戦後、国家や情報網が破壊し尽くされ廃墟となったニューヨーク。元・SWATのデュナンと、彼女の恋人で全身サイボーグのブリアレオスは、不本意ながらギャングから依頼された仕事をこなして日々の糧を得ていた。街を出たいと思いながらも叶えられない日々が続く中、自動兵器に襲われている男女を助けたデュナンとブリアレオス。アイリスとオルソンと名乗るこの二人との出会いはやがて、人類の希望を守るための戦いへと、二人の運命を導いていく。

声優・キャラクター
小松由佳、諏訪部順一、悠木碧、高橋広樹、名塚佳織、東地宏樹、玄田哲章、堀勝之祐

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

【かつてこんだけリブートしたアニメがあったでしょうか?でも好きだからサ・・・容赦なくぶった切るぜヨ】

頓挫したテレビシリーズを除いてもなんと5回目のアニメ化です
しかも続き物ではなく全部リブートってのが珍しい
原作はお馴染み、士郎正宗のメジャーデビュー作
戦争で荒廃した未来を舞台に女戦士デュナンとサイボーグになってしまった恋人ブリアレオスの活躍を描くSFアクションです


今回初の試みとしてシリーズ共通の舞台である未来都市「オリュンポス」は登場せず、オリュンポスに辿り着く前のデュナンとブリィを描くという物語になっています
戦争で廃墟と化したニューヨークを支配する悪党、双角に傭兵として雇われていた二人
双角との縁を切るべく受けた最後の仕事で、偶然にもドローンに襲われる少女アイリスと彼女に付き添う青年兵オルソンを助けることとなる
アイリスとオルソンは秘密任務の遂行中で何者かの追っ手が掛かっていた
果たしてアイリスとオルソンの真意と目的とは・・・


大好きな作品なので、それに5作目ってこともあって無礼千万、遠慮なく書いてきますねー


監督は2作目(04年版)と3作目(『エクスマキナ』)でも監督を務めた荒牧伸志
時系列的にはシリーズのエピソード0となるわけですが当然これまでのシリーズや原作とは一切無関係で完全に一新された世界観
つまり間違ってシリーズモノとして観ると矛盾だらけ


デュナンの人となりはリブートを重ねるごとに破天荒な男勝りからどんどん人間の女の子らしくなっていきますが、今作は例の通り苦悩、葛藤する様が描かれていて、たぶん“史上最も弱いデュナン”です


04年版で注目を集めたトゥーンシェードは用いず、『STI』や『ハーロック』で採用された写実的なCGで描かれたキャラデザ
それに演じるのが小松由佳さんってことでシリーズ中一番若いはずなのに、むしろ一番老けて見えるのが笑えます
↓声と見た目だけで年齢を表すとこんな感じですかねw↓
真綾デュナン<鶴デュナン<原作デュナン=勝生デュナン<小林デュナン<小松デュナン


トゥーンシェードの先駆者たるはずの荒牧監督
本人も言ってますけど、いまや『楽園追放』でトゥーンシェードが市民権を得た現代ではむしろ時代錯誤なんですよね;
しかし今作で写実的なCGに回帰したのには、今作がオリュンポス絡みの政治的、哲学的なお話ではなく、もっと身近な物語であるため、ドラマ性との協調を図る意味が込められてるそうです







でもホントのところは主な顧客が日本人じゃなくて欧米のファンだからでしょ、ってオイラ思った(爆
監督は『HALO』とか『STI』である程度世界的な評価も貰ってましたし、「MASAMUNE SHIROW & SHINJI ARAMAKI」の名前に飛びつく欧米人がメインターゲット、日本人はついでなんじゃないかとw
実は欧米では日本に先駆けて2014年7月には円盤が発売されてます
先に英語版を作ってた、ってのと競合映画の多い時期をあえて避けるという意味で2015年1月上映ってワケです
あっ、でも日本の劇場でも限定先行発売というカタチで円盤を手に入れることが出来ますよ


確かに映像表現的にはシリーズ中最高のクオリティですb
かの巨匠ジェームズ・キャメロンも絶賛(凄い)
話題の男、虚淵玄も絶賛(ってかキャメロンと同列かよw)
ニューヨークという現実の都市の朽ち果てた姿もリアリティ重視の映像のお陰で臨場感たっぷり
あまり制作時間に余裕の無かった作品ながらよくぞここまで!って感服ですわ


・・・いや;
でも流石に【上乳とおへそ丸出しのタンクトップ姿】のキャラデザはどうかと思いますよw兵士としてw


双角、マシューといった原作ではお馴染みながらアニメ化されてなかった人物たちがかなり無理矢理ではあるが登場
デュナンやブリィとの腐れ縁が明かされます
あ、マシューは別作品でアニメ化してたかw


ランドメイト、多脚戦車といったお約束のメカも登場・・・でもランドメイト戦だけはケレン味たっぷりの『ⅩⅢ』が一番かっこよかったなぁ・・・


声の演技の聞きどころとしては荒廃した世界に絶望し、苦悩するデュナンを演じる小松さん
それと謎の少女アイリスを演じる悠木碧ちゃんに注目したいですね
そしてニッポン放送のよっぴー(爆


うーん、でもエンドロール前とエンドロール後のエピローグは蛇足でしかないよねぇ・・・無理矢理過ぎるぅ・・・w


あぁ、でも音楽は“今回も”素晴らしかったですよ
CAPSULEの中田ヤスタカ、RIP SLYMEのDJ Fumiya、tofubeats、RAM RIDER、80KIDZ、nishi-ken・・・とまあそうそうたる、そして現代のEDMをリードするメンツ
毎度音楽面に関しちゃホント完璧ですよ、このシリーズb


ところで・・・オイラの個人的には士郎正宗って
「攻殻<アップル<ドミニオン<ブラックマジック」
なんですわ
【戦車流行ってますし、『ドミニオン』もう一回アニメ化しようぜ?】

投稿 : 2024/06/01
♥ : 20
ネタバレ

もぐりん。 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

アニメ作品では、人の3DCGのリアル描写はこのくらいで止めておいたほうがいい

士郎正宗原作漫画のフル3DCGアニメーション、同名のフルCGアニメが
2004年に公開されていますが、続編ではなく、原作1巻以前のエピソードを
描いています。

つまり原作にはないオリジナルストーリーってことになりますね、
ただ、忠実に原作以前の世界観かと言えばそうではないようです。

前2作はフルCGだけどあえてセルアニメ調の仕上げでしたが、本作は
実写に近いフォトリアル調で制作されています、この辺りは好みの
分かれるところですね。

【ストーリー】
大戦後の廃墟で暮すブリィとデュナン、その土地を仕切る双角と言うヤクザな
サイボーグの下で傭兵として働くが、 ある仕事でアイリスとオルソンを
やむを得ず助けたブリィとデュナンが巻き込まれた形で行動を共にする。

【登場人物】/【CV】
デュナン・ナッツ :本作の主人公でメインヒロイン /小松由佳
ブリアレオス・ヘカトンケイレス :デュナンの恋人で相棒 /諏訪部順一
アイリス :本作のキーマンの少女 /悠木碧
オルソン :アイリスの用心棒 /高橋広樹
双角   :ブリィとデュナンの雇い主 /玄田哲章
タロス  :アイリスを狙うサイボーグ /東地宏樹
ニュクス :タロスの仲間女性型サイボーグ /名塚佳織


【感想】
原作ファンで、作品既読、キャラも世界観も十分とは言えないまでも理解
しているつもりです、原作以前の各キャラ達のストーリーと言うことで、
非常に楽しみにして視聴しましたが・・・

うーーーーーーん、ヌルイです(´・ω・`)

いや、アクションや戦闘シーンはサスガに素晴しい!前作を超えるものだと
思います! CGを動かすためのモーションキャプチャーには、
フランス外人部隊の元兵士、細川氏を起用するなど動きや銃火器の取り扱いは
リアルと言うよりは本物であり、最大の見所でもありますww 

爆発や火器の発砲シーンなどはリアルで迫力満点で拘りを感じるところ!
(多脚砲台の主砲ってレールガンなんじゃないかな??)

廃墟や背景の描きこみも精細で、奥行きや立体感が強調された作画で秀逸!
廃墟という閉鎖された空間をうまく表現しています。

キャラクターデザインも、ブリアレオスとかのサイボーグ達の質感は今まで
観た中でも最高です、 ただですね(;^_^A

やっぱりデュナンとかの人の表現はまだまだだな・・っと 静止画なら普通に
見えるCGでもリアルになればなるほど動きが気持ち悪くなるんですよw

特に表情のつきかたとかね、あまりリアルになり過ぎると実写でよくね??
ってことにもなりかねない、この辺りだけは劇場版1作目の方が良かったな。

これはもう好みの問題だけどね^^

ストーリーも原作の重いイメージ比べるとかなり軽め、デュナンは父親から
人の殺し方を精神から叩き込まれたマシーンのハズ、序盤地下鉄で攻撃された
直後にも関わらず、無防備に地下鉄出入り口から明るい外に出る描写は違和感が
ありました、 その点ブリィの動きは常に用心深く原作のイメージのままでしたw

なんにせよ、デュナンってもっと活発で先走るジャジャ馬なんだよ、それを後衛の
ブリィがブツブツいいながら援護するシーンしか知らない(笑) この映画のデュナン
は大人しくて、らしくない感じだった^^

驚いたのは、双角w このキャラは原作だとズル賢い三下イメージだけど、この
役やキャストもハマリ役で良かった(´▽`) 意外にも名脇役だと見直したよ(笑)

リブートということで、原作とはまた違った解釈でのゼロスタートと考えれば
この作品もアリなのかな??

{netabare}
ED後に出てきたアイリスと同じ顔のバイオロイド、「HITOMI」のネームプレート
をしてたw 原作に直接つながるシーンでちょっと感動した(笑)
{/netabare}

まぁ あえておススメはしないかな(;^_^A 3DCGが普通に見れて、
アクションや、アップルシードが好きなら観てみて下さい(´▽`)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 21

たわし(爆豪) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

おそらく、ジェームズキャメロンの「銃夢」よりは面白い(笑)

元々、「サイバーパンク」漫画はフランスバンドデシネの巨匠「メビウス」と「エイリアン」や「バタリアン」の脚本家であり、「2001年宇宙の旅」や「スターウォーズ」の特殊効果マンだった「ダンオバノン」が1970年代のフランスSF漫画雑誌「メタルユルラン」(英語表記:ヘビーメタル)で発表した短編漫画が出発点であり、その後、リドリースコットの「ブレードランナー」やジェームズキャメロンの「ターミネーター」などの映画を経て、大友克洋「AKIRA」、宮崎駿「風の谷のナウシカ」などの和製サイバーパンク漫画が生まれ、そして士郎正宗をはじめとする多くの漫画家が1980年代に大量生産していった。

80年代から90年代にかけてのSF漫画やアニメのほぼすべてを席巻したといっても構わない。核戦争で荒廃した都市、売春婦、サイボーグなどなど。。。どこかで見たような類似ネタが多く散見される。

中でも大阪の中小出版社出身という、当時からしてもありえないデビューの仕方をした士郎正宗の「アップルシード」はその完成度から見ても1985年当時とは到底思えないクオリティと先見性に満ち、その後大手講談社に渡ってメジャー化したかと思いきや、さらに難解な漫画である世紀の傑作「攻殻機動隊」を世に送り出すこととなる。

さて、今回の「アップルシード アルファ」は1985年当時OVAで製作されたアニメ(しかも制作会社はガイナックス)を3DCGアニメでリメイクした「アップルシード」2004年と「エクスマキナ」2007年を同アニメで監督した荒巻監督が更にリブートするというかなりややこしい経緯のあるアニメである。

3DCGのクオリティは2004年の頃からすると数段レベルが上がっており、特に機械の質感やディティールがほぼ実写と変わらないレベルなのには驚いたが、正直内容はさほど面白くはない。。というよりも脚本より映像のクオリティに全力集中することに躍起になっており、構成や演出はあまり考えていないようである。なので映画単体としてはあまり面白くないのだが、1980年代から約30年の時を経て、2Dの頃と3Dの現代とを比較すると映像の歴史というか「アナログ」から「デジタル」への移行が見えてそれこそ本作の主題である「テクノロジーと人とのあり方」の変容に驚かされるのである。

一見、30年も前の漫画なので古臭くなると思いきや主題はもちろんのこと、士郎正宗の漫画作品が後のゲーム「メタルギア」「バイオハザード」や皆川亮二の漫画「スプリガン」「アームズ」、木城 ゆきと、園田健一の一連の漫画などに多大な影響を与えたことが分かった。

それだけでも本作の価値はあったし、この監督の前作「キャプテンハーロック」なんかよりは全然面白かった。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7
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