サバイバルで友情なアニメ映画ランキング 2

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ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月02日の時点で一番のサバイバルで友情なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

73.7 1 サバイバルで友情なアニメランキング1位
名探偵コナン ベイカー街(ストリート)の亡霊(アニメ映画)

2002年4月20日
★★★★☆ 3.8 (359)
2633人が棚に入れました
工藤優作(コナンの父)がシナリオを提供した新型ゲーム機「コクーン」の披露パーティーに招かれたコナン達。会場で発生した殺人事件の手がかりを求め、コナン達はコクーンが作り出す仮想空間へと入るが、システムは人工頭脳ノアズ・アークに占拠されてしまう。

「日本という国のリセット」を企てる彼は、プレイヤーである子供達が一人もゲームをクリアできなければプレイヤーの脳を破壊すると宣告。コナン達が選んだゲームは「オールドタイムロンドン」。19世紀末の殺人鬼・切り裂きジャックを追いかける、命がけのゲームに挑む。

一方、現実の会場では優作たちが殺人事件の捜査に乗り出していた。ゲームの世界と現実の世界。ノアズ・アークがゲームに仕掛けた現実の事件の解決に至る真実とは何か?ノアズ・アークはゲーム世界のどこに潜むのか?

現実世界の殺人者は誰なのか?そして、その動機は?これらの謎に立ち向かうため、工藤親子は二つの世界を隔てた「親子による共闘」を開始する。

声優・キャラクター
高山みなみ、山崎和佳奈、神谷明、山口勝平、茶風林、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、林原めぐみ、田中秀幸
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

AIは「ノアの方舟」伝説たり得ない

仮想ゲーム内の19世紀末のロンドン。
コナンたちが現実世界で起きた殺人事件の手掛かりを探していく、
2002年公開の劇場版『名探偵コナン』第6作。

【物語 4.0点】
『コナン』としても、ミステリーとしても、SFとしても異色。


緻密なミステリーや推理より、
大がかりなシナリオによるドラマ性が追求される劇場版。
本作に至っては、仮想世界なので、
リアルでは絶対に死なない登場人物も“ゲームオーバー”で退場に……。
仮想世界の権限を有するAIによる“介入”もあるので常識は通用しない。


親の血統や地位を笠に着た、今風に言うところの“上級国民”の横柄さも描かれる本作。
それに対するアプローチも変化球で、
本作は、それらを腐敗と断罪して、庶民のストレスを発散する痛快さは提供せず、
むしろ、血筋を受け継ぐ“貴族”たちに、
今後も世の中を背負って立つよう奮起を促す渋い“説教”


人工知能(AI)についても、上記の旧態を打破するための革新として過信はしない。

19世紀末、栄華を極めた大英帝国にも矛盾はあった。
そもそも我々は「ノアの方舟」伝説で腐敗が一掃された世界で選ばれた創造物ではないのか。
今の世の中が汚いからと言って、安易に浄化とか、“リセット”とか言うもんじゃない。

そんな示唆も残して、AIは……{netabare}今は技術悪用の恐れがあり時期尚早と去っていくのだ。{/netabare}


【作画 4.0点】
最後のセル画制作による劇場版『コナン』となった本作。

VRロンドンの霧も、風情のある現象としてではなく、スモッグとして描き、
時代の光としてのホームズ、闇としての切り裂きジャックが求められた、
激しい格差といった歪みも抱えた往時の英国の社会心理まで再現しようという意欲が伝わる。


AIが主催するデスゲーム等、未来テクノロジーのデモとしての華やかさがある一方、
ゲーム内で、博士による秘密道具及び超絶アクションを封じられたコナン君は、
名実ともに頭脳だけ大人の小一に……。
鑑賞者は久々に、この縮んだ身体で追い詰められて行くもどかしさも共有することに。
『コナン』アクション映画としても本作は異色。

但し、某空手少女は本作でも元気はつらつ♪

最後も{netabare}列車アクション{/netabare}で見せ場はあり。


【キャラ 4.0点】
本作の鍵を握る“天才少年”ヒロキ。
出る杭を打つ日本の教育への毒針、本当は友達が欲しい孤高の天才。

犯人役もまた、{netabare}血筋を背負いきれなかった存在{/netabare}として描かれる。

そして、上から目線の“上級国民”チルドレン。

各々テーマ性を内包したオリジナルキャラが物語深化に寄与。


一方でコナン君は親父同様、重度のホームズオタクぶりを発揮し、
ピンチの中でも妙にイキイキ!?
悪党であるモリアーティ教授への愛まで語り出したら、いよいよ重症ですw
今回は推理力よりホームズ知識力に舌を巻く。


【声優 4.0点】
モリアーティ教授(CV.小林 清志さん)、モラン大佐(CV.藤本 譲さん)
切り裂きジャック(CV.速水 奨さん)
などリアル世界だけでなく仮想世界内の敵役までベテラン声優で固める盤石の布陣。

コナン君の親子の絆もテーマの本作。
CV.田中 秀幸さん&CV.島本 須美さん。
工藤夫妻のボイスがVRロンドンの何処で出張ってくるかも注目w

{netabare}父ちゃん、いくら奥さんが好きだからって、
妻をホームズが愛したオペラ歌手に当てはめて、美声披露まで美化するのはやり過ぎやでw{/netabare}

緒方 恵美さんによるセレブ少年グループのリーダーの生意気ボイスも〇
{netabare} 実は真相を隠す煙幕だったりする。{/netabare}


【音楽 4.0点】
劇伴はお馴染みの大野克夫バンド。

いつものコナンのテーマ曲もロンドン仕様?にアレンジするなど、
現実&仮想世界にまたがるシナリオを好アシスト。


ED主題歌はB'z「Everlasting」
孤独の中から絆を取り戻す壮大なバラードと共に、
実写のロンドンの街並みを眺め余韻に浸るひと時。


【感想】
血縁やコネにより腐敗する人間による統治より、
決定のいくらかを人工知能に委ねた方がクリーンな政治ができる。
地方議会レベルではありますが、そうした主張も出ては来ている昨今。

とは言え、その水準まで、AI技術や信頼が高まるのは、
もう少し先になるのではと私は思います。

“家”の宿命を背負った“貴族”の底力も中々の物。
古くて汚いからと一掃するのは勿体ない。

だから二世、三世の皆さんには、どうか“リセット”されないように、
襟を正して奮起して欲しいなと願います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 18
ネタバレ

前田定満 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

ヒロキ君が現代の子供達へ本当に伝えたかったことは何か?

自分自身が選ぶ好きな劇場版名探偵コナンはこの作品です。

あらすじ
2年前のニューヨークにて。{netabare}
マサチューセッツ工科大学に在籍する天才少年ヒロキ君10歳が
母親を亡くした後IT産業の帝王トマス・シンドラー社長の養子となります。
そこで天才的な頭脳で人工知能「ノアズアーク」やDNA探査プログラムを開発します。
ノアズアークは1年で人間の5年分成長する人工知能です。
ヒロキ君の意思を継いでいます。
しかし有名になったヒロキ君は多忙な上友達と遊ぶことも禁じられ厳しい監視下に耐えきれず、
人工知能「ノアズアーク」とDNA探査プログラムをネット回線に流し自殺をします。{/netabare}


そして現在。{netabare}
コナン達は父親の工藤優作がシナリオを提供した仮想ゲーム機「コクーン」の完成お披露目会に招待されます。
ちなみに工藤優作さんが提供したシナリオは19世紀のロンドンが舞台になっています。
コナン・ドイルのシャーロックホームズの小説の世界と
実際の19世紀の舞台を混ぜた世界観になっており、
実際に存在した殺人鬼ジャック・ザ・リッパーと戦い勝利するというストーリーです。

そのパーティーには警察の上層部の子供や政治家の2世3世が大勢いました。

そんな中、事件が起こります。
コクーン開発の主任で2年前に自殺したヒロキ君の父の樫村忠彬(かしむら ただあき)さんが殺されたのです。
現場に残されたダイイングメッセージ「JTR」。
JTRとは19世紀のイギリスに実在した殺人鬼「ジャック・ザ・リッパー」の略称。
この事件の解決する鍵は仮想ゲームの19世紀のロンドンの舞台にあると
コナンは事件解決のためにゲームにさんかします。
そんな中第2の事件が起こります。
人工知能ノアズアークがコクーンの回線にを占拠してしまうのです。
ノアズアークは「日本という国のリセット」を企みます。
ゲームに参加する大半は政治家などの2世3世の子供達で、
甘やかされた環境の中育ってきた。
彼らを潰すことで新しい日本を作るという意味です。
一人でもクリアすれば子供達の勝利。
もし全員がゲームオーバーになると脳内に大量の電撃を流すと宣戦布告してきます。
コナン達はこうしてゲーム(19世紀のロンドン)の世界に入ります。{/netabare}


この話はいつものコナンとは少し違い
先に犯人が分かっているというスタイルです。
樫村さんを殺害したのは{netabare}IT産業の帝王トマス・シンドラー社長{/netabare}です。
「彼はなぜヒロキ君を自殺へ追い込み、樫村さんを殺害したのか?」
この動機を映画の中で解決していきます。

またノアズアーク(ヒロキ君)は誰かのデータを借りてゲームに参加しています。
「ノアズアークは誰に化けてゲームに参加しているのか?」
「なぜ共に参加しているのか?」

またノアズアークは本当に2世3世を潰したいのだろうか?
「ヒロキ君は現在の子供達に本当に伝えたかったことは何か?」
この謎が最後に明かされます。


自分にとってイギリスは非常に憧れを持っている国で
この映画を1番に選んだ最大の理由もそれが大きいです。
またチャリングクロス駅や国会議事堂(ビッグベン)なども出てきます。

観るとロンドンに行きたくなります。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 5
ネタバレ

入杵(イリキ) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

ゲーム内での話です。

コナンはパスポートの取得が出来ない為、海外へ行けない。
その為、バーチャル世界であっても、名探偵コナンの中では
数少ない海外が舞台の作品である。
(劇場版では唯一、因みにコナンは最近、ロンドンに行った。単行本の71,72巻に収録されている。)

本作は劇場版で唯一、倒叙形式(始めから犯人が判明している)で、現実での犯行の推理が行われる。これは他作とは一線を画すものだ。(私のコナンマニアの友人は、これが理由で本作を劇場版の中で最低評価している。)
また、新一の父、工藤優作が登場する唯一の作品である。
現実での犯行の推理は彼が行う。
本作の趣旨はバーチャル世界内なので、
コナンは少年探偵団+蘭で、ゲーム内での推理を行う。

以降の「ネタバレ」はWikiから引っ張ってきたあらすじです。
読みたい人は読んでください。核心には触れていません。
{netabare}
江戸川コナン(工藤新一)の父・優作がシナリオを提供した仮想体感ゲーム機「コクーン」の完成披露パーティーに招かれたコナン一行。そのパーティーには日本の未来を担うことになる、警察官僚や政治家の二世・三世が勢ぞろいしていた。そんな最中、殺人事件が発生。コナンは被害者のダイイング・メッセージから、事件の手がかりがゲームの中にあると考え、コクーンに乗り込む。ところが、ゲームスタートの直後にシステムが人工頭脳「ノアズ・アーク」に占拠され、コクーンに乗り込んだ50人の子供達を人質に取られてしまう。

「日本という国のリセット」を企てるノアズ・アークは、プレイヤーである子供達が一人でもゲームをクリアすることができなければ、プレイヤー全員の脳を破壊すると宣告。覚悟を決めコナン達は、5つのステージの中から「オールドタイム・ロンドン」を選択した。19世紀末に実在した殺人鬼・切り裂きジャックを追いかける、命がけのゲームに挑戦する。

一方、現実の会場では優作たちが殺人事件の捜査に乗り出していた。ゲームの世界と現実の世界、次元を隔てた2つの世界でコナンと優作が事件解決に挑む!
{/netabare}

しかし、本作の恐ろしい所は、ノアズアークがどこまでの個人情報を入手していたのかとういこと。なぜコナン=新一が理解できたのか。それにヒロキが自殺してから二年しかたっていないのに、あれだけ成長するとは人工頭脳恐るべし。
また、コナンがゲームに参加していなかったら、確実に全員死んでいたわけで・・・。とまあ、疑問が多い作品だった。
モリアーティの声優が小林清志さん(ルパン三世の次元大介の声優)だったのが良かった。

非常に評価の高い本作だが、コナンとして観るとどうも倒叙形式が鼻につく。またシンドラー社長が頭悪すぎ。
コナンに出てくる犯人は、衝動殺人を犯した一般人でも難解なトリックを仕掛けられるのに、この人は計画犯罪のくせに、足がつく杜撰さが納得出来なかった。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 11

63.6 2 サバイバルで友情なアニメランキング2位
アーロと少年(アニメ映画)

2016年3月12日
★★★★☆ 3.7 (18)
106人が棚に入れました
もしも、隕石が地球に衝突せず、恐竜が絶滅をまぬがれていたら?」というかつてないスケールの世界観をテーマにしている。

絶望をまぬがれ文明を言葉を得た恐竜たちは、言葉を持たない人間たちと共存しており、我々が知っている地球とは少し異なる舞台で物語が進行する。

本作の主人公は臆病で甘えん坊の恐竜アーロ。

大好きな家族とはぐれてしまった彼は、言葉も通じない見たこともない生き物・人間の子どものスポットと出会う。

見た目も性格も正反対なひとりぼっちの同士の二人が手を取りあうことで、どのようなストーリーが紡ぎ上げられるのか。

壮大なアドベンチャーである最新作も見逃せない内容となった。

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

斜め上過ぎる文化観と美し過ぎる自然描写、そして言葉無き友情

2015年11月に本国で公開されたピクサーの最新作
監督は『崖の上のポニョ』の全米公開版のディレクションや『カールじいさん』の同時上映短篇であった『晴れ ときどき くもり』の監督を務めたピーター・ソーン


日本公開の予告編では言葉を話す恐竜と原始人の少年が言葉無き友情を育む物語とされてますが、オイラにざっくり解説させてもらうとコレは立場が逆転した人と動物の話で所謂【動物モノ映画】
本来なら飼い主の立場にいる人間がペット的な扱いを受け、文化的上位にいるのが恐竜、やがてお互いの立ち位置や種族を超えた友情が芽生えていく・・・というのがこの映画です


もし隕石が地球に衝突せず、恐竜が絶滅していなかったら・・・
恐竜たちは姿こそ変えずも言葉を話し、家を建て、畑を耕し、家畜を飼って暮らすという文化を持っていたであろう、というちょっと斜め上過ぎる世界観
草食性恐竜一家の末っ子として生まれたアーロは体も小さく、とても怖がりのため満足に仕事をこなせず姉や兄からはからかわれていた
そんなアーロを一人前にしてやろうと、パパはサイロを荒らす謎の泥棒を捕まえて殺すようアーロに仕事を与える
しかしサイロを荒らしていたのはこれまで見たことも無い生き物、原始人の少年スポットだった
スポットの気迫に恐れを為し、殺すことをためらったアーロはスポットを逃がしてしまう
パパは一家にとっては害獣であるスポットを逃がしておけんとアーロを連れ出しスポットに止めを刺そうとするが氾濫した川の濁流に飲まれ命を落としてしまう
パパを死なせてしまったアーロは気に病むがある日またも一家の敷居にスポットが忍び込んできたのだった・・・


まず四足歩行の草食性恐竜が首を器用に使って畑を耕している、という世界観があまりに突拍子も無く、コレを素直に受け止められるかが多くの人にとっての関門になりそうです
『のび太と竜の騎士』みたいに人の姿をした恐竜でなく、基本的なフォルムは変えず知性と文化を持ち合わせた恐竜というのがあまりに幼稚に見えてしまいます


また、スポットそのものの行動が犬っぽいというのも人によって可愛く見えるか否か怪しいです
原始人ならむしろ猿っぽく動く気がしますからね


にも関わらず、パパの死を境にシリアスな展開が続き子供が泣き出してしまうようなショッキングな場面も多々あります


最も見どころに感じるのがアーロとスポットの二人旅の中で時折挟まれる雄大な自然
草花や木々、山々に河川、雲や雨などまるで実写かと見紛う美しさの自然が、果てしなく広大に描かれておりココには本当にお金がかかっていそうなだなぁ、と溜息が漏れます


お話の中で演出が上手いなぁ、と感心したのがアーロとスポットが自分の出生を語る場面でお互い言葉が通じないが故に一言も交わすことなく互いの家族を説明していたのが印象的でした


日本語吹き替え版には子役の石川樹をはじめとした話題の芸能人が起用されていましたが、旅の途中で出会うティラノサウルスのブッチ役である松重豊の座った声は聴きどころです
松重豊は『百日紅』といいナレーター業といい、声の仕事も器用にこなしていて凄いですね


全体的にイイハナシであることや美しすぎるフィールド描写には素直に拍手を送りたいところ
ですが、前述のとおり根本的に【動物モノ映画】なので臭過ぎるというか泣かせが露骨なところがワザとらしい一作でした
Kiroroのbestfriendのアレンジが流れる日本語版エンドロールも寒い、そんなハッピーエンドじゃないし
また、最新の学説に伴いヴェロキラプトルに羽毛が生えているといった描写があるのに対し、そもそも巨大な四足獣が家を建てて暮らしているという生活感は説得力に欠け、‟映画的な嘘”があまり上手くなかったという印象を与えます
世界的にもそれなりのヒットはした模様ですが製作費が予算を遥かにオーバーしたようでピクサー初の赤字作品となった模様ですね

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8
ネタバレ

NANA さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

アーロの成長を描いた王道物語。子供に見せたい映画

物語は友情や家族をテーマに大事に描かれていて、どこか懐かしさを思い起こさせる。奇想天外なストーリーや派手な演出はないかもしれませんが、ゆっくりと、でも確かに心に響く映画でした。
言葉が少なく情景やキャラの表情で心情を描いていたのも、子供には逆に親しみやすかったのかもしれません。(劇場の子供達の反応は良さそうでした)
言葉で全て語るのでなく、表情や行動からそれを感じ取って欲しいという作り手の思いが込められた作品だと思いました。

この映画の大前提は、「もしも地球に隕石が落ちなかったら」

恐竜は絶滅せず、知識を得て彼らなりの生きる術を身に付けている。ここでは後から生まれてくる人類の方が知能が低く、まるで犬のような扱いです。
アーロは恐竜ですが、中身は人間そのものです。外見は異なっても、アーロの考え方や行動は共感しやすく描かれていて、アーロの経験や成長を美しい大自然の中で疑似体験出来ます。劇場でこれを観ていた子供達は、きっと素敵な冒険をしたことでしょう。

CGによる背景はどこまでもリアルで、本物と見間違う出来でした。必ずしもリアルが良いとは思いませんが、この作品はとことん本物を追及し、あたかもそこにいるような気分にさせてくれます。

物語は弱虫のアーロが勇敢な少年と出会い、一緒に冒険をしながら成長していく話です。
中でも、下記の3つの成長か印象に残っています。

{netabare}
アーロは偉大な父親を、少年スポットのせいで失ってしまいます。でも、スポットが殺したわけではなく大自然の脅威によるもので、その危険を避けることも出来たのです。アーロはスポットを憎んていましたが、次第に心を許していきます。
岩の下敷きになった時、穴を掘って助けてくれたのはおそらくスポットです。アーロを元気付けるために食べ物を運んで来てくれたのもスポットです。アーロは戸惑いながらも心を許し、憎むのをやめます。彼を憎んだところで父親は帰って来ない。そして、アーロ自身が生きていくために彼が必要だと感じたのでしょう。

死んだ父親の幻と再会したシーンでは、切なくて涙が出ました。このまま父親の後に付いて行く方がアーロにとって幸せなのかもしれない。そこには怖いものもなければ、悲しみもない。きっとこれまでの弱虫アーロなら、それを選んだはず。でも、アーロは友達のために生きることを選びます。幻を振り払い、自分の力で起き上がり、スポットを助けに行きます。
生前父親がアーロに「お前は強い子だ」と言った理由がようやくここでわかりました。

スポットとの別れのシーンでは、最初に他の人間の姿を見掛けた時、アーロはスポットを彼らから遠ざけようとします。自分以外の者の所へ行って欲しくなかったのでしょう。アーロにとってスポットは、もはやなくてはならない大切な友達になっていました。ずっと一緒にいて欲しい、いるべきだと。
当初、アーロは、親を失ったスポットが人間の元へ戻ることはないと思っていたかもしれません。でも、アーロの目の前でスポットを温かく迎え入れる人間の家族を見て、そして彼らに甘えるスポットを見て、考えを改めます。自分に帰る場所があるように、スポットにも帰るべき場所がある。ずっと一緒にいられたらアーロはどんなに幸せだったでしょう。でも、スポットの幸せを願うからこそ、アーロはスポットを彼らの元へ送り出します。
最後のハグは互いの幸せを願い、道は別れても決して忘れない、大好きたよと告げているようでした。
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 3

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

「怖さを受け入れろ。逃げも逆らいもせず、乗り越えていくんだ。自分の事を信じてな。」

もしも地球に隕石が衝突せず、
恐竜たちが絶滅していなかったら…?

恐竜たちは言葉を持ち、
生きていくために家族や仲間と力を合わせて暮らす文明を築いていたかもしれない。

そんな切り口で描かれた物語の世界。

ピクサーの圧倒的な映像技術が見せる、
太古の世界を満喫できます。

90分ほどの作品です。
同時上映は「ボクのスーパーチーム」(7分)

毎回ディズニーの同時上映短編アニメーションはクオリティが高い…。


● ストーリー
トウモロコシを栽培して暮らす恐竜の夫妻に3匹の子どもが生まれる。

末っ子のアーロは体が小さく、気も弱い。

自分に自信をなくしているアーロに、
父はトウモロコシ泥棒の退治を任せる。

罠にかかったのは、
言葉を持たない原始人の子ども・スポットだった。


この作品では、
2つの変化が物語として描かれています。

1つ目は、弱虫なアーロが成長していく姿。
2つ目は、アーロとスポットの関係。


≪ アーロの成長 ≫

自分は何もできない弱虫だと思っているアーロ。

だけど、その気になった時には、
本人も気付かないうちに大きな力を発揮している。

自分では自分の成長に気付きにくいもの。
アーロは、自分の持っている力に気付いていないだけ。

そんな描写が至る所で表現されています。

こうやって成長していく姿は、
観ていて嫌な気分になる人がいない、

王道な展開ですね♪


≪ アーロとスポット ≫

恐竜と人間。

アーロは草食なようなので、
スポットを“食べ物”とは思わないみたいです(笑)

アーロは言葉を話すけれど、
スポットは言葉を一切話しません。

身振りで何かを伝えようとします。

二人の間に言葉のやり取りはないけれど、

一緒に過ごす時間の積み重なりが
徐々に二人の心の距離を近づけていく。

互いが伝えようとしていることが
わかるようになる。

それは二人と観客の距離も同様。

二人が心で会話している内容が、
観ている側にも伝わってくる。

これはピクサーの映像技術がなせる業…
なのかもしれませんが、

ここは夢見る気持ちに従い、
観ている人も言葉を越えた何かを感じている、と思いたいです。


● 作画
アーロの質感。
怪我をした皮膚。

美しい自然。
荒れ狂う自然。

全てが見惚れてしまう美しさです。

川に落ちたり流されたりするシーンが何度かありますが、
実際にスタッフは荒れた川に流されてみたんじゃないの!?

と質問してみたくなるぐらい、再現度が高いです。

この技術は、さすがトップレベルというか、
もはやぶっちぎってますね。笑


● 音楽
【 日本語版主題歌「Best Friend」/ Kiroro 】

う~ん…。

確かにいい曲ではあるけれど、
定番ソングすぎて、

わざわざこの曲にしなくても…というがっかり感。

この曲を主題歌として使う意図がつかめません。

う~ん…。


● まとめ
ストーリーとしては、なんてことないよくある話。

家族とはぐれてしまった弱虫アーロが、
スポットと一緒に家を目指す旅物語です。

途中で飽きてしまうシーンもあったけれど、
衝撃的な展開も、笑える場面も、感動できる場面も用意されています。

ただまあ、ハードルを上げて観る作品ではありません(笑)

美しい自然と、
美しい友情と家族の愛を、

ゆったりと楽しむ分には、ちょうど良い作品でした^^

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12
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