テロリストで銃撃戦なアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のテロリストで銃撃戦な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月01日の時点で一番のテロリストで銃撃戦なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

78.0 1 テロリストで銃撃戦なアニメランキング1位
劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス(アニメ映画)

2015年1月9日
★★★★★ 4.1 (1102)
6859人が棚に入れました
世界は禁断の平和(システム)に手を伸ばす。
2116年――常守朱が厚生省公安局刑事課に配属されて約4年が過ぎた。
日本政府はついに世界へシビュラシステムとドローンの輸出を開始する。長期の内戦状態下にあったSEAUn(東南アジア連合/シーアン)のハン議長は、首都シャンバラフロートにシビュラシステムを採用。銃弾が飛び交う紛争地帯の中心部にありながらも、水上都市シャンバラフロートはつかの間の平和を手に入れることに成功した。シビュラシステムの実験は上手くいっている――ように見えた。
そのとき、日本に武装した密入国者が侵入する。彼らは日本の警備体制を知り尽くしており、シビュラシステムの監視を潜り抜けてテロ行為に及ぼうとしていた。シビュラシステム施行以後、前代未聞の密入国事件に、監視官・常守朱は公安局刑事課一係を率いて出動。その密入国者たちと対峙する。やがて、そのテロリストたちの侵入を手引きしているらしき人物が浮上する。
その人物は―― 公安局刑事課一係の執行官だった男。そして常守朱のかつての仲間。
朱は単身、シャンバラフロートへ捜査に向かう。自分が信じていた男の真意を知るために。
男の信じる正義を見定めるために。

声優・キャラクター
花澤香菜、野島健児、佐倉綾音、伊藤静、櫻井孝宏、沢城みゆき、東地宏樹、山路和弘、日髙のり子、神谷浩史、石塚運昇、関智一
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

英語字幕は戸田奈津子さん

1期2期視聴済


うーん・・・
犯罪係数ってとどのつまり、“手汗多い”“脈拍上がる”とアウト!みたいなもんかしら。

ストレス係数上がりそうな局面でみんな犯罪係数上がってますものね。100年後の日本人は心の平静を保つよう努めてるうちにアドレナリン上がる機会が失われていき、喜怒哀楽でいえば“怒”と“哀”の表現に乏しい。“怒”に触れなければ普段の生活で恐怖を感じることはないものです。

たおやかににこにこしながら生きていれば色相をクリアに保てるけれども、ストレス耐性がないためふとしたことで“犯罪係数”急上昇。ガラスの橋を渡るかのような緊張感は内在していて、たがが外れれば2期の酒々井監視官みたいなのも容易に出てきそうです。やっぱり嫌な社会ですね。


TVで好評を博し1期2期の放送経ての劇場版オリジナルアニメ。アクションだけ楽しむなら一見さん可。ただしあまりそのような方はいないでしょう。TV版視聴が前提となります。

すでにシビュラ導入されて久しい日本と違って今度の『PSYCHO-PASS』は海外が舞台です。
日本以外は戦乱のさなかとTV版で説明がありました。その具体的なお話。
戦火の中で生き抜くには色相が曇りまくってないと無理だと思いますね。
そんな私の心配を知ってか知らずか!?日本政府が輸出したシビュラシステムを内戦状態のSEAUn(東南アジア連合)が実験的に導入する、というところから始まる物語でした。


 シンプルなバトルムービー
 娯楽大作 


といった感じでしょうか。
頭使ったTV版と違ってそのまま画面の中で繰り広げられるアクションに身を委ねてしまえば良さそうな劇場版らしい劇場版です。

実は日本人には現代戦を描けないだろうと高をくくってたところがありました。でも違いましたね。一歩も二歩も先取りしてる未来の話だとはいえ、現在実用段階にある無人機戦闘の描写が素晴らしい。
迫力あるよねーと劇場で観るべき作品だったでしょう。もちろん今となっては自宅で鑑賞せねばならんというのが非常に残念です。

{netabare}また戦闘地域がアンコールっぽい寺院(ワット)近辺というのも個人的にはツボです。実写映画では戦争ものをけっこう好んで鑑賞してました。ベトナム戦争ものしかり。ちょっと懐かしく感じるくらいに良く出来た戦闘描写でした。{/netabare}


バトルやアクションだけでも観る価値あり!・・・と思います。
そのくせ『PSYCHO-PASS』らしいシビュラと常守朱との対峙についてこの劇場版でも用意されてますのでしっかり深みというかとろみは出ております。


{netabare}「法が人を守るんじゃない、人が法を守るんです。」(1期)
「社会が人の未来を選ぶんじゃない。人が社会の未来を選ぶの。」(2期){/netabare}


判断はあくまで人間が下す。このブレなさが彼女のカッコよさ。主人公たる所以ではないでしょうか。

{netabare}ハン議長言われたとおりに辞任したのもなかなか朱の無双ぶりが際立ってました。{/netabare}



さらに今回の劇場版での隠し味。シビュラを

 “恣意的に運用できちゃうこと”

これですよこれ!
時間をかけ合意形成を重ねシステムを導入しただろう日本と違って、外枠だけを導入しようとすればこういうことが起こらないわけありません。
人間は過ちを犯すもの。それでも判断と決定権を人間の手に収めることについての重みをしかと受け止めた我々視聴者一同です。
物語上新たな視点を吹き込んでくれたことに感謝ですね。


 『PSYCHO-PASS』らしからぬわかりやすいストーリー
 『PSYCHO-PASS』らしいシビュラへの受容と否認を描いたストーリー


総監督に本広克行氏。脚本に虚淵玄氏。1期のメンバーが出戻ったのか2期よりも深くコミットしてきた影響もあるのでしょう。
地味にすごいのが英語シーンの字幕を戸田奈津子さん。・・・ちょっとやり過ぎではないかしら。

劇場版アニメとしては至極満足のいくレベルの作品でした。良作です。




※余談

■日本強くね?

国防どうしてるんだろう?がちょっとひっかかってました。戦乱に明け暮れる周辺諸国の侵攻をいかに防ぐのか心配です。

{netabare}杞憂。

高性能な戦闘ドローンって日本製だったんですね。これまで高度な衛星持ってるから成立するような技術はTV版でもあったのも思い出して、ミサイル飛んでこようが戦闘機こようが、速攻で探知して無力化できそうな技術力を有しております。
制空権取れなきゃ地上侵攻の難度も上がるうえに、きたところでドミネーターやドローンで瞬殺でしょう。じゃあスパイ忍ばせて内部攪乱と思っても、サイマティックスキャンの網でけっこう引っかけられそうです。

パワーバランスが歪なくらいに日本無双状態なので攻める気にもならないだろうことはわかりました。国防・外交面では憂いがなさそうです。{/netabare}


■タイ語?マレー語?

日本人CVさんらの下手っぴ英語にちょっと痒くなりましたが、そこに隠れてたまに東南アジア圏の言語混じってませんでした?
それと東南アジア訛りの英語もです。こういったこだわりは大歓迎。リアリティを感じる演出でした。

{netabare}アンコールのアジトのシーンで映されてた小道具の中に『Angkor』ビールを発見。缶のデザインも実物のまんま。これ飲みやすくて美味いです。現地だと1本100円しないくらい。

私がカンボジア行ったのは20年くらい前でして、ポル・ポト派の残党がそこそこ鎮圧され、ちょうど陸路でのタイ~カンボジア国境通過が可能になった直後くらいの時でした。
せっかくだから陸路で横断しようと思い、ベトナムのホーチミンシティを起点にカンボジアのプノンペン入り。湖を北上してシェムリアップ(アンコール)に長居し、それから西方のタイ国境を抜けるルートを辿りました。北部は行ってません。理由は死ぬから。
警察がいちゃもんつけて賄賂を請求してくるくらいはかわいいもんで、乗り合いトラックの同乗者がズボンのポケットに銃を無造作に入れてるわ、警備の人間が重火器で武装してるわ、挙句にはラリッてるやつのポッケにも銃が見えたり。とかく人の命が軽そうなことをいやでも見せつけられます。

映画の中でのカンボジアを拠点とする反政府ゲリラの連中を見ながら、そんなカンボジアで実際出会った面々や往時の治安状況を思い出しました。

そして、戦火が絶えない地において、治安維持装置シビュラシステム導入による有用性について考えさせられましたね。

 {netabare}それでもシビュラはいれちゃあかんよ!{/netabare}{/netabare}


地域に対する思い入れ補正が働いてる気もしますがご容赦願いたく。
作品の舞台が未踏のツンドラ地帯とかならどうだったかは知る由もなし。



それと常守監視官。短期間で殺傷能力高そうなコンバット技術を身につけておりました。
そっち方面の素質ありますよ。



視聴時期:2019年10月  

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2019.11.02 初稿
2020.02.14 タイトル修正
2020.07.31 修正

投稿 : 2024/06/01
♥ : 43
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

踊らされる捜査線上のサイコパス

時系列は2期の後とされている意見が散見されますが、それだといないはずの人がいたり、シビュラのバージョンアップ(ダウン)が無かった事になったりしてしまうので、恐らくサイコパス1期終了時~2期までに起きた事件。(ギノさんの髪の長さを見れば2期の外伝では無い事も分かる。)東南アジア連合/シーアンに試験的に導入されたシビュラシステム、それを牛耳る官僚、その支配に抵抗する人々の姿などが描かれます。

テレビ版と比べて残酷シーン(主にドミネーターによる執行)の描写があからさまになっているので苦手な人は注意が必要です。

一係のメンバーは1期エピローグで顔見せのあったメンバー通り。朱とギノさん、六合塚さん、霜月監視官と東金、雛河執行官の6名。雑賀先生と唐之杜さんも少しだけ登場します。

独白からの狙撃シーン、捕物アクションと、冒頭はいかにも映画という展開。

アクションシーンについては劇場版ならではの作画の美麗さとスピード感がありましたが、ドミネーターが鈍重。犯罪者を追う攻勢の立場にある場合はともかく、乱戦において犯罪係数の測定と形態の変形を待ってから反撃というのにはリアリティが欠けていました。アクションの流れが止まってしまう印象を受けてしまうのでした。

続く朱の友人の佳織の結婚のお話のシーン。シビュラの正体を知っているか否かに係わらず(知ってたら尚更)マシーンが決める恋人適正とかは私なら御免被りたいです。1期の槙島の言葉を借りれば「家畜扱い」にも等しい気がします。

テクノロジーについて
{netabare}
スパイドローン"ダンゴムシ"。現代でも実用化されている技術の延長上にあるものという印象ですが、半自立型で超小型、超高性能にという印象。カメラや触手状の端末を備えたカニみたいな形状のロボです。

スーパーボールみたいに弾むスタングレネードについては通路の曲がり角とか遮蔽物に隠れている相手に対しては何らかの有用性があるかも知れませんが、本作でこれが用いられる場面には全く合理性を見出せませんでした。それに外見をホロで偽装出来るなら、駐車場の地面の色に似せて転がすか、せいぜい動作の挙動が似ているスーパーボールとかカラーボールにすべきで、公安局のマスコットキャラ"コミッサちゃん"にするなど最悪の選択なのでは?という感想を抱いた次第。非常に残念な演出でした。

強襲型ドミネーターについて。元々可動部分が過度に多いドミネーターですが、2期でも登場した強襲型ドミネーターはさらにガチャガチャと変形しまくります。マシンとしての耐久性への疑問と、けれん味を加えているだけなのではないかという少し嫌な印象が残りました。設定上では壁越しから射的が可能なドミネーターとの事ですが、本作で使用された状況はそれに該当せず‥。ならばドミネーター+光学照準器+ストックの方がスマートでリアルな気がします。あんなにゴチャゴチャした形状のライフルなんて持ち辛くて敵わない。姿勢制御が大変そうです。片腕サイボーグのギノさんだから扱えたのかも知れません(笑)

言語翻訳機については作中では詳細な説明はありませんでした。1フレーズ聞き取ってから始めて翻訳可能になるタイプの様です。これについては手前味噌ながら「 タイムトラベル少女~マリ・ワカと8人の科学者たち~」にテクノロジーのそれらしい説明がありますので、ご興味を持たれた方は御一読されてもよろしいかと思います。
{/netabare}
本編について
{netabare}
狡噛と傭兵のリーダーデスモンドの会話はいかにもサイコパス風味なのですが、填島とか雑賀先生とかの会話と比べると物足りない印象。まぁこういう衒学的な会話は映画には向かないのかも知れません。仕方なし‥。

朱の身の回りを世話をしていた給仕の人、色相が一定以上曇ると神経毒が体内に流れ込み死に至らしめる首輪をしていましたが、街頭スキャンやドミネーターで犯罪係数を計られるよりも遥かに無情な印象を受けました。人の手を介さない裁きという所に残酷さがあるのです。

朱の判断も軽率。非合法に首輪を外せば良くない事が起こるに決まっているのに情にほだされたのかやってしまいました。後の事情を知れば給仕の少女の死は免れなかったとも言えますが、いつでも法を遵守する傾向にある朱にしては思慮の足りない行動だったのでは思います。

朱は1期の時と比べて、より狡噛を倣っている様にも見え、心身ともに格段に強くなりましたが、上の様な未熟な面もまだあるとは少し意外でした。

クライマックス、狡噛のピンチにギノさんが駆けつけて共闘という流れには、少なからぬあざとさを感じましたが、同時に心躍るシーンでもありました。二人の息がぴったり合った戦いぶりを見ると、その良コンビ振りに感慨深いものを覚えます。

そして続く名シーン?ギノさんのお仕置きパンチ。当然そうなると予測していながら、この映画では貴重な笑えるシーンでした。狡噛傷だらけなのにフルスイングとかちょっと心配になりましたが、ギノさん左腕使ってないし大丈夫だよね(笑)

全体を通して、支配者をくぐつにして祭り上げ、権力を掌握させた後に奪い取るという物語は古典的過ぎる色合いが強く、面白みが感じられませんでした。それだったらシビュラという※SF設定を無視しても物語が成立してしまう気がするのです。SFならではのテーマの提示を怠った作品になってしまっていたのではないでしょうか?

※:例えば王権争いで勝利した後に、王でなくその側近が権力を掌握するとか、あるいは王を殺してその側近がその地位につくとか、古今東西これに似た話は無数にあります。作中のハン議長を模した義体についてもアレクサンドル・デュマの古典ダルタニャン物語の一つ「鉄仮面」における双子を利用した陰謀と類似性が見られます。陰謀では無いけれど、入れ替え物語としてはマーク・トウェインの王様と乞食とかも‥。

最後に英会話について、冒頭の物語の舞台が海外であるという印象を与える場面を除き、必要なかったのではと思われました。私はあまり英語に堪能なやつではありませんが、殆どの英語台詞にネイティブのものとはかけ離れた印象を受けました。(英語圏にいる人が観たらがっかりしてしまうのでは?)
{/netabare}
1期の槙島や2期の鹿矛囲の様な魅力ある人物が現れるわけでもなく、霜月監視官はまだしも、六合塚さん、東金、雛河執行官、の出番も冒頭以外殆ど無し。典型的かつ派手目のアクション映画として凡庸に収まった感のある劇場版でした。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 29
ネタバレ

N0TT0N さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

シビュラ総選挙。

注)1期2期のネタバレあり。

かなり見応え十分の作品でした。
シビュラシステムの設定の秀逸さは相変わらずで、今回視点が世界の中のシビュラという位置付けだったので、自分の中での認識が新しく更新された感じがあります。
どういう部分かというと、今まではシビュラ内部からの視点でしか描かれてこなかったので、シビュラの是非を考えるとき、外部の情勢を今の世界情勢に当てはめて考えていました。
だけど、時代設定は今から100年後の世界。劇場版では今とは若干違った世界情勢を匂わせていて、それを考慮すると個人的には多少シビュラを肯定する方向にシフトした感じになりました。

そもそもどんなシステムも一長一短な部分を持ち合わせていると思うので、外側との相対的な関係によって優れたものにも劣ったものにもなってしまう面があると思います。

そういう意味で、今回提示された世界との関係を考慮するとやや肯定的な印象に変わったということです。

それに、作画、演出効果のクオリティがかなり凄かった。
アクション、武器、航空機、未来都市、のデザインや挙動、効果音にいたるまでどこを切っても説得力のある安定のハイクオリティでした。
実在しないアイテムの数もかなりあった‥というかほぼ実在しない物だらけでしたが、1つ1つのアイテムのディテールまで妥協なく描かれていて、これらの仕事に作品の質が支えられているんだろうな‥と思わされました。

常守朱。
2期同様今回も聡明さが全面に出てましたが、作画が1期同様の丸みのあるデザインだったので、とんがった印象にならず、「見かけによらず意志が強い」的な印象になってた。
些細なことだけど「とんがってる」より「意志が強い」の方が色相がクリアな朱らしい。

それにしても‥精神状態をクリアに保てる朱の精神的特徴が未だに解らない。。強さ、柔軟さ、信念、純粋さ。そういうものを総合的に持ってるということなんでしょうかね。
雰囲気としては解る感じなんですが。

でも、ストレス溜まってそう。


物語。
内容を進展させながらハラハラどきどき感長持ち!というスリリングで中身のある展開でよく出来ていたと思います。
オチも含め、驚きの展開とかはそこまで無かったですが上手くまとまっていたとおもいます。


以下、シビュラシステムについて。(個人メモ的ネタバレ)

{netabare}

シビュラの考え方『最大多数、最大幸福。』
なんとも魅力的な言葉ですね。
この言葉だけ聞くと何が悪いんだ!と思ってしまいます。
「管理社会」という言葉も「サポート社会」と言ってしまえばなんかいい感じに聞こえるかも?

今回劇場版を見終えても、シビュラの全貌は解らなかったけど、2期レビューで書いた疑問点が少しだけ解消されました。
シビュラ社会でも選挙はあるみたいです。

ですが、

やはりというか、選挙に勝ったのはシビュラでした。
このことが是か非かというとおそらく公職選挙法なるものが存在するのであれば非だといえる事態でしょう。
そりゃそうです、ハン議長は本人ではないうえ、暗殺まで絡んでいるんだから。

ですが、

国民は多分平和に近い状態を勝ち取ったといえます。

この辺がこの作品の奥の深さであり、ジレンマといえる部分だと思います。
もうこのことを指して「シビュラのジレンマ」と呼んでもいいくらいです。

そして、これも2期で疑問に思ったことだけど、民意は最終的にはシビュラの意志に染められる。
最適な暮らしを選んでくれるシビュラが最終的には最適の政治を選んでくれることになっても何の不思議もない。
過渡期としては民意は必要であっても一旦シビュラ管理
がスタートすると、シビュラが選んだ「絵に描いた民意」になってしまうのかもしれない。

そしてもう1つ、
最大多数には但し書きがあって、実際は、最大多数(犯罪係数の高い人を除く)って解釈でしょうか。現時点では。
可能性としては、メンタルケアの向上等によって最大多数=ほとんど全人類になる日がくるかもしれないですね。

最大幸福。
正直、ここも大きな疑問がある。
今、現状ではイメージできないんだけど間違いなくこちらにも但し書きが付いてるでしょう。最大幸福(選ぶ権利(楽しみ)はありません。)
この状態の感じ方によってはシビュラを受け入れられるかもしれない。
果たして「選ぶ」という権利を放棄した幸福は存在するのでしょうか?

犠牲の上に成り立っているということ。
これもかなり難しい問題だけど、
誰かの犠牲の上に成り立っている幸せならいらない。という思いと、そうこうしてる間にも犠牲は出ている。という現実があって、シビュラの場合長期的幸福のためであれば直近の犠牲はやむなしという思想のような気がする。
つまり、結果重視、過程軽視な思想。
犯罪係数が高い人限定の犠牲であるとはいえドラスティックな印象は拭えないですね。
正論ではあるけど心情的にはどうだろう?って部分でしょうか。

まあ、身も蓋もない感じだけど1番の問題は維持、管理、そして物理的、システム的なセキュリティーでしょうか。。
これだけ一極集中させた管理システムに世界のほぼ全てを任せるのは流石にリスクが高すぎるでしょうね。。
劇中「可及的速やかに~」なんて言ってたけど、最も可及的速やか改善しなくてはいけないのはシステムの分散でしょう。


最後に2期で疑問だった「集団的サイコパス」
多分こちらも劇場版ではノータッチだったでしょうか?
戦争と関係した問題にもなりそうだけど、はたして?という感じです。

いろいろ、考察しようと思えばいくらでもできそうですが、ぜひ!続編期待しております(`v´)ゞ!


{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 17

68.0 2 テロリストで銃撃戦なアニメランキング2位
劇場版 図書館戦争 革命のつばさ(アニメ映画)

2012年6月16日
★★★★☆ 3.8 (467)
2435人が棚に入れました
日本を揺るがすテロ事件が勃発する中、デートの最中だった笠原郁と堂上篤に緊急招集がかかった。新たな任務は、小説家・当麻蔵人の身辺警護。テロの手口に小説の内容が酷似しているとして、メディア良化委員会は作家狩りを始めたのだ。法廷闘争が始まる中、郁たち図書特殊部隊は判決まで当麻を守りきらなければならない。図書隊と良化隊の衝突が激化する中、重傷を負ってしまう堂上。動揺する郁に、堂上は任務の遂行を託す。郁は、当麻を守り、表現の自由を守ることが出来るのか!? ――そして郁と堂上とのもどかしい恋の結末は!?

声優・キャラクター
井上麻里奈、前野智昭、イッセー尾形、石田彰、鈴木達央、沢城みゆき、鈴森勘司、潘めぐみ

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

“今度こそ”スタートラインに立てた図書館戦争

前作のテレビシリーズは2008年の春アニメとしてノイタミナ枠で放送されましたが、肝心の『メディア良化法』と呼ばれる架空の法律から表現の自由を訴えかけるという内容もソコソコに、ラブコメ要素がメインのトレンディドラマ風味の作品になってしまっていました;


仕舞いには原作でも重要視される【中澤毬江にまつわるエピソード】が放送局の自主規制によりオミットされるという自体に陥り、【表現の自由を問う作品が表現規制された】ということに原作者は肩を落とし、多くの原作ファンが憤慨するという賛否両論を巻き起こした問題作になったわけです
(上記のエピソードはちゃんとアニメ化され、セル版DVD3巻、もしくはBD-BOXには収録されております)


今作を鑑賞した劇場で今年のアニメ映画の中では初めての出来事だったのですが、来場者の年齢層がかなり高いことに驚き
有川作品ファンの幅広さとアニメ版図書館戦争の知名度を思い知ることとなりました











さて、今作ではやっとこさ肝心要の『メディア良化法』に対して図書隊が踏み込んでいき、表現の自由を訴えかけるという待望の展開が描かれます!


早速冒頭からテロリストがヘリで原発に自爆テロを図って建屋に穴を開ける・・・
という衝撃ニュースが飛び交い“見慣れたあの光景”がテレビから映し出されるというショッキングな幕開け


そしてこのテロ組織の犯行の手口が、原発テロを題材にしたエンターティメント小説の内容に酷似しているものとみなし、図書隊の宿敵であるメディア良化委員会は小説の著者である当麻蔵人を拘束しようとする


これを許しておけば事態を皮切りに良化委員会は『作家狩り』をはじめるであろう、と判断した図書隊の面々
すぐさま当麻蔵人を保護し、法廷で正々堂々と良化委員会、延いてはメディア良化法の在り方そのものに踏み込んで戦うことを決意し、彼の身辺警護を始める


初めのうちは事件に巻き込まれたことを他人事のように疎ましく思っていた当麻蔵人
良化隊が行う『検閲』にも、上手く逃れながら作家業を続けることがプロの仕事であると考えていた彼を通して、これまで読み手側の都合がメインに描かれていたメディア良化法が、初めて書き手側の目線で語られます


彼もまた稲嶺元司令の過去(通称:日野の悪夢)を語り聞かされ、これまで自分が無視し続けてきた検閲の非道極まりない実態を知ります
さらに図書隊の面々と触れ合っていくうち、自分の本を命懸けで守る若者たちがいた、という事実にもやがて心を動かしていくのでした・・・











当初から破天荒な世界観が物議を醸し出していた作品ではありますが、今作はやたらロケハンに凝っていて、、、
JR立川駅前
都営新宿線市ヶ谷駅
中央道諏訪湖SA
大阪御堂筋
大阪北区
そして新宿三丁目の紀伊国屋書店(新宿本店がそのまま紀伊国屋として登場)
とまあ、この辺の背景描写があまりにも丁寧すぎて映画を観終わって劇場を後にすると、ソコにはさっきまで映画の中に広がっていた景色がある・・・という強烈なデジャヴを感じました(´q`)
最近流行の【ご当地アニメ】もこういった架空の設定が前提の作品ではちょっと考えものですよね・・・


あとアニメ版で柴崎と手塚ってあんなに仲良かったっけ・・・?
いつの間に進展してたの?w
(これについては記憶違いかもしれませんので観直して来ます^^;ようつべで公式にオンエア版全話が配信中ですよー)


あとこれはこまけぇことかもしれませんが、夕食を食べてる当麻蔵人先生
どう見ても小食っぽいインドアタイプなのにご飯を「おかわり」発言ェ・・・
だって“おかずの揚物に手が付いてないよ・・・”
ご飯だけめっさを早く食べたのか?wまさかのおかず2週目なのか?w
真相は闇の中へwww


天ぷら屋でキスが揚がってくる「キスでございます」のくだりもまさかのダジャレかよ!とw
一瞬凍りつくかと思ったぜwww


音楽はテレビシリーズに引き続きオイラの大好きな菅野祐悟さんだったのですが唯一に一点だけ!どうしても気に食わないのがOPアニメーションで流れてくるかなりキャッチーで激しいロック調のインストナンバーが図書館戦争の雰囲気とまるで合っていない・・・;
そこは高橋瞳を連れてくるトコだろぉがーっ!


作画の面はとにかく笠原に注目したいですね(笑)
喜怒哀楽の激しい彼女のコミカルな表情
そして後半では、もはや一介の成人女子とは思えないジャッキー・チェンばりのアクションを繰り広げてくれますw
ホント、名実共に笠原から目が離せない作品となってますよ^q^
オイラの勝手な憶測ですけど、たぶん『わすれなぐも』でロトスコをやってた新人さんが、もしかして来てる???


いやはや、それはさておき
実弾が飛び交う世界なのに相変わらずな【絶対に死人が出なさそうな中途半端な緊張感】がこのシリーズのイチバン残念なところ;
予告編からして『堂上教官がまるで死にそうにない』のが薫り伝ってくるのは流石に問題視すべきw
あと露骨なラブコメ路線から多少シリアスな路線に回帰したことで、ラブコメとの両立が上手くいってないのも解るのがちょっとぉ・・・











んでもまあ日野の悪夢、笠原と堂上の出会いといったテレビシリーズのダイジェスト的な組み込みを説明臭くなく自然に潜り込ませたのには拍手
極めつけは劇中で一瞬ではありますが中澤毬江ちゃんが映るかつてのスタッフの罪滅ぼし的なシークエンスもあるんで多少大目にみてこのぐらいが妥当な評価
何より大事なことは、この作品を観たアナタが【表現の自由】とはどうあるべきなのか?をこの物語から汲み取って、少しでも考えるキッカケになってくれることであるはず・・・なのでは?

投稿 : 2024/06/01
♥ : 29

ガムンダ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

背伸びしないでラブコメ書いてれば良いのに

TVシリーズの続編。
有害図書の検閲とそれに対抗した武装図書館の戦争のお話。

これだけ観ても大体わかりますが、状況設定が荒唐無稽なので先にTVシリーズで馴らしたほうが良いかも知れません。
詳しくはそちらのレビューをご一読願います。

概要を説明すると荒唐無稽の(悪い意味での)バカ設定そのままに映画版らしく活劇要素とラブコメを増量しました。

まずフィクションのIF設定は一つにすべきで、それがセオリーです。
IFにIFを重ねるともはや収集がつかなくなります。
「有害図書」が検閲の対象とされるというIFを設定したらその上でリアルなシミュレーションを構築する事がSFです。
この物語の場合更に「図書館が(合法的に)武装する」と言うIFを乗っけて戦闘を描きますが、まず何処から突っ込んで良いのかもわかりません。
順不同でざっと列挙すると

1.
図書館や書店にした所で、地下で営業するならともかく、斯様な状況で呑々と営業していて検閲隊の突入を許しています。
また検閲隊の側も普段はのんのんと出版を看過し、お日様の下で販売する事を看過すると言う、検閲する側もされる側も馬鹿ばっかりです。

2.
図書隊は行政機関なの?私兵集団なの?
もし私兵集団ならその財源は何なのか。まさか本の売り上げで賄っているわけでもないでしょうに、どこかにパトロンが居る筈ですがその説明も一切なしです。

3.
戦闘の武器が豆鉄砲のみ。
1で述べたようにまず肝要なのは諜報です。
劇中行われる大概の戦闘は間諜によって回避可能ですし決着がつきます。
交戦が開始されたとしてもその後の戦術もバカの極みです。
図書館側もUH60などの軍用ヘリを所有しているようですが、双方ロケット推進弾、対戦車ミサイルやガトリング砲、携行対空ミサイル等で一網打尽にすれば良い物を、ダラダラと撃ち合う事が目的化しています。
それもお役所仕事って事でしょうか。

4.
小説家トウマは狙う価値も守る価値もない雑魚です。
原発テロの模倣元となった小説を書いた小説家を検閲隊が狙い、図書隊が守るのがこの映画の大枠なんですが、トウマは特に反骨心があるわけでもなく、表現の自由に信念を持っているわけでもありません。
もしこんな世の中になっていたらもっと過激な論壇はウジャうじゃ居るはずです。
それともそれらは一通り片付いた後なんでしょうか?
だとしたらもう負け確です。今更トウマをながらえさせても無駄です。


また外国からメディア良化法に非難が出たりしますが、それは内政干渉というものです。
他にも告訴と提訴の違いを理解していなかったり、暗号が暗号のていを成していないのに至って作者は悪意のないただのアレだと確信しましたが。

表現の自由が何故必要なのか。
害があったとしても簡単に規制が出来ないのは何故なのか。
それは権力が自由を規制し民主主義が崩壊する事を防ぐためです。
国家権力の暴走による、より大きな害を恐れるからです。

しかしながらこの物語の世界ではもはやその防衛線は突破されています。
とっくにアノミーを呈し内戦状態となっていますから、事はもはや表現の自由を守ると言う次元の戦いではなくなっています。
全身癌が転移している時に虫歯の心配するようなものです。

原作者は自衛隊賛美小説も書いているようですが、事ほど左様に民主主義の構造と作動原理を理解していない者がそういう物を書く所に戦慄を覚えます。
単純に「表現の自由」と言えば絶対正義で万人の共感を得られると思ったのでしょう。
言葉を覚えた小学校4年生並の発想で小説書いてます。
そんなに銃撃戦が好きなら銃を買ってシリアにでも行けば良い。
「表現の自由」の向こうにある本当の意味を理解するでしょう。
命と引き換えに。


ただラブコメパートは小4では書けないですね。
ご立派なラブコメ作家です。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 11
ネタバレ

noira さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

図書館恋愛 革命のつばさ

本映画はテレビ版のその後を描いた作品であり、図書館戦争という物語は本作を含めて視聴することで綺麗に完結する物語です。
本作のみでも視聴に耐えることはできると思われますが、物語を深く理解し、楽しむ為にもテレビ版を先に視聴することを強く勧めます。

物語としては、2つの大きな柱で成り立っています。
とある事件の切っ掛けになったという疑いを掛けられた作家「当麻蔵人」を巡る図書隊と良化隊の争い、そして笠原と堂上の恋愛模様です。
尚、テレビ版とは異なり、恋愛要素よりもメディア良化法を含む思想観に関する争いの方が比重が大きい気がしました。

両隊の争いに関しては、映画ということだけあり随所で派手なアクションが展開され、とても興奮する映像でした。
又、テレビ版では本の読者が検閲の被害者として描かれていましたが、本作では本を作る側である作家を被害者として描いており、テレビ版と異なる視点での考え方や感情、それらの変化等が表現されていた為、視聴していて興味深い内容となっていました。

そして、笠原、堂上の関係についても綺麗に描かれていたと思いました。
{netabare}
笠原のライバル?も新たに登場することで良いスパイスになっていましたし、堂上と何かある度に恥ずかしがる笠原の姿は普通の女の子で、とても可愛く思えました。
笠原から堂上、堂上から笠原へのキスシーンは大変盛り上がりました。

恋愛と言えば、柴崎と手塚のストーリーも良かったです。
柴崎の乙女心、大人の恋愛にドキドキでした。
そして忘れてはいけない「キスでございます」笑
個人的には笠原の恋愛より柴崎の恋愛の方が気になりました。
…ちなみに、最後まで視聴したにも関わらず、柴崎の本心を未だ無駄に勘ぐってしまいます…汗
{/netabare}

総括すると、序盤は静かに話が進むこともあり、盛り上がりに欠けましたが、逆に丁寧に描かれているという印象も持ちました。
中盤から終盤では、視聴していてテンションも大いに上がる展開となっていました。
{netabare}
特に最後に車で突っ込む場面、そして絶対絶命のタイミングで黒塗りの車が現れる場面。
堂上から笠原への返事となるキスをする場面。
メディア弾圧を行っている日本の変化と未来を語る場面。
結婚して堂上姓となった笠原が教官となって新しい隊員達を指導する場面。
思い出すだけでテンションが鰻上りです。
{/netabare}

主要人物である当麻の演技やOP、ED、相変わらずなベタ展開には若干の不満は残ります。
しかし、それを差し引いたとしても、テレビ版を視聴した方には是非オススメしたい作品です。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7

76.5 3 テロリストで銃撃戦なアニメランキング3位
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(アニメ映画)

2021年6月11日
★★★★☆ 4.0 (176)
709人が棚に入れました
第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)から12年。U.C.0105——。地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、強制的に民間人を宇宙へと連行する非人道的な政策「人狩り」も行っていた。そんな連邦政府高官を暗殺するという苛烈な行為で抵抗を開始したのが、反地球連邦政府組織「マフティー」だ。リーダーの名は「マフティー・ナビーユ・エリン」。その正体は、一年戦争も戦った連邦軍大佐ブライト・ノアの息子「ハサウェイ」であった。アムロ・レイとシャア・アズナブルの理念と理想、意志を宿した戦士として道を切り拓こうとするハサウェイだが、連邦軍大佐ケネス・スレッグと謎の美少女ギギ・アンダルシアとの出会いがその運命を大きく変えていく。

声優・キャラクター
小野賢章、上田麗奈、諏訪部順一
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

宇宙世紀ものとの決別か。(じっくり見られたので追記です)

配信サイトでじっくり見られましたので。追記です。

 宇宙世紀ものとの決別という第1印象は変りません。

 驚異的な映像すぎて、ガンダム感がないというのも初見と一緒でした。ハリウッドが作るゴジラが面白くない…と同じにならなければいいのですが。

 内容もガンダムのテーマとして兵器としての運用、兵站なにより禍々しさというリアリティが無くなっていました。その分、戦闘時の周囲への影響を描いたのでしょうか。3DCGとしてのロボット描写としてのリアリティはありました。ただ、画面が暗いのでガンダムの決めポーズが見られませんでした。2作目に向けての焦らしでしょうか。

 組織そして人の描写には力をいれてました。ハサウェイ、ケネス、ギギのキャラは良く描けていました。つまり、ヒューマンドラマになったということでしょう。
 そして、テロリズムに堕すことでパーソナルな個人の悩み…シャアのような確信犯ではなく、何かをやらなければならないという焦りからシャアをマネてという甘えをハサウェイからは感じます。

{netabare} シャトルがダバオに降りたのは偶然ではなく、自分がイニシアティブをとるためにケネスがそう段取りをしたということですね。で、ハサウェイは自分のホテルへの襲撃を自分で段取りしたんですね。
 で、ギギといっしょにいたので段取りが狂って危険な目にあったと。まあ、コントみたいに逃げる先逃げる先全部危険で、ちょっとやりすぎましたけど。

 逆襲のシャアの時点で思想に走りすぎて、訳の分からないストーリーになっていました。そして最後はアムロがツンばっかりでデレないのでシャアが切れたみたいな感じで、ギャグにも見えるような結末でした。
 物語でもシャアは思想になっていましたが、環境、特権、宇宙移民、ニュータイプ。本作はなにかテーマがあるようで、その思想に内容が伴わない滑稽さが感じられました。

 マフティの行動と民衆の期待にズレがあるのもそういうところでしょう。1000年先と暮らし。ハサウェイが何をしたいのかわからないので、今のところギギという少女にしか興味が向かいません。この描写がそのままハサウェイの迷いだとしたら、訳の分からない感じが脚本の意図通りということで、非常にうまいストーリーだと思います。
 
 ギギについてはニュータイプの娼婦という設定?はララァの再現なのは間違いないでしょう。ガンダムシリーズを通じてララァという少女が結局のところ消化しきれず、歴代の主人公周辺の女性ニュータイプ、強化人間を経て、クエスそしてギギにまで引きずっています。
 つまり、ハサウェイとケネスはシャアとアムロの関係の焼き直しでしょう。ただ、不思議なことにギギに悲劇の予感はしません。というか奇異に見えて非常にまともなキャラでした。この少女を起点に、シンエヴァのようにガンダムを卒業…という訳にもいかないでしょうけど(大人の事情的に)

 ギギは性的な匂いを漂わせていますが、道徳的にはピュアな雰囲気。自らを汚いと感じる感性。恋する少女になっていまいた。この少女の迷いというか、悩みというか難しい状況が示唆されますが、これからでしょう。
 ハサウェイがギギに手を出せないのも、ギギが結局ハサウェイを押し倒さないのも、こういった子供の部分なのかもしれません。

 ハサウェイは、ガウマンというパイロットの救出などにまったく頭が回っていなかった、ということはこの時点でマフティへの興味が薄れているということでしょうか。ハサウェイも自分の甘さを自覚していましたが。

 アムロまたはそれ以前から始まる壮大な宇宙世紀もののガンダムクロニクルは、最後は個人の…それも女への迷いで幕を閉じる?のでしょうか。

 最後、ハサウェイに気があるっぽい女が出てきて、一方でギギがハサウェイが残していった時計のおもちゃに電池を入れるのは上手い心理描写でした。時が動き出しましたし。{/netabare}

 あと、注目ポイントはホテルのエレベーターの内部の液晶パネルです。アニメーターが貧乏で「高級」「豪華」が苦手だといわれていた日本アニメで、感心するほど高級感がありました。

 すごいアニメなのは間違いありませんが、映像美だけでは歴史的なアニメにはなれません。さて、続きはどうでしょう。



以下 1回目の視聴時の感想です。良く見ていなかったのか話を追えていませんでした。

{netabare}
 宇宙世紀もの、ですが、問題のスケールはテロリストにまで落ちています。前作までで、ララァに対してクエスの存在感があまりにも薄く、ハサウェイの抱えている心の陰もあまり見えてきません。地球の特権階級を憎んでいるらしいですが、そこの動機が弱い感じがします。シャアを形だけまねているのでしょうか。(追記;シャアって、逆シャアで最期でどういう結論にしたのか映画ではわからなかったです。環境の問題だといいながらアムロへの執着だった気がするんですが。サイコフレームがどうのこうので終わってよくわかりませんでした)

 ハサウェイのパーソナルな問題をギギとの関係で解決してゆく物語なんでしょうか(追記;それとも本気で環境のことで悩んでいるんですかね?だとするとギギが登場する意味がちょっと分かりづらいですね。ヒロインが欲しかっただけ?どうも環境について人の意見を聞いたりして、環境問題は単なる言い訳に見えたんですけど)。彼がなぜ今の状態にあるのかは本作からはあまり深くは読み取れなかった気がします。しかも、続きものっぽいので消化不良で終わっています。
 まあ、3部作と明示してるんですかね。であれば次作が楽しみな終わり方でした。

 ギギというのは、ララァと同じく娼婦または愛人なんでしょうね。ガンダムにおけるこの女性の扱いというのに、どんな意味があるんだろう、といつも考えてしまいます。魔性ということなんですかね。男を理解できる母は優れた娼婦である?

 ストーリーは面白くはありますが、かなり都合のいい展開と言えるでしょう。
 ハサウェイがあの特別なシャトルに乗っていた必然性があまりなく、そこにハサウェイの組織の偽物のハイジャックが来てます。しかも航路を外れた緊急着陸したダバオには敵の親玉のケネスが赴任してきた基地があり、ハサウェイの組織の拠点もそこにある。
 ホテルに泊まっていたら、ハサウェイの組織に襲われる。要人がかたまっているからなんでしょうが、緊急着陸して偶然そこにいたはずなのに、襲撃の準備はいつできたんでしょうか(追記;ここ偽装工作ということなんですね。でも32Fから上を攻撃するんじゃなかったのでは?)。
 しかも、モビルスーツ戦がハサウェイの真上で始まってしまう。
 うーん、この部分をもう少し丁寧に必然にしてほしかったですね。またはギギによる不思議な力?のせいなんでしょうか。
 大人向けに作っている雰囲気の割にはストーリー展開が子供向けという感じでチグハグ感はあります。少年向け小説が原作みたいなので止むをえませんか。

 本作がガンダムか、といえば、もはやモビルスーツものですらなく、それは単なる戦いの象徴になっています。極端なことを言えば現代兵器でドンパチやっていても、物語に破綻は出ないでしょう。

 アニメは、金はかけたのでしょう。ものすごい出来でした。しかし、実写に近づきすぎたといえばいいのでしょうか。ガンダムらしい迫力が感じられません。ハリウッド特撮的な迫力になってしまっています。
 冒頭のシャトル内の人の動きが気持ち悪かったです。ある種不気味の谷を感じました。

 ギギの造形、キャラだけは素晴らしかったので、それだけでも見る価値はあります。

 あえて、スケールを小さくしてパーソナルな問題に置き換え、ガンダムが不要になってゆく。ニュータイプもあまり意味がなくなってゆく。宇宙世紀もののガンダムとの決別なんでしょうか。

追記;ちょっと集中して見れてなかったみたいですね。一回しかみてなかったのでいろいろ変なレビューでした。また、2作目があるときに見返します。 {/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 11
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

モビルスーツの場違い感が醸す破滅の予兆

原作小説は未読。

【物語 4.0点】
三部作の一作目。

構成は序盤~中盤3分の2が人間ドラマ。派手なバトルシーンは終盤に集中。
だからと言って、終盤の見せ場にソースを集中すべく、前半を捨てているわけではない。

むしろ前半のハサウェイと出会う人々との濃密なやり取りの方が、
武装蜂起を前にした、ハサウェイ自身によるアイデンティティが不安定な現状を自己分析するパートとして重要なのではないか?
それくらい人物描写が繊細で惹き付けられます。

ハサウェイ率いる反地球政府運動「マフティー」
相次ぐ戦乱で疲弊した地球に特権階級だけを残すべく、
市民を拿捕して宇宙へ強制移住させる「マンハント」。こうした腐敗に鉄槌を下す。
大義としては申し分ないが、過去の武力行使を正当化する名分と比べるとかなり弱い動機。
戦乱で敗れ去っていった者へ思い入れるハサウェイの私心ありやなしや?

マンハント糾弾という点では、地球に残りたい市民とマフティーの利害は一致するが、
最終的に人類は全員宇宙に移住すべしとのマフティーの理想とは齟齬を来す。

何より今や、宇宙世紀(U.C.)0105年。
もはや武力だの、モビルスーツだの、ニュータイプ理論だので現状を変更する時代でもない。
マフティーが人々から“テロリスト”と揶揄されるのは時代の空気を読めていないからだ。

そんなことはハサウェイも百も承知。
その上で彼はシャアら先人たちが歩んだ破滅の未来を回避するには?或いは破滅を織り込むのか?
自己の立ち位置を再確認するために、ネクタイを締め市井に紛れ、自分を模索し続けるのだ。


この観点から心に刺さっているのが{netabare}タクシードライバーとの会話シーン。
その日暮らしの市民には1000年後の地球環境を憂うマフティーの理想になど構っていられない。
だって周りには結構、自然は残っているし。

この活動家が日常生活から乖離して孤立する状況。
世の浮いてる活動家の方々には、テロに手を染めないためにも、耳をかっぽじって傾聴して頂きたいと願います。{/netabare}


ハサウェイが思索の果に迎えるガンダム発進シーン。
綺麗に自己を総括できていますが、高揚感は少な目です。
曇天への発進は、地に足が付かない、五里霧中な行く末を暗示しているかのようです。


以上の通り、物語を愉しむには、
『逆シャア』までのサーガをテーマまで咀嚼することが必須な、マニアックな作品であることは言うまでもありません。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・サンライズ

背景美術と人物作画の一体感を出す昨今のトレンドに逆行する本作。
写実的な海面などの背景に割り込んでくるモビルスーツなど浮きまくっています。
戦闘シーンでよくある街中でモビルスーツが煙を巻き上げるカットはメカを魅せるための演出。
ですが、本作の場合は、何もそこまでスクリーンいっぱいに煙やら火花やら噴かなくてもいいじゃないか(笑)
ってくらいの迷惑行為として処理。

宇宙世紀を動かすのはモビルスーツに乗ったニュータイプなどではなく、
メンズスーツを着たオールドタイプである。
モビルスーツなんてお呼びじゃない。
メッセージ性が作画構成でも徹底しています。


とは言え、オールビューモニター搭載が標準化したモビルスーツ同士の戦闘は迫力満点。
私は一作目は通常のシアターで鑑賞しましたが、
次作は360°没入感を最大化できる巨大スクリーン等での鑑賞にこだわりたいです。

【キャラ 4.5点】
主人公ハサウェイ・ノア。
顔立ちや対人関係のぎこちなさはアムロ・レイ。
二つの名を使い分ける暗躍ぶりはシャア・アズナブル。
アムロかシャアか。ハサウェイ自身が葛藤する際の引き出しにもなる。

ハサウェイの秘密を見抜き絡んでくる謎の美少女ギギ・アンダルシア。
大人の色気で、ハサウェイのライバルともなるケネス大佐とのトライアングルを仕掛けたかと思えば、
戦場では幼女の如く動揺を露わにする情緒不安定ぶり。

ギギとの交流の中で、クェス・パラヤを破滅へと攫っていったシャアの一件が重なるハサウェイ。
大義より、過去のトラウマという感情で言動を左右されるハサウェイ自己分析の一助ともなる。

総じて各サブキャラとも、ハサウェイ自身が掴めていない自分探しにヒントを与える献身ぶり。

【声優 4.0点】
ハサウェイ役の小野 賢章さん。
幼さと凛々しさが混在する青年ボイスで、村瀬監督からの“感情と思想に引き裂かれたキャラクター”という難題に応える好演。
このハサウェイ危ないことするよ。

ギギ役の上田 麗奈さん。ボイスを高嶺にコントロールして正体を掴ませない妙演。
これは周りの男どもも取り扱い方法に困ります。


公開前、劇場版『逆シャア』の少年時代以来、
長らくハサウェイに声を当ててきた佐々木 望さんからの“声優交代”が物議を醸しました。
ただこれも『ガンダム』以外のコンテンツではよくあること。
アニメ化よりも先にゲーム等でキャスティングされた声優が、アニメでは変更になるのは割りと普通。
ただハサウェイの場合はアニメ映画化以前にゲーム等で活躍する期間があまりにも長すぎましたw

また、このキャスティングについては、アニメ映画化後もゲームのハサウェイは佐々木さんが担当していることなどから、
①小説版『逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』→『閃光のハサウェイ』原作小説のハサウェイは佐々木 望さん。
②劇場版『逆襲のシャア』→本劇場版三部作のハサウェイは小野 賢章さん。
①②はパラレルワールドの別系統作品であると示唆しているとの見方もあるそうですね。

劇場版三部作見ながら原作小説読んだら①②の異なる要素が混ざり合って困惑してしまうかも。
この辺りが、私が劇場三部作展開中は、小説購読は『~ベルトーチカ・チルドレン』までで止めておこうと決心している理由です。

【音楽 4.0点】
劇伴担当は澤野 弘之氏。
エッジの効いたテクノ等をアレンジした戦闘曲及びボーカル曲で魅せる。
「TRACER」は特にぶち上がります♪

気になるのが『UC』の澤野氏が『ハサウェイ』でも音楽担当している事。
『UC』は原作『ハサウェイ』完結後に、『逆シャア』~U.C.0100の間に闇に葬られた史実があったと後付けされたエピソード。
よもや本シリーズで『UC』を絡めてくることもないとは思いますが、
パラレルだとしたら何でもありですし。
もしくは『UC』同様、『ハサウェイ』も戦乱の亡霊を退治する物語として同一視すれば良いのか。
考え出すと落ち着きません。


ED主題歌は[Alexandros]「閃光」
過去を振り払って未来へ驀進する快作ロック。
ですが、今のハサウェイにはちとまぶしすぎる感もw
Netflix海外配信に合わせて英語版もリリース。
MVは英語版の方がAMVになっており作品のシーンを振り返るのにも最適。


【付記】
分割2クールの『水星の魔女』の幕間に、本作のTV編集版が1/15~全4話で放送されるそうで。
制作中の第2部への予習復習としてハサウェイを分析してみるのも一興かと。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 19
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

劇場で観るべき劇場版アニメ

[文量→中盛り・内容→感想系]

【総括】
久しぶりに、「あ~、俺、今、ガンダム観てるわ~」と思えた。非常に充実した1時間半。

原作は、1989年に出版された、富野由悠季さんの同名小説。「逆襲のシャア」から12年後の世界を舞台にしており、主人公は「ハサウェイ・ノア」。ホワイトベースの艦長として知られるブライト・ノアの息子。

コロナの影響もあり、この1年、映画館に行くのは控えていたのですが、本作はどうしても劇場で観たかったので、昨日行ってきました。田舎の映画館ということもあり、キャパの10分の1程度しか客がいなくて、かなりゆったり観られました。

劇場版三部作の1作目ということで、ストーリーは完結しませんが、充分な満足度がありました。

私が本作を劇場で観てほしいと思う理由は、本作の見所が、やはり映像と音声にあるからですね。

本作では、人間目線でのモビルスーツ戦が多く描かれます。モビルスーツの部品がちょっと落下しただけで命を失ってしまう、絶望感や恐怖。それを味わうには、大スクリーンで観るのが1番だと思います(私は映画館に行くと、視界が全部スクリーンで埋まる、前の席で観るのが好きなんですが、今作はそれがハマってた、スクリーンを見上げる形が良い感じでモビルスーツを見上げている気分になりました)。

まあ、ガンダムを知らない人はまず観ない映画だとは思いますが、一応、「地球環境の為に、全人類を宇宙に移民させようとする青年(テロリスト)の戦い」を描くストーリーです。逆シャアと世界線は繋がっていますが、前作を知らずとも観られる映画だと思います。

コロナ対策をしっかり行った上で、映画館で観てほしいですね。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
原作小説は、確か中学生の時に読んだはずなのに、びっくりするくらい内容忘れてる(笑)

あれは、いいものだ、、、いや、これは、いいことだ(笑)

ということで、ストーリーは知らずに、新鮮な気持ちで楽しみました。

序盤、宇宙船内の会話劇。これがガンダムの会話だよなという空中戦に、ニヤリ。

続いて、ホテルのシーン。どこかクェスを思い出させる、ギギのキャラに、ニヤリ。ハサウェイが大人になってて、ちょっと複雑な気分(笑)

(ちなみに、ハサウェイの植物学の先生が、アマダ博士って、シローとは関係ないよね? 映画の間、ずっと気になってしまったw)

ホテルを射撃したところからの逃亡戦は、本作で一番の見所。人間の目から観たモビルスーツ戦の迫力。圧倒的な暴力。

ハサウェイは、「地球のため」に戦っているが、「人のため」に戦っているのだろうか。明後日を考えられない人がいるなかで、1000年後の人類の、地球のために戦う愚かさと純粋さ。「魚が取れなくなった」と地球環境を嘆くくせに、ディナーで魚を食べる矛盾。しかしそれも、腐敗した連邦高官のせい。

市街地の上でも容赦なく射撃した軍も軍だが、そもそも市街地を盾にしたのはマフティーだ。

どちらが正しいとか間違っているなんてこと、富野さんが書くわけない。両陣営にそれぞれガンダムがいることが、その証左か。

終盤のモビルスーツ戦は、パイロット目線での戦いが熱い。ワケワカランが、訳もなく面白かった。

ストーリーに関しては、まだ序盤なので、3作観てから語りたいと思います。

余談ですが、私は今、30代中盤なのですが、映画館の客層の中ではまだまだ「坊や」でした(笑) オッサン8割、女性1割、子供1割(笑) もうちょい、ガンダムも裾野を広げていかないとな~と思いました。
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 20
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