フルCGで戦いなおすすめアニメランキング 3

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのフルCGで戦いな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月08日の時点で一番のフルCGで戦いなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

72.8 1 フルCGで戦いなアニメランキング1位
BLAME!(アニメ映画)

2017年5月20日
★★★★☆ 3.8 (212)
1189人が棚に入れました
テクノロジーが暴走した未来。人類の希望は孤独な旅人に託された――。

過去の「感染」よって、正常な機能を失い無秩序に、そして無限に増殖する巨大な階層都市。
都市コントロールへのアクセス権を失った人類は、防衛システム「セーフガード」に駆除・抹殺される存在へと成り下がってしまっていた。
都市の片隅でかろうじて生き延びていた「電基漁師」の村人たちも、セーフガードの脅威と慢性的な食糧不足により、絶滅寸前の危機に瀕してしまう。
少女・づるは、村を救おうと食糧を求め旅に出るが、あっという間に「監視塔」に検知され、セーフガードの一群に襲われる。
仲間を殺され、退路を断たれたその時現れたのは、“この世界を正常化する鍵”と言われている「ネット端末遺伝子」を求める探索者・霧亥(キリイ)であった。

声優・キャラクター
櫻井孝宏、花澤香菜、雨宮天、山路和弘、宮野真守、洲崎綾、島﨑信長、梶裕貴、豊崎愛生、早見沙織
ネタバレ

waon.n さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

超絶カッコいい!本当に映画館で観たい。

 1時間46分ずっと圧倒されっぱなしだった。絵、音、動き、匂い、熱。匂いや熱まで感じられる気がする。それほどに作りこまれた上質な作品だと思います。ポリゴンピクチャーズさん弐瓶勉さんはシドニアの騎士でしっかりと私の記憶に残っていて、ずっと観たいなーとか考えていたのですがやっと観れた。
 NETFLIXでの視聴だったのですが、映画館で観たかった。2017年の作品という事でなぜ気づけなかったのか後悔ばかりです。(本当に映画館で観たい)

 ネタバレタグ入れますので、未視聴の方はSF好きならぜひ見てもらいたいな、そんでもってその後また読んでもらえたら嬉しいかなと思います。

 魅力を語りたい。
{netabare}
 この作品の最大の特徴は建造物に囲まれている状況であるという事。ここまで閉鎖的な雰囲気の作品も珍しいし、全体的に黒く暗い。アンダーグラウンドを舞台とした物語だという事です。
 アンダーグラウンドというのも、地下という意味だけでは無く、機械の統制を免れて逃げている人間を描いた作品であるので、これは偶然ではなく必然的にこういう雰囲気づくりになったのだろうし、それを映画としてみた時にちゃんと演出されている。
 主人公はあくまでも、キリイという青年の容姿をしたイケメンなんだけれど、それは漫画でも映画でも同じではあるものの、どの視点から観客に見てもらうか意識しているかっていう点でいえば、生き残った人間達の視点からだと思われる。
 彼らは今の私達に一番近い存在です。
 キリイという主人公はサイボーグ化されていて元々は機械側の物だったが盗まれて今の状況になっているという存在。
 シボという科学者は機械が統制を初めてから、それを人間の手に取り戻すために動いていた存在。彼女はキリイに発見されるまで2000年ほど待っていたとかって言っていた(1752万時間位待ってたって)のでちょっと理解しがたい存在になっている。
 そして、機械から逃げている人間達。ある意味一番現在進行形であるはずの人達が視聴している私たちに一番感覚が近いというのも面白いなと思う。
 キリイと科学者の会話に対して「何言ってるか、全然分んねぇ」うん私も!ってなりました。共感できる人達を主体に描いて行くのは、この短い時間でこのハードなSFというちょっと難解な物語を楽しませる上では必要な判断だったと思います。これは英断ではありますが、主人公というキャラクターにスポットを当てる事が難しくなる、なんなら一番遠い存在として描かれているから。
 この不一致に私は最初困惑するも、話が進むにつれて主人公がこの集落にいる人間を助けようと走り出すその行為に感動すら覚えてしまっていた。
 サイボーグ化によって感情がほとんど出ないからこそ、一生懸命に走ったり戦っている姿に、行為そのものに私は感動していたわけです。

更新追記:人間達の機械へのリテラシーは不思議なもので、視聴者からすると完全にロボットに見えるシボに対して、ちゃんと人間扱いしている点は面白い。他の人間を知らない、機械は集落に入れない、会話できない、などが線引きになっているのかなって思いました。これって現代に生きる私達には無い感覚ですが、どこかで機械と人間の線引きを私達だってしているはず。無自覚または無意識なだけで。ものに生命が宿るまたは神がという考え方が日本にはある訳で物に人間と同じような名前を着けるような人だっている。
 そういう意味では線引きは意外に曖昧だし、SFのAIによる攻撃がだとかっていう話になってきたりする訳であります。
 シボというキャラの造形が完全に人間のそれではない、けれど人間はそれを人間と認めることに抵抗がない。という設定は視聴している私達よとはやっぱり違ってちゃんと何千年後の未来を語っているんだという表現になっているんだと感じました。まぁ二回目を1.5倍速位で観て余韻に浸っていたら思い浮かんだことなので、追記という形になってます。
 
 アニメーションとしての魅力。
 廃墟って好きですか?私は割と好きなんです。忘れ去られた地にもかつては人が住んでただろうと思いを馳せるのは好きです。お城を見に行ったりする時にも感じる。これはノスタルジーとも言えるのかもしれませんね。
 あと広い工場とか武骨な建物がその機能のみを意識して作られている純粋さが好きなんですけれど。
 この物語はその巨大な建物が階層のように重なり続けて建設されているって設定のようで、それを表現する絵のカッコよさ、そして不思議にノスタルジックな気持ちにさせられる絵によって世界観を完璧に構築している。画面全体が建物なんです。凄い以外の言葉を見つけられないって感じです。
 そこに、アニメーションとして動きのある機械や人間も3Dでメチャクチャ動きまくります。モーションキャプチャーなのかな?人間の動きがかなりリアルで重力を感じたりすっごい飛んだりする時の踏切とか伸びとか、細かいところまで作りこまれている。
 でも3Dだと、パーツを作りこむのかな?分からんけど装備のデザインも良い。フルフェイスヘルメット必要性がいまいち伝わらなかったんですが、その中で見れるHUDとか好きね。主人公の目とかに入る演出とかも良いくて、FPS視点を入れたりしてSFって感じ出てるのが良いんだよなぁ。
 そして、この作品の一番カッコいいシーンはやはり後半の戦闘シーンですね。主人公の背中を見せながらのティルトアップにより全体像を見せていく演出はマジでカッコいいし、凄く綺麗です。あのシーンだけでも見る価値あるんじゃないかとか大げさに言っておきます。見直したら、これポップのメドローアだ…ってダイの大冒険リメイクしたらメドローアの演出はあれで行きましょう。
 
 閑話休題。
 
 音楽が良いんです。
 音楽って好みによって違うからねーとかじゃなくて、シーンに合っているか、どう見せたいかを理解するための指標にもなったりするから侮れませんな。逆に、BGMをピッタリと止ませて呼気の音だけとかにしたり、上手いんですよねー。
 四足歩行で走り回る機械のシャリシャリした足音とかも気持ち悪いのなんのってもう上手。

 脚本が良い。
 回想から入り、速攻で見せ場、敵との遭遇、主人公に助けられる、主人公の目的、集落の目的、相互の利害関係の構築、中盤で訪れるピンチ、集落への敵の侵入、敵の排除、逃避、エンディング。
 最初から全開で見せ場を持ってくる、中盤でもまたピンチからの脱出後半へのネタ仕込み、後半での最高の戦闘シーン。
 この3幕構成の全てにアニメーションの見せ場を持ってくる。プロットポイントを動かしているのはやっぱり雨宮天さんが演じる づる という少女。この映画ではこの子が物語を動かしているので主人公であるとも言える。ここから見てもこの映画は人間の目線で描かれていて、ちゃんと観ている人を意識した作りになっているんだなって脚本からも感じますね。
{/netabare}

 最高だった訳だけれど、じゃあ物語として、テーマとしてどうなの?ってなると、映画だし良いんじゃない?って感じます。
 結局作り手がどういう作品を作りたいか、どういう物を観てほしいかな訳でそれがハマるかハマらないか。今回は映像として、アニメーションとして最高の作品であるからそれで満足なわけです。私はねw
 テーマがあってそれを見せたいって作品もあるんで、そういう物はそういう物としてちゃんと観れるようにしたいとは常々思っておりますが、この作品に関してそこはあんまり強く描いてないんじゃないかなって思うので、物語としての評価だけは低いです。

 長々と書いてしまいました。全部読んでいただけていたら嬉しいです。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7

chariot さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

解りやすく入りやすさに配慮の成されたSF作品。

劇場版、約105分程度。
弐瓶勉氏の漫画が原作となるセルルック3DCG作品。
ジャンルはサイバーパンク、バトル的な感じ。

<雑な設定説明>
舞台は何千階層から成る巨大な構造物。
ネットスフィアと呼ばれる都市を管理するシステムがあり、かつての人類はアクセス権となる「ネット端末遺伝子」を持っていた。
突如起きた<感染>によりネット端末遺伝子を持つ人類はいなくなり、暴走するシステムを止める術を持たない人類はネットスフィアを護る為の人工物セーフガードから違法居住者とみなされ攻撃を受ける。
主人公・霧亥(キリイ)は世界を正常に戻す為にネット端末遺伝子を持つ人類を探す旅をしている…

劇場版では霧亥が旅の途中で出会った電基漁師たちをメインとして話を展開する。


◆原作、そして劇場版としての作り。
原作既読ですがこの作品をどう映像化するのか、どんなストーリーでやるのか、非常に気になっていたのですが、感想から言えばアリでした。
まず会話も説明も少なく解りにくい作品である事は有名な作品ですし、全10巻を100分程度の話にまとめるのも不可能。
そこを上手く劇場用にアレンジして初見でも問題なく世界観を掴め、霧亥ではなく電基漁師たちを主軸にする事で感情移入のしやすさにも考慮した良いストーリーとなっていました。


◆物語4.0
序盤でこの世界に住む人々の暮らしを見せ、明確な脅威(敵)を表示し、本来の主人公である霧亥と接触する事で話を動かして行く。
ストーリー的に難しい事もなく細かな設定もストーリーと無関係な部分は削ぎ落とした説明で無理なく受け入れられる作りは親切設計で◎
原作通りの部分とオリジナルな部分とを上手く混ぜ合わせ、緩急のしっかりした展開は劇場版用として良く練られた印象。


◆キャラ4.5
こちらも劇場版用に女性キャラを配し、好感度UPを狙う作戦(笑)
主人公とも言える少女づるは原作にも登場するものの、あちらはファンでももはや覚えている人も少ないと思える程度の存在。
そこを昇華させる事で薄暗い世界にメリハリをつけている。
またタエやフサタといったづるの同年代の仲間を用意し物語に関わらせ、原作との差異を上手く埋めていた。


◆声優4.0
全体的にはもう少し上げてもいいんですが…
何故だろう…
霧亥に櫻井孝宏氏を起用する意味がわかんない(笑)
もうね、喋らないし感情も薄いから別に近所のお兄さんがやってもそんな変わらないです。
づるもタエもシボもサナカンも捨造もおやっさんもみんな良かったです。
(なに、この適当感溢れる感想…)


◆作画5.0
個人的にポリゴンさんの作画というかCGは評価が高いのですが、やはりこの無機質な世界感に非常に合う。
シドニアの騎士から見ても更にCGである違和感が少なくなった印象です。
また背景に関しては弐瓶氏自身も拘りのある方ですが、制作陣の拘りも感じられる素晴らしい出来。
配管の隙間からのカメラワーク、ヘルメッターや網膜に表示される電子情報、建設者や駆除系の動き、重力子放射線射出装置の威力、全てに於いてBLAME!の世界観を損なわない見応えのある映像でした。


◆音楽4.5
音楽というか、音響効果に関しての評価とします。
シドニアの騎士でも細かい音にも拘りを見せていましたが今回も同様。
個人的に凄く気に入ったというか気持ち悪さを最大限に引き出していたと感じたのが駆除系の歩く音。
原作だと歩く音までは表現されていなかったので金属質且つ虫っぽさもある音が非リアルなのにリアル感があって最高に気持ち悪かったです。
重力子放射線射出装置の音も地響きのような轟音で凄かった…

3D音響ドルビーアトモスが体験出来る劇場でも公開されています。
(一番の近場が幕張なのでどうにか時間作って行きたいと思ってますが…)
僕が観たのは7.1chでしたがそれでも十分すぎる程の迫力はありました。


まとめ。
弐瓶氏の描く世界を丁寧に再現し、原作ファンのみに受ければ良いといった一見さんお断りな空気も作らず、すんなりとワールドに溶け込めるように工夫された良作。
単体の物語に関しては突出した良ストーリーとは言えないが構築された世界観や美術、3DCGを限界まで生かしたエンタメ性の高さは特筆すべき事項。
原作ファンやサイバーパンク物が好きな方は勿論ですが、そうでもない多くの方に弐瓶ワールドを体感して欲しいと思います。




最後に…
「俺は霧亥…人間だ」

セーフガードじゃないよ?的な意味で言ったのかもしれないけど、
ここは「お前、人間じゃねえよ!」とツッコムべきなのだろうか…(笑)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 14
ネタバレ

しゅりー さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

BLAME!の世界に浸ることができる傑作

2003年頃までアフタヌーンで連載されていた二瓶勉先生のSFコミックが原作。
原作は個人的な感想を一言で表すとある種の変態的な背景フェチ漫画です。
それは人間の制御を離れた機械の無秩序な建築により
どこまでも人工的な建造物で囲われた世界が舞台であるためです。
寡黙な主人公:霧亥はネットへのアクセスと機械の制御が可能な
「ネット端末遺伝子」を持つ人間を探して
「ネット端末遺伝子」を持たない人間を排除する「セーフガード」や
人間と敵対する「珪素生命」と戦いながらひたすら旅をするのですが、
その背景に描かれた世界の圧倒的な書き込みによって読者を魅了していたように思います。

以前にもアニメ化の企画はあったようですがいつの間にか頓挫していました。
二瓶勉先生原作の「シドニアの騎士」のアニメ展開から発展して
劇場用アニメとして2017年5月に公開されたのが本作です。

「シドニアの騎士」同様ポリゴン・ピクチュアズによる制作で
スタッフも2期の瀬下寛之監督とシリーズ構成:村井さだゆきさんなど
共通するスタッフが多いようです。

映像としてはポリゴン・ピクチュアズによる3DCGのアニメーションで
広大な空間が精細に描かれており、キャラクターの衣装や顔の汚しなども
非常にきめ細やかで、さらに抜群のカメラワークで
戦闘シーンの躍動感が素晴らしいです。

物語は原作の一エピソードを素にオリジナルの設定や
キャラクターなども追加されて新たに描かれています。
原作では霧亥、シボを中心とした話に村の人々が関わるイメージですが、
本作では食糧難で困窮した村の人々にスポットをあてた
群像劇として昇華されていて見応えのある物語になっています。
また原作のキャラクターは輪郭線が薄く、表情におぼろげな印象がありましたが
森山祐樹さんのキャラクターデザインにより意志の強い顔立ちで
物語の説得力が非常に増していると感じます。

このキャラクターの意志の強さや村の人々の物語の説得力は
個人的にはBLAME!がアニメになって得ることができた
最大の恩恵だと思っていますので原作をご存知の方には是非見てほしいところです。
もちろん原作を知らなくてもあまり問題ないくらいに
丁寧に世界観を描写してあると思いますので、
ハードなSFの空気が好きであれば是非にとおススメします。

{netabare}
欲を言うなら原作でのサナカンとの初戦闘シーンにおける
セーフガードの気持ち悪い表現(後のガウナに通ずるような)があっても・・・
と思うところですが劇場アニメ的には難しいのかもしれません。
{/netabare}




さて通常のアニメなら上記内容くらいで書き終わるところなのですが
本作には国産アニメではじめてドルビーアトモスという音響システムでの
上映を行ったという特徴があり、音の部分でも是非視聴していただきたいアニメです。
音響監督:岩浪美和さんがドルビーアトモスの「ゼログラビティ」をみて以降、
同じ音響システムでアニメをと求めてきた結果が本作で実現したとのことです。
今まではドルビーアトモス対応の作品を制作するための予算的な制約や
スクリーンの確保が難しいといった制約があったようですが、
某戦車アニメのロングヒットと高い評価によってドルビーアトモスを
使用したアニメの制作、劇場公開が実現されたのだとか。

前述の某戦車アニメでは戦闘シーンの大音響が
特に話題になっていたように感じます。
本作も銃器の音声や巨大な物の衝突音、爆発、
そして主人公霧亥の武器:重力子放射線射出装置の音声など
戦闘関係の音の迫力が素晴らしいです。
ただ、さらに言うなら音が流れていく方向や奥行きが
とても自然に感じられることが魅力です。
特に本作は無秩序に建造されていった都市群という
広大な構造体の中が舞台ですので、その場所ごとに響く音の感触が
全く違って聞こえて菅野祐悟さんの世界観に沿った劇伴音楽と合わせて
まるでBLAME!の世界に迷い込んだような没入感がありました。

残念ながらドルビーアトモスに対応した劇場は全国でも
千葉県、愛知県、兵庫県の3か所しかないとのことですが
もしそうした劇場に足を運べるようであれば
是非体感していただきたいとおすすめします。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 10

79.3 2 フルCGで戦いなアニメランキング2位
スパイダーマン:スパイダーバース(アニメ映画)

2019年3月8日
★★★★★ 4.3 (88)
441人が棚に入れました
ニューヨーク、ブルックリン。マイルス・モラレスは、頭脳明晰で名門私立校に通う中学生。彼はスパイダーマンだ。
しかし、その力を未だ上手くコントロール出来ずにいた。そんなある日、何者かにより時空が歪められる大事故が起こる。
その天地を揺るがす激しい衝撃により、歪められた時空から集められたのは、
全く異なる次元=ユニバースで活躍する様々なスパイダーマンたちだった――。

声優・キャラクター
《日本語吹替版》小野賢章、宮野真守、悠木碧、大塚明夫、吉野裕行、高橋李依、玄田哲章
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

【辛口コメント】多様だね。で、何がしたいの?→続編の解答に期待大♪

原作アメコミは未読。映画鑑賞はサム・ライミ監督の3作くらい。

【物語 3.5点】
NYブルックリン。
黒人少年・マイルス・モラレスが、スパイダーマンことピーター・パーカーの遺志を継承し、新たなスパイダーマンとして覚醒するまでの物語。

多元宇宙(マルチバース)間の転移により過去を取り戻したい黒幕。
それに伴い各宇宙から迷い込んだ、様々な形態のスパイダーマンたちと共に野望の阻止と、各々の世界への帰還を目指す。


別次元のスパイダーマンこと、くたびれたメタボおっさんのピーター・B・パーカーと主人公少年との先輩後輩関係。
その他のスパイダーマンたちと、正体を明かせない孤独なヒーロー同士、
腹を割って語り合うことで、ヒーローの宿命の描写を深化。
多様なスパイダーマンを生かしたテーマ提示には成功している。


ただ、私は納得しきることはできませんでした。
本作は2019年の第91回アカデミー賞・長編アニメ映画賞受賞作。
前年のアカデミー賞では“#Me Too”運動の一環として俳優たちが黒ドレスでセクハラ問題に抗議。
同賞も、年々、政治色、社会問題提起への傾倒を強めていく中での受賞。

もはや映画その物の出来よりも、差別問題など、リベラルが掲げる政治・社会課題解決に寄与するか否かで評価される風潮になってはいまいか?
本作は私のポリコレアレルギーが急速に強まっていった時期の作品。
(因みに『グリーンブック』や『パラサイト』などこの頃のアカデミー賞・作品賞は映画としてはとても素晴らしい作品だとは思っています。)

よって私は本作に対しても、黒人少年のスパイダーマンを主役にした意義。
スパイダーマンに多様性は必要なのか。
どうしても手厳しく追求してしまいます。

結果、マイルスもスパイダーマンやって、たった2日では主役として私を納得させるだけの信念までは見えてこない。
色んなスパイダーマンわらわら出して来たけど、それで「誰でもマスクをかぶれる。」と結論付けられても、
結局ヒーローになるには身近な幸せが犠牲になるのを諦観しなきゃならないんでしょ?
誰でもマスクはかぶれるのだろうけど、俺はかぶりたくないね。
などと捻くれてしまう自分がいたのです。


このままだと私の中で記憶に残らない作品で終わってしまうこの『スパイダーマン』ですが、風向きが変わったのは続編PV。
来月公開の『~アクロス・ザ・スパイダーバース』、来年予定の『~ビヨンド・ザ・スパイダーバース』の2作。

高校生スパイダーマンを続けるマイルスが「愛する一人を救うか?世界を救うか?」との問いに対して「俺だけは全員救ってやるよ」と力強く宣誓。
捻くれた私を修正するだけの信念を持ったヒーロー像確立の予感。
スパイダーマンも幸せになっていいのか?俺もマスクかぶれるかも?
続編2作と合わせた三部作の序章『~イントゥー・ザ・スパイダーバース』としての本作の存在感も増している所です。


【作画 4.5点】
CG映画の中に画面分割によるコミックレイアウト表現、吹き出し風のレタリングなどアメコミ要素が落とし込まれ見ていて楽しい。
手描き感を損なわずに成立させたCG映像としては今なお世界最高峰。

その上で、日本の二次元ロボアニメも感じさせるペニー・パーカーのアニメ調。
戦前アメリカを思わせるスパイダー・ノワールの白黒フィルム調。
児童向け動物キャラ世界の豚、スパイダー・ハムのカートゥーン調。
多彩な表現が混在しても破綻しない統率力は見事。

クライマックス、背景にも惜しげもなく作画を入れ構築したマルチバースの混沌。
そこをかいくぐるスパイダーマンの立体アクションも圧巻。

色彩では黒より白の眩しさが鮮烈。
光の強さが、スパイダーマンのマスクの白い目にこもった意志とリンクする演出がグッと来ます。
是非コントラストの表示幅の広い環境で鑑賞したい映像美です。

ただ、それでも満点まで突き抜けないのは、まだ完全に確立されていないマイルスのスパイダーマン像ゆえ。
凄い映像技術で色々表現したのには感心したけど、
結局マイルスはこのマルチバースで何を成したいのか。
信念と映像が一体となった瞬間が、私が作画5点を付ける時なのだと思います。


【キャラ 3.5点】
主人公マイルスが出会う少女・スパイダーグウェン。
一応のヒロインポジションだが、たった2日のボーイミーツガールでは萌えもデレも不完全燃焼。
その無念を晴らすのも私が続編鑑賞したい主要な目的の一つ。
その他のスパイダーマンたちも軽く半生を紹介した程度に終わっており、今後の解像度アップに期待したいです。

時にスクリーンの過半を埋め尽くす黒い肩幅(笑)が特徴の黒幕・キングピン。
悪を貫く最中に失われた幸福奪還への執念が次元に穴を穿つ。
ヴィラン(敵役)だが彼もまた幸せになれないアメコミキャラの悲哀を体現。
あと私もキングピンの肩幅に{netabare} 「HEY~!」とショルダータッチ{/netabare} したいですw

{netabare} パトカーで送った学校入り口で「愛してる」と言わせるw{/netabare} 過保護、過干渉な父を煙たがったマイルスが懐くのはアーロンおじさん。
グラフィティや{netabare} ショルダータッチによる女の子の口説き方{/netabare} でアンダーグラウンドな文化の洗礼を与え、
(※核心的ネタバレ){netabare} ヴィランとしてマイルスと対峙し、スパイダーマンの悲哀の洗礼も浴びせる。{/netabare}
今後、マイルスが世界の敵になってでも愛する人も救うのかと葛藤する際、
ダークサイドの発端として回顧されそうなキャラです。


【声優 4.0点】
日本語吹替版を配信視聴。

メインキャストはアニメ声優陣を中心に固める。
ひと昔前まではアニメ中心の声優が映画吹替となると、
リップシンクの取り方も独特な中で、吹き替え声優と比べて、もうひとつ声が張れない場面も散見されましたが、
近年はアニメ声優も健闘されてますね。
アニメ声優の芸域拡大と、役者としての進歩を実感します。


なりたてヒーローの戸惑いを演じるマイルス役の小野 賢章さんを、
色々すり減ったピーター・B・パーカー役の宮野 真守さんが励ます構図。

グウェン役の悠木 碧さん。マイルスと好ムードになるもまだまだ勝ち気なツンボイス中心のヒロイン。
変幻自在な声質による真価発揮はまだ先の話か。
なので本作ではジャパニメーション的ロリ成分を供給するペニー・パーカー役の高橋 李依さんで萌えを代替w


【音楽 4.0点】
黒人主人公ということもあり、HIPHOP中心の楽曲群が壮大なオーケストラとも融合しムードを演出。
ポスト・マローン&スウェイ・リーの主題歌「サンフラワー」はビルボードチャートでも首位を奪取したメガヒット曲。
私が印象に残ったのはマイルスが再起する際に挿入されたブラック・キャビア「ホワッツ・アップ・デンジャー」

投稿 : 2024/05/04
♥ : 13

lll1 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

こりゃアカデミー賞とるわ

 今作を観る前までは、『犬ヶ島』が長編アニメーション賞を取るだろうと思っていました。
 『犬ヶ島』も非常に新しく、挑戦的なことをした映画でしたが、今作も今まで観た事もないようなアニメーションを作ってきた。
 

 もう"圧巻"でした。ここまで完成された映画を観たのは久しぶりのような気もします。

 物語に感動したとかではなく、「なんて素晴らしい映画なんだ」と思い、観賞中涙ぐんでしまいました。

 
 以下の3点が高評価に繋がった点です。

 〈カメラワークがイカつい〉
 〈全く新しいアニメーション〉
 〈緊張と緩和〉


 〈カメラワーク〉
 スパイダーマンといえば、スパイダーウェブ(クモの糸)を使用しビル群を滑空するというイメージを持たれる方が多いと思います。今作はこれの魅せ方が抜群に上手い。

 言ってしまえば非常にマンガ的なんです。マンガは要所要所の大切な部分を描きますが、今作もその要所を印象的に描きながらも匠に繋げている。一瞬何が起きたのか分からなかった、ただただ圧倒された。
 
 アクションシーンや逃げ惑うシーンのカメラワークも素晴らしいんですけど、それ以外のシーンも凝りに凝ってます。
マイルスの父がパトカーから降り、路地裏に行くシーン。ここのカメラワークといい、彼の不安さ等を実に上手いこと表現できていて、思わずため息がこぼれました。


 〈アニメーション〉
 以前サンジゲン代表取締役の松浦裕暁著「アニメを3Dに!」という本を読みました。
 その中でかれは、サンジゲンのアニメーションを3DCGでありながら、セル画の様にも見える"セルルック"というアニメーションを目指しているといった記述をされてました。


 『スパイダーマン:スパイダーバース』は3DCGでありながらマンガ調のアニメーションの原点でありながら完成形であると言える。

 映像では省きたくなってしまう、マンガ的表現をマンガ調のアニメーションにしたことにより、何の違和感もなくそれを実現させている。
 
 今作は3DCG、マンガ的、この2点を完璧に実現させた全く新しいアニメーション映画。
 松浦裕暁はこれを"コミックルック"とも呼んでいる。(Twitterより参照)。便利なのでこの先も"コミックルック"と呼ばせて頂きます。
 観賞中に私は松浦裕暁は「やられた!」と思ってるんじゃないかと思ってしまった。

 
 NETFLIXで配信されている『ラブ、デス&ロボット』の第3話「目撃者」はコミックルック的な表現を使用した、大人向けアニメーションになっていますので、興味のある方はそちらも是非。
 (『ラブ、デス&ロボット』のレビューも書く予定です。)


 〈緊張と緩和〉
 アニメを観ているときに多くの人が、緊張感はあまり持たないと思う。全年齢向けともなればなおさら。「どうせ勝つ」といった安心感があり、緊張することはなかなかない。

 予告編でも公開されているので書きますが、スパイダーマンが序盤で死にます。緊張感を生む要因として、ここもとても重要なんだけど、その後の敵に追われるシーンなどに緊張感がちゃんとある。映像や色味のバランス、明るいシーンとの対比により実現させている。

 敵と対峙しているシーンでも、安心感はもちろんあるんだけど、アメコミ好きの私からすると、"これぞ待っていたモノ"だった。緊張感と安心感と求めていたモノの融合。「あぁ~、これだよ、これを求めてたんだよ」と。

 作戦がどうせ成功することは分かっている、逃げ切れることも。だけど、このコミックルックのアニメーションであったことで、そこから違和感や雑念が無くなる。本当に奇跡の作品だと思う。

 その緊張と緩和を生み出しているのは、ラップやヒップホップ音楽の使用であったり、キャラクターが支えているところもある。キャラクターについて書くのは、長くなるので割愛します。

 そして、言っておきたいのが、やはりこれは実写では出来なかった。アニメならでは、マンガならではの表現といい、ラップやヒップホップ音楽及びグラフィックアートやステッカーボムなどのヒップホップカルチャーの挿入。実写でこの表現は無理だった。

 
 これからソニーがこのコミックルックのアニメーションをどれだけ生み出すかは分からない。他会社が真似るかもしれない。

 NETFLIXは日本でのオリジナルアニメは3DCGを主としているし、3DCGの未来は明るい。
 ポリゴンピクチュアズはエミー賞を受賞しているので、いずれアニメ映画にも参入しアカデミー賞を狙ってもらいたい。サンジゲンはアカデミー賞を最終的な目標にしている。

 

投稿 : 2024/05/04
♥ : 6

ワドルディ隊員 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

スパイダーマンファンは必見のCGアニメ映画

この作品は、マーベル・コミックの中でも知名度が高いヒーローもの
スパイダーマンを原作としたCGアニメ映画である。スパイダーマン
の映画としては初となるアニメ作品であり、主人公が従来の
ピーター・パーカーではなく黒人のマイルス・モラレスと
なっているのが大きな特徴だ。また、複数のスパイダーマンが
登場するという設定も付与されている。

全体を通した感想だが、沢山の受賞・ノミネートを獲得するのも
納得の出来だった。特にアニメーションの出来が凄く、スタッフ
からスパイダーマン愛を心の芯から深く感じられた。誠に感服した。
但し、全てが良いとも言い切れなかったように感じたので、
それも踏まえたうえで書いていきたいと思う。

主人公にきちんと焦点を当てており、変にだれることはなかった
ように思う。従来のスパイダーマンと同じような展開では
あるものの、必要な要素の一つだと確信していたため
私はそこまで気にならなかった。

また、比較的テンポもいいので、途中で眠くなるようなことは
起きなかった。映像も目を見張るものがある。色だけに留まらず、
演出や音といった部分まで徹底されているのは素晴らしい。

個人的なお気に入りは、夜の街並みをスパイダーウェブ
で操作しながら、駆け巡るシーンだ。臨場感に溢れた光景を
劇場で見られて本当に良かったと思っている。

今作も、他のマーベル作品と同じようにスタン・リーがゲスト
として登場する。細かい部分は省略するが、違和感を感じること
なくうまい事登場させる場面は毎度毎度感心させられる。

ちなみに、キャプテンマーベルだとオープニングロゴが全部
スタン・リーVerに刺し変わっているため、そういう意味でも
違った楽しみ方ができるかと思う。

主人公である、マイルス・モラレスやピーター・パーカーには
きちんと焦点を当てられているが、彼ら以外のスパイダーマン
への掘り下げは足りなかったように思う。ただ、
スパイダーウーマンに関してはマイルスとのやりとりが事前
にあったのでまだ納得できるが。

問題は残りの3人。戦闘シーンや紹介以外でのピックアップは
全くと言っていいほどされてない。モブキャラと化
してしまっているのだ。まあ、マイルスの引き立て役として
作品に大いに貢献したと考えれば、問題はないか。

敵キャラに魅力を感じられなかったのは致命的だ。プラウラー
を登場させたことに異論はないが、なぜ悪の道に進んだのか
という動機が不十分だった。キーパーソンとして重要なキャラ
であったのは明確に書かれていたので、彼についてもっと
掘り下げるべきだった。非常に勿体ない。

勘がいい人なら物の数分で正体に気づいてしまう恐れが
あるが、そこは伏線回収に繋がるという理由で自らを
納得させることにした。

キングピンに関しては言わずもがな。ぶっちゃけ、只の
でくの坊と化している。動機の説明はされているのが
唯一の救い。もういっそのこと、ドクター・
オクトパスでいいんじゃないかなと思ったのは私だけではないはずだ。

書いていて思ったのだが、アベンジャーズを意識した作り
にしたかったのではないかと考えるようになった。

なんせ、今年の4月末にはアベンジャーズ:エンドゲーム
が公開されるのだ。詳細は省くが、アベンジャーズの
4作目という位置付けになっている作品だ。

前作の戦いから、ヒーローたちが再集結し、サノスに
再度戦いを挑むというシナリオになっている。心の底から
待ちわびているといっても過言ではない程
私が楽しみにしている映画だ。恐らく、劇場での視聴になるだろう。
どのような出来になるか気になって仕方ない。

また、夏にはスパイダーマン:ファー・フロム・ホームの
公開も予定されている。但し、これに関しても言い出すとキリが
ないので、wikiを参照してもらいたい。(許して)

スパイダーマン好きの人向けに制作されているのも相まって、
スパイダーマン入門作品としては適さないのは間違いない。
スパイダーマンシリーズが好きな方、あるいはマーベル作品が
好きな方ならば見る価値はある。
個人的には間違いなく良作だと思う。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 16

62.4 3 フルCGで戦いなアニメランキング3位
キャット シット ワン[Cat Shit One]-THE ANIMATED SERIES-(OVA)

2010年10月4日
★★★★☆ 3.7 (27)
120人が棚に入れました
『Cat Shit One』(キャットシットワン)は小林源文の漫画作品(フィクション)。テロリスト集団に捕らえられた人質を救出すべく、現場へ向かったウサギの特殊部隊員、パッキーとボタスキー。人質の命が危ないと判断したパッキーは、救援を待たず、たった二人での奇襲攻撃を企てるが…。
ネタバレ

アル串 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

おもShitろい!

もふもふの「うさちゃん」が、人質奪還の為にガチで銃撃戦をします。
本編約20分の間に見せ場が凝縮していますので、ミリタリーファンでなくとも観易いと思います。
緊張感より爽快感が勝る映画だと思います。
映像的には、かなりかっこ良かったです。

{netabare}私は軍事関係にはどうしようもなく疎い人間です。
ですので以下は、そういった人間が書いた感想文だと思って読んで下さい。

まず、どの場面を観ても笑えました。
何度観ても、笑えます。
ガチの戦争もので笑うのはいかがなものかってところですが、登場する兵士がモコモコでフサフサのウサちゃんだったりしますので、これを観て笑うなって言う方が、おかしいと思います。
ブラックホークダウンは本気で戦争怖え!と思えるヤバい映画でしたが、本作はスタイリッシュでかっこいい、そして笑える映画でした。
そのため、本作には緊張感が希薄でした。
しかし緊張感が希薄な反面、爽快感は得られました。

ミリタリーファンが、本作の装備や武器、戦術的な部分を分析的に観て楽しむことは、出来るんじゃないかと思いました。
とは言え、詳しい方がツッコミを入れだしたら、きりがないかもしれません。
私が観た感じ、武器はずいぶんと精巧にモデリングされていそうな印象を持ちました。
画面内にある材質の質感やエージング感はリアル指向で、しかもかなり丁寧に描かれていました。
そのため、場面ごとの臨場感はかなり高かったです。
実物の模型と比較すると、やはりまだ模型の方がどうしてもリアリティの面で勝っているとは思います。
CGと模型の間柄は、互いにリスペクトし合いつつもバトルする関係だと思いますので、個人的には今後も注目していきたいシーンではあります。
ついでに言いますと、鬼のように高いスキルを持つ若い世代のクリエイターがどんどん出現して凌ぎを削って、すごいものを作ってくれると、個人的には非常に嬉しいです。
現に、化け物のようなスキルを持った学生さんがいたりしますので、今後の10年は、おそらく楽しみが尽きねえだろうと思っています。

フルCGならではの自由なカメラワークが、存分に活かされた画面構成になっていたと思います。
これはハッキリ言って、かっこ良かったです。
音楽は情景にマッチするオーケストラ主体のサウンドでして、素晴らしいの一言でした。
適宜挿入される爆発シーンが、良いアクセントになってました。
20分の尺の中で5回以上爆発します。
最後は盛大に空から爆薬を投じて敵を殲滅といった、清々しい終り方でした。
ラストシーンでは、命令に背いた部下に対して「罰として一杯奢ってやる」といったシーンが用意されていました。
こういった、熱いかクサいかギリギリの演出による締め方も、ありがちですが、本作には適した流れだと思いましたし、良かったと思います。
主人公のパッキーが戦場では徹底したリアリストであることを作中で強調しておきながら、戦場を離れれば、情に厚い1人の人間でもある、といった、兵士の二面性を物語に交えてくるところが、いかにもエンタメらしいなぁと思います。
なんとなくアメリカ人が好きそうなノリだと思いました。
いずれにせよ、RPGが戦況を覆すくらい危ない代物であることは、良くわかりました。

キャラの映像面における演技は、かなり上手かったと思います。
兵士が、めまぐるしく展開する戦況の最中で平常心を保ちつつ、様々な情報を同時に収集している様子が、ビシビシ伝わってきました。
常に臨戦態勢、あらゆる状況に対処できる準備が整っている、そういった兵士の体質は、上手く表現できているんじゃないかと思います。
細かいことを言うと、眼球の動きが言葉にならない部分で演技しているといった感じでした。
それを俳優学校の競争を勝ち抜いてきた優れた役者が実際に演じるのではなくて、人の手によって作り出されているところに、スキルの高さを見た気がします。
モーションキャプチャーを行っているとは思うんですが、動作を作り込む段階において、かなりのこだわった形跡が見受けられました。
動作にぎこちなさを感じませんでした。
首の振り方とか、口元の動きとか、細かい仕事が丁寧だと思いました。
記号的ではないバイタルサインを感じ取れるだけのクオリティでした。

2羽の主役を演じた声優さんを調べてみたら、アニメ以外にも海外の映画やドラマの吹き替えを数多くやっていることがわかりました。
とても良い声で、演技も素晴らしかったと思います。
パッキー: 土田 大
ボタスキー: 日野 聡

それにしてもPMCと呼ばれる組織の火力はものすげえんだなぁと、本作を観てちょっとその辺に興味を持ってしまいました。
私はとりあえず、妻子持ちでFPSと筋トレに日々精を出しているマッチョな友人に、本作を勧めてみようと思いました。{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 4

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

みんなわかってると思うけど某リドリー・スコット監督作品の(高尚な)パクリ!w

なんか近所のヴィレバンがやたらプッシュしてるので今更感もアリながらご紹介


シュワちゃんでもなければ、スタローンでもない!
もちろんヴァンダムでもチャック・ノリスでもありません!w
この映画の主役はシルバニアファミリーよろしく擬人化された動物さんたち
【動物さんたちが銃火器乱射して血みどろの白兵戦を繰り広げる】約20分強の短編CG映画
ハッキリ言ってミリタリー映画に興味の無い方にはオススメできませぬ内容でつ><;


戦争映画の中身をアレコレ言うのは個人的にはナンセンスと思うのであんま言及したくないすw
アメリカの傭兵部隊をウサギさんに置き換え、中東のテロリストっぽいのをラクダさんに置き換えて物語りは進みます


テロリストに捕らわれた人質の救出をたった二人で試みようとする命知らずなベテラン傭兵パッキーと気弱なルーキーのボタスキー
スピーディーかつ緊張感たっぷりの地上戦や砂塵の描写、ヘリからの援護射撃などはさながら某ブラックホークダウンを髣髴とさせます
音楽の方向性とかモロに影響受けてるしw


映画公開前にようつべで全編を無料公開するっていうプロモーション方法も当時は斬新でしたね
セルソフト化してしまった現在でも予告編ぐらいは見れますんでチェックしてみてくださいな


バイオレンスな内容に賛否も分かれることでしょうが、そんなことよりオイラが後々に教えてもらったことですが、どうもラクダってイスラム教圏では下等な動物として捉えられてるくさいのです
原作者は知ってか知らずかただの無神経なのか、テロリスト=ラクダに仕立てやがってしまったわけなのです、はいw


そんな面でもソフトバイオレンスな作品ですw
ちょっと後ろめたい気持ちのある内容ですが、短いながらもかなり高いクオリティの映像は素晴らしい(リドリー・スコット作品の価値もそこにあるとオイラ思うのね)
オススメですよ^q^

投稿 : 2024/05/04
♥ : 14

しゅりー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

殺戮のファンシー

フルCGでウサギ2羽とラクダ多数が銃撃戦を行う映像作品です。
YouTubeで展開されていたらしいですが、全く知らず、
つい最近、従兄にDVDを見せてもらって初めて視聴しました。

ウサギがアメリカ兵、ラクダが中東のゲリラってことで良いんでしょうか?
USA=うさ、ラクダの服装など発想が容赦ないですね。
何か色々と抗議を受けそうな印象のある作品です。
昔からファンシーな恰好をしたキャラに銃を持たせる発想はあった訳で
本作の主人公、ウサギのパーキンス(パッキー)とボタスキー(ボタ)を見た時には
のらくろとかボン太くんを思い出しました。


本編はミリタリー系アクション映画でよくやっていたような内容です。
荒野の廃墟で行われる銃撃戦はかなり迫力があり、多数の敵兵相手に
少数で奮戦する緊迫感はなかなかのものです。
リアルな噴煙や瓦礫、銃声や爆発のSEとキャラの台詞回しなども
相まってかなり雰囲気が出ています。(でもウサギなんですけどね)

ちなみにDVDには日本語Verと英語Verの音声がそれぞれ収録されています。
英語Verで字幕を表示して観るとより雰囲気が出ますが、
日本語Verのベテラン兵らしいパッキー役、土田大さんの演技と
ヘタレヒーロー的なボタ役、日野聡さんの演技は好対照で聴き応えがあります。


上記の通り、動物が武器を持って戦う映像に抵抗がなく、
興味を持たれた方がいらっしゃったら、わずか20分程なので
試しに観てみても良いのかもしれません。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 20
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