女王でファンタジーなアニメ映画ランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の女王でファンタジーな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月04日の時点で一番の女王でファンタジーなアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

65.1 1 女王でファンタジーなアニメランキング1位
魔女っこ姉妹のヨヨとネネ(アニメ映画)

2013年12月28日
★★★★☆ 3.8 (116)
738人が棚に入れました
その時代その国には、魔法や呪いをかけたり解いたりすることを生業とする 人々がいました。その時代の魔の国。樹老長さんの森で、のろい屋を営む魔女の姉妹がいました。のろい屋では、姉のヨヨさんと妹のネネちゃんが、魔法や呪いに関する人々の悩みの依頼を日々解決していました。そんなある日、森に突然異形の大樹が生えてきました。よく見ると、大樹は見たこともない建物に絡みついています。それは、22 人が住む魔の国にはないはずの、現代的な高層マンションだったのです!さっそく調査にあたるヨヨさん。建物内で見慣れない人影を見つけて追いかけると、今度は足元に謎の魔法陣が浮かび上がり、不思議な光に包まれて……。ヨヨさんが飛ばされた先は、見知らぬ異世界。そこでヨヨさんは、孝洋と亜紀という二人の子供に出会います。孝洋たちは突然目の前に現れたヨヨさんに戸惑い、自宅へ逃げ帰りますが、孝洋の自宅で待っていたのは……何と“化物”になってしまった両親の姿でした!目の前の出来事が信じられない孝洋たち。そんな様子を見てヨヨさんは呟きます。「これは……呪い!!」異世界に迷い込んでしまったヨヨさんは、まずは孝洋たちの両親を化物に変えた魔力の元をたどることにしました。一方、魔の国に残されたネネちゃんは、魔の国と異世界で起こっていることには何か関連があるのではと考え始めました。魔の国と異世界に一体何が起こったのでしょうか!!かくして、2つの世界をまたいだヨヨさんとネネちゃんの不思議な冒険が始まるのです!!!!

声優・キャラクター
諸星すみれ、加隈亜衣、沢城みゆき、櫻井孝宏、佐々木りお、子安武人、中川翔子、長克巳、本田貴子、氷上恭子
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ほいっ!

 あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 初見でした。100分くらいの子供向けの魔女っこファンタジー。
 生と死を軸として信じる心を問う作品、ってところですかね。あまり有名ではない作品のような気がしますが、もっと評価されていい作品だと思います。大人でも感動できる秀作に仕上がっていました。


もう少し子供への配慮を:{netabare}
 魔法の触媒の影響で魔の国に異変が起こる、というオープニングテーマ直後のシーンなんですけど、こんな感じで描かれていました。「触媒をまじまじと見る」→「触媒を目の前に置く」→「触媒が光る」→「会話」→「異変が起きる」
 この流れがちょっと不親切に感じました。触媒が光ったことが原因で異変が起きるんですけど、会話の当事者の誰もが触媒の光に気付かないんです。会話に気を取られたとはいえ、目の前に置いた触媒は露骨に光りますからね。何で誰も気付かないの?と違和感を感じてしまいました。

 普通こういうシーンでは、触媒を少し離れたところに置くとか全員が触媒から目をそらすカットを入れるとか、「登場人物は触媒を見ていないから、その光に気付いていませんよ」っていう説明をきっちり入れると思います。これによって「登場人物は知らないけど、視聴者は手掛かりを持ってるよ」という両者の情報ギャップが生まれます。

 この情報ギャップって、この作品に限らずかなり大事なものだと思います。視聴者は物語の概観が分かりませんから、どこを手掛かりにストーリーを追えばいいのかも分かりません。そこで、視聴者と登場人物の間に情報ギャップを生じさせることで、視聴者に「登場人物がいつそれに気付くのか?」という指針を与え、ストーリーの展開を予測させるのです。
 第一話が見終わっても、この作品は何をしたいの?なんて疑問が生まれてしまう作品は往々にしてありますが、その多くはこの「視聴者に予測させる」って視点が欠けているからなんだと思います。

 こういう情報ギャップって、ごく普通に使われているためにほとんど意識することはないと思います。例えば、名探偵コナンなら「犯人側の動きを見せる」だし、エヴァなら「ゼーレの会話を入れる」だし、戦争ものなら「敵国の動きを見せる」って感じですね。たったこれだけで「主人公たちは知らないけど、私たちは知っている」情報が生まれます。私たちが知っている情報に対して主人公がどう向かっていくのか、すなわち、どのように情報ギャップが埋まるのかっていうのがストーリーの理解に役立っているってことですね。

 で、この作品では出来てないって話ではありません。仕事の依頼人の顔が視聴者にはしばらく分からないんですけど、これも情報ギャップとして機能しています。「登場人物たちは知っているけど、私たちは知らない」っていう前掲の逆パターンで、「私たちがいつ知ることが出来るのか?」をフラグとして機能させるものです。つまり、私が言いたいのは「出来てない」ではなくて、「子供向けとしては不親切だ」って話です。
 触媒が光った後に会話のシーンがあるので、会話に気を取られて触媒を見ていなかったんだな、という理解は可能なんですけど、理解に労力を使ってしまうせいで予測が不十分になってしまいます。もちろん大人は理解した上で予測も出来ると思いますが、子供には理解するのが精いっぱいかも知れないな、とも感じました。子供に順序良く説明するって姿勢がやや欠けている気がしたってことです。子供向けの映画を作るのなら「大人が分かる」レベルではなくて、「子供にも分かりやすく」って意識の方が重要だと思います。
 これは単なる一例に過ぎませんが、信じる心が大事っていうメインテーマもちょっと分かりづらかった気がしました。
{/netabare}

話の進め方はかなり上手い:{netabare}
 上記の話っていうのは、正直言っていちゃもんレベルです。平たく言うと「触媒を目の前に置く」→「触媒が光る」の間にある「目をそらす」っていうのをもっと子供に分かりやすくしろってだけの話ですからね。大人向けの作品ならあの描き方で十分ですし、あのシーンのみをもって作品の質がどうこうって話でもありません。
 ただ、平尾隆之監督の作品を見るのはこれが初めてでしたので、こちらとしてはどんな監督なのか探ろうと細部まで目を凝らしますし、子供向け作品に必要な子供への配慮のところは優先的な確認事項になりますからね。


 じゃあ、この監督の話の作り方がヘタなのかって言うと、そんなことはありません。大きな流れも小さな流れも、話の進め方自体は非常に上手い監督だなと思いました。

 魔の国からこっちの世界に飛んで来て、「違う世界に来ちゃった!」と気付くシーンがあります。
 多くの作品では、飛んで来た直後にパノラマで別世界の景色を見せて「違う!」とやってしまう気がします。飛んで来たタイミングと気付くタイミングを一致させるのです。

 この作品ではちょっと凝ってて、「子供たちを追ってこっちの世界にやってくる」→「消火器を魔法のホウキ代わりにして追いかける」→「追いついた後に家の中で会話する」→「消火器に掛けてた魔法が解けて、部屋中に煙が充満する」→「『窓開けろ!』から外の景色を見て『違う世界に来てる!』」てな感じになっています。
 ここでの「子供たち」っていうのが主人公ではない主要人物なんですけど、主人公と主要人物の出会いのシーンと異世界に来たことに気付くシーンが、ぶつ切りにされずに綺麗につなげられています。オープニングではこれでもかとホウキで空を飛ぶシーンが描かれていますし、そこからもつながりを感じられます。
 また、このシーンからは、主人公の性格も分かりますよね。状況確認を優先する冷静沈着型ではなくて、考えるよりまず行動するタイプだったのが伝わってきます。話をスムーズにつなぐだけでなく性格付けまでしているわけですから、素直に話を作るのが上手い監督だなぁと思えました。

 小さな話の流れだけじゃなくて、大きな話の流れも上手かったですね。魔の国の死生観とこっちの世界の死生観が違うっていうのが、テーマ的にもストーリー的にも重要な要素になっているんですけど、ここも段階を踏んで綺麗に作られていました。
 主人公のヨヨが交通事故から小さな子を助けた後に、そのお母さんから感謝されるシーンがあって、このときヨヨは「なんで感謝されるのか分からない」と言っていました。こっちとしては感謝して当然の場面ですから、そんな感想を持ってしまうヨヨの方が分からない、というしこりが残ります。
 この後の魔の国のシーンで、いとも簡単に死者蘇生がなされます。そのため、「魔の国では死が重たくないんだ」という解答を得ることができて、件のしこりが解消されることになります。この後の展開は、こっちの世界での死に触れて、生に触れて、そして…って感じに流れますが、ネタバレが過ぎるのでここまでにしておきます。
 まず疑問を持たせて、次にそれを解消して、疑問が溶けているのに「この後どうなっていくの?」と感じさせるこの展開の仕方はお見事でした。
{/netabare}

山場がちょっと弱い:{netabare}
 これ100分くらいの作品なんですけど、最終局面に入ってからが40分くらいあります。感動を作るスローテンポな部分も含まれていて、それ自体は非常に良いんですけど、全体としては冗長な感じを受けました。
 子供向け作品には終盤のアクション要素って大事だと思います。子供の集中力ってそんなに長くは続かないですから、子供に気を引かせるための派手なアクションは欠かせません。大人ですら冗長な感じを受けたのなら、子供には尚のこと退屈だったかもしれません。

 で、この作品のアクションは序盤から空を飛びまくっているのもあって、結構派手で楽しいです。でも、ずっと同じ派手さではメリハリが無くなって息切れしてしまうっていうのもありますよね。しかも、終盤のアクションはビルをよじ登るっていう地味なシーンに尺が取られていますし、感動シーンはスローテンポだっていうのもあってかなり失速してしまったような気がします。

 個人的には、あのロボットにもっと活躍してもらうか、歌のシーンを入れて欲しかったです。
 ロボットの活躍はちょっと地味でしたよね。もっと街を破壊してもいいのではないでしょうか。子供向け作品とはいっても遠慮はいらないと思います。ポケモンでもドラえもんでも、人的被害の無い破壊シーンは結構派手にやってますからね。
 それか歌ですね。序盤の歌のシーンは、かわいくて楽しくてすごく良かったです。魔女っこもので序盤に歌を入れたのなら、最後の締めも歌で盛り上げちゃえばいいんじゃないの?と思いました。あれだけ楽しませられるのに序盤だけってのももったいないですからね。
{/netabare}

雑記:{netabare}
 平尾隆之監督って本作が監督デビューではなくて、「空の境界 矛盾螺旋」っていう作品を撮っているみたいですね。私は見ていないので分かりませんが、タイトルから察するに子供向け作品ではないと思います。平尾隆之監督が今後も子供向け作品を続けるかどうかは分かりませんが、小学生以下の子供をターゲットにした作品を撮るつもりなら、もっと分かりやすさを意識して欲しいかなぁなんて思います。

 なんか文句ばっかり書いているように思われるかもしれませんけど、決して文句が言いたいわけではありません。冒頭でも述べましたが、作品全体は良いものに仕上がっていますし、私は結構楽しめました。子供向け作品にはそれなりの気の使い方をすべきだっていう私の個人的な思いを述べているだけですからね。大人向け作品は相当良いものが作れそうだな、と思ったのは事実なので、次は続き物じゃない大人向け映画を見せて欲しいかな。
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

最高!最高!!最高!!!老若男女問わずして、この映画の魔法にかかって存分に癒されて下さい!\(^ω^)/ホイ!(^人^)

原作はイラストレーターの「ひらりん」がCOMICリュウに連載していた漫画『のろい屋しまい』
漫画自体は割りと殺伐とした絵柄と内容なのですが、この『のろい屋シリーズ』は連載終了後も派生作品が作り続けられ、【絵本や児童文学】といった非常に多岐に渡る展開を見せており、コアな漫画ファンのみぞが知るところならぬ多くの世代から支持される作品なのです










この物語の主人公は幼い姿をしながらも絵本級大魔法使いと謳われ、底なしの魔力を持ち、33歳で世界を征服するであろうといわれる“ヨヨさん”
そしてヨヨさんが好きで好きで堪らない努力家の最優秀お手本級魔法使いの“ネネちゃん”
二人は姉妹で「かけます ときます のろい屋」をキャッチコピーに魔法や呪いが現実に存在する『魔の国』で『のろい屋』と呼ばれる職業を営んでいます


ある日のこと、魔の国に突如として高層マンションを抱え込んだ大木が姿を現し、それを調査していたヨヨさんはエレベーターに閉じ込められ、そのまま現代社会の日本、横浜へと転移させられてしまいます
ヨヨさんが現代社会で最初に出会った少年“孝洋”と幼い女の子“亜紀”の家族に起こった呪いと思われる不思議な事件を解決すべく、ヨヨさんはのろい屋として仕事を引き受けます
一方のネネちゃんはなぜ魔の国に現代社会の建造物が現れたのか?ヨヨさんが元の世界に戻る方法はあるのか?、を魔の国の側から調べていきます
二つの世界に裂かれた姉妹の絆、やがて明かされていく事件の真相のスケール感
老若男女ヒトを選ばない魅力は“いま最もジブリに近い作品”と言えるでしょう
前半は笑いが、後半は涙が止まらない、そして最後は癒される、一大エンターティメント作となっています^^b










まず魅力的な原作をあえてスルーし、本当の意味で子供も大人も関係なく楽しめるように練りこまれたオリジナルストーリーが素晴らしい
特にサムネイルを拝見していただくとわかるよう、異世界に渡ってしまったヨヨさんの体を彼女の精神年齢を具現化したような中学生ぐらいに設定したことはナイスです


また、始めは異世界の出来事に興味を示さなかったヨヨさんの心境変化の描き方
クライマックスで絶体絶命の危機に立ち向かうヨヨさんのひた向きな姿勢もアツいみどころです


ヨヨさんを心配するネネちゃんとの姉妹の絆は涙を誘う場面でありますが、この辺りは原作を読んでいるとネネちゃんがヨヨさんを溺愛するワケなんかも解って感動倍増しますよ



監督には『矛盾螺旋』『ギョ。』『桜の温度』の平尾隆之
これまでの監督の作品は画面のほとんどが一色の色で統一されていました
矛盾螺旋では小川マンションの電灯の色で“オレンジ”
桜の温度では廃屋に振る月明かりで“ブルー”といった具合です
対して今作では森林の木々一つとってもピンクやライトブルーを豊かに織り交ぜた色彩で魔の国の姿を描いているのが興味深いところ
尚且つこれが“温かみのある色”で目にドぎつい感じにはなっていないのがイイ!


音楽には『ゴッドイーター』の以降の平尾作品の常連、椎名豪
今作では電子音、クルマのエンジン音、時計の音など効果音を楽曲の中に組み込む実験的な挑戦をしつつ
ディズニーよろしくミュージカル風に歌い出すヨヨさんが楽しげに歌う挿入歌から
そして物語後半を盛り上げる厚みのあるオーケストラやスピリチュアル風のコーラスまで
いや、盛り上げるというよりかヨヨさんの悲しみや憤りのスケール感を演出するのに一役買ってるんですよね、凄いんですよ
よく聞けば挿入歌こそが今作のメインテーマであり、BGMのほぼ全てのメロディラインが挿入歌に集約されてることに気付きます


キャストの熱演も素晴らしく、みゆきち、しょこたん、本田貴子さんは言うに及ばず、特にヨヨさん役の諸星すみれちゃんが目(耳)を引きます
この近年成長が著しい“天才”の起用は実にナイスセンスでしたb
2013年はシュガーラッシュといいコレといい、個人的にはすみれちゃんイヤーでしたわぁ・・・


兎にも角にもこの作品の全部を諸手を挙げて絶賛したいんです!\(^ω^)/
監督も大人向けに作ったつもりは無かったというものの、“アニメの面白さ”や“魔法への憧れ”といった原初的体験を思い起こさせる今作は、それらを忘れてしまったオトナの心にも響くんだと感じましたよ!
2013年における【ベスト映画】でした!間違いねー!

投稿 : 2024/06/01
♥ : 40

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

かけます! ときます! のろい屋しまい!

この作品の原作は未読ですが、完全オリジナルストーリーだったみたいですね。
すみれちゃん、くまちゃん、みゆきちが出演されているのを知り、視聴が楽しみになった作品です。


その時代その国には…
魔法や呪いをかけたり解いたりすることを
生業とする人々がいました。

その時代の魔の国。
樹老長さんの森で、のろい屋を営む魔女の姉妹がいました。

のろい屋では、姉のヨヨさんと妹のネネちゃんが、
魔法や呪いに関する人々の悩みの依頼を
日々解決していました。

そんなある日、森に突然異形の大樹が生えてきました。
よく見ると、大樹は見たこともない建物に絡みついています…
それは、2人が住む魔の国にはないはずの、
現代的な高層マンションだったのです!

早速調査にあたるヨヨさん。
建物内で見慣れない人影を見つけて追いかけると、
今度は足元に謎の魔法陣が浮かび上がり、
不思議な光に包まれて…。

ヨヨさんが飛ばされた先は、見知らぬ異世界。
そこでヨヨさんは、孝洋と亜紀という二人の子供に出会います。
孝洋たちは突然目の前に現れたヨヨさんに戸惑い、
自宅に逃げ帰りますが、孝洋の自宅で待っていたのは…
何と"化物"になってしまった両親の姿でした。
目の前の出来事が信じられない孝洋たち。
そんな様子を見てヨヨさんは呟きます。
「これは……呪い!?」

異世界に迷い込んでしまったヨヨさんは、
まずは孝洋たちの両親を化物に変えた魔力の元をたどることにしました。
一方、魔の国に残されたネネちゃんは、魔の国と異世界で
起こっていることには何か関連があるのではと考え始めました。
魔の国と異世界に一体何が起こったのでしょうか!?
かくして、2つの世界をまたいだヨヨさんとネネちゃんの
不思議な冒険が始まるのです!!


公式HPのSTORYを引用させて頂きました。

少しボリュームのあるSTORYですが、この作品のポイントを的確にとらえていると思います。
主人公のネネちゃんは、元気いっぱいの女の子…すみれちゃんの声質も生き生きとしたキャラに彩りを与えています。。
何でも絵本級の大魔法使いなんだとか…

くまちゃん演じる妹のネネちゃんは、最優秀お手本級魔法使い…
姉のヨヨは無尽蔵な魔力の持ち主ですが、ネネちゃんは生まれつき魔力は多くありませんでした。
でも、努力家で魔法中学校を首席で卒業する頑張り屋さんなんです。

ネネとヨヨはとっても仲良しで、お互い思い合っているのが手に取るように分かるところも心地よかったですし高評価です。

ヨヨが飛ばされた異世界は、現代の日本みたいな感じ…
だから魔の国とは見た目からして大きく違うのですが、違いは見た目だけじゃなかったんです。
それは魔法使いの根幹にも関わる禁則事項…

全年齢対象の骨太ファンタジーなので、勧善懲悪的な展開は微塵もありません。
そう、最初は良かれと思って…それが人の役に立つから…幸せをおすそ分けしたいから…
きっとこれ以上の純粋な気持ちなんて無いくらいの場所がスタート地点なんです。
だけど、際限無い人間強欲が純粋な気持ちを汚していくんです。
そしてそれは気持ちから形へと姿を変え、きっちり本人に還元される…
所謂、この世の理というヤツでしょうか。
でもそれを不条理だと感じる人間を守るため全力で抗うのがヨヨさん…なんですよね。

一方、ヨヨだって万能ではありません。
それが在り方から異なる異世界ならなおのこと…
だからヨヨにとって今回の冒険は、貴重な体験になったことと思います。
命の尊さ…温かな心遣い…自分より他人を優先する心…
どれも魔の国じゃ体験できなかったことなのではないでしょうか。

アニメーション制作はufotableさん…
作画もしっかりうごいていましたし、本作品でも良い仕事してくれていますよ。

上映時間約100分程度の物語でした。
掛け値なしに面白い作品だと思います。
あにこれでの人気は決して高くはありませんが、もう少し評価されても良い作品なんじゃないかと思いました。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 14

69.1 2 女王でファンタジーなアニメランキング2位
さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅(アニメ映画)

1981年8月1日
★★★★☆ 3.9 (95)
428人が棚に入れました
プロメシュームを倒した前作から2年。やや美形になった鉄郎は地球で対機械化人レジスタンス活動を行っていた。メーテルのボイスメッセージに導かれ、再び 999号に乗り込んだ鉄郎は、衛星ラーメタルに到着。ここにも機械化人の侵略は進んでいた。プロメシュームを倒したはずなのになぜ?ミャウダー(猫似)と友情の別れを告げ、メーテルと再会→行き先不明の999号に乗って旅を続ける。ちなみに要所要所でハーロックとエメラルダスが出ます。

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

巨星墜つ。宇宙への憧れというSFの終わりを感じます。

 松本零士先生がお亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。

 小松左京先生とならんで日本のSFコンテンツの土台を作った最大の功労者でしょう。コミックスとしての評価が正当なんでしょうけど、私はアニメ作品の功績を非常に高く評価しています。今のSFアニメ映画というジャンルの先駆者と言っていいでしょう。

 ですが「銀河鉄道999」と本作「さよなら銀河鉄道999」それと「キャプテンハーロック」などは1980年代には既に終わった作品になってしまい、歴史となりました。1000年女王などは話も聞きません。
 今や松本氏の匂いのしないリメイク版の「宇宙戦艦ヤマト」の原作者として名前を残すのみです。

 訃報が多すぎですね。おかげでアニメを見る気力が一時的にそこなわれてしまいました。全然見なかったわけではないんですけど、何か日本アニメのオワコン感を感じてしまい集中できなくなっていました。
 ユーチューブで本作EDのメアリーマックレガーの「SAYONARA」を何度も聞いていました。そして日本のSFはこれで終わったなあと思いました。

 ただ、シンギュラリティ―問題を起点にまた、優れた作品が違う形で出つつありますので、「宇宙」から「AI」にSFが生まれ変わったと言った方が良さそうですね。今のアニメは凡作も量産されていますが、中には80年代には表現できなかった深みがある作品とも時々出会います。
 古いSFアニメは死んだけど、新しいSFやその他のジャンルが生まれつつある過渡期なんでしょう。

 ということで、沈んでいるだけではしょうがないので、松本零士氏と古い日本アニメの追悼の意味で本作を再視聴して気分を切り替えることにしました。

 本作の出来は、ストーリーそのものはお世辞にもいいとは言えません。スターウォーズの影響で父が出て来たり、友の死を無理に感動につなげたりして、安っぽい話です。

 ですが日本SF史上最高の美少女キャラ。メーテルですね。これが非常にいい。メーテルのシーンだけ見ればいいと思うくらいです。
「哲郎、999に乗りなさい」というメッセージから、メーテルとの再会、そして別れ。この3つのシーンだけ別格にいいです。そして最後の「SAYONARA」
 この曲と本作のEDアニメのメーテルの美しさと切なさは比類がないです。日本のアニメ史上最高の作画と曲だと思っています。

 ただ、それにつながるもっと深い話だったらよかったのに、と思います。80年代の子供向けの要素がまだまだ強いので止むを得ませんが。

 映像は発色…色が本当に美しい。フィルム映画だからでしょうか。デジタルの安っぽい絵でない、最高級の作画でした。デジタルが悪いと言っているのではないです。デジタルの使いかたが安っぽいのです。その点で、日本アニメの中では999とさよならの2作の画像は最高峰ですね。

 話は今更見るほどの作品ではないです。ないですが、アニメ表現としての美しさ、メーテルと言うキャラ、SF的な造形、そしてエンディングは今のアニメに見習ってほしいです。
 



 
 

投稿 : 2024/06/01
♥ : 11

plum さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

重厚な音楽に胸が熱くなります

1981年公開の劇場版第2作。
前作同様、ひとりの少年が、青年へと成長していく姿を描いた物語です。
本作においてそれは、”父と子”を中心に描かれています。

銀河鉄道999といえば、旅立ちと別れが印象的な作品です。

まずは、旅立ちのシーン。
何と言っても老パルチザンのセリフと、999が飛び立つシーンの
重厚な音楽は、何度見ても胸を熱くさせます。

・老パルチザン(cv.森山周一郎)
 鉄郎。いつかおまえが戻ってきて、地球を取り戻したとき、
 大地を掘り返したら,わしらの赤い血が流れ出すだろう。
 ここは我々の星だ。我々の大地だ。
 その赤い血を見るまでは,死ぬなよ。わしらの倅よ…。


そして、別れのシーン。
前作同様、最後にはメーテルと離別することになるのですが、
その前後のシーン、キャプテン・ハーロックのセリフと、
エンディング曲の「SAYONARA/メアリー・マッグレガー」が印象的でした。

限りある命の人間か、永遠の命の機械化人か。
それに対してハーロックの思いを語ります。

・キャプテン・ハーロック(cv.井上真樹夫)
 親から子へ。子からまたその子へ血は流れる。
 永遠に続いてゆく。
 それが本当の永遠の命だと、俺は信じる。

銀河鉄道999のテーマは「限りある命の尊さ」と言われますが、
限りある命が大切なのではなく、限りがあるからこそ精一杯生きる、
ということが大切なのでしょうね。
それに、たとえ命が永遠になったとしても、きっと心は死んでしまうでしょう。


(蛇足)
それにしても、子供の頃に見たメーテルは、何を考えているか分からない
謎の女性で、それこそ機械のようでした。
でもいま見てみると、意外と女性らしく、また人間臭く、なんだか
とても可愛らしく見えてしまいました。

・・・これが歳をとったということか!

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7

tag さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

自分史上、最高のエンディング

銀河鉄道999の窓の外に流れるメーテルの姿、ラストシーンとエンディングテーマへとつながる展開、劇場パート1のシーンをモノクロで振り返る背景、多分、人生最高のエンディング展開、これを超えるものは、多分ない、おっさん的には。あかん、今も思い起こす、30年もたったのに。多分、同時代性が無ければ、共感できない感覚かと思う。何故か、僕のiPhoneには「SAYONARA」が入っている。

SAYONARA999は現在のストーリーテリング、演出技法からみれば、とても稚拙で”痛い”かもしれません。昭和のあの頃、世の中の平均年齢も低く、若者からみれば、何かできるんじゃないかと思えた昭和50年代。今はそんな雰囲気は微塵もないのは十分承知。

メーテルを「青春の幻影」と臆面のなく語るセリフ。令和の現在、この台詞は、現代の脚本家には使用不可能だと思う。

まだ世の中が、成長や、変化や、未来への希望と願いをかなり信じていた時代。999は存在可能であった。

「今一度、万感の思い込めて、汽笛がなる、さらばメーテル、さらば銀河鉄道999」これが最後のナレーション。今は言えんよね。この臭い台詞。ここから、エンディングテーマ「SAYONARA」へとつながる。多分、今は恥ずかしくてできない。

エンディングテーマは全編英語なんだけど、今の知識と経験なら、この英語が、とても理解しやすいことに気付く。当時、小学生の私には、メロディの切なさと、モノクロの背景が目に焼き付いて離れない。でも今は、この英語が染み入る。

"How can I find a word to say. I miss you."
"Keep in your heart, SAYONARA"

うちの息子たちに語りたいけど、「おやじ、ウザいな」と言われそうかな。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 9

66.7 3 女王でファンタジーなアニメランキング3位
アナと雪の女王(アニメ映画)

2014年3月14日
★★★★☆ 3.9 (400)
2277人が棚に入れました
運命に引き裂かれた王家の美しい姉妹、エルサとアナ──触れるものを凍らせる“秘密の力"を持つ姉エルサはその力を制御できず、真夏の王国を凍てつく冬の世界に変えてしまう。妹のアナは、逃亡した姉と王国を救うため、山男のクリストフとその相棒のトナカイのスヴェン、“夏に憧れる雪だるま"のオラフと共に雪山の奥深くへと旅に出る。アナの思いは凍った世界を溶かすことができるのか? すべての鍵を握るのは、“真実の愛"…。

声優・キャラクター
イディナ・メンゼル、クリステン・ベル、ジョシュ・ギャッド、サンティノ・フォンタナ、ジョナサン・グロフ
ネタバレ

NANA さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

人気が出たから好きなわけではないです。低評価の人にありがちな誤解。

2016.12.23加筆

好き嫌いは人それぞれなので個人の評価をどうこう言うつもりはないですが、アナ雪は単純なストーリーなのに意外と理解されていないと思うことがあります。
批評するなら最低限以下のことは理解しておいて欲しいです。(伝わらないから駄目と言うのも評価のうちですが)

1.姉妹愛の物語
2.主人公はアナ
3.エルサの魔法を解いたのもアナ

{netabare}レリゴーがヒットし過ぎたせいか、そこに社会的な意義を見出そうとする人が多く、女性の自立だとか、マイノリティーからの脱却とかさらにはレズビアンまでorz。考察するのは自由ですが、間違った視点に拘っていると、メインのテーマが見えなくなってしまいます。この映画は最初から最後まで『姉妹愛』がテーマです。男女の恋愛でもなく姉妹愛。単純なテーマのようで、とても深い話だと思います。ディズニーで『真実の愛』とか言っちゃうと「王子様からのキスね!」と安易に考えてしまいがちですが、この作品は既成観念を覆しました。それは姉妹だからということではなくて、愛は求めるものではなく与えるものであるというメッセージを物語中に込めたのてす。
物語の前半では、愛情に飢えたアナがそれを求め、でも大好きな姉には受け入れて貰えず(舞踏会のシーン)、代わりに会ったばかりのハンスに愛情を求めます。自分が幸せになりたかったから。(自己愛)でも、終盤のエルサが殺されそうになるシーンでは、自らの命を投げ打って彼女を助けます。(無償の愛)例え姉が自分を見てくれなくても、自分の命や幸せよりも姉を守りたかった。見返りを求めず、エルサを守ったその姿こそ真実の愛でした。魔法を解いたのは、エルサではなくアナ自身です。
あえて男女の恋愛を選ばなかったのは、普遍的なものとして愛を描くためだと思います。(恋愛と愛は似ているようで大きく異なるので、男女だとこの違いが見えにくい気はします。)
{/netabare}

4.ハンスは心を映す鏡(説)
5.オラフは姉妹の幼い頃の思い出

{netabare}アナ雪はスタッフが皆でアイデアを出し合って、そこから不要なものを削ぎ落とし出来上がった作品だそうです。物語に深みがない?私は細部までよく練られた作品だと思っています。
意味のない描写がほとんどないのです。大半の描写は姉妹の関係に繋がります。

ハンスとの恋愛も姉妹の関係に繋がる話です。アナはエルサと仲良くしたいのにそれが叶わず愛情に飢えていた。エルサの代わりに自分を愛してくれる存在を求めたのです。だからハンスとは最初から本当の愛ではなかった。
ハンスとのやり取りは一見ただのラブコメに見えますが、ハンスが鏡の役割だと考えると、アナの孤独や積年の思いが見えてきます。

オラフは姉妹の幼い頃の思い出です。そして、それを作ったエルサの思いがオラフに宿っていると考えると、オラフがアナを大好きなのも、夏に憧れているのも納得がいきます。
オラフは言います。「愛とは自分より相手のためを思うこと。」その台詞はまさにこの物語のテーマであり、彼がただの愛玩キャラクターでないことが分かります。

トロールの歌も、一見アナとクリストフの歌に見えますが、実際はアナとエルサの関係を示唆する歌になっています。(アナの表情を見ていると、トロールの言葉に真剣に聞き入っているのが分かります)

ラブコメがないわけではないですが、メインテーマではないので。ラブコメを期待していた層(若年層が多い?)は姉妹愛の結末にガッカリしたようです。
一応ラストはディズニーらしいラブコメハッピーエンドでしたが、アナ自身はまだ恋愛のことよく分かっていなさそうです。クリストフのことは好きだと思いますが、これからかな。まあ、彼が誠実な人なので、アナを大事にしてくれるでしょう。

男キャラが活躍してないと不満に思う人もいるようです。
キスしてお姫様を助けた方が格好良かったでしょうか?見せ場がないからつまらない?

でも、アナのために吹雪の中駆け付けたクリストフは勇敢だったし、抱き合う姉妹をそっと見守り心から喜んでいた姿はとても誠実に見えました。
{/netabare}



以下は2016.06.19のレビュー内容

アナ雪は人気が出過ぎた反動か、過度に拒絶反応を示す人も多く、従来のディズニーアニメではありえないほど叩かれていたと思います。
否定派の人は、歌が良いだけでストーリーがスカスカだとか、ブームに乗せられてるだけだとか、言いたい放題で自分の考えが全てみたいな論調ですが、それこそブームに踊らされてニュートラルな見方が出来なくなっているのではないでしょうか?

好みは人それぞれなので、この作品が肌に合わないと言うなら納得しますが、こんなに持ち上げられているのはおかしい、○○の方が面白いのに!という論点でのレビューは意味がないと思います。

私は、アナ雪はブームになる前にCMでエルサが歌うシーンを見て、このシーンが観たい!という思いで劇場に足を運びました。実際、そのシーンだけでも観に行く価値はあると思っています。なので、歌が大きな魅力であることは否定しませんが、それだけではありません。ストーリー含めて予想以上に良かったので、生まれて初めてリピートしてしまいました。近くの劇場で3D上映がなかったことだけが悔やまれます。

というわけで、今更のアナ雪レビューです。
書きたいことが沢山ありすぎて、上手くまとめられそうにないので箇条書きで。
尚、今更ネタバレ気にすることもない気がしますが、長いので所々ネタバレタグを付けました。



1.主人公はアナかエルサか?

レリゴーのイメージが強いのと、序盤は自分の力に苦悩するエルサに共感しやすいので勘違いされがちですが、『アナと雪の女王』なんですよね。主人公はアナの方です。

{netabare}エルサだけに感情移入してアナを見ると、何も知らないくせに!と腹が立つでしょうし、ただの自分本位な尻軽女にしか見えないかもしれません。
主人公はこうあるべき!みたいな理想が強い人ほどアナというキャラクターを受け付けないのかもしれませんが、アナの心情を理解しないと物語の真意は汲み取れないと思います。

私はわりと駄目な子の行動を追うのが好きなのですが、何故彼女が間違ってしまったのか?を考えながら物語を眺めると色々なことが見えてきたりします。すごくリアルなんですよね。(ファンタジーなのにリアルはおかしいと言われるかもしれませんが)心の動きにリアリティを感じました。もちろん、私自身同じ経験をしたわけではないので、実際にそうなのかはわかりません。でも、十二分に心に響くものがありました。

アナ雪はアナに共感出来るかどうかで評価が変わってくると思います。ストーリー自体は単純な作りなので(むしろいらないものを省けるだけ省いて重要な要素だけ残した)、入り組んだ難解なストーリーを好む人には物足りないかもしれません。
あと、歌もストーリーの一部であり、キャラクターの心情や物語の真意が隠されていたりするので、そこを見逃してしまうと肝心なものが見えなくなってしまうと思います。(日本語訳は若干誤解されやすい表現になっています)
この作品はキャラクターの心情の掘り下げと演出が素晴らしいので、物語の表面だけでなくキャラクターの心情をしっかり追って見て欲しいと思います。
{/netabare}


2.『ありのままで』の意味するところ

日本語版の歌詞がポジティブで希望に満ちたイメージを持っているせいか、マイノリティの自立とか抑圧からの解放みたいなニュアンスで解釈する人が多い気がします。確かに、あの時のエルサにはそういう思いもあると思うので決して間違いではないでしょうし、私自身もエルサの悲しみ苦しみには共感しました。
でも、

{netabare}原語の方はもっと投げ遣りな歌詞で、最後の扉の演出が示唆するように、引き篭もってしまっただけなんですよね。エルサ自身はありのままに生きる!と思っていても、結局は現実(社会)から逃げているだけ。(あくまでも物語の意図として)本当の幸せはそこにはない。エルサ自身が乗り越えていかなければならない壁なんです。
{/netabare}


3.何故アナは間違ってしまったのか

アナはディズニー主人公らしく明るく元気な性格なので、心に抱える闇の部分が分かりにくいかもしれません。

{netabare}仲の良かった姉に突然避けられ、閉ざされた城の中で13年間。両親は姉に掛かりっきりだったでしょうし、話し相手もいなかったように思います。リアルに考えたら、もっと暗く歪んだ性格になってもおかしくありません。流石にそこまで鬱々した物語にはしませんでしたが。
アナはエルサが何故自分を避けているかも知らないんです。でも、幼い頃優しかった姉のことをずっと思っていました。(この心の闇は相当深いはずです。)

そんなある日両親が不慮の事故で亡くなり(この辺はかなり端折られています)、姉と二人きり。でも、相変わらず姉は引き篭もっていて…

戴冠式の日、久しぶりに城の門が開き、アナは希望に胸を躍らせます。恋に恋する乙女にも見えますし、エルサの苦悩を知らない能天気な妹に見えるかもしれません。
この映画では所々で扉の演出が効果的に使われています。エルサが心を閉ざす演出だったり、鬱屈した日々の終わりを告げる演出だったり。そこにも注目して欲しいところ。

この時は、アナは一人ぼっちの日々が終わると信じていたんですよね。また姉と一緒に暮らせると。でも、久しぶりに姉と交わした会話で彼女の期待は打ち砕かれました。(ここも日本語訳は若干伝わりにくいです)
エルサはアナの結婚を反対しました。当然です。でも、アナから見れば、姉には避けられるし結婚には反対される、自分が孤独から抜け出す道も閉ざされてしまう。挙句の果てに出て行けと言われる。アナにはエルサが自分を拒絶する本当の理由も分かりません。アナは姉に受け入れて貰えない悲しみと失意のまま広間を飛び出します。本当は姉と一緒にいたいだけなのに。

そこに現れたのがハンスです。ハンスとのデュエットシーンや後の台詞でも分かりますが、アナは愛情に飢えていました。姉と仲良くしたいのに受け入れてもらえない。そして、戴冠式が終わればまた一人ぼっちになってしまう。そんなのは嫌だと。だからハンスに愛情を求めたのだと思います。ハンスもアナと似たような境遇の持ち主でした。互いに傷を舐め合う相手として意気投合したのだと思います。(実際はこの時点でハンスには腹積りがあったようです)

アナの選択は浅はかですが、彼女の心情を思うと同情せずにはいられません。ハンスとの結婚については作中でも散々否定的に描かれていました。(それでも期待していた人は多いようですが)
{/netabare}


4.ハンスの役割と心変わり

以前どこかのサイトで、ハンスは心を映し出す鏡としての役割があるという考察を読みました。

{netabare}デュエットシーンはまさにそれですよね。姉と仲良くしたいのに自分を見てくれない。誰かに愛されたい。寂しい二つの心は瓜二つ。ハンスの存在はアナの寂しい心そのものを映し出していました。

一方では一人のキャラクターとしてのハンスの心情が分かり辛かったというのはあります。本人の台詞から察すると、最初から王位に就きたくてアナに近付いたようです。具体策はないものの、いつかエルサから王位継承権を奪おうと機を伺うつもりだったのだと思います。
エルサが城を出た後、アナの代わりに城を守っていました。この時の彼はアナの伴侶として国を守るつもりでいたと思います。(彼にとっても利害一致しているので)人々を守ろうとする彼の姿は誠実で、家臣達も信頼のおける人物だと思ったことでしょう。
でも、エルサを確保し、凍り付きかけたアナが戻って来た時に転機が訪れました。家臣に「もしもアナ王女に何かあったらあなただけが頼りだ」と言われ、ハンスの心に悪魔が宿ります。
ハンスが王位を得るためにアナはそこまで邪魔ではなかったと思いますが、エルサがいる限りハンスの思惑通りに事を進めるのは難しそうです。エルサを殺すにしても、アナにその事実を知られるわけにはいきません。姉妹のどちらか一人を殺すよりも、二人とも死んでもらう方が確実ですし、アナが死に掛けているこの機を逃すまいと思ったのでしょう。
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5.オラフは良キャラか?

否定派の中でもオラフだけは良キャラだと言う人がいます。マスコット的な場を和ますためのキャラと言うこと?でも、私はもっと重要な意味を持つキャラクターだと思っています。

{netabare}オラフは幼い頃の仲良し姉妹の象徴であり、エルサの心そのものだと思います。「ぎゅっと抱き締めて!」と言ったのも、夏に憧れているのも、アナが大好きなのも、エルサ自身が作ったものだからと思うと見方が変わってきませんか?
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6.愛か恋か

以前、別件で考察したことがあるのですが、恋愛は自己愛に近いものだと思います。相手への欲求(相手から愛されたい)を満たすことが最大の目的になっている。それに対して、愛は与えるもの。(無償の愛)

{netabare}オラフが言うように、「愛とは自分より相手のためを思うこと。」簡単なようでいて難しいことです。
恋愛も美しいのですが、より尊いのが愛だと思っています。そして、愛というのは性別や年齢関係なく誰にでも向けられるものです。

物語の前半アナはずっと姉の愛情が欲しくて、でもそれが叶わず寂しさを埋めるためにハンスに愛情を求めます。(自己愛)でも、やっぱり城を飛び出した姉が放っておけなくて追い掛けます。山を登りながら、「言ってくれれば良かったのに。本当嫌になっちゃう。」と苦笑いします。愚痴のような台詞ですが、自分の行為が姉を追い詰めてしまったこと、そして一人でずっと苦しんでいた姉の辛さを知り、もっと早く教えてくれれば一緒に問題を解決出来たかもしれないのにという後悔の念を感じました。
人々はエルサの力を怖れますが、アナだけは違いました。怖れるものは何もない。だって姉なのだから。エルサの力になりたい、また一緒に仲良く暮らしたいという思いに突き動かされて彼女の後を追います。
でも、アナが思っていた以上に事態は深刻で、エルサの力を止めることは出来ませんでした。

傷付き城に戻ったアナはハンスにまで裏切られ、自分の考えが甘かったことを思い知らされます。彼の愛は真実の愛などではなかった。
「愛が何なのかもわからないのに。」とつぶやくアナにオラフが言います。「愛とは自分より相手のためを思うこと。」それは溶けても良いからアナのそばにいたいと言うオラフの行動であり、アナの望みを優先してハンスのところに行かせたクリストフの選択でした。
仮に、ハンスとキスしたとしてもアナは助からなかったでしょう。アナ自身の中にハンスへの愛がないのだから。

アナは死の瀬戸際で姉の危機を知り、自分の命と姉を天秤にかけます。それまで自己愛でしかなかったアナがエルサのために自分の身を捧げた、その行為こそが真実の愛であり、自らを救う結果となりました。(勘違いしている人もいるようですが、エルサの魔法を解いたのはアナ自身の行動です。)
たとえエルサが振り向いてくれなくても彼女を守りたい。エルサのことが大好きだから。その思いはとても尊く見えました。
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7.王子役不在

ここまでの考察で分かると思いますが、この作品は姉妹愛がテーマになっています。男女の恋愛ではありません。(ましてや同性愛とか論外)

{netabare}一応恋の話もありますが、ハンスとの恋は姉への欲求が歪んだものでした。
この作品ではアナが従来の王子のような役回りをしています。白馬に跨りエルサのところに向かうアナはまるで王子のように勇敢でした。
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8.クリストフは損な役回りなのか

{netabare}終盤の城のシーン、クリストフはアナのために危険を顧みず駆け付けたのに、美味しい場面は姉妹に持っていかれてしまいました。従来のディズニーアニメならここは二人のキスでハッピーエンドの場面かもしれません。でも、この物語はそれでは駄目なのでしょう。アナ自身の愛の変化(自己愛→無償の愛)がキーになっていますから。

クリストフは抱き合う姉妹を見て一瞬困ったように笑みを向けます。でも、アナのことを思うからこそ心から喜んでいたと思います。美味しいところで活躍出来なくても、彼の誠実さはしっかり描かれていますし、キャラクターの格好良さは華々しいシーンがあったかどうかだけで決まるものではないと思います。クリストフはとても勇敢で格好良かったと思います。

ラストのキスは彼にとってはご褒美でしょうか。いつものディズニーっぽさの演出(大団円)だと思います。
でも、アナはまだ恋愛についてはよく分かっていないんじゃないかと思ったりもします。好意は持っていると思いますが。ても、クリストフが誠実な人なので上手くリードしてくれることでしょう。
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9.トロールの歌

トロールの歌もクリストフとアナではなくて、物語的にはアナとエルサに掛かっていました。

{netabare}孤独に暮らしているのは愛されたいから、とか、怯えていると道見失う、でも愛さえあれば最高の道選べる。誰もが完璧じゃない。それを補うために必要なのが真実の愛だと。アナの表情をよく見ていると、この歌の持つ意味が分かります。
{/netabare}


10.余談

一時期のテレビでの持ち上げっぷりには流石に私もうんざりしていました。それこそ人気作に便乗して視聴率を取りたいだけ。面白くもない芸人のネタもうんざり。作品に対するリスペクトなんて一切感じられませんでした。

それはともかく、アナ雪は良くも悪くも色々な方面に影響を与えました。アニメにもアナ雪の影響は波及しています。実は私の一押しアニメの『レディジュエルペット』がアナ雪精神を踏襲しています。演出も似た部分があり(おそらく意図的)、私自身最初は嫌悪感を抱いたのですが、いつの間にかのめり込んでいました。アナ雪の愛の考え方を踏まえつつその遥か先へ行ってしまった印象です。アナ雪ではあまり描かれなかった男女の愛はもちろん、様々な形の愛がこれでもかと描かれていたので、アナ雪絶賛する自分がはまるのは当然の結果かも。是非こちらも観て欲しいです。(ステマ失礼しました)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 17
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

True Love is ...

2D字幕版で観ました。
予想外に良かったです!素晴らしい!すっごい泣いてしまったよ!
いや、泣いたっていってもアレだよ?涙がぼろぼろこぼれただけだから!!!

宣伝などでもお分かりになる通り本作ではキャラクターがよく動き、よく歌います。
走ったり、跳んだり!顔の表情だけを観ていても目が追いつきません。
非常に立体的な映像です。奥行きがあり、遠近感がはっきりと表れています。
まるで実際にアニメーションの世界の中にカメラを持っていって撮ってきたもののように思えます。

映像美で言えば短編映画を3Dで観たら声が出るくらい感動したんじゃないかなと思います。
もちろん本編も良かったのだけれどこっちもこっちで虚を突かれます。

歌はとにかくすごい!実際にミュージカルを観ているような気さえしてきます。
台詞からちょっとずつ歌に入っていく感じが上手で、台詞を言うように歌を歌い、歌うように高らかに台詞を言う。
そんな演技の良さが全面にスクリーンいっぱいに広がっています。
どうしてもこればかりは素晴らしいの一言に尽きてしまうのが歯がゆい!実際に観てほしい!

ストーリーの方もよく考えられています。骨組みがしっかりしていて文句の付けどころがありません。
安易でなく、逃げもなく、堂々たる出来でした。ラストに向かえば向かうほどそれがより実感できます。

この作品は歌がたくさん挿入されているせいか、僕は観ていて時間感覚を失いましたw
今ストーリーのどの辺だろうとか、あとどんくらいだろうなど思いつかないほどにこの世界に夢中でした。
でも決して時間が早く経つわけでもないのです。たった100分なのにすごおく引き伸ばされた時間の瓶の中にいたようでした。
それが僕は不思議でした(笑)

{netabare}

物語はとても良い出来でした。それは映像にもはっきりと見てとれました。
雪山に入ったアナとクリストフ、スヴェン、オラフの息が白くありませんでした。
町の人間たちは息が白いのです。彼らは雪山に登っても白いままです。

姉妹の決別を視覚的に、または比喩的にも示したのはエルサが川を渡ったところでした。
これが今回の物語の、非現実への「入り口」となりました。
アリスは穴へ落ちて薬を飲みました。千尋はトンネルを抜けました。漫画でのナウシカは心の中の風景をそれとしました。
今回の「入り口」は地を隔てる川でした。そこを越えると山は言わば、エルサの心の中なのです。
ここはエルサの思い通りになる世界です。
空中に階段を作ることも、雪だるまが動くことも、雪の巨人が人を襲うことが起こっても不思議ではありません。
そして正式な招待を受けることができたのは、アナ、クリストフ、スヴェン、オラフの4人です。
エルサにコミットできるのは初めからこの4人だけだったのです。
他の人たちの息が白く、彼らの息が白くなかったのはそこをはっきりとさせるためにあったと思います。

では「出口」は?
出口の無い物語ほど悲惨なものはありません。救いがないし、無意味だ。
あえて言うならば「True Love」です。

エルサがアナと別れ、山に城を築く際に求めたのは
"No right, no wrong, no rules for me, I'm free!"
「善悪なんて私にとっては意味を持たない。私は自由なんだから。」意訳ですがこういうことでした。
こどもの頃はそれをアナと遊びにも使っていた魔法がそのときでさえその制御することのできませんでした。
その力は守りたいものまで意志にそぐわず傷つけてしまいました。
そういった自責の念はなぜか城の内部から内側に向かって生えるつららにも見られました。
こうした経緯から、また「王女」でありながら民衆に恐れられ挙句の果てに「モンスター」と罵られたエルサは
自分の力が、また同時に自分の存在すらそれらに板挟みにされ分からなくなってしまいました。
しかし、それを救ったのが「True Love」でした。
ひとりの人から愛し愛され、そして支配できるようになった魔法の力は人々に笑顔を与えました。
善悪なんて関係ない?違うわよ、エルサ。あなただってみんなと同じように愛される権利を持っているの。
だからもう大丈夫。あなたは大丈夫よ。

素晴らしい愛の形です。True Loveなんて良い響きでしょう(笑)
そしてひとつの物語としても丁寧に作り上げた本作は評価に値します。


このお話はアンデルセンの『雪の女王~七つのお話からできている物語~』をモデルにしたものらしいですね。
タイトルに少し注目したいです。
本場アメリカでは『Frozen』。こちらはマクロな視点で付けられたのではないかと思います。
大地のことも言えるし、エルサにも関わっているし、包括的です。
日本では『アナと雪の女王』でした。
これはただ単に”雪の女王”という言葉を入れたかったのでしょうか。
僕はアナの1人主人公として分かりやすくはっきりとアナとエルサを対比させ、分けていたように思えます。
物語の一部の構成から、そしてタイトルに名前を出すことから
ブロンドのエルサより、赤毛でそばかすのついた活発なアナに感情移入させることが狙いでしょう。
しかし実際映画を観てみると、どちらのキャラも非常によく立っていましたし、それぞれに物語がありました。
僕はこの映画の二人の主人公で同時進行していく面白さを評価したいです。
決してアナがエルサを助けにいくという一元的で平面な構造ではなかったと僕は思います。

{/netabare}

アニメなんてのはそのほとんどが泡のようなものだと僕は思っています。
自分の体の中で何処と言うには探れなければ、元を辿ることもできないような場所から生まれては消えていく。
僕は自分の視聴形態をその連続に例えることができます。
しかし、湧き出てくる泡の中に、稀に、ほんの一部だけが形を崩さずに自分の中に残ります。
それは靴の中に入った石ころのように気持ちを落ち着かせないこともあれば、
急になにかを思い出したかのようにせわしなく僕のドアを叩くこともあります。
僕はそんなふうにして残った泡を長い時間をかけてゆっくりと眺めます。
近くから見たり、遠くから見たり、いろんな角度からも見てみる。座って見ることもあれば、立って見ることもあります。
急な呼び出しにも雑な返答はせずに落ち着いて応えます。
そうしているとだんだんと見えてくるものがあります。
不確かではあるけれど鍵を手にしたという実感が生まれます。すると泡から薄っすらと白く光る糸が見えるようになります。
僕はそれを繭から糸を引くのと似た要領で優しく優しく引いていきます。切れないように、決してほどき過ぎないように。
そうやって僕はたくさんの物語と関わっているつもりです。まだ完全にほどかれたものはないけれど。

それとは逆に本作のような巨人が山に大槍を突き刺すようなインパクトを持ち、
ファンタジーの可能性を限りないものにしてくれる、極めて単純な感動と希望のようなものを与えてくれる作品です。
音、映像など感覚的なものに結び付き焼きついた記憶は生きるための熱源の一部となり、
自分がすり減ってしまった際には少しの元気とわずかばかりの勇気を与えてくれます。

「俗的かい?酔狂かい?いいや、違うね。これはひとつの作品との極個人的な尊い繋がりなのさ。」

本作は本当に素晴らしい作品でありました。ぜひ一度観てほしいです!

投稿 : 2024/06/01
♥ : 28

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

歴代史上最大ヒットするわけだ、全世界がコレを待っていた~そして古典の中に織り込む『Wヒロイン&Wヴィラン』という新たな挑戦の意欲作でもある

生まれつき雪や氷を作り出す事が出来る魔法を身に着けていたアレンデール王国の王女エルサ
しかし上手く魔法をコントロール出来なかった彼女を不憫に思った両親は彼女を人目から隠すように育ててきた
一方、好奇心旺盛で破天荒な妹のアナは幼い頃から閉ざされきっていた城の門や自分と顔も合わせようとしない姉との生活に退屈し、外の世界へ憧れを抱いていた
やがてエルサは成人し、女王となるための戴冠式の日を迎えたがアナの軽はずみな行動から言い争いになった矢先、力を抑えきれずに魔法を暴発させてしまう
秘密だった魔法を知られてパニックに陥ったエルサは王国を捨てノースマウンテンに作り上げた氷の城に引き篭もるのだが、エルサの魔法の影響で夏季であったはずのアレンデール王国全体が極寒の世界となってしまった
エルサを追い詰める原因を作ったアナは責任を感じ、姉との“仲直り”を望み独り身で旅立つ・・・


まず昨今のディズニー映画・・・というかディズニー作品とピクサー作品で作風が2極化してるようにオイラは感じてます
インパクトあるキャラクターを重視して物語自体は比較的子供向け、寓話的な構成が目立ち奥底に抱える「アニメタ魂を隠し切れないピクサー」
(あくまでオイラの主観です、『トイ・ストーリー』のようにシリーズ化してよりキャラを掘り下げに入る場合もあります)
主人公に強過ぎる個性を求めず、感応的、情緒的、ロマンティシズムある物語を重視する「あくまで映画屋なディズニー」
『ニモ』にしろ『カーズ』にしろ、キャラは立ってるけど話しはダルいんですわ、正直
今作はディズニー制作ということで例の通り後者、キャラよりお話が先に立った作品だと感じてます


アンデルセンの童話『雪の女王』をベースとしながらもカイやゲルダが主人公ではありません
独自のキャラクター、全く新しい解釈、21世紀の今日らしいストーリーの中に力強いメッセージの作品に仕上がっており、やはりディズニーというチームはこういった元ネタをアレンジしていくのが上手いんだな!と再確認


実際視聴してみるとエルサが氷の城に引き篭もった事で大寒波に襲われるアレンデール王国の様はなんか「天岩戸伝説」っぽい
ハンスに初めて会った時のアナのたどたどしい喋りと後退りは隠し事をする「トイ・ストーリーのウッディ」に見えなくもない
アナとハンスがパーティーの夜に語り合う中、船のマストの向こうに見える二人の影はどことなく「ミッシェル・オスロ監督作品」に思えたのはオイラだけ?
クライマックスはどう見ても『ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』ですね!わかります!


いえいえ;
この作品をコケにしたいわけでなく、いい意味で既視感のあるお話と映像だったな、と
よくもまあこれらと『雪の女王』を結合したと、オイラはその辺り心の底から拍手を送りたいのです


歴代作品と比較すると毒々しさはかなり薄めで、そういった部分は昨年の『シュガーラッシュ』の方が風刺が効いていましたね
ディズニー作品に悪役の醸し出すオドロオドロしさや狂気染みた冒険のスリルを求める方には少しパンチが弱めな作品と言えます
伊集院光が毒舌で批評したように、ハッキリと好みは分かれます
ちなみにオイラは泣きませんでした


今作やはり一番讃えたいのは音楽、そして歌
もうホント、なんで今の今まで歌わなかったのか!?
ディズニーといえばやはりミュージカルなのです
2013年夏に主題歌が公開された時点から今作がミュージカル映画になると察していたオイラにとっては日本公開までの間そのハードルは上がる一方・・・
しかし、本編を見終えてみてオイラの想定を遥かに超越した圧倒的ネ申曲達のラッシュ!
途切れない!!歌が途切れないんですよ!!!
音楽に5.0評価あげてますが気持ち的には7.0ぐらいあげてやりたいんです!
「Let it go」だと?
今作の最大の見どころはどう考えても
「Na~na~na~heyana♪
Hahiyaha naha~♪
Naheya heya na~yanuwa~♪
Hanahe yunuwana~♪」
だろーがぁ(@д@


お話重視でキャラ立ってないというわけでもなく、今作でキャラクター性成分を補っているのがエルサに命を与えられた雪だるま、オラフ
彼の今作への貢献度は大き過ぎます
彼の存在で適度にコミカルな場面展開が計られ、鑑賞者(特に子供)を飽きさせない工夫がなされています


各所で話題になっているのが「原語で観るべきか?」「吹き替えで観るべきか?」
これに関しては甲乙付け難い、つまりどっちでもいいと思います
特に既に監督自身が賞賛している様にアナの吹き替えを担当した神田沙也加が素晴らしい
が、オイラとしては何よりも褒め称えたいのが前述したオラフを担当したピエール瀧でしょう、面白いw面白すぎるw
松たか子ももちろん悪くない
が、演技は別として歌声となるとやはり本家ブロードウェイミュージカルで活躍していたイディナ・メンゼルの足元には遠く及ばない
ってことで歌を楽しむつもりなら原語で、そこに拘らなければ吹き替えで、という選択をオススメしたいです
(まあMay.Jの“アレ”はいらんかったと思うが・・・)
ああそれと、「雪だるま作ぅろ~♪」は諸星すみれちゃんですねb
【すみれちゃんマジ天使】


ちなみに公開当初「2D吹き替え」「2D字幕」「3D字幕」という3つの選択肢しか無くなぜか「3D吹き替え」だけが後出しで約1ヶ月半ほど遅れて公開されました
よくわからんがこれが新しい商法?らしい
上映館数や1日の上映本数が東京ですら1/3になるというかなりレアな限定公開です、観れたアナタはラッキー
「3Dで観る価値は?」と聞かれたら「同時上映の『ミッキーのミニー救出大作戦』の面白さが全然違うよ」と真顔で答えます


昔ながらの“ミュージカル”に回帰しつつも、ディズニー史上初の“Wヒロイン”という新たな試みに挑んだ今作
流石、アナもエルサも両方魅力的ですb
しかし今作、これもディズニー初じゃないかと思われる“Wヴィラン”作品でもあったんですよね
そう、今作には悪役が2人おるんです
問題はこれ、試みとしては面白かったんですが正直一切何の含みも持たせていない所謂「超展開」でして・・・
昨今のディズニーは如何にもソレっぽい悪役を配することをせず、黒幕をサプライズ的に隠す傾向にあるんですが、、、やっぱ超展開は映画としてやっちゃダメよね・・・;

投稿 : 2024/06/01
♥ : 49

56.3 4 女王でファンタジーなアニメランキング4位
ハートの国のアリス Wonderful Wonder World(アニメ映画)

2011年7月30日
★★★★☆ 3.3 (76)
642人が棚に入れました
『自宅の庭で転寝をしていたアリスの目の前に現れたのは、ウサギ耳の青年!? その青年に強制連行されたのは、メルヘンチックなのに住人全員が武器を所持しているという物騒な世界で・・・。』

声優・キャラクター
釘宮理恵、小西克幸、最上嗣生、福山潤、甲斐田裕子、宮田幸季、平川大輔、子安武人、杉山紀彰、堀内賢雄、杉田智和、石田彰

大和撫子 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

くぎゅうのワンダーランド♪

銃弾飛び交う赤の世界、心を奪われたら帰れない。

◆この作品の内容は・・・
「不思議な国のアリス」をモチーフとしたPC乙女ゲームが元の作品。
主人公のアリスはウサギ耳の男にハートの国に連れ込まれます。
そして不思議な薬を飲まされてアリスは自分の世界に帰れなくなってしまいました(゚ロ゚;)エェッ!?
元の世界に帰る為にはその薬をもう一度飲めばいいみたいなのですが、その薬がなくなってしまいますo(゚Д゚ = ゚Д゚)oドコイッター
そしてこの世界でアリスはいろいろな騒動に巻き込まれるのですが、はたして元の世界に変えれるのでしょうか?それとも?

◆ハートの国をご紹介(*゚▽゚)ノ・・・
乙女チックなメルヘン世界♪
一度はそんな世界に行ってみたいですよね^^
おとぎの世界で女の子がカッコいい男性にお姫様抱ーっこ(〃∇〃)
でもこの世界は実は・・・とんでもなく物騒な世界なんです(゚〇゚;)なぬ?
マフィアみたいのが存在し、銃撃戦や乱闘は日常茶飯事に行われているみたいです; ̄ロ ̄)!!
また、この世界の住人は「役持ち」と「役無し」の2タイプいて、「役持ち」は力や不思議な能力を持っていてその存在がはっきりした者、「役無し」は顔すら認識されないほどの淡い存在でその命もすごく軽視されています。
さらにこの国の女王様は、使用人が紅茶に入れる砂糖の数を間違えただけでも首をはねてしまうような冷酷な人だとか((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル

◆くぎゅう演じるアリスについて・・・
青と白のフリフリのエプロンドレスを着ている女の子。
くぎゅうコト、「釘宮理恵」が声優を務めている事もあり、彼女の声が聞きたくてこのアニメを視聴しようとする人もいると思います。
この作品で彼女が演じるアリスという子はちょっとツンツンした勝気な女の子。
初めにその声を聞いた時は「シャナ」のような声質ではなく高い声を抑えたような声で、アリスというキャラには合ってないような感じも受けました。
しかしさすがプロの声優さんだけあって、その違和感はすぐに慣れました♪
いつもとは控えめの高さの声質でも、くぎゅうの可愛らしさは健在( ゚∀゚)o彡°
特に序盤のアリスと白ウサギの「雑菌」のやり取り゚・゚*・(゚O゚(☆○=(`◇´*)o コノー!!
このシーンは釘宮ファンにはたまらないシーンかも^^

◆声優陣は・・・
アリス      : 釘宮理恵(灼眼のシャナのシャナ)
帽子屋     : 小西克幸(世界一初恋の高野政宗)
三月ウサギ  : 最上嗣生
双子の門番  : 福山潤(コードギアスのルルーシュ・ランペルージ)
ハートの女王 : 甲斐田裕子(一騎当千の呂蒙子明)
白ウサギ    : 宮田幸季(バカテスの土屋康太)
ハートの騎士 : 平川大輔(School Daysの伊藤誠)
侯爵       : 堀内賢雄(ガンダムΖΖのマシュマー・セロ)
チェシャ猫   : 杉山紀彰(Fate/stay nightの衛宮士郎)
時計屋     : 子安武人(ガンダムWのゼクス・マーキス)
夢魔       : 杉田智和(涼宮ハルヒの憂鬱のキョン)
道化       : 石田彰(ガンダムSEEDのアスラン・ザラ)
アリスの姉   : 神田みか

◆総評・・・
私もそうですが、ゲーム未プレイの人にとってはこの作品はまずわかりづらい出来でした。
キャラ関係が掴めず、どういう流れでこういう展開になるのか?なんでこのキャラと戦うのか?何が起こっているのか?
明らかに説明不足な感が否めないです。
またアニメーションもぎこちない動き。
これらの点がイマイチでしたが、「釘宮理恵」目当てと、舞踏会や遊園地などのおとぎの世界の雰囲気を感じる分には良いかもしれませんね^^;

◆最後に一言・・・
END..?

投稿 : 2024/06/01
♥ : 23
ネタバレ

るぅるぅ さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9

ゲームユーザ&釘宮ファンに送るアニメ

【世界観からみた感想】
アリスの国をモチーフに、イケメン男子に振り回されるアリスが現実に帰ろうとドタバタ奮闘するファンタジー。

登場するキャラはアリス童話だけではなく、お菓子の国も織り交ぜヘンゼルとグレーテルもいる謎の夢の世界です。

登場人物が童話のどの位置づけになるのか配役がピンと来ないですね。
説明があって無いようなキャラ説明・どの国に属しているか・・・と、駆け足で進みます。
夢の国では国同士の争いがあって、その関係性がストーリーの蛇足でもあり不要と感じられましたね。

原作がゲームの再現を重視している為、足枷になったとしか思えない世界観が強いですね;
ゲームユーザーへのサービス映画であり、釘宮理恵、福山潤、子安武人、石田彰さん等の声優が際立つ作品という印象ですね。一見さんお断りと感じましたw

内容としての謎が多く、アリスをこの夢に留まらせたい者・帰れるかは自分次第と諭す者とアリスを巡る彼らの真相が全くわかりません。
アリスの姉が夢の国へ誘ったのか?など伏線ばかりで掘り下げるどころかハードルが上がり続けます・・・。

また、場面背景が直ぐに変わるのですが、これはアリスの望む夢とかけパラドックスとして見せてますが、その区切りがわからず「え」としか言えない気持ちでいっぱいです。
詰め込み要素が多すぎて消化不良もいいところです。

最後に作品のキャッチフレーズは、「心を奪われたら、帰れない。」
{netabare}結末も同じく、その余韻に浸らせることがテーマにもなっています。 アリスがなぜ少し夢に浸るのかという描写が、彼らが居て欲しいと望む気持ちを育んだだけです・・・何もしなくとも時間は進むだけ、夢はいつか覚めるモノと心が揺らぎ夢へ残る決断へ。
最後は迷いの森から出られなかったBAD ED ですね。{/netabare}
題材が好きな童話だけに、なぜ こうなった・・・と、ストーリーが甘すぎですね。
ゲームユーザー・釘宮ファンに送る作品であり視聴はお勧めしません。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8
ネタバレ

rei@低浮上 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.3

原作ファン向け

アリスシリーズは、ゲーム未プレイ、漫画版を読んだくらいしか知識がない状態で鑑賞しました。
漫画版でキャラの性格や名前くらいは把握できていたのですが、
漫画版も今回の映画も真相は謎に包まれていました・・・
原作フルコンプした人だったらわかるのかな〜?
というか全く知らない人だったらもっと分からないと思います。
キャラの名前も関係性もわかりにくいです。
あんなチラッと説明されてもわからないわな。
多分、原作ファンに送る映画だったと思います。
新規の人は全く訳分からないと思いますよ、マジで。
場面切り替えが意味不明すぎたし・・・伏線の張り方もよく分からないし・・・
そして、EDが「ん?」ってなります。
え、これで終わり?みたいな。
ただ、キャラクター一人一人の個性・声優さんは良かったかなあ、と思います。声優豪華です。
作画崩壊とかは目立った箇所は無かったので、
原作ファンにはおすすめできる?いやできないかも・・・
主人公・アリスの声が釘宮さんということで、
私的にはイメージに合っていたと思います。
ツンデレじゃないですけどね。
{netabare} 個人的には舞踏会でユリウスがアリスを助けるシーンが格好良かったと思います {/netabare} 「すごく面白い」ってほどではないですので、
「原作好き、大好き」って人、特に中でもブラッドが好きな人におすすめしておきます・・・
ブラッドとエリオットと双子とペーターとジョーカーあたりは出番が多かったと思います。(他に比べて)
多いって言ってもあまり出てこないですけどね!
(あ、ブラッド除く)
いやまあ、そこは抜きにしても動くのは新鮮だった。
あまり正直おすすめできません。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6
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