小説原作アニメ映画ランキング 27

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の小説原作成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月16日の時点で一番の小説原作アニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

87.5 1 小説原作アニメランキング1位
劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~(アニメ映画)

2019年4月19日
★★★★★ 4.3 (407)
1875人が棚に入れました
昨年度の全日本吹奏楽コンクールに出場を果たした北宇治高校吹奏楽部。2年生の黄前久美子は3年生の加部友恵と、4月から新しく入った1年生の指導にあたることになる。全国大会出場校ともあって、多くの1年生が入部するなか、低音パートへやって来たのは4名。一見すると何の問題もなさそうな久石奏。周囲と馴染もうとしない鈴木美玲。そんな美玲と仲良くしたい鈴木さつき。自身のことを語ろうとしない月永求。サンライズフェスティバル、オーディション、そしてコンクール。「全国大会金賞」を目標に掲げる吹奏楽部だけど、問題が次々と勃発して……!?北宇治高校吹奏楽部、波乱の日々がスタート!

声優・キャラクター
黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、石谷春貴、藤村鼓乃美、山岡ゆり、津田健次郎、小堀幸、雨宮天、七瀬彩夏、久野美咲、土屋神葉、寿美菜子、櫻井孝宏
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

京都アニメーションについて

はじめに注意書き

本稿は 劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~ の要素をそれほど含みません。予めご留意くださいませ。


-------------

※本作に関する評価は評点にて

実は公開直後の2019年4月に本作品を劇場で鑑賞し、なにかしら書こうと思ってましたが筆が進みませんでした。

 「この続きの物語を早く観たい」

真っ先に沸き上がった感情がこれで、それ以上でも以下でもなかったことが理由です。

鑑賞後の感想が「続編早く観たい」だったので、その後の続編発表はなによりの朗報でした。無名の大学生の小説を発掘し素敵な物語に仕立て、数年かけて育ててきた魅力的なコンテンツ『響け!ユーフォニアム』。拙稿のTV版のレビュータイトルは1期2期を通じて “ モブはいない ” としております。
コンテンツの歩みは仕上げの工房から始まり、地方のハンデを乗り越えながら三十年以上かけて築きあげてきた実績と、一人一人輝きを見せるキャラクターたちは誰一人として欠けてはいけないクリエイター集団としての京都アニメーションという制作会社の実像とイメージを同じくするものでした。



2019年4月。
「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」の公開前後、京都府宇治市にある京アニショップの店頭ボードにはこのようなメッセージが添えられていました。


{netabare} 劇場作品を一本作り上げるには、すべてのスタッフが
一丸となって取り組まなければ乗り越えられません。
 クリエイターが、日々真摯に作品の制作に向き合うの
は勿論、制作を支えるスタッフも、クリエイターが自分たちの
作業に集中できるよう、最適な環境を整えてくれました。
 全てのセクションが毎日細かな情報まで共有し、遠く
離れたスタジオにいるスタッフでも、まるで隣の席にいるか
のように感じることができました。そして、時間との戦い
になっても、一人として諦めることはありませんでした。
 最後は、各スタジオのスタッフが一ヶ所に集まり、この作
品の完成を一心に目指しました。あの時の高揚感は忘
れることができません。一人として欠けては、この作品が
皆様のもとへ届くことはなかったでしょう。

 「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」には、
京都アニメーションとアニメーションDoの“いま”を余すこと
なく詰め込んでいます。映画を通して、私たちの想いを
感じていただければ幸いです。
 
 そして、ここから続いていく劇場作品もまた、同じように
大切な想いが詰まっていて、『京アニ映画year』はそうし
た想いが寄り集まって始まります。

 私たちの想いが、皆様に響きますように-----。

    京都アニメーション・アニメーションDo一同 ※原文ママ{/netabare}



届きました。響きました。


しかし、ここから続いていったであろう大切な想いが詰まった作品たちは現在足踏みまたはゆっくりと歩を進めている状況です。
「今暫く、時間をください。」「必死に戦っていきます。」公式コメントで誓われてる以上、我々は再起を信じて待つほかありません。


次は自分たちの番だと思ってます。


 『一人でも多くの人に京アニの作品を知ってもらいたい』


“ 夢に向かって一生懸命な人たちのプロの仕事を紹介する ” とのスタンスで普段はアニメを観ない層へ働きかけています。けっこうな方が実際の作品を観て感想を寄せてくれました。

『らき☆すた』『CLANNAD』『涼宮ハルヒの憂鬱』『けいおん!』『氷菓』『中二病でも恋がしたい!』『Free!』『響け!ユーフォニアム』『聾の形』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』etc
アニメに興味のない層はこれらのタイトルを知りませんから、技術的なことや内容よりもクリエイターのモノづくりへの想いに言及することで一般層の琴線に触れる場合が多いと感じております。


あにこれはレビューサイトです。
レビューを書くことは抽象的な映像作品を言語化するというやっかいな作業です。そのやっかいな作業を質量関係なくおこなった経験が皆さんにはおありです。
一介の在野レビュアーごときの世迷い言に少しばかりでも共感してくれて、どこかで思い出して行動に移していただけるのなら望外の喜びです。



願わくば、地上波のゴールデンタイムで京アニ作品が流れるその日まで。



世間の話題に挙がらなくなっても京アニの必死な戦いは続きます。
私たちも決して希望を捨てることなく、また、アニメファン一人びとりがこれからも長く心を寄せ、京アニ再興の道のりを見守り続けていきましょう。


令和元年九月七日 記


※本稿に関するサンキューには御礼メッセージを控えさせていただきます



-------------
2020.03.20追記

○周忌や月命日でもないなんともない日にあらためて更新です。
レンタルなり配信が開始されたのでしょう。レビュー新規投稿なりサンキューをいただく機会が増えました。劇場公開からそろそろ一年。

何かの折にコンテンツに触れられることはありがたいことです。
一方で、消費される宿命にあるのもコンテンツの事実。
忘れない。想い続ける。いざやろうと思っても四六時中というわけにはいきません。


さて、実績報告となります。
事件後、普段アニメを観ることのない4名の知人に京アニ作品を鑑賞していただきました。反応は様々でしたがそれでいいかなと。

引き続き、各々が現実世界で動いていく。
今後更新するかはまったくの未定です。


2019.09.07 初稿
2020.03.20 追記

投稿 : 2024/05/11
♥ : 75

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

ただただ感無量

いやー凄く良かったです。
黄前ちゃんをはじめとして、麗奈、葉月、緑輝、などの懐かしい人達に会えることができました。
この短い映画の時間で、よく一年間をまとめられたものだと、製作スタッフの方々に感謝します。

最初に 「響け!ユーフォニアム」が聞こえてきたとき、
胸がジワーとこみ上げてきました。
あの名曲は、あすか先輩から黄前ちゃんに、しっかり受け継がれていました。

この映画では、黄前ちゃんは2年生。彼女はいつも、巻き込まれキャラです。
今回は、一年生の悩みにいろいろと巻き込まれます。

誰も悪い人はいないのに、悩み、涙を流す一年生たち。
そう、みんな一生懸命生きているからこそ、悩むのです。
奏ちゃんやさっちゃん、みっちゃん、それに求。
一人一人の悩みは違います。でも本人にとっては真剣な問題です。

そんなとき、黄前ちゃんみたいに、気軽に相談できる人がいたら、安心します。
話しを聞いてくれるだけでいいのです。それだけで、安心するのです。
自分は一人じゃなかった。そう感じて安心するのです。

でも、黄前ちゃんは、話しを聞いてくれるだけじゃなく、納得できるまで追いかけてきます。決して手を抜きません。
そして、ときには厳しいことを言って叱ります。
一見、人畜無害そうに見える黄前ちゃんに叱られると、誰もが驚いてしまいます。
でも、それは、相手を思いやって叱っていることに、すぐに気付きます。
だから、みんなは黄前ちゃんを好きになるのです。

ところで、今回も立派だと思ったのは、中川夏紀の行動です。
一見怖そうに見える彼女は、本当に立派な副部長です。
自分に不利になると分かっているのに、あえてみんなのために頑張っている。
一年前も彼女はそうでした。彼女の心は、とても清らかです。

こんな人たちがいる吹部は、素敵ですね。

最後に、あすかのお父さんがつくったあの名曲を、後輩の奏ちゃんも受け継いでほしいと思いました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 72
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

想いはつながっていく

製作:京都アニメーション、監督:石原立也、
シリーズ構成:花田十輝、
作画監督:池田晶子、原作:武田綾乃

久美子が高校2年生に進級した
原作の2冊分をまとめた作品の映画化。
ただ、希美とみぞれの関係性を描いた部分は、
『リズと青い鳥』で映画化されたので、
それ以外の部分ということになる。

物語は黄前久美子と塚本秀一のシーンに始まり、
桜が舞い散る新入生入学時に
吹奏楽部員がパフィーの『これが私の生きる道』を
演奏して歓迎するところからから描かれる。

物語は最初から最後まで
久美子と新入生のユーフォニアム担当・
久石奏との関係性が軸になっている。
これはある意味、映画『届けたいメロディー』と
同じような構成だ。
ただ、今回はそれに加えて、久美子の脳裏には、
卒業生のあすかの姿がいつも思い浮かぶ。

2年生になった久美子は、
トランペットの加部ちゃん先輩とともに
1年生指導係となり、後輩たちの面倒を見ることなる。
低音パートには、チューバの鈴木美玲と
鈴木さつきのW鈴木とコントラバスの
月永求、ユーフォニアムの久石奏が
新たに加わり、波乱を巻き起こす。

部活において「頑張るとは何なのか?」と
いうのが、大きなテーマのひとつ。
効率良く技術を上達させていくことか、
それとも部内の皆と仲良くして
溶け込んでいくことなのか。
難しい問題だが、どちらも正解というのが
正しいのだろう。ほかにも正解はあるだろうし、
また、部内の状況によっても変化する。

純粋に正しいことと間違っていることだけで、
部活内は割り切れるものではない。
時には間違っていたと思えることでも、
人間関係によっては
正しいことになることもある。
無理をして何かを合わせなければ
いけないこともある。
久美子はそれらを踏まえた上で、
現在の北宇治において「頑張る」ことに
ついて、踏み込んだメッセージを奏に送る。

{netabare}奏は過去の経験から、部内の人間関係を鑑み、
自分自身の演奏を諦めることを決断した。
そんな奏を諭すために久美子たちが
連れ出した場所は、あすかを説得するときに
利用したのと同じ校舎裏のゴミ収集場だった。
かつて、あすかに跳ね返されたのと
同じ場所だったことは、その時の出来事と
関係性をしっかり対比させる制作陣の意図だろう。
(当時は、あすかも演奏を諦めていた)
1年前、久美子は同じ場所で自分の他者に対する
距離感をあすかから思い知らされることになるのだが、
今回は、距離感を詰めて雨中に飛び出した奏を追いかける。
「気になって近づくくせに、
傷つくのも傷つけるのも怖くて、
なあなあにして、安全な場所から見守る。
そんな人間に相手が本音を
見せてくれていると思うの?」と
あすかから言われた自分から脱却するために行動する。
「本音」が知りたいと久美子は奏にはっきりと問う。
そして自分の経験から本心で
「頑張ることは無駄ではない」ことや
「頑張っている奏のことを
自分たちは見ている」し、
「奏のことを守る」ことを伝える。

かつて麗奈から教えられたように
頑張ったからこそ、コンクールがダメ金で
「死ぬほど悔しい」と思うことができる。
結果が出なくて死ぬほど悔しいのは、
頑張ったことで得られる本物の気持ちなのだ。
あすかや麗奈から久美子に、
そして、久美子から奏、そのほかの部員へと
想いがつながっていく。
今回の物語で監督がこだわったのは、
そういう何かを受け継いでいくことなのだろう。

雨に濡れて、次第に久美子の天然パーマが
ストレートになっていく様や、
あすかに対したときのような熱のこもった
説得シーンには引き付けられた。
これは、奏への説得と同時に
1年前のあすかに対しての久美子の回答でもあった。
そしてコンクール当日にあすかが現れ、
名残惜しそうにする久美子に絵葉書を渡していく。
わざわざ映画で原作のこのシーンを入れたのは、
続編で回収するつもりだろうと考えたい。

時間を短くまとめるために、奏との関係性と
そこから垣間見えるあすかに対する想いを
強調したことで、久美子の成長を軸にした
1本の作品としてまとまっている。
初見のときは、観賞の直前に
また原作を読み返していたこともあって、
展開に無理があると感じていたが、
100分という時間制限を考慮すると、
最初から最後まで計算され尽くされている構成だと思う。

ただ、奏と夏紀の関係性についての描写が薄いため、
問題が起こって解決するまでの経緯が
今ひとつ腑に落ちない感覚に陥ってしまう。
また加部ちゃん先輩との関係性も
積み重ねられていないだけでなく、
先輩の努力などもあまり分からないため
その重大な決断が心に響かない。
時間がないので仕方のないことだが、
久美子が部長になる際の優子や夏紀との
やりとりや黄前相談所創設の説明も
全くなかったことは残念だった。
(黄前相談所創設は、久美子が後輩から
信頼を得て、スムーズに部長として活動できるよう
優子が1年前から計画して行ったことだった)

これらを考えると、本来は2期で入れるべきところを
敢えて無視した秀一との関係を無理して入れる
必要があったのだろうかと感じた。
しかも秀一と別れる理由が原作での
部長に指名されたからということなら分かるが、
映画では曖昧にした上に、
秀一が納得しているのも気になってしまう。
ただ、この関係性を描くことは
石原監督のこだわった部分だったようで、
しかも、秀一との会話を入れることで、
奏と夏紀の関係性や求についてのこと、
麗奈との友情の機微などを表現できているので、
物語全体に深みを持たせられたとは思う。
また進路に悩むということで、原作にはないのに
敢えて久美子が父と将来のことを話すシーンまで
入れている。そこには父の姉に対する
後悔の念も滲んでおり、父親も何かに迷う
ひとりの人間であることを示しているのが面白い。{/netabare}

初見のときは、原作との違いや描写不足から
細部に不満を感じたが、何度か観ると、
限られた時間内での完成度の高さが目に付く。
しかし、やはり描写不足が拭えないのも確かで、
できれば最終章はテレビ放映することを願う。
音楽は相変わらず聴かせてくれて、
部員それぞれの動きも迫力があった。
(2019年5月26日初投稿)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 68

85.7 2 小説原作アニメランキング2位
リズと青い鳥(アニメ映画)

2018年4月21日
★★★★★ 4.1 (553)
2298人が棚に入れました
北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当している鎧塚みぞれと、フルートを担当している傘木希美。

高校三年生、二人の最後のコンクール。
その自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「なんだかこの曲、わたしたちみたい」

屈託もなくそう言ってソロを嬉しそうに吹く希美と、希美と過ごす日々に幸せを感じつつも終わりが近づくことを恐れるみぞれ。

親友のはずの二人。
しかしオーボエとフルートのソロは上手くかみ合わず、距離を感じさせるものだった。

声優・キャラクター
種﨑敦美、東山奈央、藤村鼓乃美、山岡ゆり、杉浦しおり、黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、桑島法子、中村悠一、櫻井孝宏
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

あの子は青い鳥

山田尚子監督作品、脚本吉田玲子。

群像劇としてのユーフォニアムから、
思春期の少女2人の機微な心情に焦点を当て、
より先鋭化した形で描写され提示される、
あまりにも美しく儚い旅立ちの物語。

足音の効果音が印象的に導入され、
2人の未来を象徴するかのように、
違う歩幅で、リズムで共に歩いて行く。
{netabare}ここでは大きな物語は、徹底的に排除され、
日々の練習風景と少女の心情のみが反復される。{/netabare}
少女たちの所作の1つ1つがあまりにも美しく、
その機敏な運動の中に、身体の美を見ました。

内向的なみぞれと明るく社交的な希美。
{netabare}童話「リズと青い鳥」が詩的に象徴するように、
それぞれの現状と未来に不安を覚え始める。
微妙な距離を生む対比された2人の感情、
上手くかみ合わないオーボエとフルート。{/netabare}
小さな青い鳥の幸せとは何でしょう。
ここにあるのは少なからず誰もが通過する、
イニシエーションではないでしょうか。

少女の美しさと儚さの一瞬を切り取り、
残酷さまでもドキュメントした記念碑的作品。
それでも前途ある未来を輝き解き放って欲しい。

私の大切な宝物となりました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 125
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

山田尚子監督が目指していたものをやり切った、実写的表現の到達点

アニメーション制作:京都アニメーション、
監督:山田尚子、脚本:吉田玲子、
作画監督・キャラクターデザイン:西屋太志、
音楽:牛尾憲輔、美術監督:篠原睦雄、
色彩設計:石田奈央美、原作:武田綾乃。

揺れるポニーテール、廊下を歩く足、瞬く瞳。
静かな劇伴が流れるなかのふたりの情景。
絵柄は滲んだブルーを基調とし、透明感のある色彩。
響く足音、キャップを開ける音、楽器を組み立てる音。
様々な生活音を拾い上げていく。
細部まで徹底的なこだわりを感じさせる。
思わず息を詰めて観てしまうような静謐感が作品全体に流れている。

私は冒頭のシーンを観たときに、この感覚はどこかで味わったような気がすると、
鑑賞中にずっと考えていたのだが、
それは岩井俊二監督の『花とアリス』だった。
岩井俊二監督のなかでいちばん好きな作品だが、
それを初めて観たときのような鮮烈な印象を受けた。
眩いばかりの透明感を重視した絵作りだ。

『リズと青い鳥』は『響け!ユーフォニアム』シリーズの続編に位置づけられる。
田中あすかや小笠原晴香たち3年生が引退した後の
春から夏にかけての一部分を切り取った物語。
しかし、シリーズ名がタイトルに入っておらず、
単体で観られることも意識して制作されている。
私は原作を全巻既読で、TVアニメも映画も過去作品は
全て鑑賞済みなので断言はできないが、
初見の人でも十分に楽しめるのではないかと感じた。
人間関係は観ていれば、ほとんど理解できると思うし、
基本的には鎧塚みぞれと傘木希美の関係性についてのストーリーのため、
それほど分かりにくくはないと思う。
ただ、もしかするとみぞれと希美の依存といえる関係性が理解できず、
物語に入り込めない人がいるかもしれないが、
そんな友人同士の繋がりもあると考えてもらうしかない。
これは、いびつな形ですれ違い続ける愛と嫉妬の物語だ。

アニメ的な手法よりも実写的なカメラワークを
意識しているシーンが多く見られる。
足の動きや手の動き、会話の「間」などで、心情を表現している。
また、感情を表すような目元のアップシーンが多い。
アニメではなく、実写ではよく使われる手法だが、
この作品では重視されている。
そして、被写界深度を意識した絵作り、
つまりカメラの焦点とボケを意識している点はシリーズと同様だ。
物語にはそれほど大きな起伏がないため、
好き嫌いが分かれるタイプの作風だが、
映画としての完成度はかなり高い。

{netabare} 特に素晴らしいと感じたのは冒頭のシーン。
何かの始まりを予感させる童話の世界から現代の世界へ。
まだ人があまりいない早い時間の学校に鎧塚みぞれが到着して、
階段に座り、誰かを待っている。自分の足を見る。不安げな瞳。
誰かがやってくる。
視線を向けるが、期待した人ではない。
そして、待ち人がやってくる。いかにも楽しそうで快活な表情、
軽快なテンポの歩様、揺れるポニーテール。
それに合わせて流れる明るいメロディ。
フルートのパートリーダーである傘木希美だ。
鎧塚みぞれは、それとは逆に表情が乏しく、口数も少ない。
彼女なりに喜びを表現して希美と一緒に音楽室へと向かう。
途中で綺麗な青い羽根を拾った希美は、それをみぞれへと渡す。
戸惑いながらも希美からもらったものを嬉しく感じるみぞれ。
この青い羽が、閉じられた世界の始まりを予感させる。

校舎に入り、靴箱から上履きを取り出すときのふたりの対比。
廊下に彼女たちの足音が響くが、その音のテンポは全く合わない。
完全な不協和音。ふたりの関係性が垣間見える。
みぞれは少し距離を置いて、希美の後に付いていく。
階段の途中の死角から希美が顔を覗かせてみぞれを見る。
希美は少し驚いたように、目を何度か少しだけ動かす。
教室に着いて鍵を開け、椅子と譜面台の並んだ誰もいない室内に
2人だけが入っていく。
吹奏楽コンクールの自由曲は、「リズと青い鳥」。
この曲を希美は好きだという。
そして、ふたりで曲を合わせてみるところで、
タイトルが映し出される。

この一連のシーンだけで気持ちを持っていかれるだけのインパクトがある。
とても丁寧で実写的で挑戦的な作風だと感じ、
私は思わず映画館でニヤついてしまった。

物語はみぞれと希美のすれ違いを中心にしながら、
それに劇中曲である「リズと青い鳥」の物語がリンクしていく。
童話のほうの声優にちょっと違和感がある。
ジブリ作品を見ているような感覚だ。
みぞれがリズ、希美が青い鳥の関係性として観客は見ているが、
最後にふたりの立場が逆になる。
みぞれの才能が周りをなぎ倒すようにして解放され、
美しいメロディを奏でる。
同じように音楽に真摯に取り組んでいたみぞれと希美の差が
明らかになる瞬間だ。

二羽の鳥がつかず離れずに飛んでいくシーンが映る。
左右対称となるデカルコマニーの表現。
そして、ふたりの色は青と赤。
心があまり動かずしんとした雰囲気のみぞれが青、
情熱的で人の中心になれる希美が赤だろうか。
このふたつの色が分離せずに混ざり合っていく。

みぞれが水槽に入ったふぐを見つめるシーンが度々出てくる。
おそらくみぞれは、水槽のなかのふぐを羨ましいと思っている。
仲間だけでいられる閉じられた世界。
そこが幸せで、ほかは必要ないと考えている。

この作品は意図してラストシーン以外での
学校外のシーンを排除している。
鳥籠=学校という閉じられた空間を強調しているのだ。
閉じられた学校という世界のなかにあって、
さらに閉じられた水槽内にいるふぐ。
それをみぞれが気に入っているというのは、
みぞれの心情を示している表現だろう。

たくさんある印象的な場面でいちばん好きなのは、
向かいの校舎にいる希美がみぞれに気づいて手を振り、
みぞれも小さく手を振って応えるシーン。
そのとき、希美のフルートが太陽に反射して、
みぞれのセーラー服に光を映す。
それを見てふたりがお互いに笑う。
言葉はないが、優しく穏やかな音楽が流れるなかで、
(サントラに入っている「reflexion, allegretto, you」
という曲で、1分20秒と短いがとても美しい)
何気ない日常の幸せをいとおしく感じさせる。

ラストシーン。歩く足のアップ。
一方は左へ、一方は右へと進んでいく。
希美は一般の大学受験の準備ために図書室で勉強を、
みぞれはいつものように音楽室へと向かう。
帰りに待ち合わせたふたりが歩く。
足音が響く。
ふたりの足音のリズムは、時おり合っているように聞こえる。
お互いに別の道を歩くことを決め、そこでようやく何かが重なり始めたのだ。
ふたりの関係がこれからどうなるかは分からない。
しかし、最後に「dis」の文字を消したところに、
いつまでも関係がつながっていて欲しいという作り手の願いがこめられている。{/netabare}
(2018年4月初投稿・2020年5月5日修正)

大好きのハグから続くラストシーンについて
(2018年5月11日追記・2019年3月15日修正)

{netabare}みぞれは希美の笑い方やリーダーシップなど、
希美自身のことを好きだと告白するが、
それに対して希美は「みぞれのオーボエが好き」だと言い放つ。
このやり取りは一見、ふたりの想いのすれ違いだけを
表現しているように感じるが、実はそれだけではない。

友人として以上に希美のことが大好きなみぞれにとって、
とても厳しく感じる言葉だが、これは希美自身にとってもキツイ言葉。
みぞれの才能を見せつけられて、ショックを受けているときだから尚更だ。
それなのに、敢えて言ったのはなぜか。
この言葉には、自分は音大には行けないが、
みぞれには、音大に行ってオーボエを続けて欲しいという
願いがこめられているのだ。
「みぞれのオーボエが好き」という希美の言葉がみぞれに対して
どれだけ大きな影響を及ぼすのかを希美自身は自覚している。
単に希美が自分の想いを吐露しただけではない。
「みぞれのオーボエが好き」は童話における、
一方的とも思えるリズから青い鳥への
「広い空へと飛び立って欲しい」と言った想いと同じ意味を持っている。

それは、帰り道に希美が「コンクールでみぞれのオーボエを支える」と
言ったことからも分かるし、それに対して、
みぞれが「私もオーボエを続ける」と宣言をしていることからも明らかだ。
しかし、このやりとりはどう考えても違和感がある。
つまり、希美はコンクールの話をしているのに、
みぞれは、コンクール後のことについて語っているからだ。
会話がすれ違っているように聞こえる。
ところが、そうではない。
つまり、ここでは希美が音大に行かず、
フルートを続けなかったとしても、
みぞれは音大に行く決意をしていることを示している。
これは希美の「みぞれのオーボエが好き」に対して
みぞれの出した答えなのだ。

実は原作では、音大を受験するかどうかの話を
みぞれが希美に問い詰めるシーンがあるのだが、
映画では、完全にカットしている。
その代わりに、左右に分かれていく足の方向と
図書館での本の借り出し、楽譜への書き込み、
最後の会話によって表現している。
「みぞれのオーボエが好き」という言葉が
みぞれの背中を押したという、別の意味を持たせているのだ。
そのあとの「ハッピーアイスクリーム」で
ふたりの感覚が足音のリズムとともに、ようやく一致したことを描いている。
また、みぞれが校門を出るときに希美の前を歩いたり、横に並んだりする。
切なさはあるが、やはりこれはハッピーエンドといえるのではないだろうか。

音楽については、フルートが反射する「reflexion, allegretto, you」と
ラストシーンで流れる静かだが心地良いリズム感の「wind,glass,girl」、
そして、字幕の時の「girls.dance,staircase」、
「リズと青い鳥」、Homecomingの「Songbirds」が印象的だ。{/netabare}

コメンタリーを視聴して(2019年2月14日追記)

{netabare}昨年発売された脚本付きBDを購入して、
本編とインタビューは手に入れてすぐに観たのだが、
脚本やコメンタリーは後回しになってしまっていた。
脚本を読んでみると、「リアルな速度の目パチ」など、
とても細かい指示がなされていて驚いた。
目を閉じ切らないまばたきも指示されている。
また、作画については「ガラスの底を覗いたような世界観」という
指南書が配られていたという。
映像では山田尚子監督の意図を確実に実現している。

そしてこの作品には3つの世界観が表現されている。
学校、絵本、そしてみぞれ(希美)の心象風景だ。
絵本は古き良きアニメを再現させるよう
線がとぎれる処理を行っている。
心象風景は、よりイメージ感の強い絵作りを意識したという。
希美が走る水彩画のようなタッチ。
左右対称の滲んだ色の青い鳥など。
これら3つの世界観が上手く活かされていて、
物語に彩りを与えている。

それに加えて、BDで解説を聞かないと気付けないのが、
生物学室のみぞれと希美のシーン。
最初から何段階かに分けて色合いを変化させている。
夕方の時間の経過とともに初めは緑っぽかった室内から
オレンジ系に少しずつ色を変えるのと、
カットごとに順光、逆光でも変化させている。
確かに言われてみて確認すると、
生物学室での色合いはとても繊細だ。

髪を触る仕種については山田尚子監督自らの発案。
曰く、みぞれがそうやりたいと言っていたから。
キャラが監督に下りてきていたそうだ。
また、「ダブル・ルー・リード」も監督のアイデア。
これは映画館で観ていたときから、
洋楽好きな監督が考えたことだろうと予想していたので、
インタビューを観たときは、あまりにもそのままで可笑しかった。
印象に残ったのが、スタッフのいわば暴露話で、
内面を描くよりも映像(ビジュアル)で見せたいと
昔に語っていたことがあったそうだ。
監督は昔の話だと恥ずかしがっていたが、
まさにこの作品はその方向性を貫いたといえるだろう。{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 122
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

Agree to disagree

2018.11.11記


本作鑑賞にあたりTV版1.2期を視聴済


あにこれでも評価の高い、吹奏楽部員らの青春を描いた【響け!ユーフォニアム】のスピンオフ劇場版。TV版にも登場した傘木希美(フルート)と鎧塚みぞれ(オーボエ)の二人の関係に焦点を絞った物語です。
実はユーフォシリーズの出会いは本作がきっかけ。リアルでの飲み友達(非ヲタ)の職場同僚が劇中歌「girls,dance,staircase」{netabare}(Homecomings手前に流れるボーイソプラノのやつ){/netabare}を歌っている方のご家族だったから。…遠い(笑)

事前準備のつもりで観たTV版にドはまりし、本作に関しては、訳知り顔で「キャラのデザイン変わってんじゃん。なんだよー」と知ったかモードで公開から少し日の経った時期に劇場で鑑賞しました。結局・・・


 『間髪入れずに2回め行きました』 余韻忘れられず 『3週間後に3回目行きました』


2回目はひっかかりの解消を目的に、3回目は「みぞれのオーボエが好き」でもう一度劇場で音色を堪能したかったからが理由。当たり前ですが駄作と感じてればリピートはしません。
90分とやや短めの上映時間ながら濃ゆい時間が流れる至福のひと時。「ながら見、ダメ、ゼッタイ」良い意味で観客に緊張を強いる作品です。

TV版の視聴が必須か?は微妙なところです。理解に幅を持たせるためにTV版を観るに越したことないですが、本作は2人の少女の物語としてTV版と独立した作りになってますので単独での視聴も可能です。事前準備するなら、松:TV版コンプしてどうぞ、竹:2期1~5話を押さえてどうぞ、梅:YOUTUBEでそれっぽいの探してどうぞ、といったところでしょうか。
元からのファンはもちろんのこと、TV版がイマイチだった人、TV版観てない人もと間口広めです。タイトルに〝ユーフォ”を持ってこなかったことから意図は明白だと思います。


ざっとあらすじは、
少女(リズ)と青い鳥との出会いと別れを描いた童話「リズと青い鳥」を題材とした同名の楽曲をコンクールの自由曲に選んだ北宇治高校吹奏楽部。その曲中、オーボエとフルートの掛け合いパート、なかなか二人の息が合わなくて、、、
奇しくも掛け合いパートは少女と青い鳥の心情を表現しているとされる箇所。「出会い」「別れ」「リズの気持ち」「青い鳥の気持ち」曲の解釈に懊悩しながら、折しもリアルでは三年生が直面する「進路の選択」なども重なって、希美とみぞれの関係にも変化が生じていく。。。


山田監督の作風まさに真骨頂だと思うのですが、セリフ外の情報が極めて多いです。
背景絵、音、光の表現、表情だけではないキャラの仕草(足や手の動き、目線)、目にうつる全てのことは メッセージになってます。あ!耳もね。観客に緊張を強いる作品たる所以です。
わかりやすくてわかりづらい、解釈を観客に委ねてる分捉え方に幅があり、皆さんの感想読むのが楽しみでもあったりします。
少なくても進級、進学と環境が変わることを控えた局面、今までの関係がそのまま続くことはないことが見えてきたところでの各々の選択と決定に至るまでの葛藤など、時間が有限だからこそ輝きを増す青春というものに抵抗がなければ視聴をお勧めいたします。



以下、鑑賞済みの方向けのネタバレ感想です。

■合意できないことに合意する

{netabare}「disjoint」から「joint」までを見てね、冒頭と終幕の1カットに挟んだ監督からのメッセージはわかりやすいです。
「disjoint」数学用語で〝互いに素”互いに共通の公約数を持たない数の関係性を言うようです。一方「joint」は繋ぎ目や接合部とイメージしやすい単語ですね。
二人で一組、優子先輩もその境地には達することができなかった希美とみぞれの間に横たわる強い関係(とTV視聴組の私は思ってた)が実は混じることない別物で、って展開でした。

これ希美ファンにはしんどいかもしれない。2期1話宇治川のほとりで花火を見ながら高坂麗奈から弱さを理由にいったん逃げたと評された希美の弱い部分、みぞれの才能への嫉妬がはっきりと出てるから。ブランクはやはり大きかったのか?元々の才能の限界なのか?再入部前、〝韃靼人の踊り”の音色に誘われてやって来た黄前久美子に「フルートが好き」と笑顔を見せた希美を私たちは知っています。

一方みぞれファンにもしんどいかもしれない。せっかく2期4話で取り戻したみぞれの情緒がまた不安定になるから。みぞれの病的なまでの希美への依存は強いままだった。希美に拒否されることが何より怖い。希美がいれば羽ばたける。希美のために吹いた関西大会みぞれの〝三日月の舞”エモいオーボエソロ、舞台袖で見守る希美の1カットとともにホッと胸を撫で下ろしたことが昨日のことのようです。

自分にとって大事なものが、希美は『フルートが大好きな自分』、みぞれは『希美と一緒にいられる自分』。演奏にベクトルが向いてる希美と、その人そのものに向いてるみぞれで齟齬が生じてくるのは避けられませんでした。お互い求めるものが微妙にズレていて、その行き違いが切ないったらありゃしないのです。

それが顕著に表れたのがハグしてお互い好きなものを言い合うシーン。観た人には説明不要かもですが、、、
あそこでみぞれが「希美のフルートが好き!」って言えてれば万事解決、オールオッケーだったんでしょうがそうならない。お互いを大切に想っていてもどうしても相手が求めてるものを供給できないもどかしさ。全編通してそんな感じです。{/netabare}

{netabare}じゃあ「joint」とは何ぞや?
融合して一つになった、、、ってことではないですね。またそれがいいんだと思います。
あくまで繋ぎ目や接合部。お互い交わらないことを自覚して、それでもお互いを大切に想う気持ちを大事にしようという一点で繋がった二人。関係性の変化をこれまた冒頭とラストの二人の描写で表現しています。詳しくは言わんよ。

お互いが大事に思ってたはずの『フルートが大好きな自分』『希美と一緒にいられる自分』を相手に求めることを諦め、それでも

『自分を大事に思ってくれているみぞれ』(希美視点)
『自分のオーボエを好きと言ってくれている希美』(みぞれ視点)

を大事にしようと相手を思っての気持ちへと深化した(そう思いたい)、まさに希美とみぞれのためにある物語でした。諦めをともなって痛みに向き合って二人とも大人の階段を一段登りましたね。{/netabare}

{netabare}当初二人に対して感じた“しんどい”思いは、エンドロールが流れる頃には観る側にほろ苦さを残しながらも、今まで以上に希美とみぞれへの愛着を持たせる前奏となったのです。{/netabare}


主役を演じた種﨑敦美さん東山奈央さん。間や空気感を大事にする作品で、行間や吐息ひとつに想いを込める演技は素晴らしかった。特に希美役東山さんは本作のMVP、明るさとカラ元気、嫉妬と焦り、強がりと繊細さをないまぜたとても人間くさい希美を好演されてたと思います。
本職ではない本田望結ちゃんも及第点です。童話パートでの二役、本職でない女優を配置することで本編ストーリーと別物感が出てました。ジ○リっぽかったですね。あえて別物感を出しているけれど“少女と青い鳥”“希美とみぞれ”の心情はリンクはしていてっていう仕掛けは良かったです。{netabare}監督は望結ちゃんに演じ分けをしないよう指導してたとのこと、物語の筋を考えれば納得です。{/netabare}



「切ない真実に、あなたは涙する——」

本作のキャッチコピーです。ネタバレ畳んだとこの骨子に沿うと、{netabare}童話パートと現実パートの意味合い、麗奈と久美子の煽り、楽器に太陽光を反射させ合うシーン、進路で悩む二人、新山先生とみぞれ、みぞれのオーボエソロ、その他諸々、{/netabare}劇中一つ一つのシーンが二人の心情をよく表す計算しつくされた丁寧な仕事のように私には映りました。
劇場版にありがちな尺不足、説明不足を感じなかった、という点をもって高く評価するものであります。



■蛇足

女子ウケ良さそう

萌え萌えしてないし、思春期女子の考えそうなことと大きく脱線してない気もするので、敷居は低いです。女性監督というのも大きいかもしれません。

話のとっかかりとして、お薦め作品聞かれた時の回答として、使えるシーンはありそうです(無責任)。
相手が視聴済の場合には、男性諸氏は希美とみぞれの行動や言動についての共感、非共感を聞いてみると面白いと思いますよ。リアル寄りのキャラ設定ということで、一歩引いての客観的な感想というよりも自身の経験や考えを反映したものを披露してくれそうです。

意中の子だったらなおさら。
相手の考え方が良く分かる試金石になるやもです。その結果、「あ、これ脈ないや」との切ない真実に、あなたは涙するかもしれませんが、それもまた一興です。



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2019.02.22追記
《配点を修正》

投稿 : 2024/05/11
♥ : 93

75.6 3 小説原作アニメランキング3位
君の膵臓をたべたい(アニメ映画)

2018年9月1日
★★★★☆ 3.8 (302)
1448人が棚に入れました
それは「僕」のクラスメイトである山内桜良 (やまうち さくら) が綴っていた、秘密の日記帳であり、彼女の余命が膵臓の病気により、もう長くはないことが記されていた。

「僕」はその本の中身を興味本位で覗いたことにより、身内以外で唯一桜良の病気を知る人物となる。

「山内桜良の死ぬ前にやりたいこと」に付き合うことにより、「僕」、桜良という正反対の性格の2人が、互いに自分の欠けている部分を持っているそれぞれに憧れを持ち、次第に心を通わせていきながら成長していく。そして「僕」は「人を認める人間に、人を愛する人間になること」を決意。桜良は恋人や友人を必要としない僕が初めて関わり合いを持ちたい人に選んでくれたことにより「初めて私自身として必要されている、初めて私が、たった一人の私であると思えた」と感じていく。

声優・キャラクター
高杉真宙、Lynn、藤井ゆきよ、内田雄馬、福島潤、田中敦子、三木眞一郎、和久井映見
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

桜の木になろう

住野よる原作、ベストセラー青春小説。

共感は出来るがあまり評価は出来ない。
理性と感性の評価で大きく揺れています。

優れた表現力、ポップなキャラクター、
美しい風景と少しづつ積み上げていく物語に、
中盤までは省略があるにしろ感じることも多い。

偶然にもイエール大学講師シェリーケーガン著、
「DEATH 死とは何か」を読了し、
そのせいでひどく考えさせられることになった。
{netabare}死とは、そもそも悪いものなのか、
死とは、どうしてどんなふうに悪いのか、
死とは、いつの時点で私にとって悪いのか。{/netabare}

我々の寿命が60歳と仮定した時に、
10年長く生きたかったと泣くことは、
誰しも容易に、想像出来ますが、
10年早く生まれたかったとは泣かない。
その違いは何か?同じ10年であるのに。
{netabare}答えは至ってシンプルなものでしょう、
積み重ねた記憶や経験があってこそ尊いのだ。
それこそが主題であったのでしょうか。{/netabare}

{netabare}名前のない僕と未来のない少女の、{/netabare}
大人になろうとしているあなたへ贈る、
桜咲き誇る、美しい春の日の物語。

記録よりも記憶に残るアニメとなりました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 53
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

青春感動をアウトレットで

原作未読 実写版未視聴


これ小説けっこう有名ですよね。
それに実写もアニメも劇場版が作られるなど肝いりじゃないですか。その割にはイマイチでした。

身体の悪い部位があったらそこと同じ場所食っときゃ直るというお祖母ちゃんの知恵袋ネタはご存知の方多いのではないでしょうか。曰く「肝臓の調子悪いからレバー食っとこ」。
それを地でいく話となるのかどうか、余命短い相方との切ないラブストーリーを想像していた事前の私です。ベタ大好きなのでばっちこーい!と受け入れ態勢完璧でしたがこれまで視聴の優先順位は上がってきませんでした。地上波でやるってのを見つけたのがきっかけとなります。


 ベタだけどベタになりきれてない


長年培われてきた感動のお作法は世の中に存在します。そこをずらしての意外性を演出するにあたり事前の種まきがなされてないので感情を揺さぶるには至りません。そこ説明してくれりゃ感情移入できるのに!ってやつです。
悪目立ちしたのがキャラクターの行動/言動の根っこにある動機。これが良くわからない。取り急ぎダメ出しするよりも先に良きメッセージについて触れます。


■良きメッセージ

・{netabare}近づいたのは対極にいるからだと桜良(CV:Lynn)は言った。桜良逝去後に春樹(CV:高杉真宙)がとった行動は意趣返し。自分とは真逆の桜良に近づくための真逆の行動をする勇気。こうして故人の遺志は受け継がれていく。{/netabare}

・{netabare}心が通じ合えた、必要とされたことを実感してから旅立てたこと。死因よりも死んだ時期がこの物語には重要だったのだと思う。{/netabare}

生きる意味や執着。繋がりで得られるもの。ベタだったり変化球だったりそんなに外してるとは思いませんでした。ただしいかんせん説明不足です。雰囲気で乗りきれればOK!そんな作風でした。



■悪しきエトセトラ

くどいようですが種まきがありません。らしきものは見つかっても「それ理由になるかなぁ?」と首をひねるものが散見されます。ヒロインが主人公に惹かれる理由。主人公の突き放したヒロインへの態度の理由。恭子(CV:藤井ゆきよ)が頑なに春樹を拒む理由などけっこうコアなとこがダメ。
特に桜良と春樹。この主軸が惹かれあう妥当性を見い出せなかったのは致命的かも。「なんで二人一緒にいるの?」。しっくりくるこないで作品評価の別れるポイントになると思います。

{netabare}※春樹がモテ要素皆無なキャラに見えたので、なおさら桜良が彼に近づく理由に強いものが欲しかったのもあります。逆もしかりで、非モテコミュ障がかわいい子に言い寄られて舞い上がりましたとしか見えないのが極めて残念でした。{/netabare}

それと声優にも一言もの申したい。根本的に内罰的な主人公は抑揚のない中で感情を表わす難しい演技を求められます。この難役を演じるには声のお芝居経験に乏しい俳優では荷が重かったでしょう。俳優と声優の組み合わせでしたらむしろ男女を逆にしたほうが実力差が隠れてよかったと思われます。




画は綺麗で劇伴/主題歌は普通。
難病ヒロインと内向男子の別離の話ってそれこそ野球で打線を組めるくらい巷に溢れてるベタな題材で、こちらもいつもどうりに踊りたかったのですがそれができなくて残念です。
なお、著名原作がそれなりに骨子まとまってそうなので大崩れしてるようには感じません。推奨はしない佳作。そんなところです。



※余談

■お里が知れる

膵臓である意味/必要性はそれほどなかったと思います。音感とイメージの薄さで白羽の矢があたった臓器。それ以上でも以下でもない。
どういうことかというと、まずは“(仮題)君の○○をたべたい”というフレーズを思い浮かべてみてください。この○○に入るのが肝臓や心臓だと生々しいというかスプラッター要素マシマシですよね。大腸に至ってはウ○コをイメージしてしまうかも。なんの機能かわからなければわからない方がいい。
それで膵臓(スイゾウ)。脾臓(ヒゾウ)なんかも候補に挙がりますがそれだと音のリズムが悪くなっちゃう。というわけで膵臓。
これでも充分センセーショナルです。カニバリズムかなんかだと勘違いするしそれを狙っているのです。出自を見れば無理はありません。

{netabare}小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿{/netabare}

タイトルで目を引かないと埋もれますからね。「タイトルはアレだけど感動作だよん」話題になってた時耳にしたのはこんな声でした。
そして私あまり好きじゃないんですよねこの商法。作品の中身と乖離するから。WEBニュースの見出し勝負みたいになっちゃいます。今しがた漱石が『こころ』なんてタイトルにしてなろうに投稿したら埋没しちゃうのでしょう。弊害はしっかり出てました。

{netabare}膵臓の病気持ちでアルコール摂取はねーだろ{/netabare}

チュートリアル福田が発症した病気は「急性膵炎」。原因は酒です。入院したらしたで膵液が分泌されるとまずいので食事を経口摂取せず点滴のみ。後がないからってのも理解できなくもないですけど、実際に病名は明かされてなかったけど激痛必至だったんと違いますかね。

少なくともアニメ映画だけでみれば、タイトルのインパクト重視で中身を練られてないように見えました。本末転倒とはこのことです。




■声優Lynnのお仕事

これこそ余談です。私の深夜アニメの入口は『風夏』。ヒロインはLynnさんが演じられてました。今日びの声優さんは綺麗だな~と時の流れを感じた次第です。
そんで風夏のネタバレ込みでふわっと思ったのが以下、

{netabare}自分死んだ時の通夜に彼氏が来てくれないの一緒じゃん、と。{/netabare}

{netabare}アニメ『風夏』はアニオリで別の世界線。原作漫画との対比でした。では♪{/netabare}



視聴時期:2020年5月 地上波

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2020.05.09 初稿
2020.12.10 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 51
ネタバレ

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

美しく、楽しく、せつない映画

全編とても美しい映画でした。
そして、楽しく、切ない映画です。
そしてクライマックスでは、涙腺が崩壊してしまいます。

物語は、根暗な主人公の志賀春樹が、山内桜良が書いた日記(共病文庫)を拾うところから始まります。
春樹は持ち主を調べるために日記の最初の部分を見てしまいます。
だが、そこには読んではいけないことが書いてありました。

日記の持ち主の山内桜良は、日記を読んだ春樹が平然としていることに驚くとともに興味を持ちました。
それ以降、桜良は春樹と仲良くなります。そして、春樹と沢山の思い出をつくります。 {netabare}  
限りある命を精一杯に謳歌するために… 
{/netabare}

春樹は、最初はいやいやながらも桜良と行動を共にします。
だが、いつの間にか桜良と一緒にいる時間を楽しむようになりました。

ヒロインの桜良がとっても明るく元気で、魅力的です。
{netabare}
彼女は、春樹ならば、病気のことを気にしないで話してくれる と、思っていました。
でも、それは間違いでした。
春樹も普通の高校生です。
いつの間にか彼は、桜良のことが好きになってしまいます。
根暗で人を愛することができなかった春樹が、桜良の影響で、いつの間にか人を愛することができるようになったのです。
{/netabare}

最後に春樹が桜良の母親の前で、「もう泣いても良いですか」といって号泣したとき、
思わず私も涙が出てきました。

とても美しく楽しく切ない映画です。
ぜひみてください。

最後に、
エンディングが始まっても、決して席を立たないでください。
エンディングの後で、もう少しだけ物語がありますので。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 51

74.2 4 小説原作アニメランキング4位
夜は短し歩けよ乙女(アニメ映画)

2017年4月7日
★★★★☆ 3.8 (334)
1736人が棚に入れました
クラブの後輩である“黒髪の乙女”に思いを寄せる“先輩”は今日も『なるべく彼女の目にとまる』ようナカメ作戦を実行する。
春の先斗町、夏の古本市、秋の学園祭、そして冬が訪れて…。
京都の街で、個性豊かな仲間達が次々に巻き起こす珍事件に巻き込まれながら、季節はどんどん過ぎてゆく。
外堀を埋めることしかできない“先輩”の思いはどこへ向かうのか!?

声優・キャラクター
星野源、花澤香菜、神谷浩史、秋山竜次、中井和哉、甲斐田裕子、吉野裕行、新妻聖子、諏訪部順一、悠木碧、檜山修之、山路和弘、麦人
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

ロマンチックエンジン

湯浅政明監督作品、原作森見登美彦。

黒髪の乙女を語り部として、
四季折々の京都の夜を舞台に、
四つの季節の物語を一夜の出来事のように語る。
春の結婚式二次会、夏の古本市、
秋の学園祭、そして冬に流行した風邪の猛威。

意味不明でありながらどこか意味ありげ、
孤独を拗らせた若者の妄想に夜明けは来るのか!?
先輩と黒髪の乙女の恋愛ファンタジーです。

四畳半神話大系から、
娯楽性だけを抜き出したような、
奇抜ではありますがポップな作品です。
詭弁踊りがクスッと笑える、
星野源、花澤香菜の好演が光ります。

{netabare}運命の赤い糸に導かれて人を繋ぐ「ご縁」、
人は孤独ではなくどこかで誰かと繋がっている。{/netabare}
そんな簡単なことが時々わからなくなる。
人生はとても短いのですから、
そんなメッセージがここにあるのかな。

素敵な一夜を乙女は颯爽と歩く、
それは爽快で心躍る青春の日々だ。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 66
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

初湯浅作品はこれで御座いました

森見登美彦って誰? そこからスタートです。


『映像研には手を出すな!』を放送するNHKでの畳みかけかなにか。湯浅正明監督の過去作品『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』を正月二本立てで地上波放送です。

昨年今頃は今敏作品にずっぷりだった私。ちょうど一年前にこの道を通った夜。今年は湯浅監督です。
お薦めいただく『ピンポン』『四畳半神話大系』はまだだったりします。つまり本作が初湯浅作品。


タイトルから想像するに

「命短し 恋せよ乙女」
「書を捨てよ 町へ出よう」

あたりの大正期ないし昭和初期の浪漫な匂いがします。
それは遠からず近からず。雰囲気重視な作風に思えました。

星野源さん演じる冴えない大学生。“黒髪の乙女”との偶然の出会いを装うことウン十回かウン百回。いつか添い遂げるその日まで。
そういえばずっと夜の出来事でした。夢か現か大学生の妄想か。ファンタジーな演出と現実っぽいのが入り乱れ、場面も良く変わる。足元ではあまり見たことのない独特な映像。

わたし混乱しとります。例えるならこんな感じ↓

・お作法知らずに吉本の新喜劇を鑑賞する
・とりあえずの現代アート美術館で途方に暮れる
・ストーリー求める心持ちでインド映画観てしまう

心のコンディションで受け取り様が変わってきますね、こりゃ。
正直よくわからなかったしつまらなかったです。実際よりも長く感じる不毛な時間。


第20回山本周五郎賞受賞作品。第137回直木賞候補。2007年本屋大賞第2位。
これ原作の受賞歴。そしてアニメーションもいろいろ賞を獲っております。

勲章がっつりぶら下げた制服を着た軍人さん目の前にしても、魅力を感じないといいますか。
どういう態度を取ったらいいか困る感じに似てます。実際そんな場面人生でなかったけど。。。


思うに、活字が合うのだろうなというのは伝わってきます。夢か現か妄想かの幻惑は活字で読者の想像を掻き立てるのに具合が良さそうな仕様。原作を読んで想像したとことの答え合わせが面白そうです。
メタもふんだんにありそうでしたしきちんと鑑賞すればってとこでしょうか。偽電気ブランばりのアルコール飲みながら鑑賞した自分が悪いのさw



■李白風邪か~

{netabare}李白といえば杜甫ですね。
なるほど、杜甫=徒歩の言葉遊びでしょうか。よって黒髪の乙女は夜通し歩く。なんちゃって。{/netabare}



偽電気ブランにはそそられる。それだけ。



視聴時期:2020年2月 

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2020.02.21 初稿
2020.09.19 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 46
ネタバレ

こた さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

芸術的要素多め

原作未読。
正直言うとストーリーあまり入ってこなかった…。
それほどに展開が目まぐるしかったと言おうか。
90分と映画としては短い時間に集約され過ぎているせいか、少しばかし無理があったと思える。
ユーモアがふんだんに使われていて、演出もところどころ恥ずかしくなるくらいにはっちゃけていたのはまあ良しと…(^^;
あと四畳半神話大系で御馴染みのキャラがいたのも嬉しい要素。

因みに原作読んでる友人と観に行きました。本当は3部とかになっていてそれぞれ別な話?なのを一夜の出来事にまとめたのだとか。

アジカンが手掛けるEDは耳に心地いい。カッコいい。

あとアニメファンは心配なところ、キャストに俳優・芸人の起用。
そこは{netabare}星野源さん、ロバート秋山さん、演技はとても良かったと思う。キャラもハマってた。{/netabare}

黒髪の乙女……
黒髪の美少女とも違う響きと奥ゆかしさ。
黒髪の萌えキャラは数多いけれど、黒髪の乙女というフレーズが似合うのはこの作品(と四畳半)。

追記。
なんか違和感が否めなかったので、タイトルの「感性」→「要素」に訂正してみました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 44

75.8 5 小説原作アニメランキング5位
ペンギン・ハイウェイ(アニメ映画)

2018年8月17日
★★★★☆ 3.8 (260)
1208人が棚に入れました
小学四年生の少年アオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録する。利口な上、毎日努力を怠らず勉強するので、大人になったときにどれほど偉くなっているか、見当もつかない。そんなアオヤマ君は、通っている歯科医院の“お姉さん”と仲がよく、“お姉さん”はオトナびた賢いアオヤマ君を、ちょっと生意気なところも含めかわいがっていた。ある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが出現する。海のない住宅地に突如現れ、そして消えたペンギンたちは、いったいどこから来てどこへ行ったのか…。アオヤマ君はペンギンの謎を解くべく研究をはじめるのだった。そしてアオヤマ君は、“お姉さん”が投げたコーラの缶が、ペンギンに変身するのを目撃する。ポカンとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」“お姉さん”とペンギンの関係とは? そしてこの謎は解けるのか?少し不思議で、一生忘れない、あの夏の物語。

声優・キャラクター
北香那、蒼井優、釘宮理恵、潘めぐみ、福井美樹、能登麻美子、久野美咲、西島秀俊、竹中直人
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

私たちはどこから来て、どこへ行くのか

スタジオコロリド制作。

石田祐康監督、待望の初長編作品。
ひと夏の不思議な体験を鮮やかに描く、
心弾む思春期ファンタジーの良品であろう。

主人公アオヤマ君は研究熱心で、
世界の不思議に興味津々、
日々学んでは、知の探究に励む。
少年特有の好奇心と冒険心も旺盛で、
気になるお姉さんのおっぱいにも、
多大な関心を持つどこにでもいる少年だ。
{netabare}突然、広場の空き地に現れたペンギンたち。
忘れる事の出来ない、ひと夏が始まる。{/netabare}

少年の視点で描かれる数多くの演出、
世界や異性に対する戸惑いと妄想こそ、
どこにでもある思春期の原風景なのだ。
ペンギンハイウェイとは何であろうか!?
{netabare}それは人が歩む、進化への道であり、
思春期から大人になるための道標だ。{/netabare}

ここでは2つの世界が衝突している。
{netabare}折りたたまれ亀裂が生じた世界の果てと、
成長の儀礼として、少年が歩む内的世界だ。{/netabare}
どこか村上春樹「海辺のカフカ」を想像する。

移ろいゆく記憶を、夏という季節に見出す。
それは美しい等式、解けない夏の方程式、
どれだけの冒険をして大人になるのだろう。

私たちは幾つになっても、道の途中なのだ。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 63

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

子供の時に図書館で読んだらはまりそう

<2019/6/9初投稿>

WOWOWで昨夜放送されてたの観たので、蒼井優結婚記念レビューです。

小4の理系の男の子を主人公としたジュブナイル・フィクション。

サイエンスのない方のファンタジーなので現象に理屈を求めても意味のない作りになっています。

大人が見てもそれなりに楽しめると思いますが、小学高学年〜思春期ぐらいまでに「小説」で読むと真価が発揮されるタイプではないでしょうか。

小学校の図書室によく置いてあるちょっと不思議な話。
それを森見登美彦テイストに大人でも楽しめるようにしました、という印象。

例えば「花田少年史」とかは、あれも子供を主人公としたファンタジーですが、視点は「読者」「視聴者」。
つまり読んだ人目線で作ってある。

本作はあくまで小4の主人公アオヤマくん目線。
なので年齢が近い人の方が楽しめるんじゃないかと。

そして、映像は素晴らしかったのですが、何が起きてるのかを映像と台詞だけで説明するのは少しむずかしかったのかな、という気も。

小説で、文字で、「アオヤマくん」になりきりながら、起きていることを理解し、その映像を想像して、読み進めていくと楽しさが広がっていく気がしました。

以下、感想。
・アオヤマくんのおっぱい好きが異常。
このまま偏執的な巨乳好きに成長しそうで将来が心配。
ところで巨乳好きな男の嫁さんや彼女って意外とそうでもないこと多いんですよね。

・お姉さんが魔性っぽい。
蒼井優だからかな。
それはそうと蒼井優さん、魅力的な演技でしたねえ。

・アオヤマくんの子供部屋。
あんなん最高だろ。子供としては。恵まれてる子供だ。

・アオヤマくんのおかあさん。
能登さんなんだけど、能登さんの子供ってうらやましいと真剣に思ってしまった 笑。
看病のシーンとかさ。
確か、割と最近出産されたんですよね。
生まれてきたお子さんがうらやましい(←自分でもおかしなこと書いてるって自覚はある)

・監督さんが「フミコの告白」の人。
へえ。そうなんだ。という感じ。
まだ作風は掴みきれてません。

以上です。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 40

えりりん908 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

愉快で不思議で、ちょっと切ないファンタジー

これからの季節にお勧めです!

科学的探究心が旺盛な、小学校4年生のアオヤマ君のひと夏の活躍を描く、
ミステリーのような、冒険譚のような、楽しくて、ちょっと不思議な味わいのお話しです。
いろいろ辻褄合わなくても全然かまいませんw そういうお話しじゃないって思うから。

小学生のくせに、大人ぶっていて、でも大人の女性の胸に興味津々で、
それを恥ずかしいと自覚するまでにも至ってない、二次性徴を迎える前で
恋とか愛とかも、当然知りもしないアオヤマ君。
潔い、というより、まだ性に目覚めていないから、
素直に「おっぱいが好きだ」って堂々と主張して悪びれもしない。
なんだかそんなところ、すごく可愛い!
きっと2~3年もしたら、自分の「お姉さん研究ノート」が、
死ぬほど恥ずかしくなって、
黒歴史として封印しちゃうんだろうなあww
ああ可愛い(^^)
わたしショタとか全然趣味じゃないですけど、
こんな、無自覚に背伸びして小理屈こねくり回してる子供がいたら!!
可愛くて堪らなくていじりまくりそう!

お姉さんもなんだかとっても素敵です。
奇麗なだけじゃなくて、キュートでファニーな、
それでいてちょっと謎もある、少年の目にも大人過ぎない、
ちょうど魅力的に映える感じで。
あと重要なファクターの、
お姉さんの胸の描き方が、いい意味でアニメっぽくなくて、
グロテスクな巨乳とかじゃなくて、ちゃんと普通に、女性の胸らしく、自然で綺麗な線で描かれているのがとってもナチュラルでいいって思います。

それと、サブヒロインになるのかな?
ハマモトさんもすごく、可愛いんです。
プライドは高いんだけど、子供らしく真っ直ぐに生きてて、
年相応に賢いのがとっても好感度高いです。

お話し自体は、ジブリっぽいっていうか、
トトロとポニョを足して二で割ったような感じで、
夏休みにファミリーで楽しめるように作られていて、
森見さんの原作なのに嫌味な感じが全然しなくて。
監督も、教えられるまで気付かなかったけど、
あの「フミコの告白」作った石田祐康さんなんですね。
初の長編商業作品で、ここまで出来るってすごい!

アニメ上級者の方にはちょっと物足りないかもですけど、
そんな方以外の、普通の人なら、
誰が観ても楽しめるんじゃないでしょうか。

アニメ初級者の私は、すごく楽しめました(*^▽^*)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 40

77.6 6 小説原作アニメランキング6位
若おかみは小学生!(アニメ映画)

2018年9月21日
★★★★☆ 4.0 (158)
729人が棚に入れました
小学校6年生のおっこ(関 織子)は交通事故で両親を亡くし、おばあちゃんが経営する旅館<春の屋>に引き取られることになった。

旅館に昔から住み着いているユーレイのウリ坊や、美陽、小鬼の鈴鬼、ライバル旅館の跡取り・真月らと知り合ったおっこは、ひょんなことから春の屋の若おかみ修行を始めることになった。

慣れない若おかみ修行に、毎日失敗の連続…。

「あたしって、全然しっかりしてないじゃん。」

落ち込むおっこだったが、不思議な仲間たちに助けられ、一生懸命に接客していくうちに、少しずつ成長していくのだった!

声優・キャラクター
小林星蘭、松田颯水、水樹奈々、一龍斎春水、一龍斎貞友、てらそままさき、小桜エツコ
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

児童文学とみなすか否か

原作未読


まずは最初にして最大の分岐

Q タイトル見て「おーティーンの女の子や、ぐひひ」と思う

YES→たぶん期待に沿えません
NO →細腕繁盛記、たまに小学生、です


監督はジブリの一軍、そして脚本は吉田玲子氏。作品パッケージにはこの文字

 “文部科学省選定作品/少年・家庭向き”

少女はどうすんのさ?ということは置いときます。元は児童文学だそうです。
コロナの空き枠なのか地上波でやるとのことだったので、と強い動機はなく突撃しました。

小学生が女将をやる理由について少しだけ。
関織子(CV小林星蘭)あだ名は“おっこ”。父母の実家が旅館をやってまして祖母が現役女将として切り盛りしてますよ、というところから。ひょんなことで父母を亡くし祖母に引き取られ旅館のお手伝いを始めます。そんな冒頭。


94分。やや短めです。
全体の雰囲気は90年代の大作じゃないほうのジブリ。ラインナップから『紅の豚』『もののけ姫』を抜いた『山田くん』みたいな他のやつ。スペクタクルを感じないけどほろっと心が温まる系。
小学生設定なんですがどうなんだろう。教室風景がホントさわりだけ。おっこ、見た目は小学生なんだけど大人びてるとは違うかな。しっかりした素直な子としときます。きっとこんな小学生は滅多に出会えないと思われる逸材でした。

 {netabare}だから小学生っぽさを取り戻したとこはギャップでね{/netabare}

こじんまりとした良作。そんな印象です。
悪い意味でひっかかったのは児童文学にしては…というのを脱却してなかったところ。健闘してるとはいえ小学校の図書室の書架の中からお気に入りはもう見つからないだろうと思います。自分は汚れてしまいました。
わずか94分でお話の辻褄合わんなぁと思うとこしばしば。ここはまあいっかとスルー。
ここでそう考えるかなぁと後半ちょいちょい思ったり。まあそれなりにスルー。

 子供と一緒に観ることができて良かったなぁ

なによりこれでしょうね。ボーナスポイント付与。家族と安心して楽しめるっていうのも個性です。



※ネタバレ所感

■トラウマの種まき

{netabare}対向車線飛び越えてくるトラックが生々しい。良し悪しですなぁこれ。

物語的には◎。後々占い師のお姐さんとのドライブ中にPTSD発動する時のしっかりした伏線になっております。この点は丁寧だと思います。

家族鑑賞には△。親を事故で亡くすことの生々しさは必要なのかちょっと判断しかねますね。{/netabare}



視聴時期:2020年5月

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2020.05.20 初稿
2020.08.15 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 44
ネタバレ

東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

【酷評注意】是々非々 貶してから褒めてみる

☆制作スタッフ
▼原作:青い鳥文庫(講談社)
▼原作者:令丈ヒロ子
▼アニメーション制作:DLE、マッドハウス
▼話数:劇場版94分{netabare}
▼監督:高坂希太郎
・実績
(監督)
『CLOVER』『茄子 アンダルシアの夏』『茄子 スーツケースの渡り鳥』
▼脚本:吉田玲子
・実績
(シリーズ構成/脚本)
『カスミンシリーズ』『マリア様がみてる 』『けいおん!』『ガールズ&パンツァー』『のんのんびよりシリーズ』他多数
▼音楽関係
主題歌:「また明日」
▼CAST(略)
テレビ版に掲載{/netabare}

☆エピローグ
冗談抜きに酷評します。
劇場版のみの方、テレビ版と劇場版、原作既読と劇場版と様々な立場があると思いますが、私はテレビ版視聴済みの立場でレビューをします。
なお、閲覧の際、本レビューでは、本作ファンの方々の気分を害する可能性があることを特記します。

原作未読
テレビ版視聴済

【本文】{netabare}
辛辣なレビューになるから、本作の劇場公開が終了したタイミングで書くことにした。
先にテレビ版をレビューするか迷ったが、圧倒的に出来が良いテレビ版のレビューより、問題の多い劇場版からレビューすることとする。
タイトルの意味はそういう事である。
テレビ版を視聴した者の立場として素朴に「これ、劇場版《製作》する必要があったのか?」である。

テレビ版の後半クールのEDは劇場版のカットシーンで、劇場版鑑賞に来て下さいアピールが見え見えだったことからも、本作はテレビ版既視聴者をメインターゲットにしているのだろう。
ま、それでも内容が伴えばそれで良しだが、あっさりと言えば劇場版はテレビ版のダイジェストで横手さんの脚本を吉田さんが書き直したようなものだ。
それでも宣伝効果で前評判が高く、連休中の公開初日から数日は確かに休みも続き客入りも良かったそうである。
しかし、その後は失速し、興行成績向上のために有名監督や評論家を動員しての鑑賞批評をネット媒体やマスメディアでキャンペーンを張ったのも、一般鑑賞レビューが増えるに従いテレビ版と差異がないことが世間に周知されるとともに、テレビ版と変わらないなら劇場版の鑑賞は別にしなくてもいいな、となりつつある傾向に製作側が危機感を抱いたからだろう。
それを裏付けるかのように、他のサイトではステマ的なレビューすら散見された。
一部の劇場では公開延長があるようだが、マスコミが宣伝するように人気が高いのが理由ではないだろう。
私が鑑賞したシネマで本作は一番小さい劇場割り当てであり、かつ、公開最終日前日にも関わらず、客入りは良く見積もっても6割程度。
子供客で確認したのは1人だけ。
後は私のようなオヤジばかりの『ガルパン』と似たような客層だw
つまり、フェイクニュースを垂れ流してまで興行実績を残すことに必死なのが本作の現実ではなかろうか。

劇場版とテレビ版の大きな相違は、①交通事故のシーンとテレビ版第1話「おっこ」が旅立つカットシーンの追加②「ウリ坊」登場シーンの変更③美陽登場シーンの変更④「おっこ」の両親を殺した加害者運転手家族が「春の屋」へ宿泊したハプニングエピソードの追加⑤神楽の舞子をきっかけに「ウリ坊」「美陽」「鈴鬼」との別れを示唆するシーンの追加⑥両親との回想シーンの追加⑦「ウリ坊」と「みねこ」(祖母)のエピソード追加拡大といったところだ。

【各論】
<物語の批判点>
(1)前述のとおり、テレビ版視聴前提であれば②を除き「美陽」や「鈴鬼」の登場シーンを焼き直して尺を浪費する必要はなかった。そのまま「春の屋」の幽霊として登場させればいいし、テレビ版未視聴者でもさして不思議とは思わないだろう。
(2)②の「ウリ坊」の登場シーン変更だが、おっこが事故にあった瞬間ウリ坊が救出した設定としている。
その後の物語の展開を考えると「ウリ坊」が「おっこ」の両親を殺して、おっこを春の屋へおびき寄せた「悪霊」ようにも見えてしまう、かなり、疑問を抱いた設定変更だった。
なお、⑦は「ウリ坊」が「春の屋」の地縛霊となった経緯のエピソードであるが、さして尺も浪費しておらず「みねこ」のCVに花澤さんを起用し、ファン層の拡大という意味からも設定すること自体はストーリーの大局上、毒にはならない。
(3)③だが、妹を庇う姉としての登場が劇場版、「秋好旅館」に居場所が無くて「春の屋」に悪戯しに来ていたのがテレビ版、劇場版は「おっこ」と「真月」の出会いと合わせて登場シーンを設定し直しているが、前述のとおり物語に大きな影響を与える準主役の「ウリ坊」と立場が違う「美陽」の登場シーン変更ため態々尺を取る必要はないし「美陽」の境遇を考えるとテレビ版の方が共感する。
寧ろ、劇場版でイメージまで変更する必要はないキャラなのだ。
(4)⑥の演出にも関わらず、両親を失った「おっこ」の子供らしい感情発露の心理描写はテレビ版の方が遥かに丁寧であり上手だった。
劇場版では回想シーンを増やしたにも関わらず、テレビ版より劣ったのは、回想シーンのカット映像と他のエピソードとのジョイントの意味付けが希薄であり、結果、共感に至らなかったこと。
テレビ版のように「おっこ」の心理描写は派手な事故アクションや両親との思い出カット挿入ではなく、独立した尺を取り丁寧に描写をするべきだった。
(5)①の事故シーンだが、作画に関しては迫力があった。
しかし、このシーンの挿入は微妙であり、子供が鑑賞する想定ならショックが強すぎる。
もう少し和らげるか、子供には理解し難くても、続く電車内でハシャグ親子を窓の反射で間接的に眺め、悲しみを堪える「おっこ」の心理描写のメタファーと事故を繋げるメタファー演出と後の④のエピソードとオーバーラップするように繋げた方が作品の「品」が断然向上する。
(6)「真月」のキャラを立て過ぎている。
テレビ版でもやり過ぎではないかと思っていたが、劇場版ではよいよ…?(苦笑)である。
テレビ版では小学生らしい描写があったから救いもあったが、劇場版では彼女の部屋の描写を含め小学生が「哲学」に達観するなど、ほとんどギャグに等しい設定だ。
このため同じクラスメートの「おっこ」とのギャップが更に激しくなり興醒めした。
更にキャラデザがテレビ版以上にデフォルメされたプリキュア状態で見るに耐えなかった。
(7)「真月」もだが「美陽」のデフォルメも激しかった。ただでさえ本作の子供キャラは子供の視聴を前提としたデフォルメ系である。
確かに劇場版では背景美術に拘っただけあって素晴らしい出来だ。
しかし、逆に子供キャラがデフォルメされ過ぎていて、折角の素晴らしい背景に対し著しく浮いてしまうのだ。
『ゆるキャン△』のレビューでも述べたが、作品とは総合的な観点で評価されるものである。
キャラデザの性質を考慮せずに、背景に力を入れても徒労ではないのか。
自動車の精密描写も含めて作品の基軸ではなく傍系に拘っても、単に演出の自己満足にしか見えないのだ。
(8)テレビ版と同じエピソードを劇場版でやる必要性を感じない。
特に「あかね」と「おっこ」のやり取りはテレビ版第2話横手脚本、劇場版吉田脚本と明確に分かれるシーン。
だが「あかね」に説教する「おっこ」に説得力があるのは断然テレビ版である。
何故かというと、テレビ版では「あかね」への説教の以前に両親を亡くした「おっこ」の子供らしい素直な悲しみの感情表現が伏線として丁寧に描写されていたが、劇場版ではこの部分が圧縮され「おっこ」は両親を亡くしたという事実のみで、父親が健在で母親を亡くした「あかね」に説教を垂れただけの説得力の片鱗もない描写になってしまっている。
演出や脚本が「(4)」で述べたような「おっこ」の心理描写は既に済んでいるとしたのか、はたまた、テレビ版を視聴したのであれば深い説明が要らないと判断したのか定かではないが、その程度の描写なら「あかね」のエピソードの意味はなく不要であったし、尺の無駄遣いだ。
(9)これは批判というよりも疑問に近い。
⑤のシーンは本作の「完」を連想させるのだが、劇場版では曖昧な形「暗喩」で表現されている。
テレビ版の最終回を視聴した限りでは2期もあり得る終わり方であり、ネタバレになりかねない⑤のシーンは本当に必要だったのか?
テレビ版の2期はありません!劇場版でシメます!という製作ポリシーがない限り、やってはいけないシーンであったのではなかろうか。
喉にモノがつかえたような後味の悪さである。
(10)「グローリー」とのエピソードも焼き直しでありほとんど必要がない。これも「グローリー」の紹介程度にして、既に「おっこ」とは信頼関係が構築されている前提で劇場版のストーリーを立てれば良かったのだ。
このエピソードを冗長化させたのは、背景に拘った動機と同様に「ポルシェ911タルガ4」の3Dモデリングを観客に自慢したかった演出の自己満足にしか見えないし、本当にポルシェのステマ?wかと思うほどこれだけは良く出来ていた。(ステマをしなくても売れる有名なスポーツカーだけどねw)
本エピソードは物語がもうダメだと考えていた頃なので、ポルシェばかり見入っていた。
欲しくても買えないからねw
それにしても、本作のスタッフは相当カーマニアなのだろう。
現代では非現実的なT型フォードや初代クラウンが現役で花の湯温泉街を走り回っている。
「おっこ」の学校も木造校舎で現代では非現実的なのだが、クラッシックカーも遊び心のあるファンタジーとして許容は出来る。
しかし、ポルシェをあれだけ精密なモデリングとするなら、フォードやクラウンもポルシェと同等の精密モデリングとするべきであり、中途半端である。

以下はどうでもいいことだが、和の風景に合わせたオープンカーなら、マツダロードスターや絶版ではあるがホンダS2000など、国産の名車をプロップとして採用するのもアリではないかな。
「グローリー」のブルジョア生活を強調するのなら、ホンダNSX(23,700,000円)レクサスLFA(37,500,000円)という手もあるし、本作は子供が対象なのだから、我が国の工業技術の結晶である国産高級スポーツカーを採用し、将来の日本を担う子供達にモノ作りの夢を託す配慮があっても良かったと思う。
因みに、本作に登場するポルシェ911タルガ4だが、外観で分かる範囲で推測してみると、LEDヘッドライトが標準装備であるからグレードはGTSで21,540,000円。
ブレーキキャリパーがイエローであるから、オプションのセラミックコンポジットブレーキ(1,545,000円)がプラスされる。

<物語で評価される点>
残念ながら本当に少ない。
(1)ポルシェに乗って買い物に出かけた「おっこ」が事故の記憶を思い出しPTSD症状を起こした点。
これが、批判点(5)で述べた事故のメタファーだが、折角こういう名演出があるのに作品全体の軸として繋げきれていないのである。
(2)④はテレビ版にはないエピソード。
加害者一家が春の屋に泊まったシンクロニシティと、両親を殺した加害者を知った「おっこ」が両親との死別を乗り越えて花の湯での新たなスタートを誓い、明るく前向きに生きようとしていた矢先の実に残酷なシーンだ。
「おっこ」の複雑に絡み合った、いたたまれない心理描写は見事であった。
劇場版では実質吉田オリジナル脚本はここだけだが、流石、吉田脚本だと感じたシーンである。

(★は一個0.5点)
物語
★★★★★☆☆☆☆☆2.5
(各論のとおり。)
キャラ
★★★★★★☆☆☆☆3.0
(デフォルメ減点有り。)
音楽
★★★★★★☆☆☆☆3.0
(劇伴はまあまあだが、劇場のサウンドシステムを活かしているとは言い難い。主題歌は記憶に残らなかった。)
作画
★★★★★★☆☆☆☆3.5
(各論のとおり。)
声優
★★★★★★★★☆☆4.0
(テレビ版と一部キャスト変更があるが、大局には影響を与えていない。)

【雑感】
本作は原作も素晴らしく、また、テレビ版は良い出来で一定の評価ができるのに何故こうなったのか不思議でたまらない。
問題の核心はテレビ版を焼き直したプロットにあるのだろうか。
その責任が何処に起因するかと推測するとき、DLEやマッドハウスをはじめ製作委員会が制作に相当関与したと思われる。
おそらく、製作委員会で企画したプロットありきで、コンテと脚本を仕上げた結果が本作ではなかろうか。
つまり、監督も脚本もほとんど関与出来ない次元でプロットが決定している可能性が高いのだ。
原作ではテレビ版以外のエピソードもあるはずだが、テレビ版のエピソードを多用したところをみると、芸術的判断よりも政治的判断が濃い印象を受ける。
国内のファン向けであれば、テレビ版のエピソードよりも劇場版オリジナルの④のエピソードを軸に、テレビ版では触れられていない「おっこ」と両親の平和で心温まる日常、つまり前日譚にも尺をしっかり取り、天国と地獄の如く不幸のどん底に落ちた「おっこ」をより強調することと、若おかみ修業を通して悲嘆から立ち直り成長していく「おっこ」の成長物語とすることが出来たし、脚本吉田さんの起用はこのようなオリジナル性があってこそ生きるのだ。
純粋に芸術的視点で作品を作り込むのなら、テレビ版に左右されず、一からプロットを考えるはずであるが、本作はそういう構成にはなってはおらず、国内のファン向けではなく「アヌシー国際アニメーション映画祭出品」審査員向け作品と考えるのが妥当かもしれない。
審査員は恐らくテレビ版を観てはいないだろうから、相応の評価は受けるだろう。
本作ファンの一人として、可能であれば、マッドハウスのエースいしづか監督を起用し、吉田さんとコンビで作品を作り直してもらいたい気持ちだ。

高坂監督はマッドハウスで活躍し、ジブリ作品も参加経験が多く『風立ちぬ』の作監も務めた有名なアニメーターではあるが、業界キャリアに対して監督経験はそう多くないし、テレビ版のマッドハウス増原監督やDLEの谷東監督とは違いフリーだ。
この状況で劇場版の監督を依頼された経緯を考えてみると、公開されている事情の他、本作はアヌシー祭出品に向けて、カンヌ経験があり、ジブリ作品を手がけていることから国際的に名の通る監督の起用が政治的に必要であったのだろう。

なお、公式の高坂監督コメントに、本作はマルクスの世界観【下部構造が上部構造を規定する】で表現したとのコメントがあるが、本作を鑑賞した限り、テレビ版のシーン流用で独自性発揮の制約もあるし、また、演説でもない限り94分程度の映像では弁証法的唯物論のフル展開は厳しいだろう。
穿った見方をすれば小学生が労働する様は『蟹工船』的とも言えるが、本作はプロレタリアの悲惨さを強調し階級闘争を求めたものではないことは皆様御承知のとおり。
また、実際、本作はそのような組み立てにもなっていない。
ゆえに、誰かが本作を高く評価したといっても、それはコミュニズムへの感化とは無縁の出来事であると、あえて釘を刺しておく。
ま、あのコメントは当然好ましくはないが、監督本人の思想がマルキシズムに立脚しているという程度の意味だろうから。{/netabare}

率直に本音を述べれば、本作を鑑賞した後の気分は詐欺にあったときと似たような感覚だった。
テレビ版を視聴済みなら、あえて1,500円を支払い鑑賞に行く必要は感じられないし、いずれ「Amazonプライム・ビデオ」にエントリーされるだろうから、それを待って視聴しても良いと思う。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 43
ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

TV版とは一味違う良さ

原作未読。TV版は視聴済み。
TV版のダイジェスト版程度のつもりで視聴したら、良い意味で裏切られたという・・・(笑)。
途中までは、確かにTV版のダイジェストだったけど、後半のエピソードはTV版のアフターストーリー。

主人公のおっことウリ坊、美陽、鈴鬼の繋がりの深さはTV版を視聴していないと、チョット分かりづらいかな?
本作では、かなりあっさりと描かれていたからね。

{netabare}おっこの両親が亡くなった交通事故の加害者運転手家族が「春の屋」へ宿泊したくだり。
圧巻でしたね。
ここに繋がるんだって・・・。{/netabare}

TV版のレビューでも書いたけど、タイトルだけで敬遠するのは、もったいないレベルの作品です。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 30

74.2 7 小説原作アニメランキング7位
虐殺器官(アニメ映画)

2017年2月3日
★★★★☆ 3.8 (251)
1845人が棚に入れました
世界の紛争地を飛び回る米軍特殊部隊クラヴィス・シェパード大尉に、謎のアメリカ人の追跡ミッションが下る。その男、「ジョン・ポール」は、紛争の予兆と共に現れ、その紛争が泥沼化するとともに忽然と姿を消してしまう。かつて有能な言語学者だった彼が、その地で何をしていたのか。アメリカ政府の追求をかわし、彼が企てていたこととは…?

声優・キャラクター
中村悠一、三上哲、石川界人、梶裕貴、小林沙苗、大塚明夫、櫻井孝宏
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

ジェノサイドの匂い

伊藤計劃原作、PROJECT第3弾。
ゼロ年代SFベスト国内篇第1位。

核の炎がサラエボの街を焼いた。
テロの脅威に対抗すべく先進国では、
科学技術により監視の網の目が張り巡らされ、
一方発展途上国では内戦と民族対立により、
無数のジェノサイドが頻発していた。

虐殺の陰に常に存在が囁かれるジョンポール。
ジョンポールとは何者か!?
{netabare}アメリカ国防総省で言語を研究していた彼は、
ある日を境に公然と姿を消した。{/netabare}
頻発する内戦と彼との因果関係は!?
内戦の混乱の中、主人公クラヴィスを中心に、
アメリカ軍によるジョンポール捕獲作戦が開始される。

伊藤PROJECTでは最も理解が容易い作品です。
ジョンポールの目的は明確でした。
{netabare}ホロコーストの歴史を学び、
ルワンダやカンボジアの虐殺を学び、
彼は人が持つ古い機能を見つけたのです。
人には虐殺を司る「器官」が存在し、
その器官を刺激し活性化させる「文法」があると。
言葉が人間の行動にいかに影響を及ぼすのか。
良心を捻じ曲げテロリストの芽を育てる。{/netabare}

戦場の少年兵を平易に殺戮するクラヴィスは、
感情を最適化された現代人の象徴でしょうか。
極めて理性的で空虚な人物たちの物語。

皆様にもぜひ触れて頂きたい。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 50
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ジェノサイドの正当化

または
虐殺をジャスティファ~イ

いつもながら原作は未読。本編もレビューも不穏なタイトルですね。文字通り不穏なやつです。
少し前に遇々『バビロン』という迷作に触れ、その作品談義で頻出してたタイトルがこれでした。

・34歳の若さで早逝した原作者伊藤計劃
・原作『虐殺器官』その評価の高さ
・ノイタミナムービーなるブランド

これまで知らなかったことを知ることができました。これだけでもお得感あるかしら。
早逝したこともあり数少ない輩出作品をアニメ化する試み「Project Itoh」三部作の締めを飾った作品。2017年2月公開のR15+指定。115分です。

あらすじ:サラエボで起きた各爆弾テロを機に世界各国でテロが激化。アメリカを筆頭にテロに対抗する中で先進国では沈静化の方向。後進国では内戦や虐殺が頻発。といったIFストーリー。
後進国で指導層に接触し対立を煽り、内戦や民族対立による虐殺などを引き起こす黒幕として暗躍すると見做されたとある人物を暗殺せよ!
その実行役である特殊部隊員クラヴィス・シェパード大尉が主役の物語です。


戦闘行為にまつわるグロ表現っぷりでR15+指定となってます。
詳細に触れると、タイトル“虐殺”から想像しそうなスプラッター的おどろおどろしさが主成分のグロではありません。あくまで銃撃戦で斃れる敵兵の描写がそれらしいだけ。想像と違ってライト風味かもよってことは指摘しておきます。程度や具合は18禁ではなくR15指定ということでお察しくだされ。
年齢制限が入るのはクリエイターがやりたい表現をできていることの裏返しな部分もあって、本作のミリタリ描写はアニメの中でも超一級の部類に入ると思われます。オペレーションの合理性や演出の迫力などモノが違う感じがします。
『劇場版PSYCHO-PASS』のミリタリ描写との既視感を覚えましたが、プロデューサーがご一緒ということで納得。ノイタミナで辣腕をふるった山本幸治さんです。それでノイタミナムービーということもあるのね。いろいろ繋がってきました。


 世界観 ◎ ※後述
 軍描写 ◎


軍事作戦がベースにあるお話なので根っこが変だと台無しになっちゃいますがその心配はありません。
あとは通しでの物語の面白みであったり、黒幕ジョン・ポールの目的が腑に落ちるものかだったり、やはりというか作品から受け取るメッセージへの共感の有無が気になります。


 物語 △と○の間


タイトル回収を済ませ、大国のエゴも匂わせる国家の繋がりや人間の持つ原罪のようなものへの言及。おそらくこうだろうと想像できる結末もアリといえばアリ。ただしいかんせんよくわからない。

 {netabare}雰囲気だけかっこいい?{/netabare}

劇場版なので視聴者に想像させる手法を否定しないけど軽い匂わせ止まり。肉を焼く匂いで白飯を食べるような感覚。もう少し踏み込んで欲しかったです。
ところがふとしたとこで原作のネタバレを聞き、

 物語・改 ○と◎の間

となりました。

※原作ネタバレ
{netabare}ジョン・ポールの遺志を継いだクラヴィス・シェパードがアメリカに戻り、“虐殺の文法”を駆使してアメリカを内戦に導いていく。{/netabare}

{netabare}小国の犠牲の上にある大国の繁栄について自問自答が描かれてたとのことです。南北問題ですね。{/netabare}


“人工筋肉”なるガジェットが途上国の子供たちによる搾取的な労働に支えられている、とフェアトレード運動に通底するネタが挟まれてましたが、そんなネタが最終的に繋がっていくところまで提示しないのはもったいなかったですね。
とは言っても雰囲気や見た目を馬鹿にするなかれ、です。映画を観てる時間だけその世界に浸れる幸せを実感できる劇場版作品でしょう。その点で買い!優秀な娯楽作品です。




※後述…の世界観◎について

■United Nations

“国際連合”とは意図的な誤訳です。“連合国”が正しくその国連憲章には日本を敵国と見做した条項が残存していることをご存知でしょうか。たかが条文、実態は違うとも言われますが、この敵国条項を除こうと日本が働きかけてもしっかりChinaは潰しにきてくれたりするのが現実です。
永らく“平和のための国際組織”と喧伝され教科書でもそう習ってきた私たちですが、非常に矛盾を孕んでいるのです。直近の事例だと国連の専門機関WHOの武漢肺炎をめぐるグダグダっぷりでしょうか。

 金だけ出して口は出さないでね

日本に求められてる役割がこれ。よって個人的にはあまりこの組織をよく思ってません。そんなとこへ作品の冒頭↓


{netabare}「寛容と多文化主義がこの国の美徳だったのに」と今は民族浄化に勤しむ途上国の指導者がベートーベンの『月光』をバックにシェパード大尉に独白します。
何故自国民に手をかけたのかわからない。黒幕ジョン・ポールの存在を匂わせる一幕です。その前段。

シェパード:
「その国民を殺して回る。あんたの言う政府とやらはどの国連加盟国からも承認されていない」
えらい人:
「国連?我々の文化を土足で踏みにじり、自決権を鼻で笑う最悪の帝国主義者どもが…」{/netabare}


主人公へのシンパシーはもちろんのこと小国の哀しみなんかをこの指導者に見ることができます。きちんと序盤から下地を作っているのです。



■1974年と1975年

原作者伊藤計劃氏とプロデューサー山本幸治氏の生年です。けっこう作品に影響しているような感じ。
だいたいにして小学生時代のバイブル。ジャッキー・チェンの『プロジェクトA』が原題『A計劃』。これホント漢字なの?と伊藤少年の脳裏に焼き付いてたことは想像に難くありません。
多感な中高生時代で起こった世の中の出来事と暇な大学生時代に触れたであろう作品群。この年代特有の感覚が作品に反映されているとふんでます。

15歳前後で「ベルリンの壁崩壊」「ソ連崩壊」を経験。なんとなく大きなうねりが起こっていることを感じつつ、チャウシェスクの銃殺遺体のインパクトだけ覚えていた思春期。
中学の社会科では、“コルホーズ”“ソフホーズ”などを例にとり計画経済を好意的に捉えていた教科書で学んでました。なんせまだ崩壊前だったので。

その後の東欧民主化で泡を食ったのが欧州の火薬庫バルカン半島。ユーゴ紛争が停戦合意したのが彼らが社会に出る頃合い2000年頃でした。
思索に励むことが可能な大学生時代には小林よしのりの『戦争論』が大ヒット。United Nations(連合国)が構築したWWⅡ後の枠組みに疑義を呈した意欲作と言えましょう。

ドイツおよびチェコを舞台としたサスペンス作品『MONSTER』(浦沢直樹)
ユーゴ紛争で故郷を破壊した者への復讐の物語『PEACE MAKER』

90年代後半に発表された東欧を舞台にした名作群もきっと学生時代に目にしてるんでしょうね。
思えば「ソ連崩壊」とはもの凄く大きな出来事で共産主義の敗北に象徴される第二次世界大戦後の枠組みが崩れたことを意味してました。余波は覇権国アメリカにもおよび歪みの極地が“9.11”にと。

そういえば『MONSTER』のヨハンもニナも1975年生まれの設定です。
朝日・岩波的な言説がインテリの条件だった時代から潮目が変わったのはこのへんの年代からかしら。


国際紛争やミリタリ要素の強い作品を描く時にチェコやユーゴの東欧を舞台にしたくなる気持ちがわからんでもない世代。
お話にしやすい国際情勢の煽りを若かりし頃に浴びちゃったこともあるし、中東やジャングルでの紛争よりも身近に感じることのできるエリアでした。今は情勢も落ち着いてますので実際訪れてみるのをおすすめしますよ。異世界ものにありそうな古き良きヨーロッパの風景は中欧・東欧に残ってます。



視聴時期:2020年3月

-----
2020.12.09追記

5月が初稿の本レビュー。半年経過して“武漢肺炎”の呼称は聞かなくなりましたね。“新型コロナ”で定着した感があります。こうして振り返って気づくことはままあります。
定点観測することで変化に気づく。現在の断面だけ見て踊らされることのなんと多いことか…


2020.05.18 初稿
2020.12.09 追記

投稿 : 2024/05/11
♥ : 35
ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

たぶん原作既読の方が楽しめると思う

Project Itoh3部作最後の一つ
伊藤計劃のデビュー作であり
ハーモニーの世界を作り出した元凶の事件を扱った作品なので
時系列順に考えても世に出た順番を考えても
ハーモニーよりも先にこちらを見るべきです

当然製作サイドとしてもそのつもりで考えていたのですが
マングローブの倒産によって
公開が一年以上遅れることとなり
結果的に順番が逆転してしまいました

ハーモニーと虐殺器官を比べると
SF作品としての完成度はハーモニーの方が上だと思います
しかしハーモニーはそもそも映像化が非常に難しいテーマな上に
映像化する旨味がほとんどない作品でした
虐殺器官はいわば社会派SFガンアクションなので
映像化と非常に相性が良かったと思います

近未来的な様々なガジェットは
伊藤計劃の緻密な筆致により
映像なしでも十分に楽しめるものでしたが
映像化によりさらに実感しやすくなったと思いますし
戦闘シーンも緊迫感があって良かったです

とはいえインドでのシーンで{netabare}
薬物投与で感情制御した殺人マシーンとして
貧弱な武装で練度の低い少年兵たちを
淡々と撃ち殺していくのは{/netabare}
R15+のレイティングだとしてもやりすぎ感があります
それが本作のテーマの中核に近い部分にあり
本当に必要なシーンであるのは間違いないのですが
それでもあまり観ていて気持ちのいいものではないですね

しかし、そこをぼかしてしまったら
映像化する意味がなくなってしまうのも確かです
この作品は近未来を舞台にしたSF作品ですが
扱っている内容はそのまま我々が生きている現実世界が直面している問題です

経済格差から起こる内戦
金と権力のために戦争に身を投じる傭兵
消耗品として扱われる少年兵たち
それら地球の裏側の悲劇を対岸の火事として目を背け
平和を享受し安穏と生きる人々

作品はあくまで近未来の空想の社会を描いたものですが
そのテーマははっきりと我々の生きる現実世界を捉えています
こういった現代社会に対するメッセージ性の高いSF作品というのは
この虐殺器官以降一大ムーブメントとなり
様々な作品が生まれました
同じノイタミナのPSYCHO-PASSシリーズもその一つです
SFというジャンル自体に閉塞感が漂い
SFは死んだなどと言われていた時代に
一つの風穴を開けたのが伊藤計劃だったのだと思います

計劃が亡くなってから
シリアでは激しい内戦がおこり
世界中でテロの嵐が吹き荒れ
アメリカ最優先主義のアメリカ政権が誕生
現在はまさに計劃の描いた社会の歪みが
そのまま具現化したような世界情勢です
我々はサラエボが核の炎に包まれる前に
社会のあるべき姿を模索しなければならないのかもしれません

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

以下映画版のみならず小説版も絡んだネタバレあり

映像化にあたり尺の都合かいろいろと端折ったり改変されています

序盤の導入に関しては非常にうまくやったなという印象
{netabare}原作では最初の任務から帰ってチェコに行くまでの間に
アレックスは自殺したことになっています
カトリックにとって自殺は罪
敬虔なカトリックであるアレックスが自殺するというのは
それだけ過酷な環境であることと
感情制御技術が完璧でないことのあらわれではあったのですが
そもそも映画だとカトリックの教義さえわからずに見る人もいるでしょうし
あまり映像化して面白い演出でもありません
映画では現地語を唯一理解できたアレックスが
感情制御のおかげで虐殺の文法に過剰に反応し暴走した
というオリジナル展開に変更
非常にうまく機能していました{/netabare}

逆にうまくいっていなかったのはラストシーン
{netabare}クラヴィスは最後に
虐殺の文法を英語にして公聴会で使用し
アメリカを内戦の渦に巻き込み
ハーモニーで語られる「大災禍」の引き金を引いて終わります

母の死、同僚の自殺、インドでの敗戦、ルツィアの死
だんだん精神的に追い詰められていく過程が
一人称視点でじっくり描かれている原作版でさえ
最後のオチは予測はできたものの
ルツィアが死んだあたりから
それまでの緻密で過剰なほどの説明から一転し
急に展開が雑になった印象を受けました

実際原作を読んでいない友人たちは
「ただ内部告発したのか、文法でテロを誘発したのか
曖昧なラストに見えた」
「クラヴィスが文法を使う理由が見当たらなかった」
などと言っています

たしかに映画版のクラヴィスは最初から最後まで
基本的に冷静でタフな人間に描かれています
ところどころ独白は混じるものの
3人称視点に近い映画版のクラヴィスからは
祖国に向けて文法を使うほどの闇が見えませんね

限られた地域だけの偽りの平和の中でぬくぬくと生きている人々が
最後にはそのツケを利子付きで支払うことになるラストが
この作品のメインテーマを考えるうえで
非常に重要なファクターなのは疑いようもありません

ラスト部分の描写はもう少ししっかりしておかないと
原作未読の人からしたら物語そのもののテーマがぼけて
いまいち締まらない印象になってしまっているんじゃないでしょうか?{/netabare}

ハーモニーは正直原作だけで十分という感じでした
こちらは原作を補完する映像作品として非常に質が高かったと思いますが
映画だけを見るという楽しみ方はやはりあまりお勧めできません

映画→原作の順番でもいいのかもしれませんが
映画→原作の後もう一度映画で確認するよりは
原作→映画→原作なら追加でお金もかからないので
私のおすすめは原作→映画の順ということにしておきたいと思います

投稿 : 2024/05/11
♥ : 25

64.2 8 小説原作アニメランキング8位
カラフル-Colorful(アニメ映画)

2010年8月21日
★★★★☆ 3.5 (412)
1772人が棚に入れました
死んだはずの“ぼく”は、プラプラという天使らしき少年から“おめでとうございます。あなたは抽選に当たりました”と話しかけられる。大きな過ちを犯して死んだ魂のため輪廻のサイクルから外れてしまうはずだったが、再挑戦のチャンスが与えられたというのだ。そして、自殺したばかりの中学生“小林真”の体を借りて、自分の犯した罪を思い出すため下界で修行することに。ところが、父は偽善者で、母は不倫中、そして自分をバカにする兄とは絶縁状態という最悪の家庭環境。おまけに学校でも、友だちがひとりもいない上に、秘かに想いを寄せる後輩ひろかが援助交際をしていた事実を知ってしまうなど、まるで救いのない日々だった。そんな中、真の体に収まった“ぼく”は、真っぽくない振る舞いで周囲を困惑させてしまうのだが…。

takumi@ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

簡単そうで実は難しいこと

金木犀の花が満開の日から散っていくまでの短い間、
死んだはずの少年が、中学生の小林真としてもう一度命を与えられ
日々の生活の中で修行をし、あることに気づけるか否かで
生まれ変われることができる、と天使から言い渡されるところから
展開していく物語。

小林真という少年を生きる、そんな修行期間を与えられた彼。
天使から言い渡されたその本当の目的は何なのか?
以前の記憶はないので、戸惑いながらも「小林真」という人間をみつめ、
彼を取り巻く家族やクラスメイトをみつめなおし、
そして一番、気づかなくちゃならないことを見出していく。

ここでひとつ、大切なのは、甦る前の記憶がないという枷のおかげで
客観的に自分をみつめることができる点だと思う。

全体通して流れる、穏やかなピアノの旋律も綺麗だったし
いろんな色を持つ人間と言う生き物の、愚かさ滑稽さの中、
普段当たり前のように思っているさまざまなことへの
ありがたみについても、気づかされる作品だった。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 68
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

人生の追試

原恵一監督作品、サンライズ制作。
原作は森絵都のロングセラー。

前世で大きな過ちを犯し死んだ「ぼく」が、
罪深い魂の償いであるかのように、
自殺したばかりの少年「小林真」の体を借り、
もう1度下界へ戻され人生を再挑戦をする。
自殺した少年の日常を追体験し、
人生を違った角度から見直し始める。

平凡な少年の静かな日常と、
丁寧に書き込まれた美しい街並み。
{netabare}その背景には家庭内の不和や学校でのいじめ、
密かに想いを寄せる少女の援助交際と、
前半は陰鬱とした展開が淡々と描かれます。
少年には絵を描くことだけが救いだったのですが、
未完成の絵を残したまま死を選ぶのです。{/netabare}

小林真の中に入った「ぼく」は、
彼の世界を知り、息苦しい日常を知るにつれ、
青臭くも反発しながら人生の意義を見つけていく。
これは小さな現代版ファウストでしょうか。

生きるということはたくさんの人に支えられ、
知らないうちにたくさんの人の支えになっている。
見方を変えれば世界はこんなにも色で溢れている。

世界を肯定するまでの繊細な物語です。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 47

ato00 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

人生とは普通である。

人間の記憶って怖いものですね。
この作品は2年ぶり2回目の視聴ですが、ラストの記憶が完全に欠落してました。
それだけラストの印象が普通だったと言うことでしょうか。

内容は、何らかの理由で死んだ人間が、少年として人生の追試を受ける話です。
設定に強引さを感じますが、シナリオが巧みなため時間を忘れて視聴しました。

人生とはカラフル。
この訳を考えるうちに、生きる上でもっとも大事なことに気づく筈です。

最後に残念なお知らせです。
声優さんの演技がちょっと・・・普通すぎます。
人生とは普通といえば、それまでですが・・・。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 41

65.5 9 小説原作アニメランキング9位
ブレイブストーリー[BRAVE STORY](アニメ映画)

2006年7月8日
★★★★☆ 3.6 (443)
2623人が棚に入れました
三谷亘(ミタニワタル)は小学5年生。どこにでもいるような、普通の少年だった。ある日、幽霊が出ると噂される"幽霊ビル"で、要御扉(かなめのみとびら)に出会う。そこを潜り抜けると、亘たちが住んでいる現世(うつしよ)とは違う不思議な世界・幻界(ヴィジョン)が広がっていた。数日後、夜中に目が覚めた亘は、気分転換に散歩に出かけたが、たまたま幽霊ビルで隣のクラスの優秀な転校生・芦川美鶴(アシカワミツル)が上級生に痛めつけられている現場に居合わせてしまう。助けようとした亘もまた暴力を振るわれるが、亘によって解放された美鶴は魔術を使って漆黒のバルバローネを呼び出した。そして、上級生に反撃する。最後には、バルバローネは上級生たちを飲み込み、消してしまった。夢としか思えないその光景が亘の心を掴む。そして美鶴は姿を消した。

Baal さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

ここまで変わってしまうのか・・・

宮部みゆき著のファンタジー冒険小説原作の

アニメ映画です。

原作既読の私にとっては内容がなんか違う、

違和感があるみたいな感じで、どうも

その原作のイメージを払拭しきれなかった。

そのせいで原作は数十回は読んだくらい

面白かったのに、映画の方は

そうでもなかった。

それに声優だけでなく俳優の起用など

も変な感じがした。(ジブリに似た感じは

あるのだけれども・・・)

原作既読の私には合わない作品でした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 22

Zel さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.1

こんな運命、間違ってる!

2006年劇場公開作品

三谷亘は小学5年生
どこにでもいるような普通の少年だった
ある日幽霊が出ると噂される"幽霊ビル"で要御扉に出会う
そこを潜り抜けると亘たちが住んでいる現世とは違う不思議な世界が広がっていた

爆発的ヒットした小説がアニメ化された作品
悲惨な現実を変えたくてというのが主人公が異次元に旅立つ理由
その悲惨な現実というのが、父親が不倫して相手の女に子供ができて離婚。母親は子供を巻き込み一家心中未遂を企てる。
というあまりに悲惨というか、ドロドロした理由
個人的にそこが嫌で最初で冷めちゃった感じです
せっかくのファンタジー設定もこれだと興醒めしちゃいます

もうちょっと割り切って観れれば面白いのかも知れませんが(汗)
声優陣も思い切り芸能人で固めてますね
やはり声優はプロにして欲しいです
感情移入できません

投稿 : 2024/05/11
♥ : 14

Daiki@キツネ子 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

これはボクの勇気の話

すっごくひさしぶりです!
このアニメを観たのは^^

自分はこの作品がすっごく大好きです!

自分がまだ小学生低学年のころに何度かみて
そのときちょっと感動したのを覚えています。

主役は小学生のワタル君とミツル君で
ミツル君は少し大人っぽくて違和感があると思う。

このアニメはファンタジー系であんましバトルとかは
ないです。

でも少し迫力があると思う。

このアニメの見所は自分的に後半ですね、
多分だけど感動すると思う

というより感動してほしい!

このアニメは人気がないようで少し残念です
でも理由が原作の話を映画ひとつに詰め過ぎたせいなんですよね
(そんなこと知らずに好きだったんですね・・・自分)

でもどうか暇つぶしにでもいいので
見て欲しいなと思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 13

67.2 10 小説原作アニメランキング10位
マルドゥック・スクランブル 圧縮(アニメ映画)

2010年11月6日
★★★★☆ 3.8 (335)
1804人が棚に入れました
 『天地明察』で2010年本屋大賞に輝いた人気作家・冲方丁の出世作にして2003年日本SF大賞受賞の傑作サイバーパンク小説『マルドゥック・スクランブル』を、原作者自らの脚本でアニメ化する全3部作の映画プロジェクト、その第1弾。特殊な証人保護プログラムによって死の淵から甦った一人の少女娼婦が、不思議なネズミの捜査官と協力し、自分を亡き者にしようとした男の犯罪を暴くべく戦いを挑む姿を描く。声の出演は、ヒロインのバロット役に林原めぐみ、その相棒ウフコックに八嶋智人。マルドゥック市で生きる未成年娼婦、ルーン=バロット。働いていた店が摘発され、行き場を失った彼女は、カジノ経営をする資産家、シェルに拾われる。しかしその後シェルの非情な計画によって、彼女は車ごと爆破されてしまう。業火の中から辛うじて助け出されたバロット。彼女は、マルドゥック市の事件担当官ドクターとウフコックによって、特殊な強化繊維で再構成された人工皮膚を移植され一命を取り留める。これにより特別な能力も手に入れたバロットは、シェルの犯罪を追っていたドクターとウフコックの捜査に協力していくのだが…。

声優・キャラクター
林原めぐみ、八嶋智人、東地宏樹、中井和哉、磯部勉、田中正彦、若本規夫、かないみか、三宅健太、脇知弘

minisaku さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

面白いけど圧倒的に尺が足りてない。 全部見終わった感想です。

特殊な科学技術によって死の淵から甦った娼婦の少女が、不思議なネズミの
捜査官と共に、自分を亡き者にしようとした男の犯罪を追うってお話。

『圧縮』『燃焼』『排気』の全三部作で構成されている物語です。


まず最初に、この作品は全体的に暗めで内容的に重い部分も多いですし、
残虐な殺人行為や性的虐待など、暴力的でエログロな描写なども
結構あるので苦手な人は注意が必要です。



では、注意書きもしたのでココから感想w


かなり見るヒトを選ぶだろうなって作品ですが、なかなか面白かったです。

作品の持つ独特な世界観や雰囲気、綺麗な映像、スピード感あるアクションなど、
惹かれる要素の多い作品でしたが、この作品の一番はやっぱり映像ですね!!

立ち並ぶビルや光を帯びた道路など近未来の街並、楽園での草木や水などの自然風景、
色鮮やかなカジノでの背景などなど、映像だけでも十分引き込まれる位の魅力が
ありました。 特に「楽園」での光と水の描写はすごくキレイ!!

それに、この作品の見所の一つだと思う 戦闘でのアクションシーンなども
とても綺麗で良かったです!!


ただ、かなり自分好みの作品ではあったのですが、ストーリー自体が
面白かったかと言えば、それはまた別の話で...


大筋のストーリーは良いのだけど、展開が速くて元々わかりづらい内容な上に、
描写不足、説明不足が加わって更にわかりにくなってます。
やはり世界観や設定、バロットやボイルドの能力、心理描写などの
説明不足は大きいですね。

それに、人物描写はもっと欲しかった... 一番描かれていたバロットにしても、
それでも足りないって思うし、せっかく魅力的なキャラがいるんだから
もっと掘り下げあっても良かったと思う。
まぁバロットの心情、不安定さや心の弱さなどを、言葉だけじゃなくて
目線の動きや仕草などでも表現してるのは上手いと思うんだけど、
やっぱり足りてない...

あと、ラストは少しあっさりしすぎだったかな... それに加えて最終決戦のBGMが...
BGMがヒドかった。 なんで最後だけ... それ以外は良かったのに...


そんな感じで、ストーリー自体に対しては 物足りなさを結構感じますね。
原因は確実に尺の問題なんだろうけど...


でもまぁ、一部では華麗なアクション、二部では楽園での映像美、三部ではカジノでの
緊張感ある心理戦など、それぞれ見所もあって良かったと思うので、
一概によくなかったとも言えないんですよねw

そう、悪くは無いんですよね、なんとも惜しい作品なんです!!


自分としては、残念だった部分を含んでも、差し引きで「見て良かった」って思えますが、
好みがかなり出ると思うので、人にはあまりオススメは出来ないかな。

ただ、この映画って原作読んだ後に見ると かなり面白いんじゃないかなって
思ったりします。 自分はすごく原作読んで見たくなりましたしねw

というか、おそらく読むと思いますww

投稿 : 2024/05/11
♥ : 29

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

元少女売春婦のサイボーグが犯罪組織と戦う本格SF作品

2010年劇場公開 2011年に完全版が完成した 69分 R18指定

原作脚本 沖方丁 監督 工藤進 製作会社 GoHands

ルーン=パロットCV林原めぐみ
ウフコック・ぺンティーノCV八島智人

ディック風近未来SFアニメの定番設定が見られるが、
作者としてはウイリアム・ギブソン系サイバーバンクをイメージした模様です。
作者の沖方さんは本格SF作家としてデビュー、代表作はこれですが(日本SF大賞受賞)、
最近はラノベ系の創作活動を主としているようです。

相当昔(05年)にゴンゾでアニメ化と言われていたんですが中止、
結果として高レベル劇場作品になったので自分としては嬉しいです。

主人公ルーンは15歳(?)の売春婦で、犯罪組織により分解されかかったところを、
犯罪捜査官のイースターとネズミ型万能兵器ウフコックによって助けられる。

瀕死のルーンは禁止科学によって命を救われ、
電子干渉(スナーク)という能力とサイボーグの肉体となり、
「犯罪組織シェル」を追う者たちの一員となる。

ウフコックはネズミの知能を高めたものらしいが、亜空間に武器を貯蔵したりするちょっとあり得ないテクノロジーの産物。
ルーンのパートナーまたは武器として活躍する。

今回は臓器フェティシスト集団の誘拐屋とのバトルが見せ場となるが、
まるでラブクラフトの怪物のような異様な外観の犯罪者たちが気味良い、
いや、一般的には「気味悪い」になるのかな。

雰囲気のある作画とキャラデザ(やっぱディックっぽい)に、
良い構成のストーリーそしてリアルなバトルと、第一部としては申し分ない出来。
とても楽しめました。
続けて第二部、第三部も視聴意欲が沸きます。
「サイコパス」にも影響を与えたと思える銃器デザインは前田真宏さんです。
SFファンに超お勧め。そうでもない人もぜひ挑戦してみて欲しい逸品。

そして何よりも何よりも EDです!

日本国始まって以来最大の真の歌姫「本田美奈子」様の
「アメイジング・グレイス」日本語版 伴奏新バージョンが流れるんですよ。
涙が溢れました。

三部作ともにEDは本田美奈子です。 

投稿 : 2024/05/11
♥ : 24

ゆうみん さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

それは彼女の選択

あ。。あ。。あわわわわ。。すげぇ
こんなに興奮するアニメははじめてだよ

マルドゥック・スクランブルは日本SF大賞を受賞したSF小説の劇場版アニメ
内容はかなり過激でみんなにおすすめとはいかないかな
苦手な人もいるとおもう
でもおれのなかで最高のアニメ

単語でストーリーを表現してみるなら
サイバーパンク。未来。少女。売春。事件。謎。生きる。死にたい。苦しい。死にたい。愛。決意。選択。裁判。過去。
軽蔑。敵。グログロ。戦い。超人。最強。死にたくない。

こうやってみるとわかりやすく過激な内容だなーっておもう
でもおれはそういうの大好きだからこのアニメにどっぷり溺れましたよ
SFとかアクションとか好きな奴はっこういうどどどかーんとくるのが大好物なのさ

なにかと血みどろドロドロでほんとに見れない人はむりだとおもう。設定もドロドロなのさ
主人公の境遇がこの世の終わりだし
あんなにかわいいのに汚されきって。。。
とことんゲロドロだよ~
でもそのなかでやさしさや愛がかがやいてみえた

おれはこのアニメ最高っていいまくる
けど苦手な人は嫌いだろうね~
このアニメはひどく狂気じみた感があるからね

でもやっぱみんなみてほしいなー

これが一期の感想

感情的なはなしばっかになっちゃったから二期の感想は内容のついてはなせるといいな~

投稿 : 2024/05/11
♥ : 14

65.1 11 小説原作アニメランキング11位
<harmony/>(アニメ映画)

2015年11月13日
★★★★☆ 3.7 (270)
1411人が棚に入れました
優しさと倫理が支配するユートピアで、3人の少女は死を選択した。13年後、死ねなかった少女トァンが、人類の最終局面で目撃したものとは?

声優・キャラクター
沢城みゆき、上田麗奈、洲崎綾、榊原良子、大塚明夫、三木眞一郎、チョー、森田順平
ネタバレ

ato00 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

我思う故に我あり

私のアニメ定義から逸脱した作品。
萌えや笑いやエンターテイメントはありません。
あるのは殺伐と悲惨と微百合です。

近未来SFサスペンスアニメの皮を被った哲学作品と言えるかな。
ハッキリいって難しい。
上映が終わったとたん、あまり瞬きしていないことに気づいた。
目はシバシバ、頭の奥はジーンと痺れる。
とにかく疲れるアニメです。

絵は3Dで美しい。
動きのあるシーンは滑らかで大迫力。
{netabare}しかし、人が死ぬシーンが多い。
しかも、血しぶきがドバっと。
これがまたリアル。
過剰演出気味です。

テーマはわかりにくいですね。
私が思うに、
人の内面の充足感を如何に捉えるか。
生きる価値とは何かを問いかけられているような気がします。
最終的には、明確な結論は告げられず。
後は自分で考えて!的な球が投げられます。
どうキャッチするかは、個人の自由のようです。{/netabare}

声の出演は沢城みゆきさん。
ワイルドな監察官役なので、大抵のことには動じません。
それに主人公のモノローグが多いので、沢城節を堪能できます。
冷静かつ渋い演技をご覧下さい。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 30

米麹米子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

中々に重いお話ですぞ

HTML書式風味?で始まる未来の光景からは
想像つかない程にラストは濃厚。
脳医学ちょっとかじってれば
理解できると思うけれども、別に知らなくても
他に見所は沢山あるので問題無し。

中1の時の自分の思考や言動をなぞっているようでしたよ
ミァハ

思考停止
いわゆる考えるのをやめた☆
ようなちょっと想像するとラストは怖いのですが

憎しみ・恨み・怒りのエネルギーというのは絶大なもので
生きる力に変換できるほどの威力を持っています。
相手を殺すか自分が死ぬかの二択と思われがちなのですが
実は3の道があります。
これがベリーハードモードで
死んだがマシと思えるほどの苦痛

脳みそって良くできていて
失った機能をサポートしてくれる場合もあるのね
シナプスが勝手につながる感じ?
これがミァハの言うところの意識の覚醒だと思うんだけど
痛みも苦痛も意識下で認識してないと
認識してないととるわけ
何も感じない訳でもなく緊急避難的に
なかったことにするか自我を殺して
何も感じないようにもできるわけ。
すごいよね、脳みそ。

葬式があるだけマシというか
健全なのかな
死をまだ身近で感じられる分
そんな事を考えながら見ていたのでした。

マイケル・アリアスとSTUDIO4℃
鉄コンコンビですね。
「Ghost of a smile」
主題歌は EGOIST

意識に思いをはせられる哲学的な一品です
カテゴリーはSFになるんだろうけど。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 23

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

壮大かつ圧倒的なヴィジュアルで魅せるディストピアSF&サイコミステリ・・・だけどあえて言おう、これは二人の女の喧嘩が世界を滅ぼす話

【先に言っておきますがオイラはredjuiceさんの絵をアニメのキャラ原案にすることには『ギルクラ』の頃から反対でした!】


伊藤計劃アニメ映画化三部作の第2弾・・・ですが元々シリーズの完結作として公開される予定でした
(ご周知の通り『虐殺器官』の公開延期に伴って公開が前倒しされました)
と、いうのも原作既読のぽ~か~さんに解説してもらいましたが『虐殺器官』と今作は直接同じ時間軸の延長線上にある作品らしいのです
その為、今作には『虐殺器官』の内容を示唆する「大災渦」という単語が唐突に登場してきます
その他にも今作独特のキーワード、「生命主義」だの「螺旋監察官」だの多くの専門用語が登場します
こういったものの処理が苦手な方にはハッキリ言ってオススメしません
まあ原作未読のオイラが一回観ただけで把握できる内容なので真剣に観れば誰でも理解できると思いますが;


舞台は人体の健康を出生と同時に埋め込んだ装置「WatchMe」によって監視して、そのシステムと連動して必要な薬を自動精製することが出来る「メディケア」の普及によって高度に健康管理がされた未来
WHOの一組織にして、医療管理された未来社会において非常に大きな権限を持つ螺旋監察官の女性、トァンの口から物語は語られます
彼女はとある事情により謹慎を命じられ毛嫌いしていた日本への帰国をする
親友だったキアンと再会し、食事や思い出話をしていたのも束の間、キアンを含めた数千人が世界中でほぼ同時に自殺を図った
螺旋監察官として、キアンの友人として、世界同時多発大量自死事件を単独で追い始めるトァン
しかし彼女は気付いていた
この事件の裏にはかつて自分が陶酔し、自分とキアンに心中を求めていた少女の・・・今は死んだはずのミァハという少女の影を感じていたことを・・・


まず目に付くのディストピアSFというジャンルらしい息苦しい未来社会の姿
東京の街は建物のほとんどが新宿コクーンタワーのような外観をしており、乗り物や道路に至るまで街全体が淡いピンク色に包まれている、という極端に悪趣味な世界として描かれております
これはこれでディストピアSFとして正解なんでしょう、ただ流石にちょっと目が疲れるw
それと螺旋監察官の電脳会議はなんであんなノイズ交じりなんだw
カッコイイと思いつつも、失笑してしまった
それとトゥーンシェードを用いたカットのトァンは【可愛くない(爆)】のに電脳会議中のトァンのモデリングは可愛い感じがしたのは何故なのかw


次にサイコミステリとしての面白み
一緒に自殺を図ったトァン、キアン、ミァハだったが、ミァハだけが死に、その業に耐え切れず日本を離れたトァン
しかし今まさに世界を混沌の渦に貶めようとしているのが、死んだはずのミァハ
自死事件の首謀者から犯行声明が流れるシークエンスでは真っ暗な画面に“VOICE ONLY”の固定テロップだけが映し出され、静まり返った画面から変声機の声だけがゆっくりと顛末を語りだし、やがてドコからともなく池頼広さんの劇伴がすぅっと入ってきて緊張が高まっていく演出に恐怖を感じましたね
今敏監督亡き今、アニメでサイコサスペンスをやってくれるのは凄く嬉しいです


で、原作はどうか存じませんがこの映画としては“カリスマミァハと思春期の少女達の友情”=“百合”=“結果としてレズだったトァン”って解釈に落ち着くんですが、百合っぽいのが良いとか悪いとかって感想をよく目にするんですけど、そんな生優しい映画には観えませんでした
だって犯人を(ミァハの影)追って世界各地を転々としていくトァンの執念の凄まじさたるやイヤハヤなんとも・・・
この映画は女二人が世界人類を巻き添えにしながら喧嘩するっていうひでぇ作品ですよ(笑)


先にも言ったとおり、映像に惹き付けられつつも、その映像こそが最も視聴者にストレスを与える作品でもあります
あまりオススメは出来ません、グロいし
全く個人的には『屍者の帝国』のフライデー萌えみたいな要素は特に無く、純粋にお話が面白かったですね
トァンと同じようにミァハに心酔してしまうか、やっぱこの娘は可愛くないよとドン退くか
或いは怖いものが観たいアナタになら、、、オススメ出来ますよw

投稿 : 2024/05/11
♥ : 23

89.2 12 小説原作アニメランキング12位
魔女の宅急便(アニメ映画)

1989年7月29日
★★★★☆ 4.0 (1592)
11141人が棚に入れました
魔女の娘は13歳になると家を出て、よその町で一年修行するという掟があった。13歳になった魔女の娘・キキは、掟にならい黒猫・ジジと共に港町・コリコに降り立った。パン屋の女主人に気に入られ、店先を借りて宅急便を開業することにしたキキ。そこには新しい生活と喜び、失敗と挫折、人力飛行機に熱中する少年トンボとの出会いが待っていた。

声優・キャラクター
高山みなみ、佐久間レイ、山口勝平、加藤治子、戸田恵子、関弘子、信澤三惠子
ネタバレ

Yulily さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

ジブリの名作。ジブリ美術館日記

タイトル 「宮崎アニメ」

ストーリー知っていても
何度見ても素敵な気持ちになれる。
すごい作品ですね。

上記は2014年4月私が初めてここで書いたレビューです。

閲覧目的で始めたあにこれ。カラーの棚が欲しいためにレビューを書いたのですが初めてThank Youをいただき、レビューを真剣に書いてみようかなと考え直し今に至ります。
私が今ここでレビューを書き、皆さんとお話をしているのは魔女の宅急便のレビューを書いたのがきっかけなんですね!

最近私が作ったランキングの男性キャラ、女性キャラ、曲TOP10全てにジブリが入っています。宮崎作品への特別な思い入れの証拠です。

2015年2月28日にジブリ美術館に久しぶりに行ったのでこれを機会に追記としてレビューを書こうと思います。

「魔女の宅急便」
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです

キャッチコピーであり好きな言葉。キキがパン屋さんのカウンターで店番をしている代表的なポスターに、このキャッチコピーの文字を見るとなぜだか心にしみます。
遠回しではなく、ストレートな言葉だからなのでしょうか

人の心を動かせる言葉の力素晴らしいですね...

サントラを聴くと...
海に浮かんだ街、海の見える街、石畳の街には白い鳥が飛び赤くおっきいリボンで黒いお洋服がよく似合うキキと黒猫ジジのやり取り、好奇心旺盛で空を飛ぶことに憧れているトンボ。パン屋さんのおそのさんと旦那さん、森に住む絵かきの友人
皆が浮かんできます...

「ルージュの伝言」、「やさしさに包まれたなら」大切な歌でいつ聴いても純粋な気持ちに戻れます。

私が海外旅行が趣味になったきっかけもキキが空から見たあの街、
異国の憧れを私もあの時見たからなのかなと思います。

キキは魔女になるための修行を通し色々な人と出会います。
見守ってくれる大人や、友達に囲まれ、大人への階段を上り始めます。
成長していくなか挫折を経験し、そして生きるために本当に大切な事を学ぶのです。
何度見ても飽きず、色褪せない心に残る素晴らしい名作です。
本当に大切な作品です!


三鷹の森ジブリ美術館 2015.2.28日行きました。
レビューではないので閉じます。

{netabare}
今回は魔女の宅急便の部分だけ書きます。三鷹の森の名前だけあり森?にあります。
外のオブジェ以外写真撮影出来ないので目と心にしっかり焼き付けます。
まず受付には大きなトトロがお出迎え可愛いです+.(**´∀`*)♡

入ってすぐの天井には素敵な太陽とキキがホウキで飛んでる絵があり
ステンドグラスになっているジジにも会えます。美術館に沢山あるステンドグラスにはこだわりを感じます。
この日は晴天でした太陽の陽を通したステンドグラスは床にきれいな色をつけていました。
天候や時間によっても見え方が違うのでしょうなんか素敵です..

魔女の宅急便好きな方は館内にあるキキとワンちゃんのステンドグラスの丸い窓を見つけて下さいね♡

一番好きな場所は監督の作業机のある部屋です。スケッチがコルクボードに沢山貼ってあります。
イメージを形にする途中。。なのでしょうか?
見入ってしまいます。

それから背景画が展示している部屋。海の見える街の世界本当に素晴らしい

「麦わらぼうし」というカフェで+.(*’v`*)スイーツをいただきました♡
ラテと一緒にグラノーラ入りのモカケーキ♪店内も可愛い♪ちょとした驚きもあるんですよ♡
ヒントは窓です♪

ジブリの映画で見たことがあるような建物、ジブリの世界感が漂うここはやっぱり特別な場所です。
まるでファンタジーの世界に紛れ込んだみたいな気分です。
この空間にいて感じとれた大切なもの...
それは私の宝物ですね....
{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 76

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

いつのまにか少女は

宮崎駿監督作品、原作角野栄子。

魔女の血を受け継ぐ13歳の少女キキは、
古いしきたりに従い町へと旅立つ。
母の箒にまたがり父のラジオを柄に提げて。
親元を離れて見知らぬ町での生活が始まる。

北ヨーロッパをモデルとしたコリコの町で、
空飛ぶ魔法を活かして魔女の宅急便を開業する。
女性の社会進出と自分探しが時代背景としてある、
80年代が生んだ珠玉の名作。

当初は若手の活躍の場として企画され、
一時は片渕須直監督案もあったそうです。
ユーミンの「ルージュの伝言」に乗せ、
夜空を舞い、町へと旅立つOPは、
おぼつかない飛行ではありますが、
これから始まる新生活への希望に満ち溢れ、
楽しくて爽快で素晴らしい名シーンであります。

草も花も風に身を任せ、
広大な白い雲を背景に鳥と語らう。
物語の終盤、キキに幼い面影はもうない。
挫折を経験し大きくなるのでしょう。

これは自立への旅。
素敵な物語ですね、元気をくれます。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 72
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ジブリの中でも、個人的には、1位、2位

[文量→小盛り・内容→雑談系]

【総括】
内容は、あにこれにいる人なら90%以上が知ってると思うんで、別に書かなくても良いっすよね(笑)

個人的には、「もののけ姫」「紅の豚」と並んで、ジブリトップクラスに好きな作品です。ゆったり流れる時間、空気感、風、色んなものに癒されます。

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
再放送で何度も高視聴率をとることでも有名ですね。私は小説やエッセイなんかもよく読みますが、(川端康成の小説や、さくらももこさんのエッセイなんてまさにそうですが)何度も読み返す本って、ストーリーが面白いだけでなく、文章自体が面白いんですよね。日本語のリズム感が気持ちいいというか。

魔女の宅急便もそんな感じです。ストーリーはもちろん全部知ってるんだけど、あの空気感に浸りたくて、毎回観てる気がします。地中海性気候的な心地よさというか、自分がまだ子供だった時のくすぐったい感じというか、そんなんに浸れるんですよね。
{/netabare}

【余談 ~ 文科省の破壊力w ~】
{netabare}
魔女の宅急便の実写が出たとき、文部科学省がポスターを出したんですね。それは、アニメ版のキキがパン屋のカウンターで頬づえをついてるシーンで、とても素敵なポスターでした。でも、絵の下に、

「学ぼう、働くことの意義。進めよう、キャリア教育」

というキャッチコピーが載っていました。

ん? そんなアニメだっけ? なんか、たった一言で名作アニメの世界観をぶち壊す文部科学省は、流石だなと思いました(笑)
{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 44

78.3 13 小説原作アニメランキング13位
ジョゼと虎と魚たち(アニメ映画)

2020年12月25日
★★★★☆ 4.0 (185)
762人が棚に入れました
趣味の絵と本と想像の中で、自分の世界を生きるジョゼ。幼いころから車椅子の彼女は、ある日、危うく坂道で転げ落ちそうになったところを、大学生の恒夫に助けられる。海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れをいつかその目で見るという夢を追いかけながら、バイトに明け暮れる勤労学生。そんな恒夫にジョゼとふたりで暮らす祖母・チヅは、あるバイトを持ち掛ける。それはジョゼの注文を聞いて、彼女の相手をすること。しかしひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、恒夫もジョゼに我慢することなく真っすぐにぶつかっていく。そんな中で見え隠れするそれぞれの心の内と、縮まっていくふたりの心の距離。その触れ合いの中で、ジョゼは意を決して夢見ていた外の世界へ恒夫と共に飛び出すことを決めるが……。

声優・キャラクター
中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

恋の浮力、青い世界

田辺聖子、短編恋愛小説。

趣味の絵と本に囲まれ、
想像の世界を生きるジョゼ。
幼い頃から障がいを持つ彼女は、
危うく坂道で転げ落ちそうになり、
通り掛かった大学生の恒夫に助けられる。
夢を追う二人の人生が交差する。

原作からも大きく脚色され、
セクシャルな要素は描かれていないが、
アニメ表現としてはこれで良いのでしょう。

車椅子生活を送るジョゼは、
自己防衛のために高飛車な態度をとる。
他者との接触には恐怖感が募るのである。
恒夫にも悪態を付き困惑させる。
{netabare}好きな時に、好きな場所に行きたい。
絵と本に夢中になり外の世界を夢見ている。
彼女が描く絵が全てを物語っている。{/netabare}

ジョゼの時間は止まっているのだと思う。
{netabare}いくつかの事件を通じ彼との距離は近づき、{/netabare}
様々な人と出会い、触れ合い知る新しい自分。

路面電車は、大阪のローカル線だ。
そこには今でも暮らしが息づく軌道がある。
雪の中の車椅子の轍、彼女の痕跡。
{netabare}季節は廻り、彼女は何を得たのであろうか。{/netabare}

この先、幸せでありますように。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 44

でこぽん さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

勇気という名の翼を胸に広げて未来へ飛び立とう

心温まる素晴らしい映画でした。
この映画を教えてくださったあにこれの皆さまに感謝します。

映画タイトルの『虎』は恐怖の象徴、『魚たち』は安らぎの象徴。

ジョゼは半身不随の歩けない女の子。
外に出るときはいつも車椅子。
しかし、彼女の祖母は「外は危ない」とジョゼに言い、なかなか外に出してもらえません。
それでも外に出たい。まだ見ぬ世界を見てみたいとジョゼは願っていました。
ジョゼの願いは、誰もが持っているごく普通の願いです。


主人公の鈴川恒夫(すずかわつねお)は大学生。
彼はクラリオンエンゼルの集団を海中で見ることを夢見ており、
そのためにメキシコ留学を目指し、勉強とアルバイトに明け暮れていました。

そんな二人が偶然にも出会います。
恒夫はジョゼの背中を押してくれます。まだ見ぬ世界を見せるためにフォローしてくれます。
砂浜のある海岸、公園の並木道、クレープ屋さん、図書館、…etc
誰もが普通に見ることができる光景ですが、ジョゼにとっては、どれもこれもが新鮮でした。

でも、ある出来事が起こり、それから…、今度は恒夫が夢を見失います。
ジョゼは恒夫を励ますために…あることをします。
それはとても心が暖まることでした。


ジョゼは障がい者です。
ですが障がい者だから特別ということではなく、
誰でも勇気をもって歩みださねばならないときがあります。
そんなときに友達が背中を押してくれたり励ましてくれたりすると、勇気がもらえます。

勇気という名の翼を胸に広げて未来へ飛び立ちましょう。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 40
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

心のバリアを穿つ物

原作小説は未読。実写映画版も未見。サガンも未体験。
鑑賞時は予備知識ほぼゼロで挑みました。

【物語 4.5点】
繊細。

原作よりは明るい方向でのシナリオ改変。
ヒロイン・ジョゼの車椅子設定も障がい者の生き辛さより、
人間社会全体における生き辛さの表現の一つとして。

との事前情報は耳にしていて、
車椅子がぞんざいに扱われたりして興醒めしないだろうか?
などの懸念を私は抱いていましたが、他の方の好評を信じて行ってみたら杞憂でした。
ありがとうございました♪


原作刊行当時の昭和→現代の大阪が舞台となり、
バリアフリーや行政支援など身体・生活面の障壁撤廃策は充実したけど、
最低限の暮らしは保障されるのだから夢だの恋だの自己実現は諦めよ。
といった形で浮き彫りになった心の壁や、障がいの有無以前の人間としての甘えや諦め。
障がい者だけでなく健常者にもある諸々を乗り越えるには?
という主題が{netabare}恒夫のメキシコ留学やジョゼに絵の才能を与える{/netabare}など
突破口となり得る夢の追加設定も交えて、丁寧な描写で伝わって来ます。

(因みに本作では“障がい者”という言葉は一度も出て来ません。
“健常者”なら一回だけ強烈に繰り出されますが。)

新しい日常の一コマかな?と思しきダイジェストで披露された小ネタが、
後々、回収されるなど伏線芸も細かい。

普遍的な青春物として目を懲らして観る価値がある。


【作画 5.0点】
アニメーション制作・ボンズ

実写とアニメの中間を追求。

背景美術もリアル志向ながら全部描いて圧が強くなりすぎないよう情報量を調整。
フォトリアルにありがちなしつこさが本作は少なく見易いです。

loundraw氏のイメージボードを下敷きにしたヤマ場の背景の美しさは圧巻。
月並みですが{netabare}ジョゼと恒夫の波打ち際{/netabare}は本当に綺麗です♪

鍵となる絵や絵本の素材提供には、プロの絵本作家を起用。
生き辛さや言い訳で、絶やしてはいけない夢や芸術があることを視覚的に証明。
{netabare}あの絵本の虎さん動物園以上の迫力w{/netabare}


人物作画も台詞に表れない、或いは言葉の裏に隠した心情を良く拾う。
最初に、恒夫がジョゼ宅に上がると決まった時、ジョゼの後ろ姿がピクッと反応した瞬間、
私はこれは!とガチ鑑賞モードに切り替わりました。いい“先制ジャブ”頂きましたw


【キャラ 4.5点】
ヒロインのジョゼ。嫉妬などの心情が明快な、どこにでもいる普通のツンデレですw
ジョゼは2020年アニメ映画、私の最萌キャラです。萌えましょうw

そんなジョゼと恒夫の間に、入って来るアニオリキャラの舞。
恒夫に伝えまいとする分り辛い恋心(まぁ、隼人や鑑賞者にはバレバレですがw)
ジョゼの障がい故であっても、舞の一般的な乙女心故であっても、
想いを堰き止める青春の心の壁は共通であることを強調する好材料となる。
{netabare}ジョゼVS舞の無差別級・修羅場舌戦お見事でした。二人は強敵(とも)ですw{/netabare}

アニオリキャラ・その2・隼人。
女好きのチャラ男でも、いざという時はやる典型。
{netabare}恒夫を呼吸させる{/netabare}好アシストはシビれました。

あと、祖母に存在感のあるアニメ映画に外れはないと思います。


【声優 4.5点】
ジョゼ&恒夫。メイン二人は俳優陣。

が、キャスティングもまた実写とアニメの中間領域の開拓精神から、
声優、俳優幅広く検討した結果。
ジョゼ役の清原 果耶さん起用にしても、
大阪府出身で方言をカバーしつつ、実写&アニメ両要素の演技ができる
という勝算があったから。

重要なのは“ちゃんとした声優”か否かではなく、
結局スタッフが熱意を持ってオーダーできるか否かだと改めて痛感する好例。


脇の声優陣も舞役の宮本 侑芽さんが
表情と一致しない台詞など台本の裏を読む好演。
花奈役のLynnさんもサガン好きの“同志”来館に色めき立つ積極的な図書館司書を熱演。


意外性はジョゼ宅に居座る野良猫・諭吉役の河西 健吾さん。
『3月のライオン』主演声優がホンマもんのニャーとなり、闖(ちん)入者・恒夫を威嚇w


【音楽 4.5点】
劇伴はEvan Call氏。恒夫のバイト先で流れるBGMなど
エレクトロポップ配合のオシャレな都会ムードもフォローするが、
やはり魅力的なのは弦楽を生かしたファンタジー風で、海中世界や空想をカバーした仕事。
真骨頂は、その作風でクライマックスを彩った心情曲。

四季の移り変わりも美しい本作ですが、
美術だけでなく環境音の貢献も聞き逃せません。

他には砂浜にめり込む車椅子のタイヤ音や、
古式な和風民家であるジョゼ宅の木珠のれんが擦れる音など、
マニアックな効果音もリアリティや生活感の向上を下支え。


ED主題歌&挿入歌はEve。
今回は二曲共、場面の劇伴ソングとして使用。
“ああこのまま立ち止まってしまったら 涙の味でさえ 知らないままだったな”
などジャストミートな歌詞で{netabare}辛いリハビリ生活{/netabare}も乗り越える。

要するに本作はEDの後まで立ってはいけない作品だと言うことです。


※初回投稿2021/1/7 1/20誤記修正。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 36

67.1 14 小説原作アニメランキング14位
メアリと魔女の花(アニメ映画)

2017年7月1日
★★★★☆ 3.5 (143)
651人が棚に入れました
「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の米林宏昌による新作アニメーション映画。

イギリスの女流作家メアリー・スチュアートによる1971年の児童文学「The Little Broomstick」を原作に、11歳の平凡な少女メアリの奇想天外な冒険を描き出す。

声優・キャラクター
杉咲花、神木隆之介、天海祐希、小日向文世、満島ひかり、佐藤二朗、遠藤憲一、渡辺えり、大竹しのぶ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

魔女ふたたび

スタジオポノック制作、米林宏昌監督作品。

英国の児童文学をベースに、
赤毛の少女が巻き込まれる幻想的なお伽話。
森に密かに咲く魔女の花「夜間飛行」を見つけ、
そのことがきっかけで急転直下物語は動き出す。
空を翔ける箒にまたがり、
積乱雲の中にある魔法大学へと。

「ラピュタ」「魔女宅」の流れを組む、
良くも悪くも愛弟子らしいジブリ直系の作品。
本人が言う通り大きな主張も主義もありません。
敢えて言えば科学盲信への風刺でしょうが、
同時に魔法なき世界も肯定しているようです。
魔法=宮崎監督!?考えすぎでしょう。
美しい作画と音楽も印象的でした。

児童文学が教えてくれることはこれでいいのです。
少しだけ「生き方」を教わる。
少しだけ「ものの見かた」が変わる。
あまり多くを求める作品ではないのでしょう。

冒険の末に日常へと帰還する。
とてもお行儀が良い作品ですね。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 52
ネタバレ

雀犬 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

GHIBLI NO OWARI

【概要】
 2017年夏公開の劇場長編。イギリスの児童文学が原作の魔法ファンタジー。監督は「思い出のマーニー」「借りぐらしのアリエッティ」などジブリ作品でお馴染みの米林宏昌。制作したスタジオポノックはジブリの元スタッフが多く、本作も「ジブリっぽさ」があちこちに感じられるものになっています。

【感想】
 映画評論家の小野寺さんがRealSoundの記事で「絶望的なまでにつまらない」とケチョンケチョンに貶していたので一体どんだけヤバいんだ・・・と身構えてしまいましたが、案外普通に見れてしまいました。

 いや、確かに宮崎駿作品と比べると厳しいものがありますよ!でも深夜アニメにはこの数段しょうもないものがゴマンとあるし、劇場アニメに限定しても少なくとも僕は「ひるね姫」「打ち上げ花火」「未来のミライ」より楽しめたのでこのくらいの点数は付けておきたいかな。キモかわいいキャラが色々と出てきて、視覚的には面白い。こういうキッチュな感じはわりと好みだったりするのです。本作に関しては金曜ロードショーでタダ見させていただいた身分なので、劇場で見た人よりやや評価が甘くなってしまうのかもしれません。

 ただまぁ、世間の評判が芳しくないように、確かに色々と問題点はあるように思います。細かな欠点を書き出すとキリがないので2点だけ言及しておきますね。

{netabare}
■1つ目はメアリちゃん独り言多すぎ!問題。

 メアリちゃんは独り言がすんごく多い。おまけに動物やら、植物やら、鏡やら、天井やら、人以外のものにやたらと話かけるもんだから、いくら幼いとはいえちょっとイタイ子のように見えてしまう。そもそもこの映画、会話シーンが少なくないですか?あっても一方的に話して終わることが多いように感じました。この作品で一番面白いのは終盤、魔力を使い切って地面に落ちたほうきを拾いあげる場面なんじゃないかと思う。

メアリ「ほうき君、ほうき君!ねぇ返事をして!!」

 ここまで笑いを取ろうとして滑っているシーンが多かったように思うけどさすがにこのシーンでは笑った。おいおい、ほうきはここまで一度もしゃべってねーだろwwwwwwwww

 でもこれは笑い話で片づけられることではなく、脚本の問題であり、いくら子供向けのアニメであっても全てを台詞で説明してしまうのは好ましくないように思います。


■2つ目はジブリのパロディ多すぎ!問題。

 元々題材からして否が応でも「魔女の宅急便」を連想してしまうのだけれども、実際に鑑賞すると・・・

 猫を追いかけていく導入部は「耳すま」とかぶるし、魔女大学の校長とドクターは「千と千尋」のキャラと似たような雰囲気があるし、ヘラジカに乗るシーンは「もののけ姫」チック。

 と、どこかで見たような感覚にたびたび見舞われる。極めつけはクライマックス。なぜか「ラピュタ」のような舞台が用意されていて、例の「バルス」のような展開で話を〆るという節操のなさ。

 これらの演出に関しては意図的だという見方もあります。というのは、本作の一夜限りで魔法を捨てるというプロットは、「ジブリの威光」という魔法を利用して映画を作るのはこれが最初で最後だよというスタジオポノックの表明になっているという解釈です。なるほどそれなら理解でき・・・ません。なぜなら、本作からはこれから先、魔法なしで勝負していくために必要な、監督の個性や作家性を感じることができないからです。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 34

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

魔女の花とメアリ。運命的な出会いがもたらした、数日間の冒険。

スタジオジブリを退社した米林宏昌監督による、
スタジオポノックの第一作目。

雰囲気は非常にジブリに近いです。
というか、ジブリ作品と言われても全く違和感ないです。笑

スタッフの方の8割は
ジブリに関わったことがある人たちだそうですしね。

100分ほどの作品です。


● ストーリー
11歳のメアリ・スミスは
赤い館に住む大叔母のところへ引っ越してきた。

何もない館に退屈していたが、
野原で見つけた猫たちに導かれ、「夜間飛行」という名の花に出会う。

さらに導かれた先にはほうきがあり、
メアリはほうきに連れられて、

魔女の国にある魔法世界最大学府「エンドア大学」に
たどり着いた。


ストーリーは無駄がないように思いましたが、
一度見れば十分かな。

魔法の世界の不思議な展開には惹かれましたが、
見どころもまた、そこだけという感じ。

この作品だけの魔法の世界を見せながら、
淡々と展開が進んでいく印象でした。

山場の展開は
やっつけな印象もありましたしw


今回の“魔法”というテーマには、
ジブリの演出がよく合っていた気がします^^

正確にはジブリ作品じゃないんだけど、
ジブリを意識せずにはいられないところがたくさん。笑

作画や演出は楽しめた部分が多かったです♪

ほうきでびゅんびゅん飛ぶところも、
スピード感があってよかった♪


● キャラクター
自分の赤いくせ毛が大嫌い。

何かをしたいと思いながら、
何をしてもうまくいかない。

メアリは、そんな自分から
“変わりたい”と願っている女の子。

全体的にキャラに特別な魅力は感じられませんでしたが、
メアリのキャラは嫌いじゃなかった^^

くるくる動く表情も可愛かったし、
なんだかんだ調子が良いところも憎めない♪

くせっ毛ツインテにも動きがあって、
上手に活かされていました^^


でもキャラに関して特筆したいのは、メアリだけかな。

他のキャラに関しては、
必要ではあるけれど、特別魅力は感じられませんでした^^;

主要人物であるピーターも、
私の中では最後まで脇役感が抜けませんでしたw


● 音楽
【 主題歌「RAIN」/ SEKAI NO OWARI 】

この作品を観る前から好きな曲でした♪

だけど、エピローグからイントロへの流れには、
一体感があまり感じられず…。

いい雰囲気な曲であることは確かだけれど、
この作品とマッチしているとは言えないかな。

だからなのか、アニメの映像で作られているPVを見ても、
あまり作品の興奮は蘇ってこない…。

曲自体はとっても好きなんだけどなー。


● まとめ
メアリ役の杉咲花さん、
ピーター役の神木隆之介さん。

二人の演技に引っかかることもなかったし、
メアリの声はかわいかったと思います^^

ジブリの作風が好きならば、
一度見てみると良い作品だと思います♪

投稿 : 2024/05/11
♥ : 30

76.6 15 小説原作アニメランキング15位
ハウルの動く城(アニメ映画)

2004年11月20日
★★★★☆ 3.8 (1050)
6610人が棚に入れました
魔法と科学が同時に存在する時代。町の小さな帽子屋で働くソフィーは、自分に自信が持てない内気な18歳。彼女の住む王国では戦争が起きているが、それも遠い世界の話でしかない。しかし、町はずれの荒野に住む荒地の魔女の意地悪により呪いをかけられ、90歳の老婆の姿に変えられてしまう。家を出て荒地を放浪する彼女の前に現れた巨大な動く城。生きるために城の主で魔法使いのハウルに掃除婦として雇われるソフィー。

甘ったれで自信家のハウルに呆れながらも、彼の弟子のマルクルや、荒地からついてきた案山子のカブ、この城を動かしている火の悪魔であるカルシファーと家族のような時間を過ごすソフィー。風変わりなハウルとの生活に驚きながらも心を開いていくが、戦火は確実に彼らへ忍び寄っていた。

声優・キャラクター
倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、伊崎充則、大泉洋、大塚明夫、原田大二郎、加藤治子
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

我を通す!

原作「魔法使いハウルと火の悪魔」は未読。


「荒地の魔女」の呪いで老婆に変えられたソフィー。
彼女は魔法使いハウルの家で、清掃婦として働くことになる。


なんとも支離滅裂なストーリーです。

・ソフィーの冒険記
・ソフィーとハウルの恋物語
・戦争ストーリー

複数のエピソードを切り貼りしたような感じです。
主軸が定まっていません。
山場がどこにあったのかもわかりません。


しかし、そこはさすがジブリマジック。
どこに面白みを見つけたらいいのかわからない脚本を、それなりのエンターテインメントに仕上げています。
映像や効果音など、アニメーションとしての見せ方が上手なんですよね。
ソフィーが時によって少しだけ若返る描写など、さすがジブリという感じです。

配役も言われるほど違和感はありませんでした。
特にハウル役の木村拓哉は、よく合っていたのではないかと思います。
気になる人は気になるだろうけど……。


でも、ちぐはぐな展開はやっぱりひっかかります。
そこで、一貫したテーマ性を自分なりに模索してみました。

「大人の中にある子供心、特にわがままな点」

主人公のソフィーは老婆の姿。
しかし、中身は少女のままで好奇心旺盛。

ハウルはクールで大人っぽい印象。
しかし、幼稚な面を多分に持っています。
{netabare}
特に、髪の毛の色が変わったシーンが印象的です。
それまでのハウルとのギャップに驚いた人は多いのではないでしょうか。
{/netabare}
荒れ地の魔女や国王、サリバンなど、準レギュラーメンバーも同様です。
子供っぽいわがままな態度が目立っています。
「我を通す」という意味では共通していると思います。

これなら戦争というオリジナルの要素にも、ある程度筋が通ると思います。
戦争の原動力は「エゴ」だと思うので。
制作側がこれを意図していたかどうかはわかりません。
しかし、ひととおり見た感じではこの解釈が一番しっくりきました。

恋愛に関しても惚れた腫れたの描写はありませんが、一目ぼれってことにしてしまえばOK。
あとは「わがまま」で目標に向かってまっしぐらです。


まあ、ジブリ作品の中ではよくわからない部類に入ると思います。
伝えたいこともはっきりしません。
それでもアニメーションとしての面白さは持っています。
大ハズレということはないと思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 52

ato00 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

ファンタジックキャッスルアニメ~魔法使いとおばあさん~

ヨーロッパアルプスかな。
景色の良い山裾の趣のある街が描かれます。
雰囲気は19世紀。
でも空飛ぶ不思議な乗り物が発達しています。

魔法使いであるハウルの城も不思議な乗り物?
その独特な動きはユーモラスです。
動力源は炎の悪魔カルシファー。
このアニメのお茶目アイドルです。
この城に呪いをかけられたソフィーがやってきます。
元は若い娘なのに今は90歳の老母です。

動きは極めて良好かつ滑らか。
魅せますね~宮崎監督。
スタジオジブリの本領発揮です。

国は隣国との戦争の最中。
ハウルは何やら苦しんでいます。
その辺の描写が少ないので、感情移入はできません。

ストーリー的にも詰めが甘いような気が。
主題もわかりにくい。
構成に四苦八苦した形跡があり、満足感はありません。
また、タレント声優起用により、音声面は台無しになっています。
頑張っていたことは認めますが、プロの演技とは程遠いです。
声優さんを変更した作品を観たいですね。

以後、スタジオジブリは暗黒時代を迎えます。
往年の輝きを取り戻すのはいつになることやら。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 34

Zel さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

ふたりが暮らした。

2004年劇場公開作品

宮崎アニメのパワーが落ちてきた頃の作品
ジブリ作品にしてはキャラクターの魅力が薄いように感じた

賛否両論だと思うけど僕はアニメのアフレコをタレントがやるのは好きじゃない
やっぱ声優さんの演技には遠く及ばない
イケメンロン毛をいう事もあり、終始ハウルがキムタクに見えてしまって物語にのめり込めなかった
誤解のないように言うけど、別にキムタクアンチではないんだけどねw

投稿 : 2024/05/11
♥ : 21

80.0 16 小説原作アニメランキング16位
火垂るの墓(アニメ映画)

1988年4月16日
★★★★☆ 3.8 (840)
5519人が棚に入れました
1945年(昭和20年)9月21日、清太は省線三ノ宮駅構内で衰弱死した。清太の所持品は錆びたドロップ缶。その中には節子の小さな骨片が入っていた。駅員がドロップ缶を見つけ、無造作に草むらへ放り投げる。地面に落ちた缶からこぼれ落ちた遺骨のまわりに蛍がひとしきり飛び交い、やがて静まる。太平洋戦争末期、兵庫県武庫郡御影町に住んでいた4歳の節子とその兄である14歳の清太は6月5日の神戸大空襲で母も家も失い、父の従兄弟の未亡人である西宮市の親戚の家に身を寄せることになる。当初は共同生活はうまくいっていたが、戦争が進むにつれて諍いが絶えなくなる。そのため2人の兄妹は家を出ることを決心し、近くの池のほとりにある防空壕の中で暮らし始めるが、配給は途切れがちになり、情報や近所付き合いもないために思うように食料が得られず、節子は徐々に栄養失調で弱っていく。

声優・キャラクター
辰巳努、白石綾乃、志乃原良子、山口朱美

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

蚊帳の中に蛍を放ち、他に何も心をまぎらわせるもののない妹にせめてもの思いやりだった

1988年公開のアニメ映画 88分

原作 野坂昭如 監督 高畑勲 音楽 間宮芳生
制作 スタジオジブリ

スタジオジブリの第2作目の劇場アニメーション長編

1967年、文壇の風雲児「野坂昭如」は過去の行いを反省して神妙にある小説を発表した。
一般文芸誌「オール讀物」に載った「火垂るの墓」はその年の直木賞を受賞した。
1945年の神戸大空襲を体験した野坂昭如の自伝風小説である。

当時14歳だった野坂昭如は幼い妹と共に防空壕などを逃げ回り、
戦時中に妹は死亡したと言うが、野坂自身は生まれながらの乱暴者で、
餓死した妹への罪滅ぼしとしてこの作品を献呈したということだそう。

アニメ映画は「となりのトトロ」と同時上映。まさに80年代日本的出鱈目である。
 
清太 CV辰巳努(当時16歳) 14歳の少年
節子 CV白石綾乃(当時5歳) 清太の妹 4歳

声優のほとんどは素人です。

焼夷弾によるリアルすぎる空襲の中を走る少年と幼女。
冒頭は戦争で心が死んだ野坂昭如の幽霊による語りだろうか?
作中では清太と節子の幽霊が物語を見守っている。

空襲で全身に大やけどを負いウジ虫が湧いて死んだ二人の母が象徴的な映像である。
高畑監督「反戦アニメなどでは全くない、そのようなメッセージは一切含まれていない」
という発言ですが、そんなわけないだろ、と言うのが感想です。
アニメ史上の名作2本立てでさえヒットさせられなかったジブリの苦しい状況が、
敵を作るわけにいかず、メッセージ性のある作品から離れざるを得なかったというのが真実でしょう。

しかし、野坂の原作を忠実に、ある部分はさらなる迫真を持って描いたこの作品は、
後のジブリ作品とは比べ物にならないような重みを感じます。

この作品は太平洋戦争の1シーンを切り取ったもので、
あらゆる映像作品の中でも最も真実に近いものです。
登場人物は軍人ではありませんので、原因も帰結も知らず流されていくだけです。

この作品を観て泣いた記憶はありませんが、一秒も目が離せなかった88分でした。

アニメーション技術の発展を知るためにも重要な作品の一つでもありますし、
密かに込められたメッセージを個々人の違った想いで受け取るべき必見の作品だと思います。

超有名作ですので、未見の方はいつか観る心構えを作っておいたほうがいいでしょう。

小説のカバー絵にもなったキャラデザは素晴らしい出来だと思います。
個人的にジブリ作品の中で一番好きな作品です。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 34

♪せもぽぬめ♪ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

平和っていいな(* ̄∇ ̄*)

~あらすじ~
言わなくても多分分かるね?

見ているときに、

「やめてくれぇ~」

「話を止めろぉ~」

と言う気持ちになりました; ̄ロ ̄)!!

でも、話が面白くて止められませんでした。

せつなすぎて、心が締め付けられました(ノд-。)クスン

これを見た後、

「戦争ってやだな!」

と思いました。

この作品は、

生きる価値を教えてくれます。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 33

大和撫子 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

全世界の人々に見てもらいたい

戦争の悲惨さを語るのにこれ以上の作品はまず見当たりません。

◆この作品の概要は・・・
戦時中の孤児となった兄妹のとっても切ないお話です。
戦争の影響とは厳しいもので、栄養失調でどんどん弱っていく妹となんとか生きようとする兄の過酷な運命を描いています。

◆キャッチコピーは・・・
「4歳と14歳で生きようと思った」です。
この言葉を聞くだけでも涙が出そうです。

◆とっても泣けます・・・
泣ける映画として、一般的に最初に頭に思い浮かぶのはこの作品ではないでしょうか。
すごく悲しい内容だけに一度見たらもう二度と見たくない・・・「見たくない」ではなく「見れない」。
もちろん決して悪い意味ではありません。
それほど衝撃的で心を打たれた作品です。
節子の「兄ちゃん」と呼ぶ声や、ドロップ缶を振る音やその時の節子の笑顔がいつまでも心に残りました。
ホタルの光が短く儚い光のように、この兄妹の命も短くて儚い。
ホタルの光は儚いけどとても綺麗なように、この兄妹の生きようとする命の光は綺麗に光っていました。

◆ホタル・・・
通常ホタルとは「蛍」と書きますよね。
でもなぜこの作品では「火垂る」と書くのか?
調べたところによると「火垂る」とは当て字らしいですね。
焼夷弾という兵器があり、火のついた焼夷弾は雨のように落下するらしいです。
その落下する姿をこの作品の作者の妹が死に際に「まるでホタルが飛んでいるよう」と言った事からきているらしいです。
このエピソードもとても切ないですね・・・。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 29

64.5 17 小説原作アニメランキング17位
バースデー・ワンダーランド(アニメ映画)

2019年4月26日
★★★★☆ 3.3 (53)
189人が棚に入れました
誕生日の前日、自分に自信がないアカネの目の前に突然現れたのは、謎めいた大錬金術師のヒポクラテスとその弟子のピポ――「私たちの世界を救って欲しいのです!」と必死でアカネに請う2人。そしてアカネが無理やり連れて行かれた世界は――骨董屋の地下室の扉の先から繋がっていた〈幸せな色に満ちたワンダーランド〉! ふしぎな動物や人が住む世界から、色が消えてしまう!その世界を守る救世主にされたアカネが大冒険の果てに下した、人生を変える決断とは?

声優・キャラクター
松岡茉優、杏、麻生久美子、東山奈央、藤原啓治、矢島晶子、市村正親
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

童話の世界

原恵一監督、Signal-MD制作。

児童文学からのアニメ化。

自分を持てない少女アカネの前に、
謎の錬金術師と小さな妖精ピポが現れる。
骨董品屋の地下室の扉で繋がる不思議な世界。
彼らの世界を救うため少女の冒険が始まる。

扉の向こうはカラフルな色彩の世界で、
そこには不思議な住人が暮らしている。
歴史では蒸気機関は発明されるも、
どうやら科学が発展しなかった世界だ。
{netabare}人々は便利さの追求よりも、
穏やかな生活を選んだのでしょう。
児童文学ならではの緩やかな主題があります。
アカネは緑の風の女神となり、水が枯れ、
色が失われつつある世界のために前へと歩む。{/netabare}

子供の目線で世界を眺めてみる。
大人たちが忘れてしまったものを、
未完成である子供たちは知っているのだ。
彼らは透明な窓を持っているのでしょう。
きっとありのままに世界を眺めている。
監督らしい主題がここでも健在ですね。

純粋に楽しむには少し生き疲れたけど、
児童文学ですから素直な心で楽しめればと。

童心の心象風景、童話の世界、
私たちにも未だ冒険の舞台があるのです。
それで良いのではないでしょうか。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 38

さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

子供向け?大人向け?オタク向け?

クレヨンしんちゃんの方がよっぽど大人も楽しめる作品です。
原作の対象が高いので、スタート位置が違う事は勿論ですが、クレヨンしんちゃんの場合、子供向けに昇華されて安定した面白さがあるように思います。

このアニメのキャラクターデザインや作画は、子供向けにしてはコミカルさが足りないと思いました。
このアニメのストーリーは大人向けにしてはシンプルすぎると思いました。
では、誰に向けたものなのでしょうか。
最近のアニメは一部の客がお金を落とせば良いという考えが特に深夜アニメを中心に蔓延しているそうですが、これは一体何処を目指しているのでしょうか。

今ならオトナ帝国が、安定した土台とプロ達個々の仕事の結晶だったとわかります。
綺麗な世界、綺麗な作画、安定したストーリーの運び方、どれも良いと思いますが、私はあまり楽しめませんでした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 12

ato00 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.8

薄味アニメ

どうも、平成最後の映画らしい。
まあ、それは置いとくとして。
あらすじを超ザクっと説明します。
不思議の国の普通の少女・・・以上です。

普通過ぎて、観終わった後の余韻が残りません。
癒しもないし、インパクトもない。
もちろん、感動もないし、興奮もない。
のっぺりとした平常心あるのみです。

良い所を探すと・・・。
残念ながらありません。
作画やキャラデザも普通だし、声優さんは問題外。
ストーリーも平凡でキャラの魅力も乏しい。

なにはともあれ、主役の声優さんの棒読みが気になりました。
最初から最後まで「あちゃー」って。
アニメ映画でありがちな判で押したような薄味の演技。
制作者の大失態です。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 11

56.4 18 小説原作アニメランキング18位
チョコレート・アンダーグラウンド(アニメ映画)

2009年1月31日
★★★★☆ 3.3 (25)
182人が棚に入れました
舞台は、ヨーロッパのどこかの国。国民が、義務であるべき投票に行かなかったせいで、選挙で勝利をおさめた健全健康党がチョコレート禁止法を発令。チョコレートをはじめとするお菓子や飲み物を健康に悪いという理由だけで禁止した。こんなおかしな法律に従えるか!と、子供たちが立ち上がってレジスタンスを起こし、チョコレートの密造・密売を始める。彼らは、はたして、今までどおりの美味しいチョコレートを取り戻せるのだろうか……?

takumi@ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

チョコレートをめぐる僕らの闘い

バレンタインデーなので観てみました(笑)


原作は、イギリスの人気作家アレックス・シアラー著の
少年少女向けのファンタジー小説。
2009年に、バレンタインキャンペーン用のガーナチョコによって
劇場公開されたアニメ映画です。


国民が、義務であるべき投票に行かなかったせいで、
選挙で勝利をおさめた健全健康党がチョコレート禁止法を発令。
チョコレートをはじめとするお菓子や飲み物を、
健康に悪いという理由だけで禁止する法律に反発し、
正しいことを正しいと言える世界を取り戻すために
立ち向かおうとする子供たちがレジスタンスを起こす、という物語です。

少年少女向けというだけあって、
子どもたちを中心にしたわかりやすいストーリーですが、
大きな感動を呼ぶような深いお話ではないので、
物足りなさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。

昔のアメリカの禁酒法ならぬ、チョコレート禁止法とか、健全健康党とか、
この世は秩序がすべてとばかりに反逆者狩りをする警察とか、
個人的には、それだけでけっこう笑えました。

人の精神を堕落させる悪魔の食べ物だとし、
ヘルシー食品を強制的に推奨する健全健康党、
片や、チョコレートを代表とする甘いお菓子は
人に幸せと笑顔をもたらしてくれる、と言う子どもたち。

小学生くらいのお子さんと観るのにはちょうどいいかも。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 13

ゅず さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

謎の感動

内容、なにを伝えたいかはわかるけど
なんかイマイチというか
もっと表現できたんじゃないかなぁ


内容の展開はよかった
おしいといえばいいのかなぁ

投稿 : 2024/05/11
♥ : 7

メア さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.5

どうせ政治家なんて誰が当選しても……。。

※あくまでも個人的見解です。
※重要なネタばれ含まないと思いますがもし入れてしまっていたら申し訳ありません。
※小規模なネタバレはあるかもしれません。
※ご了承ください。




「どうせ政治家なんて誰が当選しても……」何て思っていませんか? そういった風に考えているかたに見て欲しい作品です、凄く、物凄く遠回しですが。
禁止されたチョコレートを、お菓子を取り戻すため僕たちの戦いが始まる!、のような内容に見えるのですが、いえ、そういった内容のはずなのですが、私事で申し訳ないのですがあまりにも面白くなかったので。
そんな感じの少年たちの奮闘気みたいなのを求めてみてしまえば、きっと残念さしか残らないと思います。あくまで主観ですが。
子供に見せる分には楽しんでくれそうな気もしますが。

BGMや効果音、挿入歌など音響関係については内容に唖然としていて全く気にしていませんでした。主題歌は西野カナさん歌っていました。別に彼女にそこまで興味ないのですが、悪くないんじゃないですか。作品にあってるかどうかは知らないですが。いえ、ほんと唖然としていてあまり頭に入ってこなかったのです。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 2

58.7 19 小説原作アニメランキング19位
ゲド戦記(アニメ映画)

2006年7月29日
★★★★☆ 3.2 (514)
2607人が棚に入れました
多島海世界のアースシーでは、聖なる生物の竜が共食いを始め、農民は田畑を捨て、職人は技を忘れていくなどさまざまな異変が起こり始めていた。やがて人々が魔法を信じることができなくなったとき、大賢人ゲドは世界のバランスを崩す者の正体を突き止めるための旅に出て、国を捨てた王子アレンと出会う。
(シネマトゥデイより引用)

声優・キャラクター
岡田准一、手嶌葵、田中裕子、香川照之、風吹ジュン、内藤剛志、倍賞美津子、夏川結衣、小林薫、菅原文太
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

ジブリ史上最高クラスの主題歌(しか記憶に残ってないw) テルーの歌の歌詞のレビューですm(__)m

[文量→大盛り・内容→雑談系]

【総括】
ストーリー1、歌が5で、合わせて3です(笑) 意外と酷評ではないです。だって、ゲド戦記以外の角度からのレビューですもん(笑)

今回は、ゲド戦記のテーマソング「テルーの歌」の詩の解釈をメインにします。

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
結論→テルーの歌は、萩原朔太郎のこころのパクりとは言えないのではないか。というレビューです。

この「テルーの歌」ですが、ネット等でも話題になりましたが、(100年程前に活躍した詩人)萩原朔太郎の「こころ」が元ネタになっています(監督&作詞の宮崎吾朗さんも公式に認めてますね)。

ゲド戦記公開当時は大学生で、たまたまゼミで朔太郎をやっていたので、これでレポート書いた記憶があるので、載せてみます(笑)

※ここからは、テルーの歌を「」で、朔太郎のこころを『』で書きます。

テルーの歌もこころも、ともに3つの連から成る詩です。テルーの歌の第1連の「夕闇迫る雲の上 いつも一羽で飛んでいる鷹」は、雲の上、というのがミソです。つまり、地上の人々からは見えないということ。「音も途絶えた風の中 空を掴んだその翼 休めることはできなくて」……だって、休むと落ちちゃうもんね(笑) この部分は、こころの第2連『こころはまた夕闇の園生のふきあげ』に対応しています。夕方の公園の噴水って、(昼間は子供達に人気だったのに)回りに誰もいなくなって、それでも休むことなく水を吐き出し続けています。吾朗さんは、その噴水の様子を鷹に置き換えた訳ですね。と、いうことで、第1連のテーマは両作とも「孤高」だと思います。

テルーの歌第2連の「雨のそぼ降る岩陰にいつも小さく咲いている花」は、こころの第1連『こころはあぢさゐの花』に、対応しています。朔太郎は、アジサイという、寂しげで多彩な花で、こころの移ろいやすさや儚さを表現しています。が、テルーの歌ではそのような主題は排され、「愛でてくれる手もない」と、やはり「孤高」を表現するにとどめています。

第3連は、詩的には、テルーの歌で一番上手いところだと思ってます。「人影絶えた野の道を 私と共に歩んでる」は、「人影絶えた」「私と共に」と思いっきり矛盾した表現です。この矛盾を解消できる答えは、「私の影」ということになります。

映画ゲド戦記は、小説ゲド戦記シリーズの第3巻を元ネタにしていますが、小説ゲド戦記の第1巻は、「影との戦い」というタイトルです。さらに、テルーの歌では「あなたもきっと寂しかろう」と続けています。「も」ですから、私と私の影は対等の価値をもっていると考えられ、つまり、「影の受容」です。これは、ゲド戦記の大きなテーマですね。

こころの第3連は、『こころはまた二人の旅人』と、はっきり二人と書いてます。そして『されどみちづれの絶えて物言ふことなければ わがこころはいつも かくさびしきなり』から、『出会ったがゆえの別れ』『幸せを知ったからこそ感じる不幸せ』などがテーマになり、テルーの歌とは大分違います。なので、ここの部分は、作詞した宮崎吾朗さんのアレンジの上手さが光っていると言えますね。

総じて、テルーの歌は、こころ→孤高 という主題が強く、朔太郎は、こころ→多彩で感傷的なもの という 主題が強いです。

私は、テルーの歌は、こころのパクりとは言えないと思っています。主題が全く違うので。確かに下敷きにはしているのでしょうが、両方の詩をしっかり読解せず、字面だけ見てパクりというのは、ちょっと、吾朗さん、可哀想^_^; そもそも、ジブリ自体が、完全オリジナルは少ないわけですし。

以上。書きながら、あにこれのレビューか? と、自分でも思いましたm(__)m 吾朗さん、頑張れ♪
{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 29
ネタバレ

oneandonly さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6

偉大な原作をなぜ脚色したのか

世界観:4
ストーリー:3
リアリティ:5
キャラクター:4
情感:3
合計:19

原作のゲド戦記は昔から好きな児童文学です。
最初は幻想的な暗闇が舞台となる2巻が好きでしたが、自分と向き合うようになった頃に1巻が好きになり、社会人になってから見直したら3巻が好きになりました(あまり話さない印象のゲドが喋る喋る)。何度読み返しても、新たな発見のある物語で、そういう創作物があることを強く印象付けられた思い出の作品です。

という結構なゲド戦記ファンなので、このタイトルを付けられた上では評価が厳しくなってしまっているかもしれません。

「人は自分の行きつくところをできるものなら知りたいと思う。だが、一度は振り返り、向きなおって、源までさかのぼり、そこを自分の中にとりこまなくては、人は自分の行きつくところを知ることはできんのじゃ。川にもてあそばれ、その流れにたゆとう棒切れになりたくなかったら、人は自ら川にならねばならぬ。」(byオジオン師匠)

言葉だけを見るとちょっと説教臭いところもあったりしますが、これは1巻のゲドの行動を通してその意味が描かれているので、後で読んで深さを理解できるのです。

{netabare}が、映画版は原作のどこのストーリーを描くでもなく(一応、3巻部分をメインにしていますが、5巻まで含まれています)、アレンが父親を殺すという原作には全くない所から始まり、「真の名」や「均衡」などの概念を言葉だけで語らせ、最後にはラスボスを倒してグッドエンディングみたいな。

ジブリなので作画は綺麗ですし、テルーの歌がはまっていますので原作を知らない方はあるいは気に入るかもしれませんが、アレンの父親殺しやテルーが竜になること等にも説明がなく、表現が足りないという問題があり、その上で原作が非常に大事にしている(本当の意味での)均衡の世界観が欠落しています。

{/netabare}これはゲド戦記ではない何かですので、原作を読まれることを強くおすすめします。

<2019.1追記>
家の本棚から久しぶりにゲド戦記を取り出してみると、ページの外側にいつの間にか年季が入った日焼け色がついてしまっていました。

この映画は3巻が舞台との設定だったはずですが、3巻の終わり、{netabare}黄泉の国でのクモとの戦い、魔法の力を使い果たして岩の扉を閉じたゲドをアレンが庇いながら帰還し、最古参の竜カレシンの背に乗ってロークに戻る{/netabare}シーンを読み直し、死と対峙することの重さ、躍動とリアリティに満ちた、これらのシーンが原作通りに描かれなかったことの無念を感じました。
落ち着いた時に、原作をまた読むとします。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 27
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.3

退廃的な雰囲気と行先のない描写

父親を殺した1人の少年のお話。
国を治め、民のことを第一に考える理想の王のようだった父親を少年は殺した。
彼が1人になったその瞬間を狙って背後から迫り短剣で一突きお見舞いしてやった。
簡単なことだった。その後すぐに父の腰に差してあった刀を奪いその場を去った。

少年は肉親を殺したことや人の死に触れたこと、罪の意識に囚われることはなかった。
ただひたすら"それ"を恐れた。
道徳観と倫理観は真っ白に燃え尽きた炭のように死に、徹底的にスポイルされた少年の目はどこも見てはいなかった。
やる気も気力も削がれ生きていく意志さえ持てなかった。生きた屍そのものだ。
道中でゲドに逢い、手を引かれる。ゲドは何も聞かず、何も求めなかった。

世界は大きく変わりつつあった。ちょうどその過渡期だった。
スピリチュアルなものの地位は衰退した。魔法もそしてモラルもその価値は失われ、有形物に対する物欲だけが膨らんでいた。
そんな人間の浅ましさはなにを喜ばせることもなく、鬱屈とした空気だけが漂っていた。龍も彼らを見放した。
この世の終末が実際に目の前にあった。

崩壊の最中にある世界で少年はこれからどうするのだろう。
殺人を犯し逃げてきたはいいけれどするべきことも特別なにかしたいことも見つからなかった。

ただ"それ"を恐れた。自分の中に眠る抑えきれない、望むはずのない欲望を。
普段"それ"は目に見えない。暗闇の中でおとなしく死んだように眠っている。
"それ"が目を覚ますのに周期もきっかけも条件もない。
ただ突然、自分の中でバタバタと激しく悶える。絶対不可避の生理現象に近い。
心の闇は、闇の中にある"なにか"は醜い。しかし、惹く。
殺人の動機なんてものは持ち合わせていなかった。ただ殺した。それだけだった。

闇に救いはなかった。導き手もいなかった。そもそもそれがいてどうこうなる問題ではないのだ。
魂の冷たくなった彼は砂嵐を避けながらどこまでも歩き続ける。目に映る景色は色彩を失い、すべてはすべてを失った。
ただ"それ"からは逃げた。それも死にもの狂いで。

他に僕にやるべきことはあるのだろうか。ゆっくりと空を見上げる。―ああ、なにもないのだ。


この映画は殺人を犯した少年が「その後どうするのか」を物語るものである。


「面白くない」と評判の『ゲド戦記』。
僕も初めて観たときは「ホントつまんねーな」と思いました。
でもストーリーが示唆するものを完全には受け切れず、いつまでも腑に落ちないまま頭の片隅でひっかかっていました。
そして2年の時を経てもう一度観てみました。

ストーリーは平易に見えて分かりにくい。演出は平凡。声優はダメと、まああまりパッとしないアニメ映画です。
工夫しようとして苦心した形跡は認められてもそれが良い方向に転ぶことはありませんでした。
たびたびかかる「壮大な」音楽は耳障りで、いかにも「アニメ」的な引きや場面展開、さらに同様のオチには飽き飽きしてしまいます。
あまりにも「普通」なアニメ映画でした。みんながみんなして観るような作品ではありませんでした。
村上春樹がスコット・フィッツ・ジェラルドのいくつかの短編を訳した『マイ・ロスト・シティー』の冒頭に書いたエッセイでこう言っていました。
「トルーマン・カポーティ―について言えば、彼はまさに100%の作家である。その作品は完璧であり、魅惑的であり、そこには読者のつけこむ隙は殆んどない。具体的に言うなら、他の作家にも『無頭の鷹』のような小説を書くことはできるかもしれないが、誰にも『無頭の鷹』を書くことはできない、そういうことだ。」
本作も、もっと言えば他の宮崎駿臭のする作品も同じことで、
宮崎駿監督作品のようなものは作ることができるかもしれないが、宮崎駿監督作品を作ることはできないということ。
真似はできてもそれは必ず本元に準ずるものでほとんど何も成しません。せめて自分のためになったということくらいでしょうか。

題材は、本当はラディカルなものであったけれど、そのほとんどはあまりにも後ろ向きなものを扱ったために、
さらにその結末も未熟で、本質の追及とはほど遠いものとなったために、あまり良い反響は得られませんでした。
それにぽかんとしてしまうストーリーに観る人は驚きを隠せません。なんだったのだろうという悪い感触だけが肌に残ります。

さらに詳しくはタグの中へ→{netabare}

それは人の心に潜む闇でした。
その圧倒的な強さを描く一方で、逃避を計る人の怠惰な面も表出しました。
前者については考えたことのない人にとってとても理解しがたいものであると思いますし、とてもこの映画だけでは分かりません。
本作では伝えるのではなく、描くことだけしかしませんでしたから。
僕は村上春樹の『1Q84』や『海辺のカフカ』でこれに似たものについて触れたことがあるのでなんとなくは分かります。
でも説明しろと言われても正直、その100%を理解してもらうまで上手く説明することはできません。
自分の中にその存在をはっきりと認めることはできても言葉にするの至難の業です。
でも少しならできるかもしれません。やってみましょうw
男性なら中高生のときに何の脈絡もなく「今、目の前のこいつをぶん殴ったらどうなるんだろう」とかものすごく腹立つ奴をこうやって痛めつけてやりたいなんて考えながら体の内側が熱く、血沸く感覚がありませんでしたか?実際にそんなことはしないのだけれど、想像してしまうすごく暴力的な自分。本作で語られたものはこれよりももっと闇の奥にあり、それは無差別でなによりも暴力的な暴力。純粋なそれです。おそらくアレンはストレスの捌け口が見つからなくなってこういう状況に陥ったのではなく、もっと根本的な部分で病んでいて殺人でしか自分を救えなかったのでしょう。僕らは日常生活の中でそれを色んな形で発散させています。それができなくなっていくと次第に心を病み、さらに沈めばアレンのようになる可能性を秘めていることは言わずもがなです。つまり、"それ"は僕たちから遠くにあるように見えてますが、おそろしく近いところで影を潜めている、どんなにもがいても抗えぬ闇です。これは決して他人事ではなく、限りなく自分自身のことについて語られていたように思えます。
 そうは言っても、前者の方はピンと来ずとも、とりあえずそういうものとしてどこかに置いておけばいい話で、どちらかというと後者がこの作品をどう感じるかを大きく左右するのではないかと僕は思います。なぜならその大半が意志を欠き、人として決定的になにかを失ったアレンの姿を中心に描いているから、観る人はその退廃的な空気を上手く自分の中に取り込むことができないと、それはただ本当に退屈なだけだからです。なんとか音楽や「アニメ」的な引きで物語を進めているように見せてはいたけれど多くの人が不満を口にしたことから、その努力はあまり実らなかったように思えます。そのせいもあってかアレンがテヌーによって救われるまでの岡田准一さんのぼそぼそとしゃべる演技には悪態をつきたくなっても不思議ではありません。
 
 ある作品で描かれる負の面というのものは少なからず人の共感を呼ぶのが常です。それが特にアニメーションであれば、全体は喜劇的に描かれ、大方その結末はハッピーエンドで結ばれ、その回復をもって幕を閉じます。そして、それを観た視聴者には感動と、苦難をくぐり抜けた登場人物と共にした仮体験による気持ち良さが後に残ります。
 しかし本作で描かれたアレンの姿はズタズタにモラルを引き裂かれ、行き場のない死体そのものでした。もっと言えば死を求めていた彼にはこの世界は本当に無価値であり、何も存在しない永遠と続く浅瀬だけが広がる海のように映ったはずです。絶望を通り越した完全な喪失でした。その質は明らかに異形なモノで僕らが簡単に触れられるものではありませんし、またコミットするにはあまりに危険を孕んだモノです。それに堕ちるところまで堕ちた彼にどうやって世の中の多くの人がこぞって共感できるというのでしょうか。まず無理な話です。

{/netabare}


これから観るのであればぜひ、
「みんなが嫌うものを観てなんとか1つでも良いところを見つけ出してやろう」くらいの気概を持って観て欲しいです。
僕はいつもこうして観てます。若さゆえの反骨心です。悪く言えば捻くれ者です。
「ジブリ」に感動を委託して、頼ってしまうのではなく、自ら探して欲しいです。残念ながらそうでもしない限り楽しんで観ることは叶いません。
実際には欠点はたくさんあっても、悪いところばかりではないというのが本作です。

僕は、今回の2度目の視聴では本作をほんの少しは楽しめたと思います。
この退廃的な雰囲気は好きだし、主人公に共感できます。
ただやはりところどころ描写が不十分であったり、的外れであったために一作品として成立しているとは言い難いです。
そのため受け取ることができたのも、書くに値しないほど本当にごくわずかでした。
どう観るか、何に注目して観るか、自分のスタンスはどこか、何を許容し、どう解釈するか。
別に作品が伝えたいことを受け取るだけが観ることの意味ではないと思います。また義務でもないと思います。
拾えるところだけ拾って、また拾いたいところだけ拾って「E.T」がガラクタを集めて作った間に合わせの通信機のような、不完全の塊みたいな解釈だけでも自分の中に持てればそれでいいのではないでしょうか。
だから面白くなければそれで良い。わざわざフォローする必要もない。1つの作品なんてそんなもんだと僕は思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 19

64.3 20 小説原作アニメランキング20位
スカイクロラ - The Sky Crawlers(アニメ映画)

2008年8月2日
★★★★☆ 3.6 (423)
1993人が棚に入れました
現代に似たもうひとつの世界。平和を実感するために“ショーとしての戦争”が行われる中、思春期のまま戦闘機のパイロットとなることを余儀なくされた通称“キルドレ”たちの運命を描く。

CountZero さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

僕はまだ子供で、ときどき、右手が人を殺す。

理系作家として有名な森博嗣先生のスカイクロラシリーズを、押井守監督が映像化した作品です。
原作のシリーズは私の大切な小説の一つです。
鈴木成一デザイン室による装丁もお気に入りなので、全部ハードカバーで手に入れて本棚に収まっています。
これまで何度となく読み返しては、詩的で徹底的に感情をそぎ落とした透明な色の文章と白昼夢のような世界観にうっとりとしていました。
私は映画化するなら絶対押井監督と思っていたので、制作が発表された時は本当に「キター!」っていう感じでした(笑)
が、重要なのは、やっぱりあの雰囲気をどれだけ再現できるのかといところです。

そんな私の観終わった感想は、「すごく良かった」です。

どこが良かったか?
まず、原作と同じように淡々とパイロットの待機と出撃を繰り返す日常が、上手に映画でもただ淡々と描かれていたところです。
「淡々と」を演出するために、BGMなしで、空調機の物音や基地で聞こえる機械音や作動音のみのシーンや、同じ視点から見たシーンが多用されているのがとても効果的でした。
私はすごくいいと思いましたが、そのように物語の起伏が意図的に抑えられたこの演出の仕方を、退屈と感じるかどうかで賛否も分かれるとは思います。
でも、そのおかげで本来あるべき感情が失われた「キルドレ」と呼ばれる主人公たちの思いや考えが表面に現れる時、ぐっとその感情が強調され、悲しみや、切なさや、やるせなさや、諦めが伝わってきます。

そして、意外にも良かったのが、草薙水素役の菊地凛子さん。
彼女は俳優としてすでに高い評価を得ている方なのですが、声優としてはどうなのか?と最初は思いましたが、今ではイメージにかなり近い、草薙水素になっています。
「あの棒読みのどこがいいの?」って思う方もいるでしょう。
確かに棒読みです(笑)
でも、いいんです!
それがキルドレなんです。
話す言葉に感情はないんです。
とりわけ、クサナギは他のキルドレが兵器として「繰り返し」どんどん死んでいくの目にしながら、エースパイロットとしてずっと長く生き残ってしまった、という流れがあるのでぶっきらぼうで棒読みな感じが逆に良かったです。
そしてキルドレは成長しない子供たちという設定なので、菊地さんの大人のようにも子供のようにも聞こえる独特な声がクサナギにぴったりだった、と私は思います。

原作好きな私としては、基本的にダウナーでオルタネイティブな小説の雰囲気が、映画でもきちん再現しようとされていたことに満足していますが、それに加えて原作とは少し異なる映画のラストも良かったと評価しています。
あの終わり方は、暗くて絶望的な状況に明るい一筋の希望を感じさせて、物語に救いをもたらしていたと思います。
諦めが希望に変わるシーンに感動しました。

もちろん飛行機の戦記ものなので、空中戦もよくできています。
確か押井監督はインタビューで「宮さん(宮崎駿監督)よりもいい空中戦を描く」って言ってたと思いますが、確かにその自信だけのことはあるかっこよくて迫力あるシーンだったと思います。
でもまあ個人的にはそれでも宮崎駿監督の空中戦の方が好きですけど(笑)

他にもいろいろいいところはあったんですが、この辺でやめておきます。
あとは観て感じてみましょう(笑)
原作を知らないと良く分からない設定なので、誰にでもおすすめな作品ではないですが、「繰り返される」生と死、その先にある絶望と希望なんて感じのシリアスな物語に興味のある方はどうぞ!

そうそうあとね、この作品はエンドロールの最後まで全部観て完結です。
お忘れなく!

投稿 : 2024/05/11
♥ : 31

魔女旅に出る さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

戦争と争いは永遠に続くもの…

3年前に観た作品なので記憶が曖昧ではありますがとっても暗い内容でした。簡単に説明すると永遠に勝てないとわかっている敵に挑み続けるお話です。たくさんの人が死にます。でも人が死ぬということはこの世界では日常の一部なので登場人物の悲しみの感情がとても薄いです。どのようなメッセージを伝えようとしているのか…僕はまだわからないので今後ともこの作品を観ていきたいと思っております。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 25
ネタバレ

シス子 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

Innocent Aces

原作は未読
ゲームはプレイ経験有です

数年前に
本作ゲームを
親戚の子(♂、当時小学5年生)を相手に興じ
年甲斐もなく悔しい思いをしたこの作品

当時を振り返ると
若気の至りというのか(そんなに若くないか^^!)
思考が単純なだけだったのか

悔しさのあまり
ゲームの攻略方法や
作中に出てくる戦闘機をネットで検索して
かなり本気でゲーム対策など練ったものです
(全く参考にならなかったけど^^)


そして最近になって
このアニメ作品を視聴

そのときの煽りなのでしょうか
空中戦のシーンでは
それこそ液晶画面に穴がいくつも開くくらいに
DVDが擦り切れるくらいに(そんなことには絶対ならないけど)
何度も何度も
空中戦のシーンを観察してしまいました


とにかく
空中戦
そして
戦闘機の描写がハンパないです

作画の細かさや綺麗さもさることながら
縦横無尽に動き回るカメラワークや
所々にスローモーションを入れたりして
戦闘機の動きを
よりダイナミックに見せる演出

さらに戦闘機の細部に至るまでの設定

いたるところに
細かくて
しかもツッコミを入れたくなるくらい

ある意味
マニアックな設定が施されていることが分かってしまい
数年前の無駄な努力がこんなところで日の目を見るなんて
ちょっと空しくなるくらいテンションがあがりました


特にすごいと思ったのは
主人公の「函南優一」(かんなみゆういち)くんが操る
「散香」(さんか)という戦闘機

「エンテ型」と呼ばれる
プロペラが機体の後方に設置されている
独特のスタイルの戦闘機で

Wikiによると
「実際に飛びそうな単発単座のプッシャ機を模索した結果、外観が旧日本軍の『震電』と似てしまった」
と記述されてますが

ホントは
その「震電」自体を”モチーフ”にしてるのでは・・・
と思われるような描写が随所に見られます

被弾してパイロットが緊急脱出するときは
パイロットが怪我をしないように
エンジンと本体を繋ぎ目で爆発させて切り離したり

プロペラへの損傷を防ぐため
機銃発射時に機体外部への薬莢の排出をしないなど
(他の戦闘機はジャラジャラとバラまいてる)

その独創的なスタイル故
実機で実際に取り入れられていた特殊な仕様を
とことん盛り込み映像化するこだわり
(って勝手に思い込んでるのですが^^)

さらには
作画描写が難しいはずなのに
あえて
実機には採用されなかった二重反転プロペラを
惜しげもなく採用し
運動性能の向上を図ったり

普通なら機体が空中分解してしまうくらいの
激しいマニューバ(急激な旋回)を
いとも簡単にやってのけてしまう
等々
(ここら辺になるとかなりテキト~に書いてますよ^^)

まあ
実際には
「震電」の機体については
試作機段階で終戦を迎え
実戦での運用実績がないので

想像の範囲内での無茶な設定くらいおおいにアリなんでしょう^^
(って超エラソ~なこと書いてしまった^^!)


反面
ここまで書いておいて
お話のほうは
よく分かりませんでした!(キッパリ!)

「大人」にならない(なれない?)
だけど
お酒を飲んだり
喫煙したりする
「キルドレ」と呼ばれる「子供」(?)

私にとっては超うらやまし~(歳取らないところが)
キルドレという運命を背負わされた
主人公のゆういちくんをはじめとする
戦闘機パイロット達の
戦闘に明け暮れる

現実からかけ離れた“日常”・・・

なのかな?

戦争や空中戦よりも
彼らの日々の生活や
キルドレである自身の苦悩や葛藤が
淡々と描かれており

表情の薄いキャラデザも手伝って
ちょっと気持ちが沈んでしまいそうになります


ストーリーは
ヒロインで指揮官
そして
こちらもキルドレの「草薙水素」(くさなぎすいと)(♀)の元に送られてきた
或る一人のパイロット(今回はゆういちくん)のエピソード
という感じ

最後は
{netabare}次の男の子が基地にやってきて
“ふりだしに戻る”
みたいな感じ{/netabare}

{netabare}すいとのおめがねにかなう
「どストライク」の男の子が現れるまで
このループが繰り返されるお話・・・{/netabare}

なのかな?

{netabare}何人もの若い男の子を吟味できるなんて
うらやまし~
な~んて{/netabare}

{netabare}ちょっとだけ筋違いな嫉妬をしてしまいました^^{/netabare}

抑揚のないエピソード・・・
戦争モノなのに日常モノみたいなお話・・・
いったいどこに主眼を置いてこの作品を観ればいいのか?


でも
よ~く考えたら
こんな展開そのものが
この作品の隠れたテーマなのかもしれません

作品を構成する要素
そのどれもが
途中経過
成長過程
そんな印象を受けます

出てくる飛行機のほとんどが
現実世界では
構想段階で終わったものや
開発途中で断念されたのものばかり

キルドレという
見た目は子供
頭脳は戦闘マシーンみたいな
中途半端な状態の子供達

そして
喜怒哀楽の
感情の起伏の少ない
途中経過のストーリー

なんだか
お話が醸し出す無限ループ展開のようなものに引き込まれていくような感じ

観ていて
ちょっと違和感を覚える作品でした

投稿 : 2024/05/11
♥ : 19

67.0 21 小説原作アニメランキング21位
ノートルダムの鐘(アニメ映画)

1996年8月1日
★★★★☆ 3.7 (31)
211人が棚に入れました
15世紀末のパリを舞台に、醜い鐘突き男カジモドと美しいジプシーの踊り子エスメラルダの優しい心を描いた、ディズニー得意のミュージカル・アニメ。 醜いカジモドは彼を引き取った最高裁判事のフロローによって、ノートルダム大聖堂の鐘楼に閉じ込められて暮らしていた。だがある日、彼は下界での祭りに我慢できなくなり、抜け出してしまう。カシモドはそこで、美しいエスメラルダに出会った。彼は彼女によって舞台に上げられ、道化の王に選ばれてしまう。最初は喜ぶ彼だったが、その顔が仮面でないとわかると、人々は彼を嘲った。エスメラルダは彼をかばうが、カジモドはその場から逃げ去る。しかしフロローは腹を立て、エスメラルダの逮捕を命じたのだった……。日本語版は浅利慶太が脚本を担当し、劇団四季のメンバーが歌を吹替えしている。
ネタバレ

れんげ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

私は、「アナ」よりも「カジモド」に心打たれました。

1996年放送の、ディズニー制作の長編アニメ。
約90分。


【前置き】

「アナと雪の女王」の大ヒットが記憶に新しい、ディズニーの長編アニメーション。
さて、本作「ノートルダムの鐘」はと言うと、興行的には大成功とはいえず、知名度も他作品と比べると高くはありません。

ただ私的には、ディズニー映画としては珍しく非常にシリアスで重々しい原作を採用し描かれたこの物語と、その残酷な境遇で育った主人公「カジモド」への思い入れが非常に強く、今でも大好きな作品なのです。

この度久しぶりに見返したので、愛を込めてレビューしたいと思います。
(…てか、画像すら無いとは……。。。)



【あらすじ】

舞台は、15世紀のパリ。
そこに佇むノートルダム大聖堂の鐘楼で、ひっそりと暮らす鐘衝き男『カジモド』。

彼は生まれつき容姿が非常に醜く、育ての親である「フロロー判事」の言いつけで聖堂の上から出る事を許されずに育ちましたが、その非人道的な育てられ方とは裏腹に、とても優しく純粋な心の持ち主でした。

ある日、毎年恒例の祭で楽しく盛り上がる人々を見たカジモドは、遂に我慢の出来なくなり、大聖堂から町へと飛び出したのですが……。



【カジモドという青年について】
{netabare}
本作を語るに辺り、まず何より主人公「カジモド」の出生と境遇について整理しておきましょう。

フロロー判事の行き過ぎたジプシー狩りで死んでしまった女性の赤ん坊であった彼は、殺される寸前でフロローが神の眼前での行為を神父に咎められたことにより、聖堂に軟禁状態で育てられました。

「鐘突き堂の中に隠そう…。

 この化け物も、いつかはきっと役に立つ。」

そして名付けられた名前が、「出来損ない」という意味を持つ「カジモド」。
彼は、それから青年に成長するまで、実の親を殺したフロローに「悪い母親からオマエを救ってやった。」と言いくるめられ、育ったのでした。


改めて文章にすると、なんと救いの無い話でしょうか。
こういう境遇の主人公は、大抵が見映えの良い容姿をしているものですが、カジモドに関してはそれすら誰もが目を背けるものですから。
(奇妙な輪郭、片目に出来物、欠けた歯、太い腕に猫背のような体型と、ちょっと酷過ぎますね。)

ただ、友達が一人もいないかと言われればそうではなく、カジモドの前でしか動かない「大聖堂の石像の3人組」が、いつも賑やかにカジモドに話しかけていました。
彼らの、時に配慮あり時に配慮に欠けた立ち振舞があったからこそ、カジモドは心優しい人間になれたのでしょうね。


ちなみに、大聖堂の外観をよじ登って生活していた彼は、非常にパワフルで巧みなロープアクションも見せてくれます。
鎧を着た大人を片手で軽々と持ち上げたり、女性を肩に乗せて飛び回ったりと、立ち振舞はターザンそのもの。

そういう点からもこのカジモドは、男性視聴者から見ると特に、見映えでは分からない格好良さに満ちた青年で、私的には大好きなキャラクターなのです。
{/netabare}



【論じてみる】
{netabare}
まず映像に関してですが、とても1996年の作品とは思えない美麗な作画に圧倒されます。
ディズニー映画を始めとした海外アニメは、日本アニメのような一枚の絵に入魂して綺麗に見せる手法というよりは、画面やキャラクターを大きく細かく動かす手法が特徴なので、ノートルダム大聖堂のスケールの大きさや、カジモドの軽やかな動きがとても緻密に描かれており、昔の作品だからと映像で退屈させられることは全くありませんでした。

音楽に関しても、個人的にはディズニー映画のミュージカル調に歌い出す演出はあまり好みではないのですが、本作は特にメロディーや声が非常に心地良く、映像や歌い手の心情と共に魅入ってしまう場面もしばしば。
(それでも、また歌かよ!なんて思う時もありましたけどね。)

特に、吹き替え版のカジモドの声を担当した「石丸幹二さん」は好演でしたね。
(「半沢直樹」の前半で半沢と対峙した、浅野支店長役の方と言えば、ピンとくる方も多いかも♪)
声優としての名演技もさることながら、圧倒的な歌唱力に脱帽でした。
流石は「劇団四季」ですね。


ただ、それでも興行的に振るわなかった原因としては、やはり第一印象で、どうもポジティブな気持ちになれないからではないでしょうか。
醜い主人公というだけで、やはり一般的に見て華やかさに欠けますし、視聴者の感心を持ちにくいのも仕方無いのかもしれません。
とっても良いお話なんですけどね。



さて、物語としては、カジモドが町のお祭りに参加し、不名誉にも「パリで一番醜い男」に選ばれてしまうところから大きく動き出します。
ここで唯一、彼を人として扱い手を差し出してくれたジプシーの『エスメラルダ』に、カジモドは恋をするのですが、同じく『護衛隊長のフィーバス』や、あのフロロー判事さえも歪んだ恋慕の情を抱きます。

一般的な物語で言えば、ここでエスメラルダは醜いカジモドを選ぶ筈なのですが、彼女が選んだのは護衛隊長のフィーバスでした。
実際フィーバスは、フロローの悪質な政策に反発するヒーロー的な役割で、見映えも性格も抜群な非常に格好良い男ではあるのですが、やはりカジモドの気持ちを考えると胸が痛かったですね。
目の前でキスを見ちゃったりしますしね……。。。

それでも、エスメラルダを救出する為に、この男2人が手を取り合ったシーンは、とても熱くて大好きなシーンでした。


フィーバス「エスメラルダを見つけるには、力を合わせなきゃ、…いいな」
(カジモドの背中を、軽く叩く。)

カジモド「あぁ……、いいとも」
(フィーバス背中を、バチコーーーン!!と叩く。)

フィーバス「いったあああああっっ!!!!!」

カジモド「ゴメン……」

フィーバス「…思ってないクセに……」


大勢の一般人がカジモドを醜い怪物と罵る傍らで、当たり前のように一人の人間として対等に接するフィーバス。
エスメラルダが彼を選ぶのは、やっぱり仕方ないかもしれないですね。


最後は、大聖堂を舞台に逆上したフロローとの対決が繰り広げられます。
クライマックスであり、シナリオ的にも映像的にも非常に見応えあるシーンが続くのですが、本作最大の見所は…やはりその後の幕引きではないでしょうか。

フィーバスとエスメラルダの恋仲を、歯痒くも初めての人間の友達として祝福し、2人の手をとって重ね合わせたカジモド。
あの大きな手と、優しい表情がたまりません。

そして、大盛況の町へエスメラルダに連れられて恐る恐る姿を見せたカジモドは、その醜さにまだ不審がる人が多い中、一人の赤の他人の少女に、顔を触れられ…抱きしめられるのです。
ここの、その頬を伝う手を握り救われたような顔をするカジモドに、私の涙腺は遂に崩壊してしまいました。

これまで救いの無い人生を歩んできた青年の、幸多き未来が見えた瞬間でしたね。
{/netabare}



【総評】

大スペクタルと呼べるか、万人受けするか、と言われれば、「アナと雪の女王」の方が遥かに上でしょう。

ですが、人が人として接してもらえない苦痛…。
そんな人間が、当たり前の人として受け入れられていく様を描く本作。
こちらも、前者とはまた違った見応えと、悲痛な訴えを感じさせてくれるのではないでしょうか。

続編の、OVA「ノートルダムの鐘II」では、カジモドの後の人生を好意的に捉えられる内容がありますが、こちらは作画の低下や蛇足感も強く、少々いただけません。
ですが、「他のディズニー作品の主人公と比べ悲惨な境遇のカジモドを、ちゃんと幸せにしてあげたい」というディズニーの配慮かなと思えば、これも好意的に思えました。


ちなみに、作中で見え隠れする残酷性について追求してみたい方がいらっしゃいましたら、原作小説wikiのあらすじを是非。
ディズニーが、本作をいかに万人向けにオブラートに包んだかが垣間見れますよ。
『ノートルダム・ド・パリ』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%AA


ではでは、読んでいただきありがとうございました。


◆一番好きなキャラクター◆
『カジモド』声 - 石丸幹二さん


◇一番可愛いキャラクター◇
『エスメラルダ』声 - 保坂知寿さん



以下、ふいに思い出した、どーでもいいこと。
{netabare}

高校時代のこと。

猫背の同級生が、友人達に「カジモド」と呼ばれているのを耳にしたことがあります。


………いやいやっ、それは酷過ぎるでしょっ!!!!


カジモドにも、そのカジモドにもっ!!!!←(・o・)オイ!
{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 21
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

穢れた心から噴き上がる地獄の業火

原作小説『ノートルダム・ド・パリ』(『ノートルダムのせむし男』)は未読。

15世紀・パリ。ノートルダム大聖堂の鐘衝き部屋に閉じ込められたジプシーの“せむし男”
外見は醜悪だけど、心は清らかな青年・カジモドの物語。

(せむし男は放送禁止コードのため、本作邦題は改変されたそうですが、
そんなガラパゴスな言葉狩りは無視の方向で)


黄金期の再来と評された90年代のディズニー長編アニメ群ですが、
私はこの時期のディズニーは正直、苦手です。
自分は特に作画構成と折り合いが悪いです。

巨費を投じて、CGを活用した迫力の背景や群衆映像を構築する一方、
キャラクターは伝統的な手描きタッチを残す。

後年のキャラまでCGらしい造形で背景と統一されたディズニー作品を観ると尚更、
この時期のディズニーは大人でも楽しめるアニメへの進化の途上と感じてしまいます。


さらに私は脚本、演出にもアンバランスさを感じてしまいます。
シナリオやテーマに大人向け要素がある一方、
セリフ回しやギャグのノリは子供向け。
キャラ動作は伸縮の激しい『トムとジェリー』では……。

ミュージカル曲も近年の日本語吹き替え版でも大人の心に響くレベルにまでは達してない印象。
今観ると『アナ雪』ブームに至るまで、
ディズニーも色々試行錯誤して来たんだなぁ……と感慨を覚えます。


そんな相性の悪い90年代ディズニー作品の中でも、
比較的、興業不振だったと言う本作は個人的に出色。

やはり、作画の評点こそ高くなるものの、作画、演出のバランスは好きになれず。
後年、作画レベルを大幅に落してCG作画が削減された続編OVA『ノートルダムの鐘Ⅱ』の方が、
私はまだ安心して視聴できるくらいですが、

つんのめりながらも鑑賞して掴み取った本作の肝。
ディズニー得意の美醜設定の再生産でありながら、
差別や心の在り方を問うたテーマは重厚。

定住民から移動民・ジプシーへの差別にしても、魔女狩りにしても、
差別する側は至って真面目に正義に則って罪を重ねるあたりに唸らされます。

原作から改変されたと言う展開についても、
嫉妬と言う感情を収められた人間とコントロールできなかった人間との対比がお見事。

終盤、{netabare} 最高裁判事フロローの妄執からパリに燃え広がった魔女狩りの炎が、
ノートルダム大聖堂に迫る描写には鬼気迫る物があります。{/netabare}

ラストについても、テーマとの合致という意味では筋が通っていると思います。

ただ……やっぱり、最後、{netabare}カジモドがエスメラルダと結ばれないのは悲しいです。
嫉妬を必死に抑えながら、フィーバスとエスメラルダの関係をアシスト、祝福する言動を通じて、
清らかな心を貫き通した故、醜男が陽の当たる場所に出てくることができた。
という教訓はしっかり伝わって来るのが余計に切ないです。

悲劇に終わると言う原作に比べればハッピーエンドなのでしょうが、
悟れない私は、結局、イケメンじゃないと幸せになれないの?
と言う黒い感情がどうしても芽生えて来てしまいますw

ブサ男の幸せを願う世界の男性その他のみなさん。
今なら続編と言う救済措置があるので、是非『Ⅱ』でリベンジを果たしましょう。{/netabare}


付記:先月のパリ・ノートルダム大聖堂の大火災、衝撃的でした。

映像を観て、不謹慎にも真っ先に本作の再鑑賞を思い立ち、TSUTAYAに駆け込んだ私。
私のレンタルで在庫3本は全て貸し出し中に。
同じこと考える人がいるのかなぁと切なくなりました。

大聖堂の“立体迷路”としてのアクションやギミック、
隠し場所としてのシナリオ展開への活用等も多彩だった本作。
今回、消失した尖塔にはさらに、修復工事用の複雑な足場が組まれていたとのこと。

某国大統領はヘリから消火剤を云々とツイートされていたそうですが、
本作を観ると、大聖堂に一度、火の手が及べば消火活動は相当困難だろうなと感じます。
文化財を火災から守る難しさを再認識させられる出来事&再鑑賞となりました。

ノートルダム大聖堂は5年後の再建を目指すとのことですが、
その時に良い意味で改めて本作を思い出すニュースを聞ければ幸いです。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 10

タイラーオースティン さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

従来のディズニーとは毛色の違う作品

原作はヴィクトル・ユーゴー。「レ・ミゼラブル」の原作者らしく、善と悪の両者の存在性の内面部分までをじっくりと描いた物語だと思った。

醜い出で立ちで生を受けた主人公、彼を大聖堂の鐘楼に閉じ込め鐘衝きとして育てた独善的な最高裁判事、ジプシーの美しい踊子、正義感に溢れる警備隊長、それぞれがそれぞれの立場において苦闘し、全うする姿には、善と悪という単純な構図を越えた人間の業が表われていた。

今作のハッピーエンドは原作小説とは異なるらしいが、ディズニー映画にである以上、それは仕方の無いことだろう。
それよりも、ダイナミックで美しいビジュアルはとても印象的だった。
また、他のディズニー映画がテンポの軽いミュージカル調のものが多いのに対して、今作は全編通してシリアスなオペラを見ているような重厚さがあった。

題材が題材だけに、アニメーションだからこそ描けた部分もあったかと思ったが、実写版もかなり古くに製作されており、その実写作品のビジュアルにこのアニメ作品が忠実だったことは驚きでした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 7

計測不能 22 小説原作アニメランキング22位
グリンチ(アニメ映画)

2018年12月14日
★★★★☆ 3.8 (8)
25人が棚に入れました
 この子の名前はグリンチ。友達も家族もいないからいつもひとりぼっち。グリンチは、ずっとさびしい毎日をすごしていた。
 オトナになったグリンチは、他人の幸せがだいきらい。村はずれの洞窟で誰とも会わずに暮らしハートの大きさは普通の人よりずっとずっと小さくなった。
 そんなグリンチが、なかでも一番きらいなもの。それは・・・村中が幸せな気分に包まれるクリスマス!!しかも今年のクリスマスはとっても豪華になるらしい・・・
 もう我慢できないグリンチは、あるとんでもない作戦を思いつく。そうだ。村からクリスマスを・・・盗んじゃえ!!
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

フーの村の素敵なクリスマス +++

 吹替版、字幕版、見たです。クリスマスまでに見ると良いかもしれないです。

 ひねくれ自己中、クリスマス嫌いのグリンチが、フーの村の人達を困らせようと行動をしたです。けれど、心に変化が起き自分が、何を求めていたのかに気づいた展開だったです。

 雪景色、村の風景、展開なかなかだったです。自分的には、字幕版の方が、言葉はわかんなかったけど、良い感じに思えたです。音楽、歌がやはり違うです。吹替版とで、グリンチ周辺の文字の違いにも、注目です。

 性格の悪い平和なものが嫌い、ひねくれグリンチな展開に見えたです。愛犬マックスに対する態度、出会ったトナカイ、本人は覚えてないようだったけど再び出会ったシンディー・ルーと話したとき、絶望するはずだった村人の行動を見たときのグリンチは、根っからの悪人にはとても見えなかったです。

 働いているわけでもないのに、大量の食糧を買うことができ、いろいろな発明品を作ったり、衣装を作りいろいろな作業具を持つグリンチは不思議だったです。
 ソリのように盗みを繰り返していたのでしょうか?です。

 いろいろな発明品は、非常に面白かったし、魅力的だったです。人間でないのは明らかだけど、何の生き物なのでしょうか?です。

 トナカイのフレッドや特に愛犬マックスとの友情を描いた場面は、良かったです。

 グリンチが、クリスマスを盗むということはどういうことなのか?です。それをした時グリンチは、幸せになったのか?、そこが最大の注目点だったです。
 グリンチがシンディー・ルーや村人のやさしさに触れた時、自分の求めていることに気付いたシーン、行動が良かったです。
{netabare} そんなグリンチを受け入れ、向かい入れたシンディー・ルーたちの大団円は、HAPPY ENDだったです。{/netabare}これでいいのだです。
 

投稿 : 2024/05/11
♥ : 1

65.8 23 小説原作アニメランキング23位
借りぐらしのアリエッティ(アニメ映画)

2010年7月17日
★★★★☆ 3.6 (662)
3145人が棚に入れました
とある郊外に荒れた庭のある広大な古い屋敷があった。その床下で、もうすぐ14歳になる小人の少女・アリエッティは、父ポッドと母ホミリーと3人でひっそりと静かに暮らしていた。アリエッティの一家は、屋敷の床上に住むふたりの老婦人、女主人の貞子とお手伝いのハルに気づかれないように、少しずつ、石けんやクッキーやお砂糖、電気やガスなど、自分たちの暮らしに必要なモノを、必要な分だけ借りて来て暮らしていた。借りぐらしの小人たち。そんなある夏の日、その屋敷に、病気療養のために12歳の少年・翔がやって来た。人間に見られてはいけない。見られたからには、引っ越さないといけない。それが床下の小人たちの掟だった。そんなある日、アリエッティは翔に姿を見られてしまう・・。

声優・キャラクター
志田未来、神木隆之介、大竹しのぶ、竹下景子、藤原竜也、三浦友和、樹木希林

てけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

尻切れトンボ

ジブリ作品。

心臓に病気を抱える少年・翔(しょう)と、小人のアリエッティとの出会いを描いた作品。
アリエッティの冒険活劇です。


小さいものが大きく描かれる世界。
動物や虫、草花が圧倒的な存在感を持っています。
特に見事だったのは「水滴」。
表面張力で丸く固まる水は、よく観察され描写されているのがわかります。
また、BGMも場面にマッチしたかっこいいものが多かったです。

そんな中を駆け回るアリエッティにはワクワクさせられました。


ただし、オチが微妙。
見ていて、「あれ? もう終わり?」となりました。
一応悪役のばあさんがいますが、勧善懲悪でもなければ、特に何か大きなものを得るわけでもない。
シンデレラストーリーにはなりません。
登場人物も少ないし、全体的にこぢんまりとした印象です。

テーマもはっきりしませんでした。
小さいけれどたくましい命と、大きいけれど弱い命。
その対比で「死生観」を表現しようとしていたのかな?
ただ、見せ方があいまいであまりメッセージが伝わってきません。

悪くはないんですが、小人視点での世界観以外は、印象に残らない作品でした。


【おまけ】

生物学的にいうと、小さい生物ほど声帯が小さくなります。
その結果、発声時の音域が上がります。
つまり、人間をそのままの構造で縮小すれば、どんどん声が高くなっていきます。
アリエッティら小人たちの声は、翔にはさぞかし高く聴こえたことでしょう。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 53

えんな さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

感想

なんかもったいない
全然ワクワクしない

つまらなくは無いけど、面白くも無い。

酷評ですみません。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 45

ato00 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6

レンタル生活、アリエッティ

小人少女アリエッティと病弱な少年の交流を描くジブリアニメ。
登場人物は少なく、話はシンプル。
ただし、笑いも涙もメッセージ性もないので、どちらかと言えば退屈です。

借ぐらしのところにひっかかりを感じます。
いろいろレンタルしているのに、それを返さないなんて。
ジブリとは思えないほどの反社会的な作品ですね。

悪い意味で印象的なのは、素人声優の起用。
揃いも揃って破壊的な演技をするのは、何かを狙っているのか?
せめて、オーディションにより声優さんを選んでもらえませんでしょうか?
ジブリさん!

良い意味で印象的なのは、映像表現。
小人から見た世界がリアルです。
とくに巨大な虫が気持ち悪い。
その描き方は新鮮でした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 40

68.0 24 小説原作アニメランキング24位
劇場版 図書館戦争 革命のつばさ(アニメ映画)

2012年6月16日
★★★★☆ 3.8 (467)
2434人が棚に入れました
日本を揺るがすテロ事件が勃発する中、デートの最中だった笠原郁と堂上篤に緊急招集がかかった。新たな任務は、小説家・当麻蔵人の身辺警護。テロの手口に小説の内容が酷似しているとして、メディア良化委員会は作家狩りを始めたのだ。法廷闘争が始まる中、郁たち図書特殊部隊は判決まで当麻を守りきらなければならない。図書隊と良化隊の衝突が激化する中、重傷を負ってしまう堂上。動揺する郁に、堂上は任務の遂行を託す。郁は、当麻を守り、表現の自由を守ることが出来るのか!? ――そして郁と堂上とのもどかしい恋の結末は!?

声優・キャラクター
井上麻里奈、前野智昭、イッセー尾形、石田彰、鈴木達央、沢城みゆき、鈴森勘司、潘めぐみ

PPN さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

『作家狩り』とは…恐ろしいわぁ(;´`)

図書館戦争の続編となる劇場版になります。
タイトル通り『革命』を主に描いた作品です。

この作品の世界観は独特なのでTVアニメを
先に視聴する事をオススメします。

今作のストーリーに大きく絡んでくるのが『作家狩り』。
1人の作家の身体を巡る激しい戦いが始まります。
自由に本が読めない上に、その本を書く著者にまで
手をかける……恐ろしい世界ですよね(´ー`;)
そんな事件を逆手に取り『革命』で自由を取り戻す
行動に出る関東図書隊の活躍を描いています。

『革命』と共に作品の核になるのが主人公・笠原 郁の恋愛。
TVアニメでは曖昧な関係で終わった彼女の恋ですが
この劇場版で恋の結末を迎えますので乞うご期待(ゝω・)
シリアスなシーンも多い作品の中で笠原 郁の不器用な恋愛模様は
良いアクセントになっていたと思います。

個人的には『革命』シリアスと『恋愛』ラブコメが
バランス良く描かれていたという印象です♪
どちらのお話も十分に楽しむことができました!

1つだけ解せないのがイッセー尾形の起用。
重要なポジションをなぜ彼に演じさせたのか…。
あの演技が味だとしたらおれには理解できませんわ(;´Д`)


評価の点数はあまり高くありませんが
満足のできる出来に仕上がっていると思います。
TVシリーズ視聴済の方にはぜひオススメです♪



《キャスト》
笠原 郁(CV.井上麻里奈)
堂上 篤(CV.前野智昭)
小牧 幹久(CV.石田彰)
手塚 光(CV.鈴木達央)
柴崎 麻子(CV.沢城みゆき)
玄田 竜助(CV.鈴森勘司)
稲嶺 和市(CV.佐藤晴男)
手塚 慧(CV.吉野裕行)
折口 マキ(CV.田中理恵)
児島 清花(CV.潘めぐみ)
当麻 蔵人(CV.イッセー尾形)


《主題歌》
『初恋』/Base Ball Bear

投稿 : 2024/05/11
♥ : 31

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

“今度こそ”スタートラインに立てた図書館戦争

前作のテレビシリーズは2008年の春アニメとしてノイタミナ枠で放送されましたが、肝心の『メディア良化法』と呼ばれる架空の法律から表現の自由を訴えかけるという内容もソコソコに、ラブコメ要素がメインのトレンディドラマ風味の作品になってしまっていました;


仕舞いには原作でも重要視される【中澤毬江にまつわるエピソード】が放送局の自主規制によりオミットされるという自体に陥り、【表現の自由を問う作品が表現規制された】ということに原作者は肩を落とし、多くの原作ファンが憤慨するという賛否両論を巻き起こした問題作になったわけです
(上記のエピソードはちゃんとアニメ化され、セル版DVD3巻、もしくはBD-BOXには収録されております)


今作を鑑賞した劇場で今年のアニメ映画の中では初めての出来事だったのですが、来場者の年齢層がかなり高いことに驚き
有川作品ファンの幅広さとアニメ版図書館戦争の知名度を思い知ることとなりました











さて、今作ではやっとこさ肝心要の『メディア良化法』に対して図書隊が踏み込んでいき、表現の自由を訴えかけるという待望の展開が描かれます!


早速冒頭からテロリストがヘリで原発に自爆テロを図って建屋に穴を開ける・・・
という衝撃ニュースが飛び交い“見慣れたあの光景”がテレビから映し出されるというショッキングな幕開け


そしてこのテロ組織の犯行の手口が、原発テロを題材にしたエンターティメント小説の内容に酷似しているものとみなし、図書隊の宿敵であるメディア良化委員会は小説の著者である当麻蔵人を拘束しようとする


これを許しておけば事態を皮切りに良化委員会は『作家狩り』をはじめるであろう、と判断した図書隊の面々
すぐさま当麻蔵人を保護し、法廷で正々堂々と良化委員会、延いてはメディア良化法の在り方そのものに踏み込んで戦うことを決意し、彼の身辺警護を始める


初めのうちは事件に巻き込まれたことを他人事のように疎ましく思っていた当麻蔵人
良化隊が行う『検閲』にも、上手く逃れながら作家業を続けることがプロの仕事であると考えていた彼を通して、これまで読み手側の都合がメインに描かれていたメディア良化法が、初めて書き手側の目線で語られます


彼もまた稲嶺元司令の過去(通称:日野の悪夢)を語り聞かされ、これまで自分が無視し続けてきた検閲の非道極まりない実態を知ります
さらに図書隊の面々と触れ合っていくうち、自分の本を命懸けで守る若者たちがいた、という事実にもやがて心を動かしていくのでした・・・











当初から破天荒な世界観が物議を醸し出していた作品ではありますが、今作はやたらロケハンに凝っていて、、、
JR立川駅前
都営新宿線市ヶ谷駅
中央道諏訪湖SA
大阪御堂筋
大阪北区
そして新宿三丁目の紀伊国屋書店(新宿本店がそのまま紀伊国屋として登場)
とまあ、この辺の背景描写があまりにも丁寧すぎて映画を観終わって劇場を後にすると、ソコにはさっきまで映画の中に広がっていた景色がある・・・という強烈なデジャヴを感じました(´q`)
最近流行の【ご当地アニメ】もこういった架空の設定が前提の作品ではちょっと考えものですよね・・・


あとアニメ版で柴崎と手塚ってあんなに仲良かったっけ・・・?
いつの間に進展してたの?w
(これについては記憶違いかもしれませんので観直して来ます^^;ようつべで公式にオンエア版全話が配信中ですよー)


あとこれはこまけぇことかもしれませんが、夕食を食べてる当麻蔵人先生
どう見ても小食っぽいインドアタイプなのにご飯を「おかわり」発言ェ・・・
だって“おかずの揚物に手が付いてないよ・・・”
ご飯だけめっさを早く食べたのか?wまさかのおかず2週目なのか?w
真相は闇の中へwww


天ぷら屋でキスが揚がってくる「キスでございます」のくだりもまさかのダジャレかよ!とw
一瞬凍りつくかと思ったぜwww


音楽はテレビシリーズに引き続きオイラの大好きな菅野祐悟さんだったのですが唯一に一点だけ!どうしても気に食わないのがOPアニメーションで流れてくるかなりキャッチーで激しいロック調のインストナンバーが図書館戦争の雰囲気とまるで合っていない・・・;
そこは高橋瞳を連れてくるトコだろぉがーっ!


作画の面はとにかく笠原に注目したいですね(笑)
喜怒哀楽の激しい彼女のコミカルな表情
そして後半では、もはや一介の成人女子とは思えないジャッキー・チェンばりのアクションを繰り広げてくれますw
ホント、名実共に笠原から目が離せない作品となってますよ^q^
オイラの勝手な憶測ですけど、たぶん『わすれなぐも』でロトスコをやってた新人さんが、もしかして来てる???


いやはや、それはさておき
実弾が飛び交う世界なのに相変わらずな【絶対に死人が出なさそうな中途半端な緊張感】がこのシリーズのイチバン残念なところ;
予告編からして『堂上教官がまるで死にそうにない』のが薫り伝ってくるのは流石に問題視すべきw
あと露骨なラブコメ路線から多少シリアスな路線に回帰したことで、ラブコメとの両立が上手くいってないのも解るのがちょっとぉ・・・











んでもまあ日野の悪夢、笠原と堂上の出会いといったテレビシリーズのダイジェスト的な組み込みを説明臭くなく自然に潜り込ませたのには拍手
極めつけは劇中で一瞬ではありますが中澤毬江ちゃんが映るかつてのスタッフの罪滅ぼし的なシークエンスもあるんで多少大目にみてこのぐらいが妥当な評価
何より大事なことは、この作品を観たアナタが【表現の自由】とはどうあるべきなのか?をこの物語から汲み取って、少しでも考えるキッカケになってくれることであるはず・・・なのでは?

投稿 : 2024/05/11
♥ : 29

watawata さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

劇場版だけのことはありますね^^

TV本編は物語の起伏に乏しく個人的にはイマイチだったのですが。
やはり劇場版は違いますね。アクションシーンが盛りだくさん。
要所要所に盛り上がりのポイントがバランス良く配置されてますね。
見ていて飽きが来ませんでした。
でも作品中にTV版の補足はあるもののちょいと、説明不足でしょうかね。
まずは前作を視聴することをオススメいたします。

お気に入りの作品の一つなので、第二期製作希望です^^

投稿 : 2024/05/11
♥ : 25

73.2 25 小説原作アニメランキング25位
バンパイアハンターD(アニメ映画)

2001年4月21日
★★★★☆ 4.0 (167)
1071人が棚に入れました
菊池秀行の人気小説『吸血鬼ハンターD』を天野嘉孝キャラクター原案で映画化した劇場版アニメ。最終戦争後、人類の頭上には貴族“バンパイア”が君臨していた。そのバンパイアに対して戦いを挑むプロフェッショナルは、いつしかハンターと呼ばれるようになっていた。ある日、理想のハンターとして知られるダンピール――Dは、バンパイアに誘拐されたエルバーン家の娘・シャーロットを救出するよう依頼される。バンパイアの馬車を追うDのもとに現れたのは…。

声優・キャラクター
田中秀幸、永井一郎、山寺宏一、林原めぐみ、篠原恵美、屋良有作、大塚芳忠、関俊彦、大友龍三郎、大塚周夫、青野武、清川元夢、辻谷耕史、西凜太朗、沢海陽子、藤原啓治、鈴鹿千春、矢島晶子、小山力也、かないみか、石塚運昇、前田美波里
ネタバレ

とまときんぎょ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

…飛んで!飛ぶのよ!!

川尻善昭監督作品。
登場人物たちは奇抜な能力を持っており、アクションが盛大ですが、人間くさいところも凄く良かったです。

かつて発売されていた竹谷隆之作のスタチューの出来が素晴らしく印象的でした。
アニメも雰囲気が良いのだろうな、クラシックな吸血鬼の雰囲気かな、酔えるんだろうな、いつか観よう、と思っていたのですが。もっと早く観てもよかった。


吸血鬼と人との間に生まれ、祝福されない宿命を背負った吸血鬼ハンターのD、どこか禍々しい能力を身につけて吸血鬼を追う出稼ぎハンター達、冷徹そうで美しい吸血鬼族達、吸血鬼に雇われた用心棒の怪物共…
その中で戦いぬき、時に気持ちが揺れ動く様子が見て取れた女戦士・レイラ姐さんが、ラストへ向けて力強く光っていました。

吸血鬼によって孤児にされ、復讐のために生きてきた姐さん。
彼女がたてまえや信条とは離れたところで受け入れたもの、励ましたもの、希望したもの、それらが多く語られることはないのだけれど。終盤のセリフと林原めぐみの演技から滲み出る発露に胸打たれ、ジワジワ泣けました。
「…飛んで!飛ぶのよ!!」って、忘れられないと思います。


ハンターの人間たちは、一体どうやったらそんな魑魅魍魎じみた身体になれるんだ?という、ジョジョやバジリスクのような特殊な能力をもった者ばかりです。
レイラ姐さんの仲間のグローヴ兄さんの能力が、切なかったですね。
平時は寝たきり状態の痩せ細ったグローヴ兄さん、戦闘時に薬物で霊体として出現すると、眩い後光を放出しながら滑るように浮遊し、吸血鬼達をなぎ倒してゆくのです。この時の解き放たれた恍惚の表情が、命の限りの向こうを匂わせる夢うつつの切なさです。


絵の動きは非常に細かく美しいです。天野喜孝キャラデザの幽玄さが生かされた独特の動きで、今風の作画とは異なりクドイと感じられる人もいるのだろうなと思います。
しかしこのねちっこいのが、よいですねぇ。植物の成長を早回しで視せられている時のようです。

何度も書きますが、レイラ姐さんがよかった…。
彼女の見せる吸血鬼への正義が、吸血鬼貴族の耽美でささやかなロマンスにぶち当たって振りかざされるシーンで最も生きていました。
{netabare}(吸血伯爵にさらわれた美女は、実は彼と純愛を貫こうとしており、伯爵は彼女の血を吸うことをはばかり、ただ二人が生きられる場所へ行こうとしていました。そうなると追手である者達のほうが不粋に見えてくるのですが、レイラはキレる。「それがなんだっていうの!関係のない者達がたくさん犠牲になったのよ!?」)
しかし、彼らの健気な寄り添いあいを視ているうちに、レイラ姐さんの中で何かが変化してゆきます。 {/netabare}
吸血鬼女カーミラの館で見せられる幻想の中で、幼子(自分の子供時代)の頑なな孤独を癒そうと抱きしめるシーンでも、懐深さが垣間見えてきます。
そこからラストの種としがらみを超えた励まし…。

事件から数十年後にDがふと見守ったものは、彼女の強さと優しさからもたらされた幸せの一端のようでした。

Dをかばう職人爺さんの存在もいい味でした。スジを通す仕事人、かっこいいです。この人も胸アツです。

Dももちろんかっこよいのですが、「つ、土に埋まらねば…」の所がちょっとオモシロかったです。私も砂風呂に憧れます。


クラシックな雰囲気の人間ドラマが好きな方、ぜひ観ていただきたいです。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 28
ネタバレ

ninin さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

吸血鬼と人間の間に生まれたダンピールの美しくも切ない物語

原作既読(小説)

吸血鬼ハンターシリーズはOVA含めて2本アニメ化されています。
OVAはちょっと可愛いデザインで、中々入り込めにくい作品ですが、この作品はDの世界をよく表現した作品ですね。
キャラクターデザインも原作の挿絵を担当している天野喜孝さんがキャラクター原案として参加しているところがあって、イメージが原作と重なり入り込めやすいです。

お話は、遥か未来の吸血鬼が支配する世界。不老不死、不死身の肉体、超人的な力、超常現象、異世界の魔物などを生み出して人間を奴隷扱いにしている各地の吸血鬼を倒すために旅をしている美しき青年”D”の物語です。ダークファンタジーですね。

とにかく吸血鬼やその他の魔物が細かく書かれていて怖いですね。

主人公であるDがかっこいいです。つばの長い帽子(旅人帽)をかぶり背中には長刀を背負い全身漆黒の格好、そして口数も少なく、馬(アンドロイド)に乗り走る姿は素敵でしたね。{netabare}(特に冒頭の月に照らされたシーン){/netabare}

2001年制作と思えないほど、背景や人物の作画が綺麗で今の作品と比べても全然違和感がありません。

バトルも非常に凝っていましたね。スピード感があり、色々な能力を持った魔物との戦いは面白いです。

お話も1時間40分の中にきちんと収まっています。オススメです。
{netabare}このシリーズの最後の見せ場であるDの微笑が観れて良かったですね^^{/netabare}

最後に、この作品はDの小説3番目”D妖殺行”を元となっていますので、もし気に入った方は是非原作も読んでみてくださいね。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 25
ネタバレ

るぅるぅ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

天野嘉孝さんの絵が動いています! 度肝を抜かれた気分で参ったw

原作:菊地秀行
監督:川尻善昭
ブランド:マッドマウス
ジャンル;吸血鬼/伝奇モノ・103分
内容は”あにこれ”の粗筋で充分。

観た方の心に斬りつける正に映像美に尽きます。
キャラクター原案の天野嘉孝さんは、ロマサガやFFのキャラデザインでご存知の方も多くいると想います。人を惹きつける癖のあるタッチで妖艶かつ幻想的な雰囲気と描かれ一度観たら忘れないインパクトある絵。
あの独特の絵を描き起す再現力を観た瞬間、圧倒されました。
キャラだけではなく中世を彷彿させる街並み・荒廃した背景でも世界観を魅せてくれます。

また、主人公のDが寡黙で芯ある男らしい姿に痺れるんですよね。語りも重厚な世界観を潰さない静かな台詞回し、圧倒的な強さを描くバトルシーンから目が離せないです。
相乗効果として格調高いBGMが演出を高め、1シーンがクライマックスとさえ感じさせる絵の強さが伝って来るので、もっと見せろ! となりますw
絵とバトルだけ繰り返し観ているとゲーム感覚に近い爽快感に似た気持ちにもなりました。私だけかもしれませんね、すいませんw 

内容もシンプルでわかりやすくテンポも良いので映像美と音楽を壊さず、最後の結末も巧く素晴らしい余韻です。

不満は1つだけです。{netabare} カロリーヌ とのバトルをカットしすぎです! どんなバトル演出かと期待していたら一瞬で斬られたw{/netabare}

絵に抵抗なければ世界観・映像美に満足する作品です。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 24
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