心理学で医者なおすすめアニメランキング 4

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ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月02日の時点で一番の心理学で医者なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

87.4 1 心理学で医者なアニメランキング1位
オッドタクシー(TVアニメ動画)

2021年春アニメ
★★★★☆ 4.0 (639)
2133人が棚に入れました
平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。一応、友人と呼べるのはかかりつけでもある医者の剛力と、高校からの同級生、柿花ぐらい。彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、街のゴロツキ・ドブ、売出し中のアイドル・ミステリーキッス…何でも無いはずの人々の会話は、やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。

声優・キャラクター
花江夏樹、飯田里穂、木村良平、山口勝平、三森すずこ、小泉萌香、村上まなつ、昴生、亜生、ユースケ、津田篤宏、たかし、村上知子、高井佳佑、フェニックス、浜田賢二、酒井広大、斉藤壮馬、古川慎、堀井茶渡、黒田崇矢、汐宮あまね、神楽千歌、METEOR
ネタバレ

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

We Are The (Odd) World

「羊の皮を被った狼」という言葉があります。
物事は見かけによらない事を唱えた慣用句で、古くは『新約聖書』のマタイ7章15節を起源と据えた、由緒正しき文言だそうです。
この遥か昔の厳しき時代から、人間は全ての事象を容易に分かった振りする行為程、愚かな事はないと伝えてきました。おばあちゃんをも超越させた昔昔の知恵袋。最早開闢の始祖レベルの処世術です。


当時、その事実を初めて知った僕は何だか妙に感心したのを憶えています。
へえ、そんな古くから大切な事を伝えていたんだなあ。騙されない為に、傷つかない為に、殺されない為に。狼の食餌から逃れられるよう心しておけ。
先人達もずっと同じ事を大事に大事に伝えてきたんだ。大切な教えってヤツは色褪せないんだなあって、のほほんぼんやりと考えていました。
でもね、物心ついてから思ったんですよ。感心している場合じゃねえぞって。他人事みたいにそ知らぬ振りしてんじゃねえぞって。その時確かに強く感じたんです。


『オッドタクシー』とは有体に申せば、そんな危機感による「想起」を僕等に植えつけてくるアニメと言えます。
『アクダマドライブ』程ではないにしても、テレビ東京以外ではAmazon Prime Videoでしか無料配信されていなかった(U-Nextでは有料配信)ので、初めてその名前を聞く人も多いんじゃないでしょうか。
『オッドタクシー』が凄まじいのは第1話を観て頂けると充分分かると思うんですが、恐らく観た方の誰もが口を揃えてこう語るでしょう。

本作は、此元和津也氏による「脚本」が兎角素晴らしい。

登場人物達が綴るセンスの塊会話劇に加えて「練馬区女子高生失踪事件」と言うサスペンス要素を取り入れ、先の展開を期待させる雰囲気構築が実に上手いです。
そして何より群像劇、会話劇、推理劇。どこへ着目してもお釣りの来る深みが齎されます。絶妙に上手くキャラが絡んでくる矢先、新しい関係を一部描写でチラッと人知れず提示してきます。掛け合いを聞いているだけでここまで面白可笑しく進行していくリアリスティックなアニメはあまり観た事がありません(映画やドラマなら結構あるんですがね)
特に「会話劇」が紡ぐ面白さってのは、アニメで初めて拝見出来たような気がするんです。聞いていて違和感のない、アニメだなあと良い意味で思わない台詞の数々、会話の節節。無駄にハイテンションだったり、話し合いに違和感を覚えたり、実際こんなヤツいねえだろと思わせてきたりするモノはどこにも居ません。皆が僕等の住む世界に人知れず居そうな。姿形が動物ってだけの、実に人間らしい奴ばかりが多く登場してくるんですね。
そしてその中でも際立っているのが「キレのある台詞」です。此元和津也氏が綴るキャラクターの口調は、その動物達が生きているように感じさせる程、人物を見事に上手く立たせています。
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「俺は質問されると選択肢が5つ位出てきて、その中からどれがベストか、そして誰も傷つけてないかを考えるから時間がかかるんだ。あんたは思いついた事を何も考えずにぱっと応えるから早いだろうけど」
「早速傷つけたじゃん」

「気持ちわりい。スタバで原稿って言う謎のクリエイターアピールも余計だし、面白い現場を見たのみならずそれをこんな端的に伝えちゃう私、マジセンスの塊っしょ!っていう隠しきれない自惚れ感も気持ちわりい」
「物凄い嫌悪感露わにするじゃん……」


『オッドタクシー』1話 小戸川・樺沢
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例を挙げるなら、第1話の小戸川と樺沢の会話……ファーストインプレッションが重要な物語において、捻くれたキャラクター性に溢れる主人公の魅力が存分に発揮されており、掛け合いの中で「この主人公は絶対好きになれるヤツだ」と、数分で確信出来ました。


しかしそもそもにして、名作を冠するに余りあるトップスタートだったと、今でも強く感じるんです。
不思議な悪夢を見て飛び起きたタクシードライバー、小戸川の描写から幕を開け、偶々つけたラジオではホモ・サピエンスってお笑い芸人がラジオで不満を綴る中、様々なキャラがしれっと登場。そして流れるミステリーキッスの『超常恋現象』と言う第1話冒頭の場面から、僕は既に惹き込まれていたと言えます。「このアニメ、本気で来てるな」と強く感じてから、小戸川と剛力の「ブルース・スプリングスティーン」が突入してきて、見事に笑ってしまったので、視聴継続を確定しました。
そして、そんなキャラ達が紡ぐやり取りの中で、1つの大きな軸となっているのが冒頭で語られる「練馬女子高生失踪事件」です。繋がりを推理する想像の面白みを与え、キャラクターそれぞれの行動原理も考えさせる奥深い構図と成っています。Youtubeにて投稿されたオーディオドラマも証拠に据えて、樺沢のTwitterなんかも見たりして、女子高生の行方と犯人を突き止めようと考察していく過程が堪らなく面白かった次第。リアルタイムで放送を追えた事に深く感謝したいなあと、深く思えた時間でした(因みにアニメ内だけでも証拠は揃っているので考察可能なり)


要するにこの『オッドタクシー』と言うアニメは、そういった「魅せ方」と言うのを心得ている製作陣のセンスの良さを、非常に色濃く感じるんですね。
特に脚本家もしくは物語を書く人に、特に観て欲しいアニメと言えます。気になっていた主要の伏線を全て回収する手際の良さは然る事ながら、その中に展開の盛り上がりを据えて丁寧な帰着、その後凄まじい引き際を見せつけて、先の行方を是が非でも観たくなる着地構成は、多くの方が参考にして欲しい名展開と化しました。
「会話劇」だけならただの色物コメディとなっていたかもしれない所に、物語性の基盤となる「群像推理劇」をもう1つの基軸に据えて。会話だけで面白くさせながら展開を進めていく脚本を、魅力溢れる動物が紡いで。キャッチーな魅力に溢れた演出や音楽で引っ張っていく、油断も隙もない作品です。
決して可愛い動物達が紡ぐ子供向けアニメなんかじゃない。令和を象徴する傑作アニメと全13話観終えた直後に確信出来た、大傑作のプロフェッショナルアニメでした。



最後まで観て思った事
{netabare}
そしてそう思ったからこそ、観ていく内にド嵌りしていく中で分かっていく1つの事実が恐ろしいんです。『オッドタクシー』が伝えてきたメッセージの恐ろしさに、視聴後の僕等は心底恐怖します。
可愛い動物達の会話劇で上手くコーティングされていますが、本作が紡いでいるのは「徹底的なリアリズム」です。
やっている事が兎角えげつない。本当に怖すぎる。これがアニマルチックに脚色されていなかったら、気持ち悪すぎて直視出来ない部分も多々あります。
描かれた自然主義の厳しさと、臭い物に蓋をした上で徹底的に隠蔽された煌びやかな理想。その圧倒的なギャップの落差に寒気がして「そうか、これが勧善懲悪では終わらない『現実』の奏でる怖ろしさなんだ」と、僕は甚く戦慄したんですよ。


だからこそね、僕等はね。『オッドタクシー』を観て「羊の皮を被った狼」ってヤツを心に留めておかなければいけないんです。騙されない為に、傷つかない為に、そして食べられない為に。それは寧ろコミュニケーションツールが発達しすぎた現代だからこそ、身に沁みておく必要があるんじゃないかと思うんです。
不条理な世界の隠蔽は未だ全てが解明された訳じゃなく、そこかしこにSNSでも掴めない「闇」が隠されています。いたいけな存在を狩り尽くしてしまう狼は、もしかすると貴方のすぐ近くにいるかもしれない。赤頭巾ちゃん気をつけて!と忠告しても遅い世界が、僕等の佇む世界かもしれない。
人間誰しも何かしら、多くのものを抱えている。
だから相手をわかった気になる事程、怖いものはないかもしれない。そいつが放つ行動が、もしかすると自分の運命すらも一変させてしまう、世に放ってはいけない類の産物と化すかもしれない。
最後まで狼たっぷりの世界。彼が「どちらまで?」と尋ねて向かう先は、果たして地獄か天国か?
行先不明。奇妙なタクシーが未だ動き続ける道の先に、僅かでも幸運が舞い降りてくる『理想』を思わざるを得ない。それが視聴後、僕が至った喪失感そのものなのでした。
{/netabare}



だからこれは「羊の皮を被った狼」
『オッドタクシー』を簡単に纏めるとするなら、これはそんな物語。文字通り、一生忘れられない物語です。
「何このアニメ、知らない」って思った迷い人の貴方、今からでも遅くありません、即刻観ましょう。孤独な街の片隅で車を走らせるタクシードライバー小戸川と、彼を取り巻く動物共の会話劇サスペンスに酔いしれましょう。
誰もが心に空虚感の中で交わされるやり取り、退屈凌ぎの群像劇も作中に彩を添えて、つまらん現実を刺激的に楽しませてくれました。練馬区女子高生失踪事件の犯人は誰か。考えながらオーディオドラマと合わせて視聴してみると、更に面白い事確実でしょう。
間違いなく、今期どころか今年のアニメを代表する作品です。多くの人に観て欲しいなあと感じた全話終了後の喪失感でした。



そしてどうか視聴の際は、覚悟を抱いてお臨み下さいますように。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 13
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

しっかりと交錯した人間関係から事件が起こる一級品のミステリー

人間社会の”ジャンクション”であるタクシーと運転手。
そこを起点に世間の闇や、起因する事件を暴きつつ巻き込まれて行く、
ミステリー要素を盛り込んだ1クールのオリジナル群像劇。


【物語 5.0点】
事件は社会を映す鏡である。
よくニュースのコメンテーターが不可解な事件の解説でお茶を濁す時のセリフ。
が、本作の事件は本当に社会を映し出すような説得力がある。


社会にひしめく他者と折り合い、
呼吸するために吐き出したどーでもよい掛け合いに込められた皮肉など、
ホントあるわwと共感してしまうセリフ回し。
これを接着剤に構築した人間関係に惹きつけられるハイセンスな脚本。

事件の法的責任は確かに犯人にある。
だが無関係に思われる市民が支持したお笑いやアイドルのトレンドとか、
スマホゲームとか出会い系とか。
時代が孕んだ空気が巡り巡って事件発生の土壌を形成する様に何度も首肯させられる。

たった1人の狂人のみで事件が完結するはずはないが、
時代は悪を一手に引き受けるヒールという単純な勧善懲悪ストーリーを渇望する。
本作はネット動画やSNSを通じて、スケープゴートを求める集団心理や、
それを焚きつけるSNSの承認欲求依存までも事件の背景に組み込んで来る。

時代を映しとる。その解像度の高さに目を見張る。


【作画 4.0点】
アニメーション制作はP.I.C.S.とOLMの共同。

細密でリアル志向のシナリオとは対照的に、背景、作画はデフォルメ重視。
混線しがちなミステリー人物相関図を把握するには、
記号として有用なアニマル顔のキャラデザは鉄板。
例え人名把握が追いつかなくても、性格含めてスルスル入って来ます。
ホントこれで皆なんで人探すのが苦手なのか不思議ですw

これは密度を抑えた背景から整理しやすい日時や場所、
デザイン簡略化された小物から発見しやすいキーアイテムも同様。

それでいて表情描写は心情を深く反映し、
アニマル顔が単純な記号に留まらないことを証明。
最終話のキャラ描き分けについては、私は驚きよりも、
内面から人物描写していたんだなと確認できた納得と喜びが上回りました。

一方、CGで構築されたタクシーはチェイスシーン含めて凡庸。
但しクライマックス{netabare}満月の中に舞うタクシー{/netabare}は中々のインパクトw


【キャラ 4.5点】
主人公のタクシー運転手・小戸川。
デ・ニーロの『タクシードライバー』ほどやさぐれてはいないが、
偏屈で他人と関わりを持ちたくない人物。
が、社会に出ていれば、ましてタクシーなどという交差路にいれば、
何気ない言動が事件に関わったりするし、
思いがけず、誰かを不幸にしたり、幸福にしたいあの人を想ったりもする。
小戸川自体にも謎が多く、その興味も視聴動機となる。


緻密な人間関係の描写から、
これは一人ひとり掘り下げたら相当深い人間心理を見せてくれるのではないか?
その手応えは「田中革命」、ある人物の半生深堀りで確信に変わる。
この一撃があったことで、ますます人物の掛け合いに実在感が増す好循環。
事件のアリバイやトリックよりも、そのキャラの動機や真意を知りたい。
振り返れば、この時すでに、タガは外れていたんだと思うw


【声優 4.5点】
揃いも揃って特徴的。
主人公・小戸川役の花江 夏樹さんの屈折を含んだおっさんボイスなど、
中毒性が高い声が飛び交う。

想定以上の作品好評を受け、YouTube公式にアップされた幕間ボイスドラマ。
そこで声を聞いただけで、セイウチやらイノシシやらの顔が浮かんで来るのはお見事w

キャストは基本声優陣だが、
漫才コンビの「ホモサピエンス」役には実際にM-1に挑んだお笑いコンビ・ダイアンを起用するなど、
適宜、本物の声にこだわる。

その流れで変化球だったのはラッパー・METEOR(メテオ)の参加。
軽快に韻を踏み、自己を押し通す危険なヤマアラシ・ヤノ役を熱演。


【音楽 4.0点】
劇伴はPUNPEE氏らHIP HOPシーンのアーティストが担当。
普段は会話劇を邪魔にならないフレーズの繰り返しで下支えする、
ミニマル・ミュージックに徹する。
が、ヤノが韻を踏んだり、アルパカがカポエイラを披露するシーンでは前に出てノッテくるw

OP主題歌もPUNPEE氏が澤部 渡氏のソロプロフェクト・スカートとコラボして制作した「ODD TAXY」
HIP HOPにアコースティックギターやサックスも絡んだ、猥雑な夜の街を思わせる、混沌とした構成に、
哀愁漂うハイトーン男性ボーカル。
OPアニメのチョークのかすれ字の如きテロップと合わせて何とも言えない渋味を醸し出す。

ED主題歌は作中で地下アイドル「ミステリーキッス」センターも演じた三森 すずこさんの「シュガーレス・キッス」
みもりんも、どうやって歌い分けているのか不思議なくらい多彩なボーカルを発する声優アーティストですが、
本作ではポップなナンバーに合わせて“甘い嘘はいらないわ”などと萌える高音の虚像を飛ばして視聴者を幻惑。


【感想】
今春4月1日に公開予定の劇場版『オッドタクシー・イン・ザ・ウッズ』
鑑賞者は何を目撃させられるのか?
この濃厚な人間描写ならTVアニメ版を別角度で描いても、
その上で新展開を続けても、例え、大嘘を見せられても面白そう。

今年のエイプリルフールは楽しくなりそうです♪

投稿 : 2024/06/01
♥ : 44
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

アメリカ的な種の混沌

アニメーション制作:P.I.C.S.、OLM Team Yoshioka、
監督:木下麦、脚本:此元和津也、
キャラクターデザイン:木下麦、中山裕美
音楽:PUNPEE、VaVa、OMSB

絵の雰囲気、話の流れなど、
観るまでのハードルが高い作品かもしれない。
しかし、観始めると良質なシナリオと
連続する謎によって視聴者をグイグイ引っ張る。

登場人物たちが全員動物というのが、
普通のミステリーが得意でない人にも、
新鮮な気持ちにさせてくれる。
まさに私がそうだった。
正直、私はミステリー作品に完全に飽きているので、
そもそも、ほぼ興味が持てないし、
よほど良質なものでないと、
余計な思考ばかりが頭を巡って作品を楽しめなくなってしまう。
しかし、この作品の場合、動物のキャラクターが
そういうミステリー作品鑑賞時の弊害を
ある程度、無効化してくれるのだった。

この作品に興味を持ったことのひとつが、
アメリカの犯罪小説に影響を受けていると
想像できることだった。
日本の昔の犯罪小説やハードボイルドものだと
横溝正史や江戸川乱歩、京極夏彦たちに加え、
大藪晴彦や西村寿行、森村誠一、大沢在昌あたりが挙げられるが、
その影響は皆無に思える。
ところが、ハメットやチャンドラー、ロスマクなどの
アメリカのハードボイルド作品の雰囲気は感じられる。
それは主人公が内省的で気難しいところと、
多種多様な動物たちの絡み合い方に、
アメリカの小説っぽい雰囲気があるからだ。

登場人物がバラエティに富んでいるのも
アメリカっぽい。主人公はタクシー運転手で、
そのほかに看護師、医者、ヤクザ、ヤクザのボス、
悪徳警官、アイドルグループ、そのマネージャー、
キャバクラの店員、お笑い芸人、目立ちたい大学生、
頭の狂った犯罪者などなど。

これだけ多くのキャラについて
それぞれきちんと背景を見せながら、
物語に絡ませて、理由も描いていくのは、
いかにもアメリカの犯罪小説によくある展開といえる。

そのキャラのなかでも面白いのは「ドブ」という存在。
ヤクザの幹部であるゲラダヒヒという動物なのだが、
彼の生き方がとても興味深いし、この「ドブ」という名前が
いかにも社会の底辺をよく表している。

「ドブ」は、昔は街のなかにいくつもあった。
整備されていない下水溝のことで、
ゴミや汚水がいつも垂れ流されていたのだ。
社会の位置づけとしては肥溜めに近い。
最近は全国的にインフラが整備されたため、
「ドブ」は見なくなったのだが、
そんな名前のヤクザの幹部が重要な役割を果たす。
しかも、彼はヤクザとして、男として矜持を
持っているような部分が見え隠れする。

アメリカのブルースの巨星に「マディー・ウォーターズ」と
いう人物がいる。アメリカ音楽が好きなら
ほとんどの人が知っているほどの有名人だが、
彼の芸名を直訳すると「泥水」だったことをふと思い出した。
ボトルネックギターと体の奥底から響いてくるような
太く独特なヴォーカルが一度聴いたら忘れられないほどの
強烈なインパクトを残す。
昔よく使われていた音楽における「アーシー」という言葉は、
まさにマディのためにあるように思える。

私の勝手な想像では、
この作品はアメリカ的な要素に彩られている。
主人公が太っていて、理屈を話すときには
説得力があるのだが、いざ行動すると、
あまり役に立たないのも
アメリカハードボイルド小説の主人公像だったりする。

何だか関係のないことばかり書いてきた気もするが、
この作品は、そういう混沌を広げてみせながら、
緻密な伏線を張り巡らせて、それを1本の線に
上手くまとめていく面白さがある。
常にいくつかの謎が横たわり、想像力を刺激してくれる。
登場人物たちの過去を丁寧に掬い上げ、
ストーリーに組み込んでいく手法も優れている。
おそらく多くの人々がシナリオの展開の妙に
引き込まれていくだろう。

{netabare}この作品のそういう良さが上手く表現されているのが、
ラストの車の飛んでいくシーンだ。
誰もが心に何かを抱え、それぞれが細い糸でつながっている。
そんななか、小戸川が軽々と空を飛ぶ。
関係者は皆、近い場所にいて、その瞬間に直面する。
関係があるようでないような人々が、ある一瞬につながる。
これこそが世界の奇跡のひとつ。
美しい出来事といえるのだろう。
私がこの作品でいちばん気に入っているシーンだ。{/netabare}

人種の坩堝を表現しているような作風だけに、
反面、キャラへの描き方が浅く感じられるのがマイナス点。
ミステリーとしては捻りが足りないし、
そこのキャラの心情表現も描写不足を感じた。
特にドブとの決着については、
私が気に入っていたキャラということもあるが、
あまりにも簡単にまとめようとしているように
見えてしまった。

とは言え、多くの人々を魅了した作品であったことは事実。
4月には事件の裏側と続編を描いた映画
『オッドタクシーイン・ザ・ウッズ』が公開予定。
ローカル局とネット配信だけだった作品だが、
それだけ話題になったのは間違いない。

混沌の先に広がっている景色に着目したい。
(2022年2月5日初投稿)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 50

66.1 2 心理学で医者なアニメランキング2位
空中ブランコ(TVアニメ動画)

2009年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (267)
1406人が棚に入れました
不眠症を患うサーカスの空中ブランコ乗り・山下公平は、着ぐるみを着た謎の精神科医、伊良部(いらぶ)一郎の診察を受けた。
それからというもの往診と称し公平につきまとう伊良部だが、公平のもとを訪れるヘッピリ腰の区役所職員やスキーゴーグル着用のヤクザといった、ちょっと変な人々をおもしろがってばかりいた…。

声優・キャラクター
三ツ矢雄二、朴璐美、杉本有美、森川智之、三木眞一郎、浪川大輔、平田広明、入野自由、高橋広樹、岩田光央、羽多野渉、置鮎龍太郎、古谷徹

四畳半愛好家 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

伊良部先生…なんか変に格好良すぎない?(求めてない)

 簡単に言うと、精神科医伊良部の元に、たくさんの精神的な問題を抱えた患者たちが現れ、回復していく短編集。
 なかなかポジティブな気持ちになれる良い作品です。
 
 原作は奥田英朗の「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」「町長選挙」の伊良部シリーズの既刊三作(2016春現在)から。
 私は奥田ファンでもあるので、すべて読んでいて、特に「空中ブランコ」は直木賞を立派に受賞している名作。「イン・ザ・プール」はギャグ色ばかりが強く、「町長選挙」は正直つまらない。「空中ブランコ」はギャグと一種の感動も詰まっている名作なので、読むならこれだと思う。(時間があるならイン・ザ・プールから読むべきですし、普通にオススメしときます。)

 このアニメ「空中ブランコ」についてですが、独特な作画・演出に独特な内容…変わったアニメが観たい方はチェックしとくべき作品です。
 いい感じにスッキリEDに入る話が多くて、気分のいい作品だと思います。
 電気グルーブのOP・EDは凄く癖になるいい曲です。


以下やや批判的な長めの駄文

このアニメの好き嫌いが分かれそうな演出
・患者の男たちを演じる声優が豪華なんですが、たびたびキャラの顔が演じられている声優さんのものになる
・福井謙二アナウンサーがたびたび解説を加える
・エロい感じのナースが実写である
・色合いが過剰にカラフル
・主人公「伊良部」への原作イメージが崩れないよう伊良部は3パターンある

 個人的に声優の顔になる演出は、慣れたので大丈夫でした。
 アナの解説は、正直いらないです。ただ、トンデモ医学って感じの原作に比べ、アニメ伊良部は割としっかり医学してるみたいなので、解説はあっていいのかも…
 ナース実写も、色合いも正直好きじゃないです。伊良部は変わった人間ですが、あんな芸術的な部屋で診療してるイメージは全くありません。

 そして伊良部に3パターンの演出ですが…正直意味が分からないです。伊良部は「色白のデブ」で「マザコン」で「小学生並みの思考」で「常識が一切通じない」タイプだったはずでは?
 アニメの伊良部は基本的に知的であり、ふざけてるシーンも計算で、決めるところはクールに決める、まるでイケメンな感じの精神科医。
 一方原作伊良部は、適当な解説を加えつつも、基本的に考えずに行動して患者を振り回し、患者さんはあきれる中でヒントをもらい、勝手に回復に向かっていく…。まさに「愛すべき馬鹿医者」
 テイストが全くもって異なっていて、イメージを壊さないための演出だとするなら、感性が全くもってずれている気がする。
 むしろ原作との乖離を際立たせる演出だと思います。

 最後に物語ですが、一話「空中ブランコ」を観た全国の原作ファンは「違う、そうじゃない!」と感じたでしょう。クスッと笑える良いラストシーンなのに…何故変えた!伊良部の阿呆さ加減を変更しているのだから仕方ない気もしますが、勿体ない!話もなんかフワフワしていて、分かりづらく、これだと1話で離れてしまう方が多い気が…。

 あと3話の「恋愛小説家」は原作では「女流作家」なのですが、患者の友人のキャラが個人的に大好きなのに、一介のモブに格下げされていて、目茶苦茶がっかりしました。本当に格好いいキャラだと思うんですが…是非原作「空中ブランコ」をチェック!

 アニオリについては、10話と最終回の11話は、アニメオリジナルだと思うのですが、10話の「オーナー」は演出を含め、凄く良かったです。逆に、最終回の「カナリア」はなんか嫌でした。無理矢理最終回っぽくしたって感じですかね…

 なんか長くいらないこと書いた感じですが、すごく特徴的なアニメで、合う人には合うアニメです。アニメ好きならチャレンジしてみてはいかが?

投稿 : 2024/06/01
♥ : 10
ネタバレ

manabu3 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

この滅茶苦茶な作品は「完璧なものは存在しない」と身を以て示している

色々な意味でぶっとんだ作品。作画には実写が混じり、主人公は三体に分裂し、色彩は眩しいほど派手やかで、扱う内容はデリケートな「心の病」という、一癖も二癖もあるアニメ。お勧め出来る作品とは決して言えないものの、心の病という日の当たらないテーマを扱ったことだけでも意義があり一見に値する。精神科が舞台とはいえ内容は重くなく(寧ろ軽い)、症状も身近なものを扱っている。話は一話完結型であるが、すべての話が繋がっており一つの作品としてしっかりと完成されている。

主人公である精神科医・伊良部一郎はとにかく破天荒だ。そんな主人公の元に様々な症状を患った人々が訪れるのだが、訪れた患者は「とりあえず」ビタミン注射を打たれてしまう。主人公と患者、「どちらが症状を患っているのか?」、そんなことすら思うほど主人公(クマ)の破天荒ぶりは凄絶だ。それをイラッと感じるか、クスッとするかは人によるだろうが、精神疾患という微妙な題材故に好みや評価は極端に分かれるかもしれない。それに加えてこのアニメは「ふざけること」に主眼を置いているようにも思える。

{netabare}このアニメの最後は「No one is perfect!(完璧な人間なんて存在しない)」という言葉で締めくくられる。みんなどこか欠けているから人間は人間であるのだと感じさせる言葉だ。全知全能の神さまじゃない人間は(当たり前だけど)欠点を持つ。辞書には「欠点、欠ける」について「短所、劣っていること、あって当然なことがないこと」と説明してあるが、(辞書の意味を否定するつもりはないけど)それはあくまで考え方の問題であり、必ずしも「悪い意味」に直結しないと私は思う。何故なら繰り返しになるが人は根本的に完璧ではないし、そもそも「欠けていること」は善悪の問題なのかに疑念を抱くからだ。

話は逸れたが、この作品が示唆するであろうことの一つは、もし何か「欠点」で悩みを抱えていることがあるのなら、それは本当に精神を病むほどまで悩む問題であるのかを一度熟慮する必要がある、ということである。詰まる所、作画・色彩・主人公に至るまで「何故か」滅茶苦茶なこの作品は、「自分のことをオカシイと思っているアナタより、この作品の方がよっぽどぶっとんでるよ(笑)」と、身を以て示しているように私には思えるからだ。殊に「医者」の言動・風貌が来訪した「患者」より「狂っている」ように思えたのだが、それは以上のような理由からだろう。デリケートなテーマの中でのそんな型破りの主人公に私は笑ってしまった。些細な悩みが一瞬だけぶっ飛んだような気がした。とはいえ、「狂っている」と上記したが、主人公の治療法は(専門家ではないので分からないが)あながちアリかなとも思える。

最後に、最終話での「カナリア」についての(真面目な)話は示唆に富む描写だった。心の病を患った「カナリア」は、我々が気付かないだけで身近に存在するし、我々自身無意識にカナリアになっているのかもしれない。殊に「カナリアは周りがおかしいことを知らせてくれる英雄」という言葉には考えさせられた。カナリアは「周り(自分も含む!)がおかしいから」カナリアになったのかもしれない。
まず、カナリアの声に気付くこと。
そして、問題の根源はカナリアだけではないということ。
カナリアになるには、理由がある。それは必ずしも先天的なものとは限らない。自らの言動を自己省察すれば「“おまえは”おかしい」という言葉は自ずと使わなくなるのではないか。そしてきっと「カナリア」も減少するのではないかと思う。{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 5
ネタバレ

じぇりー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「精神科」を題材にしているという時点で、既に賞賛に値する

かなり視聴者の間で賛否の分かれたという、斬新なテーマ性と演出が際立つ本作だが、私は大いに「賛」の方に一票入れたい。

今でこそようやく日本でも「メンタルヘルス」などという言葉が聞かれるようになり、精神疾患に対する認識も広がっては来ていると思うが、まだまだ偏見や誤解は多い。

この手の病に関わったことのない人がこのアニメを見ると、主人公の精神科医・伊良部を「心を病んだ患者に破天荒な荒療治を施すアホ医者」と評するかもしれない。

逆だ。確かにアニメとして・娯楽作品のエッセンスとして、現実離れしたぶっ飛んだ行動を伊良部は取っているが、本質的には実際の治療で用いられる「行動療法」を、人を食ったような態度を取りつつも、その実、一人一人の患者の症状に合わせて、向き合い・実践している。

これができる医者は現実には少ない。伊良部はそういった意味では十分過ぎる程に、名医なのである。

演出に関しては、ビビッドな色使い、3変化する伊良部、実写のナース、通行人などのモブキャラは段ボールに絵を描いたようなペラペラ姿…というだけで、他に類を見ない演出だというのに、加えて…

各話の主人公となる患者の声優の顔が、アニメにコラージュされて、時々(顔だけ)実写になるという点には驚いた。新しすぎる。

しかし、作り手側にとって本アニメの最も挑戦的だったであろうこの「声優の顔コラージュ」に関しては、関連項目の★を下げさせてもらった。

なぜならば、重要なシーンでの患者の表情がアップになる場面や、そのエピソードに於いては最もキーとなる台詞が語られる場面で、急に患者の顔がアニメから実写になると…

「金歯…」「わ!この人、女の子みたいに眉剃ってる!」「ここで、その表情はないわー…」

…と内容に集中できず、気が散ってしまうのだ。
何気ないシーンにだけ、実写顔を使っていたら、「面白い!新しい!」と思えたのだろうけれど…

逆に、作中最も雑な扱いを受けているのが、段ボールタッチで描かれているモブキャラ達である。

仮に「モブキャラ=健常人・社会全般」と捉えると、この描き方に私はある種の爽快感を感じたが、実はこれ考えようによっては非常に残酷な現実を表している。

要はこういう「薄っぺらな社会」や「他人の気持ちを顧みない人々」が、不器用でも真面目に生きようと懸命にもがいたり、繊細な心を持つ人々を「病」に追いやっているのだ。

最終話で伊良部が放つ{netabare}「普通の人が一番厄介」「あなたは気付かなきゃいけないね。周りにいるすべてのカナリア(精神疾患を持つ人あるいはその予備軍、と私は捉える)の声に。」という言葉{/netabare} は、実に「その通り!」と私は声を大にして言いたい。

一見ギャグタッチで描かれ、現実離れしているように見える本作だが、内容そのものは決してオーバーではない。
特に患者の言動や症状は、どれもある種テンプレート的な典型例だ。

あらゆる人に、是非お勧めしたい作品。

そして、これを見て身近に似たような状態の人が思い当たるようなら、できる範囲で手を差し伸べてあげてほしい。

ただ、伊良部のようなアプローチ方法は、超高等技術なので絶対に真似してはいけない!(笑)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 13

62.2 3 心理学で医者なアニメランキング3位
アニメで分かる心療内科(Webアニメ)

2015年2月13日
★★★★☆ 3.5 (333)
1472人が棚に入れました
うつ・ED・認知症~えっちなお悩みまでわかりやすく解説する臨床心理士・療と、突飛な方向へ誤解しがちなナース・あすながお届けする最先端のメンタル治療!? 心療内科にて扱う症例をテーマに、"笑えて学べる"異色の心療内科ギャグアニメ。

声優・キャラクター
三木眞一郎、遠藤ゆりか、日笠陽子、内田真礼、緒方賢一

vbkOs43966 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

シャ○ライフ!(笑)

「心の病をクスリで治す」というビジネスだと~?(笑)
笑わせるんじゃァないよ~全く(笑)

年々、「心の病の種類と数」が「増えて」おりますからなァ~(笑)
積極的に病気の数を増やしてどうする?(笑)
無論、お客様の数を増やしたいんでしょうなぁ~(笑)
バカげた世の中でございますナア(笑)
新規のお客様開拓を怠らない逞しいショーコンには見習うべきところがございます(笑)

そもそも、
ココロの病を投薬で治すという発想からして、イカれているのであります(笑)
順序が逆でしょう、と(笑)
投薬するために、ココロの病気を「作っている」んでしょうが(笑)
スゴいですね~、「ビジネスの本質」ここにアリって感じでございますな(笑)
実に素晴らしい(笑)

ただし、
わたし()にとっては、メンタルクリニックなどというものは不要の長物ですよ(笑)
不要も不要、むしろ無い方が助かりますな、いろんな意味で(笑)
例えば「お前は病気ダァ」などと偉大なるお医者様から宣告されて、その結果、強制連行(笑)されてシャブ漬けにされたんじゃあ、たまりませんからなァ~(笑)

私に言わせれば「投薬系メンタル治療ショップ」というものは「情報弱者」を食い物にする「ビジネス」以外の、ナニモノデモございません(笑)
つまり「心の病」という胡散臭さを濃縮したかのような「デタラメ」や「でっち上げ(笑)」を素直に信じてしまう素朴な人間は良いカモであり、「狙われる」というわけですよ(笑)
ともかく世に数多存在する投薬ショップとは、事前に「ヤバさ(笑)」を知っている人間が近づくような場所ではございません(笑)

もし他人から投薬系メンタルショップへの通院を薦められたとしたら、それはつまり、自分が「強制収容所」に送り込まれる手はずが整いつつある事を示していると考えるべきでしょう(笑)
危ない危ない(笑)
自分の身は、自分で護らないと、いけませんよね~(笑)

と言っても、
親が情弱だったりすると、不幸にも子供がシャブチュウになってしまうことが、あるかもしれませんなぁ~(笑)

母「ドクター先生()、この子は"どんな感じ"なのでしょうか?」
ドクター「うーん、そうですねぇ、とりあえずシャブチュウにして、様子をみましょう」
母「あ、ありがとうございます~今後ともよろしくお願い致します~」
ドクター「いえいえ、ただし、オクスリはきちんと飲ませてくださいね~、お大事に~(クスリ切れたら買いに来いよ~)」
と、"こんな感じ"でしょうかね(笑)
おー、怖い怖い(笑)
子どもは親を、選べませんからねえ~(笑)

さて、(笑)

やはり、権威ある偉大なるお医者様から「あなたは○○というココロの病気で(あるかもしれませんので)す」などと言われて、それを素直に受け入れる純朴な人間こそが、メンタルクリニックにとっての「上客」ということになりそうですね(笑)
権威に弱い情弱は、死ぬまでカネを搾り取れる最高のカモである、と(笑)
メンタル投薬業界は「構造的には」そうした側面を有していることになるのでしょうな~(笑)

事実、世のシャブ販売者(笑)は例外なく、情弱を食い物にしております(笑)
「苦しい気分や状態が楽になるよ?不安もなくなるよ?試しにやってみないか?」と、「シャブ」という具体的なソリューション(笑)を提示して、情弱から定期収入を得るビジネスを展開しているのであります(笑)
で実際、効果があるんだから、売れるわけですよ(笑)
しかも、手軽で即効性がありますからねえ(笑)
魅力的なソリューションという話にもなりますわな~(笑)

もちろん、
シャブ売りマンは情弱をシャブ中にして死ぬまでカネをムシリとることが目的であり、情弱を助けて救ってあげようなどという気持ちは、微塵も持ち合わせておりません(笑)
しかも彼らシャブ売りマンとしては、シャブチュウによる廃人化が進行した挙げ句に余計なことをやらかしたり口走るったりする前に、お客様には死んでもらった方が助かったりもするのです(笑)
これぞまさに、ワルのビジネス()であります(笑)

ともあれ、この手のシャブビジネスは合法・非合法を問わず、「お客様(笑)をシャブチュウにすることで成り立っている」わけですね~(笑)
恐れ入ります(笑)

ところで、

本作に度々登場した「セロトニン再取り込み阻害ヤク」というオクスリは、まー、要するに「ハイな状態」を一定時間持続させる効果を持ったお薬ということになるのでございまして、

まー、つまりは、「シャブ」ってことになりますわな~(笑)

( ´,_ゝ`)プッ(笑)
( ´∀`)は~( ´∀`)はは(≡^∇^≡)はハハハハ!!(笑)
コイツはケッサクダァ~ッ!(笑)
なんたるブラックジョークでございましょう!(笑)
これはもう笑うしかないでしょう~!(笑)
いやいや、ここは笑うところじゃないですか~!(笑)
笑いましょうよ~!(笑)

ところで、

人間、オクスリで「ハイ」になったら、何をするでしょうか?

人によっては

「飛び降りちゃったり」

とか、するかもしれませんな~(笑)

おー、これはショッキング、身震いが止まらねえや…!(笑)

現実的な問題として、(笑)
シャブチュウになるのであれば、合法的にシャブチュウになるべきです(笑)
というのは、非合法的シャブチュウは世間から叩かれ、制裁を受けます(笑)
しかし、合法的シャブチュウは世間から叩かれず、制裁も受けません(笑)
つまりは、同じシャブチュウでも、両者は待遇の面で決定的な差が生じるのです(笑)

シャブチュウになる「メリット」を考慮するのであれば、選択の余地はありません(笑)
合法的なシャブチュウの道を選択するべきです(笑)
なんといっても、お医者様という権威からココロの病というお墨付きを頂くことで、大手を降ってシャブライフ!を満喫できるのですから!(笑)
そうなれば、コソコソと影でビクビク怯えながらシャブシャブしなくて済むじゃありませんか!(笑)
これぞまさに、売り手と買い手のWin-Winなカンケーでございましょう!(笑)

したがって、
全国のシャブユーザーの皆さんは守るべきルールを守り、然るべきルートを経由する「お上」が認めた正規の代理店を通して、合法的に健全なシャブライフを満喫するべきなのです(笑)
絶対に、違法行為に手を染めてはなりません!(笑)
非合法な手続きを介してシャブをキメるのは、絶対にやってはダメなんです!(笑)
全国で違法にシャブをチュウチュウしている皆様!目を覚ましてください!(笑)
どうか「まっとう」に生きてください!(笑)

そういうわけですので、


★シャブチュウになりたい人はメンタルへ!(笑)


ハハ(≧▽≦)っはあ(≡^∇^≡)はハハハハァッ!(笑)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 1
ネタバレ

智慧ノ輪 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

個人用メモ

【製作】
For All
【CV】
心内 療 - 三木眞一郎
官越 あすな - 遠藤ゆりか
{netabare}
※WEB限定配信アニメ。
おい!WEB限定だからって、やりたい放題やっていいって意味じゃねーぞ!…だがそれがイイw
個人的に今期NO.1の覇権アニメなのは内緒。

ツッコミのテンポ、小ネタがモロ好みです。
シモネタ耐性がある人なら、楽しんで観れるんじゃないかな?
一応、精神学の勉強にもなる?かもw
{/netabare}
ここから先はネタをネタとして見れる人しか見てはいけないかもしれない。
(他アニメのネタバレも多少含まれます)

【注意】ネタバレ(&シモネタ)全開です。気をつけて!【注意】
{netabare}
『お悩み相談コーナー』


【北海道在住 P.N 私は虫以下 さんからのお悩み相談】

私には同じアルバイト先に好きな人がいるんですが、その人についての相談です
その彼…12歳以下とちっちゃいものにしか興味がないんです(本人はロリコンじゃない!と否定してますが)
この前なんか、バイト先の店長が虫を殺した際にも「人殺しー!」って我を忘れて怒り出す始末で…
もしかして病気なのでは?と思い、相談させていただきました
なにか良い解決法があれば教えてください

P.S 次回は私の男性恐怖症についてもアドバイスお願いしたいです


官越あすな 「ロリコンって精神学ではペドフィリアって言うんですよね?」

心内療   「覚えてましたか。そうです、ペドフィリア…日本語では小児性愛といいます。」

官越あすな (名称とか別に興味ないんですけどね)「はーい♪」

心内療   「ペドフィリアに限らず、メンタルの病気にはその人の環境による影響が大きいとされてます。」

官越あすな 「育ってきた環境が違うから…あ!だから♪セ☆ロリが好きだったりするよね♪って事ですね☆」

心内療   「誰が上手い事言えと…つか、ス〇ップさんと山崎〇さよしさんに謝ってw」

官越あすな 「てへぺろ♪…つまりは、その彼が12歳以下にしか反応しないのは家庭環境にあるかもしれない…と。」

心内療   「そうですね。詳しくは『アニメでわかる心療内科 第二話』にて説明してますので、是非…」

官越あすな 「その彼と一緒に観てくださいね☆」

心内療   「僕のセリフの美味しいトコだけ持っていかないでください!」

官越あすな 「伊波さ…じゃなかった、『私は虫以下』さんがその彼と上手く行く事応援してますね♪頑張って♪」



【東京都在住 P.N 拳闘キ○ガイ さんからのお悩み相談】

最近、トシのせいかED気味です
自分はボクシングに人生を賭けていた事もあり(今は左目の視力を失い、トレーナーとして頑張っています)
体力には自信があったのですが…
知り合いにEDは心因性のモノもあると聞いたので、EDという病気について詳しく教えてください
よろしくお願いします

P.S 燃え尽き症候群ってヤツも、病気の一種なんですか?
最近、教え子がボクシングの試合後になってしまったようなので…


官越あすな 「私知ってますよ!EDって…『えっちできない』の略なんですよね?先生!」

心内療   「違うから!EDはErectile Dysfunctionの略です。前にも教えたのに…ぶつぶつ」

官越あすな 「それってデジャブってヤツですか?」

心内療   「デジャブネタはOPだけにしなさいw」

官越あすな 「あ!私、名案思いついちゃった!!」

心内療   「名案といいますと?…嫌な予感しかしませんが…」

官越あすな 「拳闘キ○ガイさんの『棒』に『ジョー』って名前を付けて…立て!立つん…」

心内療   「わー!わー!!それ以上は言っちゃダメーッ!!」

官越あすな 「そして最後は『燃え尽きる』前に『真っ白』な液体が…もごもごっ…」

心内療   (あすなの口を押さえながら)「EDについて詳しくは『アニメでわかる心療内科 第一話』観てください!」

官越あすな 「もごもごもご…(観てくださいねー!)」




…とりあえず現在視聴した2話までで書いてみました。
(気が向いたら)ここから先の話も追記します♪
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 15
ネタバレ

kakelu さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

敷居の低い心療内科

1話の感想 「ED」
{netabare}こういう話って、他人に聞きにくいから凄くいいと思う。
要するに、2次元ばかりではダメってことだね。{/netabare}

2話の感想 「ロリコン」
{netabare}正式にはぺドフィリアって言うんですね。初耳です。
小学生と性交したい以外はOKというの、予想以上に限定されていてびっくり!{/netabare}

3話の感想 「認知症」
{netabare}現段階で自分には関係はないですが、周りの人のために知ってて損はないですね。
このアニメはタメになるな~{/netabare}

4話の感想 「睡眠障害」
{netabare}今回も僕とはまだまだ縁がないお話でしたね。逆に、寝すぎて困ってるくらいですから笑
結局は、あまり気にするなってことですね!{/netabare}

5話の感想 「色の心理テスト」
{netabare}えーっと… 僕はオレンジを選んだのですが…
最後までちゃんとしてくれよーー(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
あと、僕はよく遅刻しちゃうので寒色系の色の場所で待ち合わせすればいいということは、しっかり覚えておきたいです!{/netabare}

6話の感想 「パニック障害」
{netabare}広場恐怖っていう言葉は初耳でした。意味もただ広い場所ではなく、会議など人がいて逃げ出せない場所だとか。
会議でお腹が痛くなるのもそれなのかな?笑{/netabare}

7話の感想 「うつ病」
{netabare}CES-D(セスデー)とはうつ診断のことであ~る。こういうことは知ってて損がないからどんどん頭に入れちゃうよ~{/netabare}

8話の感想 「ED②」
{netabare}甘いもの食べ過ぎると血管が細くなるのか。適度な運動と食生活には気を付けよう(ゝω・)キラッ☆{/netabare}

9話の感想 「フェティシズム」
{netabare}フェチも行き過ぎれば病気認定くらっちゃうんですね。参考になりました。
あと、鎖骨フェチは共感です!!{/netabare}

10話の感想 「露出症」
{netabare}男らしさをアピールしたくて、露出するなら、じっくり見て「ちっさ!!」とでも言えば大丈夫な気がします!{/netabare}

11話の感想「のぞき」
{netabare}のぞきって、確かにロマンがあるが犯罪ですよ(笑){/netabare}

12話の感想「社会不安障害」
{netabare}スピーチ恐怖は確かにある。
電話もあるようなないような…
心理病は精神の病気なのに薬を使うのが意外。{/netabare}

13話の感想 「睡眠時無呼吸症候群」
{netabare}これ、テレビで見たことあるけど本当に呼吸が止まっていて怖いですよね!
やはり、適度な運動が大切だ!{/netabare}

14話の感想 「絶望からの立ち直るまでの過程」
{netabare}これは、知っているからといってどうにかなる問題じゃないね(;´Д`)
出来るだけ絶望しないのが一番だと思う!{/netabare}

15話の感想「季節性感情障害」
{netabare}夏と冬、どちらも当てはまるわ〜
確かに、私は朝弱いが欝になりやすいのか…
これは覚えておこう。{/netabare}

16話の感想「ストーカー」
{netabare}無視が一番きついってのは分かるけど意外。
末期になると怒られる相手にも依存してしまうのかな?{/netabare}

17話の感想 「つらいことは積極的に」
{netabare}いらいらはためちゃいけないんですね!
僕も日記をつけようかな…{/netabare}

18話の感想「認知的斉合性理論」
{netabare}今回のはためになった。
自己評価が高い人には褒め言葉で、低い人には貶す方向で。{/netabare}

19話の感想 「気持ちの持ちよう」
{netabare}この気持ち凄く分かるわ~
やらなやらなと思ったら、返ってやる気がなくなるとかあるあるや。
合言葉は「とりあえず」、今回はためになったと思う!{/netabare}

20(最終)話の感想「メンタルクリニック」
{netabare}心療内科も普通の病院と至って同じなんだな。
本当に追い詰められた時は話を聞いてもらうだけで嬉しい、みたいな感じなのかな?{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 9

72.1 4 心理学で医者なアニメランキング4位
パプリカ(アニメ映画)

2006年11月25日
★★★★☆ 4.0 (831)
3944人が棚に入れました
医療研究所が開発した他人と夢を共有できる画期的なテクノロジー“DCミニ”。だがそれが盗まれ、悪用して他人の夢に強制介入し、悪夢を見せ精神を崩壊させる事件が発生するように。一体、犯人の正体は? そして目的は何なのか?事件の解明に挑む美人セラピストの千葉敦子は、クライアントの夢の中へ容姿も性格もまったく違う夢探偵“パプリカ”となって入っていくが、そこには恐ろしい罠が待ち受けていたのだった…。

声優・キャラクター
林原めぐみ、江守徹、堀勝之祐、古谷徹、大塚明夫、山寺宏一
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

なるほど分からん(考察)

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 初見でした。90分ほどの作品です。多くの方と同様だと思うのですが、夢の描写については「よく分からない」という印象を受けました。ただ、夢の世界は理解できないように作っているはずですので、この感想はおそらく正しいのだと思います。
 夢の世界とは対照的に、テーマを見つけること自体は難解ではないように思えます。面白いかどうか、どこまで解釈出来るかは、テーマを発見できたタイミングによると思われます。
 作品自体は、スピード感もありますし、退屈するようなことはないでしょう。完成度はかなり高い作品です。
 (追記)初回から2日ほど置いてから2度目の視聴をしました。1週目に聞き取れなかったセリフを拾うためのものだったのですが、かなり面白かったです。満足しました。2週目が本番かもしれません。


対象年齢等:
 子供に見せる必要がないという程度です。
 対象者に関しては特にないですね。この手の作品が好きな人は、読書好きでも映画好きでも、このアニメに辿り着くのだと思います。反対に、アニメ好きだからといって視聴できるものではないです。辿り着くべくして辿り着き、見るべくして見るという作品だと思います。アニメという枠から外れているのに、アニメでしか出来ないことをやっている。そういう作品です。

テーマ:
 夢です。考察に譲ります。

ジャンル:
 夢と現実がごっちゃになるやつです。精神的にどうだとか、夢の話が現実とリンクするだとか、そういうレベルの話ではなくて、物理的にごっちゃになるやつです。


考察:
①夢について{netabare}
 作中の夢は明らかにダブルミーニングですので、ここで分解して、定義を与えます。
  ユメ:寝ている間に見るもの、空想の世界
  ゆめ:将来に実現させたいこと
 以下の記載はこれに準拠しますので、気をつけてください。なお、「夢」と使った場合は、両方を含む場合またはどちらかに限定しない場合です。上記のテーマのところで「夢」と書きましたが、ここで「ゆめ」であると訂正しておきます。テーマは、ユメではなくゆめです。
 この作品の構造として、「夢と現実」という対比が重要なわけですが、注意してほしいのは「ユメと現実」も「ゆめと現実」も対比としては成立するということです。これがこの作品の主題を煙に巻いている原因だと思われます。また、作中のセリフで「夢」が出てきたときに「ユメ」だけでなく「ゆめ」に置き換えられるのかに注視する必要がありました。同じセリフを使っているのに、ユメとゆめという二つのストーリーを追わなければいけないという稀有な作品です。この構造に気付くことが、この作品を楽しめるかどうかにかかっていますので、子供には難易度が高いでしょう。ユメは場面を問わず使われるため、私たちの意識がそこに引っ張られてしまいます。すると、ゆめへの意識が希薄になってしまうんですね。これはゆめという主題を隠すために、意図的に計算されたものだと思います。
 少し乱暴ですが、ユメがただの演出であると断定して、作品から消し去ってしまうと、随分シンプルで分かりやすくなります。映像主体のこの作品にこんなことをいうのは変かもしれませんが、主題を理解するためには、ユメの映像を極力無視すべきなのかもしれません。
 (追記)映像は無視しても、セリフだけはきちんと拾っておきましょう。1週目では気づきませんでしたが、ヒムロのセリフ(人形がしゃべっているやつ)はかなりテーマに沿っていたようです。無視していいセリフは、混乱した人のものくらいです。{/netabare}

②エンディング(メインテーマ)-1{netabare}
 エンディングは「夢見る子供たち」という映画のチケットをコナカワが買うシーンです。あまりに普通すぎるタイトルでスルーしてしまうのですが、よくよく考えてみると、このタイトルは違和感の塊なんです。「夢見る子供たち」を私の定義に置き換えると「ゆめ見る子供たち」です。
 ですが、①で述べたように「ゆめ」についての説明は不親切なのです。登場人物のゆめがどこで述べられていたのかが、漠としているのです。ゆめの解明には、ユメの機械であるDCミニについて、それぞれの登場人物がどのように捉えているかを見る必要があります。
 更なる問題は「子供」の方で、作中ではほとんど出てきません。一見すると大人との対比が不成立に思えるのです。つまり、子どもの代弁者の大人を探す必要があります。

 子供の代弁者とは、子供のまま大人になったと形容されるトキタです。トキタのDCミニへの評価は「友達やチームと夢を共有することは素敵」です。これは「みんなで同じゆめを見る」ということです。突き詰めると「みんなのゆめが叶う」というのと同じようなもので、理想的ですがあまりに現実離れしていますから、大人が持つゆめとしては適当ではありません。そのため、チバに叱責されています。

 トキタを子供扱いしている人物が3名出てきます。チバとオサナイと理事長です。この3人は、子供ではなく、大人の立場でゆめを語ります。
 チバは、トキタを「子供」だと言っています。彼女は、DCミニの利点を「クライアントとの共感」にあるのだと説きます。対人関係の円滑化を述べたものですが、友達ではなく、クライアントに限定していることに注意しなくてはいけません。ゆめを自分の仕事に限定し、仕事が円滑に進んで欲しいという自分の願望や保身を軸として見ているということです。トキタのような全体的志向ではなく、あくまでも個人的志向です。
 オサナイは、トキタを「幼稚」だと言っています。彼は、DCミニを自己の性欲や独占欲のために用いています。こちらも個人的志向です。性的な視点を持っているからこそ、トキタを幼稚と表現したのだと思われます。
 理事長は、「無軌道な才能を善導するのが大人の責務」と言っています。また、DCミニを「夢を支配する」ものだと評しています。この支配欲はオサナイの持つ独占欲の上位概念であり、チバには「誇大妄想」だと言われていました。理事長は、児童向けアニメの悪役のようなシンプルな世界征服的欲求を実行しようとします。個人的なゆめを拡大解釈していくと全体的志向に戻り、大人を突き詰めていくとむしろ子供っぽくなるなど、非常におもしろいキャラクターでした。トキタを悪役として描いたものだと思われます。
 この3人は、DCミニの開発者ではなく利用者です。ユメについてもゆめについても同じです。子供が開発したゆめをスタートにしているのに、大人になるとこうまでかわってしまうという対比だったようです。{/netabare}

③エンディング(メインテーマ)-2{netabare}
 コナカワは非常に特異な存在です。コナカワは、思春期のエピソードである友達とのゆめを語っています。彼は、友達とのゆめを忘れていました。しかし、イマジナリーラインとパンフォーカスを正しく扱うことで、刑事になった経緯を思い出します。残念ながらコナカワは、友人とのゆめを叶えることが出来ませんでした。しかし、その過程において、自分だけのゆめを発見し、叶えることに成功していたのです。
 これは、コナカワが、子供を捨て、思春期を経て、大人になるという正しい道を選んだ存在だということです。トキタのゆめに乗るだけだった上記3名の大人とは明らかに異なった存在で、自らの選択が描かれていました。また、②の4人が、夢を叶えようとしている存在であるに対して、コナカワは既にゆめを叶えた存在でもありました。

 ゆめについて、②の4人が大人と子供という概念に縛られた点であるのに対し、コナカワは大人から思春期へのベクトルとして描かれています。実際の子供が登場しないこの作品において、過去へのベクトルを持ったコナカワだけが、子供のゆめを語る資格を持てたのかもしれません。
 「ゆめ見る子供たち」が何なのかはよく分かりません。「大人よ、ゆめを思い出せ」程度の意味しかないのかもしれません。ただ、コナカワが思春期の頃のゆめを思い出したことで、夢の映画がハッピーエンドになったのも事実です。彼は子供のころのゆめを思い出すことで現実におけるハッピーエンドに至るのかもしれません。{/netabare}

④終盤の解釈{netabare}
 ユメと現実が融合してからは怒涛の展開で、やや置いてけぼりを食らってしまいました。あのバトルで何が起こっていたかを知るために、各々の役割を探っていきます。

 まず、パプリカは何だったのかということです。彼女はチバの分身ですが、セックスシンボルとしての印象が強かったです。パプリカ曰く「女(チバ)に足りないスパイス」です。特徴的なのがオープニングです。赤い服を着ていたパプリカが、コナカワとベッドに座っているシーンだけはガウンになっています。夢の共有には肉体エネルギーが必要とも表現されていますから、性交渉かそれに近いイメージを持たざるを得ません(実際に行っていたかではなく)。

 一方でチバは、「最近夢を見ない」と言っています。これは2つの意味を持ちます。
 一つ目は、「ゆめを見ない」であり、トキタのゆめに乗り、自身のゆめを叶えていない彼女を表現したものです。②③と関連したものですので考察は省略します。
 二つ目は、「ユメを見ない」であり、パプリカと乖離していることを表現したものです。女性的な魅力の欠如またはセックスレスを想像させます。肉体的にどうかは分かりませんが、恋人のトキタとはうまくいっていないために、充実した女性像からは乖離しています。その後、「ユメを見る」ことでトキタを受け入れる土壌が整いました。

 そして、終盤です。倒れたトキタにチバだけが融合しても何も起こりませんでした。ここにパプリカが加わることで赤ん坊が生まれます。男性と女性が正しく融合することで誕生したのが赤ん坊です。この赤ん坊は、チバがベースとなって、トキタの暴食という特性を持ったものとして描かれていたようです。
 一方、理事長は、オサナイを取り込んで巨大化します。こちらは、男性と男性の融合という歪なものでした。理事長を象徴するものは木で、オサナイを象徴するものは蝶です。歩けない理事長(木)とその周りを飛ぶオサナイ(蝶)の対比です。そして、理事長はオサナイの足を掴んで融合し、足を得ます。
 対決シーンは、無垢な存在である赤ん坊が、大人の欲を取り込みながら成長していくという描写だったのではないでしょうか。子供は清濁混合しながら大人に成長するということを表現したのだと思います。

 成長した女性はチバでした。冒頭のエレベーターシーンで、トキタはチバに家に行こうとしていたと言っています。ただの同僚が、仕事の話とはいえ家に行くのはおかしいので、当初から恋人関係だったことは明らかです。ただ、チバの保守的な結婚観もあってか、あまり順調ではなかったようです。しかし、チバが素直になることで個人的志向から脱却し、他人を受け入れられるようになりました。このタイミングで、チバが成長する姿を描き、エンディングにて結婚という流れだったようです。{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

Don't think . Feel .  …でいってみよう

そういえば原作既読。内容はうろ覚え。


地上波でたまたま流れた『東京ゴッドファーザーズ』を皮切りに~の今敏監督アニメ映画視聴マラソンもこの『パプリカ』でひとまず完走。物理的にもこれ以上これ以外走り続けることはできません。

゛難解な作品” ゛人を選ぶ作品“ ゛芸術性の高い云々”

氏の作品には枕詞のようにこれらの修辞表現が付き纏います。うむ。確かにそんな面はあるかも。でも敢えて私はこうも思うのであります。

{netabare}いいんだよ。そのまんま感じればいーじゃん。テヘッ{/netabare}

絵画におけるレゾネやクラシック音楽の解釈やらもそう。一枚の心奪われる絵を目の前にした時、情感揺さぶる音に触れた時、言葉は蛇足となることがあります。
私のような素人目にもわかる映像表現。強烈なインパクトを残すキャラクター達。{netabare} そして現実世界でのハッピーエンド。{/netabare}
とかく難解だと敷居を上げなくても、娯楽作品として観たまんまで楽しめるアニメ映画だったと思います。凝ろうが凝らまいがあとは受け取る側の判断でしょう。面白いか?面白くないか?それが全てです。

なぜ?そんな当たり前のことを?

氏の作品の多くはどれも90分程度と視聴にあたってのどっこいしょ感がなく、とりあえず4作品鑑賞してどれも粒揃いだったので、できれば多くの方に触れてほしいですし、下手な先入観は持っていただきたくないなというのがその理由です。


さて本作『パプリカ』です。
゛虚構” と ”現実” が入り乱れる秀作を次々と輩出してきた監督の遺作です。今回は 《夢》 。
他人と夢を共有できる゛DCミニ”というデバイスがある。心理療法の次の一手であると臨床試験を重ねていた矢先、DCミニが研究所から盗まれて、という導入。研究所員であるサイコセラピスト千葉敦子/パプリカがヒロインです。
キャッチコピーは「私の夢が、犯されている―」「夢が犯されていく―」。新たな試みはメリットと同様に副作用が付き纏います。DCミニもご多分に漏れず欠陥がありまして、その隙をついてあれやこれやが巻き起こる物語です。

夢の言葉上の定義は

1 睡眠中に、あたかも現実の経験であるかのように感じる一連の観念や心像。
2 将来実現させたいと思っている事柄。
3 現実からはなれた空想や楽しい考え。
4 心の迷い。

と辞書にあります。 夢って何だろう?と突き詰めた形跡が見て取れます。

根幹となる部分はもちろん1。そこに2~4を想起させるキャラがもう一つもう二つとストーリーラインを重ねていくような物語でした。誰がどうかはネタバレ直結なので隠します。

2は{netabare}ヒロインの敦子さんが代表格。もっとも奥にしまってた感情に気づいたということですが。。{/netabare}

3は{netabare}乾精次郎理事長が代表格。現実から逃げ妄想に囚われました。{/netabare}

4は{netabare}粉川刑事。そしてストーリーのもう一つの柱。トラウマに向き合って克服します。{netabare}映画からは前向きなメッセージを受け取りました。{/netabare}{/netabare}
他の登場人物たちも多かれ少なかれこの類型に分類されるのかな~という見立てです。


処女作『PERFECT BLUE』では《劇中劇(虚構)》と《現実》
二本目『千年女優』では《劇中劇(虚構)》と《回想》と《現実》と場面が増えて入り乱れました。
三本目『東京ゴッドファーザーズ』は置いといて(笑)
本作『パプリカ』では《夢(虚構)》と《現実》に夢をモチーフにした登場人物たちが入り乱れました。

作品を重ねる毎に表現の幅を広げていき、本作で集大成、または集大成にならざるを得なかった良作でした。

概念的な話なのでどちらかというと視聴済みの方向けの私の見解となります。
新たに鑑賞される方は先述の通り、そのまんま観ていただければよろしいのかと思います。


そして、゛ならざるを得なかった” の理由。
それは本作のラストを見届けるとその思いが強くなります。


※ラストのネタバレ有
{netabare}映画ラストで監督の過去3作品が背景で流れて粉川刑事が映画館に入っていく。タイトルは『夢見る子供たち』です。

{netabare}なんかの予言だったのでしょうか?
《虚構》と《現実》行ったり来たり。そして溶け合う今敏監督がこれまで手掛けた作品をイメージさせて未来へと繋がるであろう to be continued。{/netabare}
{netabare}次の作品で夢うつつシリーズの完結を構想してたのかもしれませんね。これは私の妄想です。いわばホップステップジャンプのステップ段階で早世されたのかと。{/netabare}{/netabare}

最後の演出は、客観的に作品を楽しむ現実世界の観客を、虚構の世界にいざなう監督の最後の大仕掛け。といったら感傷的過ぎるでしょうか。

例えが妥当かは知りませんが、過去作を上手いこと継承しながらエンタメ作品として爆発的なヒットとなった2016年の映画のようなのが次回作品で来てたかもしれませんね。
それで「俺たちの○○はどこへ行ったんだ?」とオールドファンをやきもきさせたり、一方で新規のファンが出来てたり。
そして、作風をガラッと変えてまた新たな実験を試みたり、と。


夢にはもう一つ。5番目の意味があります。

5 はかないこと。たよりにならないこと。

冒頭でひとまず完走と述べましたが、気分としてはハーフマラソンを走り終えた感じでしょうか。まだ半分、もっとイケる。なんならウルトラマラソンでも構わないのに!

少し、クールダウンしてからいつの日か『妄想代理人』を堪能することにしようと思います。


■雑感
一周しかしてないので、もう一回観たら感想変わるかも



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2019.08.04追記

二周めいってみた!
たまに触れたくなるクセになる感じがありますわ。



2019.02.19 初稿
2019.08.04 追記修正

投稿 : 2024/06/01
♥ : 47
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

誰かの夢に自分の夢が入り込んだら・・

原作である筒井康隆氏の同名長編小説を、
故 今敏監督が映画化した2006年の作品です。

まず、原作と違う点は多々あるようですが、元々かなりの長編ですし、
90分以内のシナリオに収めるというのは大変な作業だったと思います。

主人公であるパプリカというのは、
千葉敦子というサイコセラピストが使用する、
夢を共有する装置DCミニの中での呼び名なのです。
そのDCミニを発明したのは同僚である時田浩作という巨漢の男性で、
彼は凄まじい大食らい・・・というところが実はミソだったりします。

ある日、そのDCミニが研究所から盗まれてしまい、
それを悪用して他人の夢に強制介入し、
悪夢を見せて精神を崩壊させる事件が発生。
研究所内部の人間達が次々襲われていく中、犯人の正体と目的は何なのか?
また、この悪夢から抜け出す方法はあるのか? というお話です。

本来、夢というものは自分自身でさえ把握できないもので、
目覚めた後、記憶に残っている断片でさまざまな心理分析はできるものの、
他人の夢の中に入り込んで直接的に何らかの問題を治療する、というのは、
現実的にはまだ実験段階なのですよね。

でも、この作品ではそれをやってくれちゃう。
しかもその夢をあんなにも鮮やかに、映像化してしまった。
サーカスの空中ブランコからいきなりターザンになって、
ジャングルをすり抜けたと思ったら列車の中のギャングになってたり、
カップルを撮影するカメラマンになったと思ったら、どこかのホテルの廊下で。
場面と場面は鮮明なのに。繋ぎ目が定かじゃないところなんて
まさに実際の夢そのもので・・・もう、お見事としか言いようがありません。
今監督の映画はこれまでも、こういった手法を得意とされていたけれど、
この映画内容には特にピッタリでした。

数々の人形やぬいぐるみ、おもちゃのロボット、古びた冷蔵庫や招き猫、
家電製品から鎧を身に着けた武者人形やどこかの国のお土産品まで、
カラフルな紙ふぶきの舞う中、ゾロリゾロリと練り歩く、
奇妙でノスタルジックなパレードの光景も圧巻です。

また、いつもながらの数々の映画のパロディも健在。
さまざまな夢の中だけでなく、今回は、映画街のシーンでも、
今監督作品である『東京ゴッドファーザー』や『千年女優』
『パーフェクトブルー』などの看板をチラッと見ることができ、
思わずクスッと笑わせてくれます。

他にも、パプリカが孫悟空やピノキオ、人魚姫、
果てはピーターパンに登場する妖精ティンカーベルに扮したり、
研究所の同僚に監禁される蝶の標本だらけの部屋のシーンでは
ウィリアム・ワイラー監督の古い映画『コレクター』のパロディが・・
さらにポスターや雑誌の表紙、部屋の壁に貼ってある写真などにも
ビックリするくらい細かな演出がされており、
映画好きの自分は、これだけでもう嬉しくなってしまったほどでした。

さて・・・黒幕など後半のことはネタバレになるので
あまり詳しくは書けませんが、
黒幕が言う言葉も、ちょっと考えさせられました。
{netabare}
「夢たちは慄いている。科学によって安住の地が奪われてしまう。
 非人間的現実世界にあって、唯一人間的なものの隠れ家が夢だというのに」
{/netabare}

確かに、科学のめざましい進歩は喜ばしいことである反面、
どんどん人間の内面が暴かれていくという複雑な想い・・・
そこだけは、ちょっと共感できる部分でした。
{netabare}
さて、黒幕を倒すための最終手段ですが・・・
見ようによってはかなりお粗末にも感じてしまいますが、
あれはおそらく、パプリカと誰かさんの想いが合体し
夢=願いを共有したことで可能になったのかなと。
そして赤ちゃんが夢を食べながらみるみるうちに大人へと変貌していく
あの光景は、人間の夢そのものを感じさせてくれました。
{/netabare}

夢の中の、またその夢の誰かさんの夢の中を垣間見て、
パプリカである千葉敦子はきっと決心できたのかもです。
何を決心したのかは、しっかりラストで描かれているので、
観た人だけのお楽しみです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 43
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