「ペイル・コクーン(OVA)」

総合得点
61.0
感想・評価
187
棚に入れた
833
ランキング
5493
★★★★☆ 3.5 (187)
物語
3.6
作画
3.8
声優
3.2
音楽
3.5
キャラ
3.3

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ネタバレ

イシカワ(辻斬り) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

娯楽でも商業でもないアニメ

記載されているレビューに対する反論・論戦を行いたい人は、メッセージ欄やメールで送りつけるのではなく、正しいと思う主張を自らのレビューに記載する形で行ってもらいたい。したくない時、受諾しない時は以降の文章を読み進めないこと。受諾する方のみ文面を読んでもらいたい。参考になったと思うときのみ、参キューしてほしい。

アニメとは萌えやロボットなどの欲望の消費であり、子供向けの娯楽番組の一つであり、売れさえすれば一儲けできる商業で売れないものを作るのは馬鹿である。
そういう考えでアニメを捉えている人はNO,Thank Youとなっている。
つまらないとしか感じることはできないだろうから低い評価を下すのはわかりきっている。
楽しみはないので他をあたってくださいということである。

このアニメは原爆展やホロコースト展のように、メッセージを持って訴えていくもの、新たなる試みを求めた作品と捉えるべきだろう。

ネタバレというより、ほぼ写し取りに近い。

すでに歴史という継続性すら失った未来。
我々が見知っている海や大地が過去のものとなり、地球は人類が住んでいた残骸を残す廃墟と化していた。
人類が所持しているのは過去の遺産としての記録ばかりだ。
それらの貴重な資料を整理することは政策の一つになっている。
月にあるステーション。
環境維持装置の最も影響力が少ない最下層、そこにある記録発掘局で、労働とも呼べない延々と続けられる資料の整理をする男性がいる。彼はウラという。
過去を知ることができる唯一の手がかりとして、ウラは居住地区から遠い場所まで昇降機で、日本国地区-第五北部地区-第37構造領域、第092記録発掘部に通う。
第五北部地区のほかのすべて閉鎖している。
あまりにも広く、大勢の人間が使用できるタイムカードの列に現存するカードは二つ。
もう一つのカードの使用者は、たった一人の女性、リコだ。
リコは、記録を人類の独善による経済偏重と環境破壊によって生み出された痛みとしか受け取れず、そうした物事から背を向けている。
そんなものは不幸という現実をまざまざと見せつけるだけのものだからだ。
ノルマすらないようで、リコは星を眺めているばかりで仕事などしない。そして叱る上司もいない。
80番台の発掘局はすべて閉鎖予定だという。
現存している人類そのものが過去に何があったかを肌で感じてもおらず、知られているのは記録の中だけ。人類は海からやってきたと思っているからか、大半の人は海にしがみついて暮らしているという。
そんな仕事をしていると、あるとき、奇妙な記録を発掘した。
映像の記録に現れたのは一人の女性と、紙媒体の本。ウラは紙媒体の本を本と認識すらできなかったが、リコは知っていた。
簡易復元までしかできなかった記録を置き去りに、リコとウラは仕事を中断して帰る。
大勢の人がいた形跡だけが残る職場。それを眺めてリコはいう。
「昔はここも人がいっぱいで、昔の記録をみつけては大喜びだったっていう」
「俺は、今だってそうだけどな」
この会話が二人の立ち位置を表している。
静かに経過していく時間、仕事を続けるウラ。仕事を無断欠勤し続けているらしいリコ。
他の職場からの連絡をとっているウラはリコの台詞を思い出す。
「人は変わらないでほしいって思うから、人は記録を残すんだって」
「今まで発掘した記録の中で、残っていたものってあったか? 俺、やめるんだ、ここ。この記録のすべてが嘘だって考えたことないか?」
「事実だって確認されただろ」
「俺はな、ウラ。嘘ならよかったのにって、よく、考えるよ」
声だけでも残っていた同僚がいなくなり、リコも出勤して来ない。ついにウラはたった一人で仕事を続ける。
不意に、昇降機ではなく、階段で上り始めるウラ。その先で、少し前にさぼっていた場所に、同じようにリコは寝っ転がっていた。
ウラもその傍で横たわる。
「昔ね、私のおばあちゃんが小さかった頃ね、もっと上の階層まで人が住んでたんだって」
「環境維持装置の影響が、ここにも届いていたんだろう? 次期に住めなくなって、この辺りに降りてきたって聞いたけど」
「それでも上に居続けた人たちがいたのって知ってる? おばあちゃんもその一人だった。記録の中の世界、環境維持装置なんて必要なかった世界。それとかけ離れた現実を、受け入れたくなかった人たち」
「上に何があるっていうんだ?」
「あるとき、上から落ちてきたの。体の内側がぼろぼろになってたんだって。環境維持装置の届かない場所じゃ、生きられないのに」
「もっと記録を調べれば……」
「記録を掘り起こしてこの世界が変わるの?」
「知ることができた」
「知らないほうがよかった。緑色の世界も、それを壊したのが人間だってことも。私これ以上現実に絶望したくない。記録なんて、はじめから掘り起こさなければよかったのよ。これ以上、人間の愚かさを見たい人なんていないわ。わかるでしょ」
「わかってた。俺だってわかってた。そう、だれだって知っていることだ」
再び職場に戻るウラ。
回想と追憶の中でウラは想う。
じゃあ俺は、記録の中に浸りたかっただけなんだろうか? 多大な人口収容所の成れの果てに過ぎないこの現実から、目を背けるために。
ただ俺は、記録の中の現実が、ほんのわずかであれ、どこかに残っていたらどんなにいいだろう。そう思っていた。
そして、ついに復元される記録。
老朽化によって耐えられなくなった昇降機、落ちて行くウラ。
ウラの職場に足を運んでいたリコ。
結末は、映像で。

観た感想。
経済成長率を優先するだの、原発は絶対必要不可欠だの、自由競争社会の貧富の差だの、戦争だの、いろいろとやりたい放題にやって振り返ることもしない人間。
どうしようもない、あるかもしれない可能性の未来の一つから戻ってくると、まだやり直せる現代に俺はいた。
何かを訴えても、そんな理想論を持ち出す奴は、頭の中がお花畑にでもなっているのだろう。と言い出されるに違いない。
だが、本当に現実を直視していないのは、現代人ではないのか?
後世の末裔へ、絶望される未来しか与えてやらないことを悔やむのは、現実を直視できない甘ちゃんだからか?
そうした思考と模索こそが、作者の訴えたかったものではないだろうか。

追記
レビューに記載された言論を規制したい人は、個人の意見を以てするのではなく、あにこれの法的論拠に基づいて規約に記載する必要がある。
運営諸氏に連絡し、説得し、規制を規約に付け加えてもらうこと。

投稿 : 2012/01/14
閲覧 : 414
サンキュー:

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