「月がきれい(TVアニメ動画)」

総合得点
93.7
感想・評価
1796
棚に入れた
7558
ランキング
9
★★★★☆ 4.0 (1796)
物語
4.1
作画
4.0
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
4.0

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

余計なドラマ性が無くても充分に面白いものが作れると知った作品

 ストレートな10代の恋愛ものだが、ここまできれいにまとまり、かつ面白かった作品は久々。
 ドラマ性を高めるためにすれ違いや第三者による関係性のこじれなどが盛り込まれるのが多くの
恋愛ものの常だが、そういった要素がなくても当人同士の行動や心情の機微だけで充分に面白い
ものが作れると改めて感じた。
 この辺に関しては中学生の初めての手探りの恋という設定が大きかったと思う。

 メインの安曇 小太郎と水野 茜が共に魅力的で、前述のすれ違いやこじれはメインキャラの
優柔不断やうじうじした態度によるものが多いが、本作の二人はおとなしい性格ではあるが、必要な
時には言うべきことは言うし、やるべきことはやるというぶれない芯の強さのようなものが
感じられ、これが気持ちいい。
 いずれも初々しさが感じられるが、小太郎に関しては純文学が好きで、お囃子をやっていたり、
更に古本屋の立花 大輔に勧めとはいえ「はっぴぃえんど」を聴こうとしたり、壁の
モハメド・アリのポスター、部屋に置いてある城のプラモデルなど、今時の中学生にしてはなかなか
渋い趣味だったりするのが面白い。

 茜の魅力に関して、個人的に声や話し方による要素が結構大きいように感じられ、キャストである
小原 好美氏を注目するきっかけとなった作品でもある。
 本作では演技がやや稚拙に感じられ、それが茜というキャラに逆にうまいことはまったのかなと
思ったりもしたが、その後の作品ではガラッと変わっていたことで稚拙に思えたのは演技プランに
よるものだったと知り、恐れ入った感があった。
 キャストと言えば、担任の園田 涼子役の東山 奈央氏がOP、ED、挿入歌と全ての歌を担当
していたが、彼女の声質が作品の雰囲気にマッチしており、作品を盛り上げるのに功を奏していた
ように思えた。
 挿入歌は既出のJ-P0Pのカバーばかりなのだが、流れる状況がいずれも歌詞に合ったもので、
歌が語るといった感じで良かった。

 展開に関しては、小太郎と茜が仲良くなるきっかけは体育祭でのやり取りが大きかったが、
新学年の出会いから結構印象に残っているようで一目惚れっぽい部分もあったみたい。
 序盤では茜の映像的魅力を強く押し出していた感があったが、視聴者にヒロインの魅力を
見せつつ、そのカメラ?視点がまま小太郎の視点になっていて、小太郎が茜に惹かれていく理由に
説得力を持たせている感があった。

 二人のやり取りで印象に残ったのが、やたらとLINEが使われていたことで、教室では全然
話さない二人だけに、これが無かったら恋愛関係に至らなかったし、その後の交際にも影響が
あったんじゃないかと思うぐらいの重要アイテム。
 本作に近い時期に放映された同じく恋愛ものの「Just Because!」もそうだったが、こういった
ものは今の若い子の必須のコミュニケーションツールなんだろうなと改めて思った。
 LINEと言えば、EDでのLINEのやり取り。これは当初、恋愛繋がりということで、様々な男女の
LINEのやりとりを描いたものかと思っていたが、最終話の「それから」で本編後の二人の
やり取りであることが判明。なかなか面白い仕掛けだった。

 いわゆるドロドロした三角関係のようなものはないが、ちょっとした横やりは入る。それが
西尾 千夏、比良 拓海という存在。
 千夏に関しては放映時、その行動が結構叩かれていたが、個人的にはその気持ちは判らなくも
なく、自分も若い頃は結構似たようなことをしていた記憶がある。
 その時はせっかく生まれた恋愛感情を大事にしたいという思いが強かったようで、今にして思えば
相手より自己愛が強かったのかなという気がする。
 比良に関しては小太郎よりずっと前から茜が好きだったようで、頭では理不尽だと判っていても
横からかっさらわれた感は拭えないだろうな。
 小太郎が茜のありのままを見ていたのに対して、比良は陸上部員水野 茜として見ており、
この差は結構大きかったような気がする。

 人間関係に代わっての障害は茜の父の転勤による引っ越しで、中学生という親の庇護下にある身と
しては、立場的にも経済的にもどうしようもない問題。
 同じく中学生の恋愛を描いた「秒速5センチメートル」(以後、秒速と表示)にも同じような問題が
生じたが、本作も作風的に秒速のような自然消滅もありえそうな雰囲気だったから、最終的な
結末には安堵した。
 秒速の場合、二人の距離は埼玉と千葉どころではないから一緒にしたらいけないのかも
しれない。それでも勝手な思い込みだが、秒速ぐらい離れても小太郎と茜ならなんとか
なったんじゃないかという気がする。
 本来はBAD ENDやBETTER ENDのような作品もそれはそれで嫌いではないのだが、本作に
関しては親戚や近所の知り合いの子の恋愛を見ているような感覚だったので本当に良かったという
感じ。
 通常、恋愛ものに関しては純粋に作劇として楽しむか、過去の自分に照らし合わせて観ることが
ほとんどなのだが、本作に関しては二人を見守るような視点で応援しながら観ており、こういう
スタンスで鑑賞した作品は、他には「俺物語!!」、「からかい上手の高木さん」、
「ハイスコアガール」ぐらいしか思い浮かばない。
 最終話の「それから」を観る限り、小太郎は小説家にはなれなかったようだが、それはそれで
しょうがないし、こんな素敵な出会いがあって、ゴールインまで出来たんだからいい人生だと思って
いいんじゃないかと。

 暗くはないが全体にシリアスな作品であるため、コメディ要素はCパートに割り振るなど、本編の
雰囲気を壊さないようにしているのもいい配慮だと思った。
 作中キャラに近い年齢より、(自分もそうだが)ある程度年齢のいった人の方が、過ぎ去りし時代
への郷愁といった感じではまりそうな印象。
 大人になると色々と余計のものがくっついてくるが、「好き」という気持ちだけで進んで
いけるというのは羨ましくもある。

2019/12/03

投稿 : 2019/12/03
閲覧 : 329
サンキュー:

19

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