明日は明日の風 さんの感想・評価

4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

心を持たないひとりの少女が、心を持つ過程を描く作品…きれいな映像をご覧ください的な佳作

【１話を視聴して】
原作未読。
原作のCM流していたときから(アニメ化しないかな…)と期待していた作品。絵が綺麗で、それだけで見たくなるという、京アニならではと言うしかありません。

１話を終えて、やっぱり雰囲気が良いアニメだなと思いました。絵の美しさはもちろんのこと、主人公であるヴァイオレットの魅力にも惹かれそうです。この子がどう変わっていくのか、そこがポイントなのでしょうね。どうか最後までこの雰囲気を壊さず進んでほしいです(大丈夫だと思うけど)。

【ラストを前にして】
京アニのきれいな絵と、紡ぎ出されるストーリーがとても良い作品だと思います。ヴァイオレットの過去の話、ドールとしての働き、ヴァイオレットの変化、このバランスの取り方がとても難しかったように思います。１話から３話まで、ヴァイオレットがドールとして勤めていくまでの過程を描いていますが、時間が飛び飛びで、あっという間にドールになってしまった感じが否めません。
また、少佐の話も時おり飛び込ませてくるので、どうしても散漫になるのが気になりました。特に１話完結型の中盤は話が良すぎて、過去話が邪魔に感じることもありました。

それだけ１話完結型の話は素晴らしい。姫の恋文、天文台、劇作家。どの話も心が満たされる感じで作られていて、とても気持ちがよくなるものでした。が、これが単なる１話完結ではなくて、ルクリアの話も含めて９話のヴァイオレットの心が大きく変わっていくための布石だったところが上手いなと感じました。そして、10話、開始５分で結末が分かるくらいスタンダード「泣かせる話」なのですが、やっぱり泣いてしまいました。{netabare}最後のヴァイオレットの号泣は卑怯だ、泣かないわけにはいかない…{/netabare}この話でヴァイオレットが人として感情を持ち、人生を歩んでいくことになるんだなということを感じました。

もうすぐまとめることになります。少佐の話、「愛している」の話は中途半端、この話がラストになるんでしょうね。

【最終回を終えて】
ヴァイオレットは決して人形ではなく、ひとりの人間として生きていくことになりました。心に背負ったものはあれど、それを否定することなく抱えながら。ラストの３話は過去との葛藤でした。描こうとしていた点は理解できました。

ラストのシーン、視聴者に想像を与える終わりかたでした。ヴァイオレットが訪ねたご主人様は誰だったのでしょうね。少佐?いや、少佐ならば泣いたはずだ。まて、心を持った、過去を背負ったヴァイオレットならあの驚きで済むのではないか、という感じで。でも、この余韻を残す終わりかたは一昔前だよね。良くもあしくも、今はすっきっと決着をつけるのが主流のような感がします。

映像は京アニですから当たり前のクオリティ。この作品のイメージを紡ぎ出すには十二分なものかと。とにかくヴァイオレットがきれいでした。ヴァイオレットの立ち姿に何度見惚れたことか。無表情だったヴァイオレットにどんどん表情が加わり、なおさら魅力が増していった感じです、また、石川さんの乾いた声もとてもマッチしていたと思います。

さて、物語全体についてですが、けっして「最高でした」と言えるものではなかったと思います。大きな流れに１話完結型が加わるもので、１話完結型のできはとても良いと思います。どの話もきれいなものでさらに泣ける。つまり、点が大きかったけど、繋がった線は細いものだったなという感じです。練りに練ったとは思いますが、１話ずつが大きすぎて、全体の構成がぼやけた感じがするのです。実にもったいない。

あと、１回見ただけでは全体をとらえるのが難しい感じがします。機会があればもう一度１話から見直してみひょうかな。また違う感想になるかもです。

これは戦争に身を投じたひとりの少女の人間ドラマです。ドラマ系ときれいな絵をみたいという方におすすめします。それと、京アニだからといって、ハードルを上げすぎないことをアドバイスとします。