ふぁんた さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
純文学のように心に残る原風景
主人公貴樹が綴った私小説のようなナイーブな物語。
美しい背景と声優の呟くような演技で、
普通の深夜アニメとはちょっと違った雰囲気をまとっています。
この二つの要素と最後の「One more time, One more chance」の
非常にドラマチックな演出で、どこかそういう純文学的な何かを楽しんだと思える作品です。
三部に分かれていて、これもまた純文学的な雰囲気を醸し出してくれます。
「桜花抄」
この思春期の初恋はすばらしく、
お互いがもう少しだけ勇気を振り絞ればあるいは、、
いや、お互い十二分に発揮したから{netabare}キス{/netabare}まで至れたのかもしれない。。
そんな転校を繰り返して人間関係をうまく作ることができない二人の
ガラス細工のような恋心がなんとも心を打つ物語です。
「コスモナウト」
種子島の風景が心に残りました。
毎回かなえと一緒に下校していた田舎道。
個人的に小さい頃、夏に帰省してた母方の田舎の風景と重なり、
自分が旅する際に探していた風景はあの頃見た風景なんだなと気がつきました。
「秒速5センチメートル」
ラスト主題歌がかかる演出は驚くほど感情を揺さぶります。
今までのアニメでは見なかった、最後にタイトルを表示する演出は
音楽と合わさって、なにやら心地よい感動と余韻をもたらしてくれます。
今作で新海監督は純文学をアニメ的な解釈でどう落とし込むかとチャレンジしたと感じました。
純文学の持つ、「芸術性」をアニメ表現での背景の美しさや、
自然、特に空や太陽の演出に置き換えて表現したのではないでしょうか。
ただ、太宰や三島のような大傑物の私小説と比べると、
主人公の人生はわざわざ1時間も使って視聴するには平凡ですね。
スキャンダルで当時では考えられないような話を、
美しい文章とともに紡いだ「仮面の告白」。
芸術として昇華される条件なのかもしれませんね。