「涼宮ハルヒの消失(アニメ映画)」

総合得点
92.3
感想・評価
5192
棚に入れた
22974
ランキング
23
★★★★★ 4.2 (5192)
物語
4.4
作画
4.3
声優
4.2
音楽
4.0
キャラ
4.3

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ネタバレ

USB_DAC さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

創造的日常の勧め

★物語
・原作 : 谷川 流
・監督 : 石原 立也(総監督)、武本 康弘
・脚本 : 志茂 文彦

楽しくはあったが個人的には何となく煮え切れない思いが残ったTV版。
しかも終始騒がしくネガティブな印象も持っていたが、実に手の込んだ
作り込みにより見事覆してくれたこの作品。コメディタッチなシリーズ
から一転、そのシリアスな作風は、狼狽・切なさ・驚愕・希望が上手く
絡み合い、絶妙なバランスで仕上げられている。ファンでなくとも一度
は見ておくべき傑作映画の一つ。


★作画
・作画監督 : 池田 晶子、西屋 太志、他7名
・美術監督 : 田村 せいき
・色彩設計 : 石田 奈央美

流石京アニの劇場版と言うべき作画。シリーズの延長線上にあるものの、
そのクオリティは全くの別物。特にキョンの自問自答、本性を現し狂気
と化した朝倉のシーン、屋上での二人のやり取りなど、その描写と背景
の美しさは必見。


★声優
・キョン : 杉田 智和
・涼宮 ハルヒ : 平野 綾
・長門 有希 : 茅原 実里
・朝比奈 みくる : 後藤 邑子
・古泉 一樹 : 小野 大輔

一体台本の厚みはどれくらいあるのだろう?ってほど喋り続けた杉田氏。
元々が低く落ち着いた声質故に高校生にしては少々老けた印象を受ける
が、モノローグと会話に微妙なトーンの違いを見せるなど、玄人らしい
手慣れた上手さを披露してくれた。


★音楽
・OP :「冒険でしょでしょ?」 / 平野 綾
・ED :「優しい忘却」 / 茅原 実里
・音楽 : 神前 暁、高田 龍一、他2名

無伴奏の独唱曲「優しい忘却」。長門(茅原さん)自身が歌うその歌詞
は、彼女の想い全てを物語るかのよう。エフェクトが効いたその歌声に、
ひとり俯く淋しげな彼女を何となく想像してしまう。


★キャラ
・キャラクターデザイン : 池田 晶子

何と言っても消失後の長門が衝撃的キャラ。そこ迄に至った経緯を知り、
そのか弱く儚い姿を見て心を動かされない筈が無い。彼女がにっこりと
微笑む姿を見たかった(近いシーンはあったが)、そう思ったのは自分
だけでは無い気がする。愛おしさを通り越して「守りたい!」、そんな
庇護欲を掻き立てられるキャラと言われる理由も分かる気がする。



[感想Ⅰ] 

長門に蓄積した負担がバグと称する感情の芽生えを生み、突如創り出し
てしまったパラレルワールド。騒々しいSOS団の存在自体を無きもの
にし、情報統合思念体をこの世から消してしまう程の絶対的な力を捨て
てまでして手に入れた平穏無事な日常。彼の記憶だけを唯一残して。

その後キョンに委ねた世界の選択。しかしそんな彼女の想いなど彼が知
る由もなく、当然の様にあの賑やかな日常を選ぶ。

痛みを伴いながら漸く取り戻した以前の日常。寒空の下、冷える身体を
気にし、積もる雪を振り払いながら自身のコートを彼女に羽織るキョン。

「ありがとう」

その言葉に秘めた想いはきっと彼に伝わり、再び始まる創造的な日常を
二人で支えながら、賑やかで楽しい日々を送り続けていくのだろう。



[感想Ⅱ]

「キョンをニヒリストにはしないで欲しい」。

シリーズの制作に際して、武本監督はスタッフにそう伝えたとか伝えな
かったとか。

傍若無人なハルヒに終始振り回されたTV版のキョン。愚痴っぽい台詞、
モノローグの多さ故、ニヒリスティックで少々捻くれた若者という印象
を個人的に持っていました。しかし、この『消失』という作品によって
それが一変。多少理屈っぽいけどポジティブなイメージへ。その後改め
て『憂鬱』を見返すと彼の言動とモノローグが初見以上に面白く感じる。
但し今作の重要な鍵となる「エンドレスエイト」は最初と最後だけ観れ
ば充分その辛さは理解出来ます。8話全話観て少々胃もたれ気味でした。

それにしてもタイム・パラドックス(既定事実との矛盾)の回避の為に、
狂気に満ちた朝倉に刺されなければならない彼の運命にはゾッとします。
しかもいくら周知の事実とは言え、大量に血を流す姿に平然としている
未来の彼の台詞には若干違和感を覚えたのも確かです。血が怖い自分は
気を失うかも知れない。多分直面したら足が震えます。w

そもそも過去に情報連結解除をした朝倉を、長門は何故復活させる必要
があったのでしょうか?僕自身原作は未読なのでその理由は全く定かで
はありませんが、孤独な彼女にとってはそんな猟奇的な朝倉も消し切れ
ない存在だったのかも知れませんね。同じ穴の狢として。

そう言えば約9年ぶりの新作『直感』の受付がスタートして早一月と半。
今作『消失』を高いクオリティで傑作へと作り上げた京アニスタッフの
新たな動きを願い、その時をいつまでも待ち続けたいと思います。



以上、拙い感想をお読み頂きありがとうございます。

投稿 : 2020/10/19
閲覧 : 224
サンキュー:

19

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