「太陽の牙ダグラム(TVアニメ動画)」

総合得点
66.5
感想・評価
56
棚に入れた
245
ランキング
2773
★★★★☆ 3.6 (56)
物語
3.9
作画
3.2
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

どどる さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

政治部分はなかなか立派

政治部分はこの時代としてはかなり立派。
ちょっとだけディティールを変えれば現代でも通用する内容。
{netabare}
なにより立派なのは、クズが存在しないこと。
ラコックは野心家であり、主義が無い。
陰謀家というポジション。
本作の中では最もクズに近い人物だが、その行動は誰かの足を引っ張ったり蹴落とす方向よりは、自分が上に向かって抜きんでようとする。
権力闘争に本気。
しかし権力闘争の上手い者が、現実の政治に秀でているかどうかはまた異なる種類の技術。
宮廷の暗闘に限らず、民主主義もこの問題を持っている。
権力闘争が上手くて政治も出来たという人も歴史上存在するわけだが、ラコックがそうだったかは永遠に分からず仕舞いになってしまった。

わたしは圧倒的にラコックが好きです。
ドナンを殺そうか迷うシーンや独白風の次回予告がめっちゃ良い。
野心に道連れは不要だ!
仲間が要らないキャラだいすき。
まあ侮りがちな性格はカッコ良くはないし、そこまで知略無双感あるわけじゃないけど、陰謀キャラでここまで大活躍してくれただけでとってもうれしい。
陰謀キャラが大好きなので。
同士の全国1億人の陰謀キャラスキーの方々には項羽と劉邦-king`s war-とかオススメ。趙高がクソかっこいい。


ヒシ・カルメルは本当によくいる良識派。
サマリンは立派な人物として描かれているけど思想家で、カルメルは政治家、という感じ。ゲバラとカストロ?
カルメルに政治的手腕はあるのか無いのか、頑張れそうかな?いう雰囲気でストーリーそのものは終了。
良いもんポジションのサマリンさんと敵対に近い関係になってしまったカルメルを、悪もんとして描かなかったのはとても立派だと言える。


デスタンは扇動家、アジテーターだろう。
扇動者というのは歴史を転換する大きなエネルギーを持つが、それ以外の才能を持たなかったというのはあるあるな案件。
歴史的には陳勝・呉広とか木曾義仲とか。吉田松陰も政治力は無かっただろう。閉塞した環境を破壊するエネルギーの中心点にはなっても、新しい現実的な体制を生み出せない人種。
デスタンは意外と器用に生きられる能力を持っているけど、夢が大きすぎる。それがアジテーターというものだろう。

このデスタンの持つ人格の複雑さを描写した上で、最後の最後にトチ狂った部分を持ってきたのは、ストーリーを〆るための制作都合をちょっと感じてしまった。
ストレスがかかった時にデスタンが衝動的な行動を取ってしまうのは、登場初期に戦闘から逃げ出したことや、リタを撃ち殺した時などにちゃんと描写された性格ではあったが。
個人的な理想を言えば、ラコックが「お前は俺から離れることなどできない。死ぬまで汚い仕事をしてもらう」みたいに脅して、デスタンが平凡を望んで破滅、とかの方がお互いにカッコよかった。



ドナン・カシムは、タイミング的にはプーチンや中国を連想してしまうが、総じて現実の代表者とも言えるような人物。
たぶん本当に仕方のないことなのだと思う。
アフリカ、アジア全土を先進国と同じレベルに引き上げることが成功した場合、先進国の物価はすさまじく上がるだろう。
どちらを取るかという時に、これ以上先進国を崩壊させるわけにはいかないと、自分たちを守る決断をするのは現実的なことだと思える。
それが貧しい人をより貧しく追い込むことだとしても。
{/netabare}

欠点としては、主人公組とそれを彩る戦闘シーンにはちょっと良い所が少ない。
安易に英雄役を振らなかったのはもちろん評価できる点。
ただ、最初から最後まで居る若者なら誰でも良かった感がスゴすぎる。
{netabare}
未来を託された若者が生き残る。未来に希望がある終わり。
バッドエンド系の作品ではよくある。
しかし、こういう託されキャラというのは傍観者止まりで、主人公に特筆すべき個性を求める私にはちょっとつらい。

戦闘シーンの絵は、1981年同時代の作品群を考えると、複数のメカが登場する集団戦、戦争の描写がができているだけ立派な方。
カルナック山脈越え、レイク・ボイドの都市防衛など、しっかり見ごたえのあるバトルもちょこちょこある。でも、75話の尺の中で見ると物足りない。
だいたいはダグラムが無双するか、ピンチ→チコが攻撃して助かる。このパターンを使いまわしまくる。
もうちょっとバリエーションと説得力が欲しかった。

まあ逆に明らかな欠点が「間延びしてた」「説得力がない」くらいなのは、1980年代の頃の作品としては相当詰めてあると言ってもいいだろう。
多くは単に技術的な問題であって、致命的な行き違いではない。
{/netabare}

この内容が2クールくらいに詰めてあれば十分名作なのだが、75話の長丁場で考えるとストーリーの締まりはかなり弱い。
良くも悪くも「玩具を売るためにロボットが戦うアニメ」という性格が強く出ている。

投稿 : 2024/02/28
閲覧 : 208
サンキュー:

2

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