「夢見る男子は現実主義者(TVアニメ動画)」

総合得点
61.4
感想・評価
138
棚に入れた
412
ランキング
5310
★★★☆☆ 3.0 (138)
物語
2.7
作画
2.8
声優
3.2
音楽
3.0
キャラ
3.0

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ネタバレ

7でもない さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:途中で断念した

原作改変のすゝめ ~時には勇気をもって大胆に原作を改変する事も必要です~

{netabare}
「夢見る男子は現実主義者」は失敗作だ。久しぶりにこんな作品を目にした。つまらないという次元を超えて、何が起こっているのかさっぱり理解できない。この失敗の原因と、もしかしたら意図的なものなのかもしれないという陰謀論を後に置くとしても、まずは原作との対比、そして問題点について見ていこう。


1 原作との比較
2 問題点 
3 分析と妄想
4 結論
{/netabare}
1 原作との比較
原作を直接読んだわけではないが、4つの情報源を通じて得た情報から、コミカライズとアニメ版における描写の大きな違いが明らかになった。

原作では、主人公は一人称で、独り言やモノローグ、心の声が物語の主軸となり、また主人公とヒロイン2人の視点を交互に行き来させることで、キャラクターの内面や思考が読者に伝わり、物語が展開していく。

コミカライズ版では、モノローグが50%~60%に簡略化され、その代わりに主人公の表情や心理的な動作に焦点が当てられ、感情が絵を通じて表現されている。

一方、アニメ版では原作の95%に相当する心情描写が欠落している。しかもその削減された部分を補完するためのシナリオの改変や演出が行われてない。

こうした比較から、アニメ版が原作の主人公の内面描写を十分に捉えきれていないことが明らかになった。アクション要素が少ない内省的な小説を映像化するのは難しいとされているが、このアニメ版はその課題に適切な対処を施さなかったようだ。その結果、登場人物の関係性、会話、移動、場面の状況理解すら難しくなり、元々正当派ラブストーリーから外れたひねくれた作品だったのが空中分解してしまってる。


2 問題点
{netabare}
アニメ版にはいくつかの問題点が見受けられる。



2-1 演出、脚本、構成
a. 演出への疑問
最初のエピソードでは、主人公がサッカーボールに当たる出来事が起こり、それが主人公の過去の行動に対するショックとなり、改心のきっかけとなる場面が描かれている。このシーンは衝撃的で、見ていて面白く、演出にも力が感じられた。が、初めて視聴する人にとっては、サッカーボールの出来事が単なるきっかけなのか、それとも何か超常現象が絡んでいるのかがわかりにくく、混乱を招く要因となっていて非常に戸惑った。

b. エピソードの区切りや起承転結の弱さ
その後、主人公は控えめな態度を取り、ヒロインとの距離を取るようになるが、ヒロインの方は何か名残を抱えているようで、主人公を絶えず見つめている。しかし、この段階で主人公の関係性やヒロインの心情が明確でない中、急に主人公の男友達や二人の共通の友人が登場し、更には男女の関係を解消したばかりの別の女性までが登場する展開に、視聴者は混乱しすぎてしまう感じがあった。まるで1話や2話を飛ばして3話から見させられているかのような錯覚を起こすことさえあった。こうした構成は、どう考えても誤った判断だったのではと思わざるを得ない。

c. 断片的な会話、飛び飛びの場面転換
3話では主人公の姉が登場するが、二人が登校しているシーンでは姉弟関係がわかりにくいまま進行する。その後、生徒会室で再会する場面で初めて姉弟関係だと明言されるが、そのシーンで二人の会話の途中で突然その部屋の中に他の生徒会員がいることが知らされる、作品全体がこのような突然の展開や飛び飛びの場面転換で満ちており、視聴者の理解を妨げている。



2-2 キャラクターの見分けがつかない
本作のもう1つの欠点は、登場キャラクター同士の識別が難しいことだろう。この問題は、主に脚本と構成に起因しているが、キャラクターデザイン自体も識別性という面から見るとあまり褒められたものじゃない。ただし、まともなストーリーと構成の作品ならそこまで気にならない事だろうとは容易に想像できる。

a. キャラデクターザインの多様性の欠如: 背の高さや体形、目の形などの違いが乏しく、キャラクター同士の識別が難しい。特に男キャラが二人並ぶと違いがほとんどわからないと感じたのは自分だけじゃなくて多くの人が指摘している。明確に異なる特徴を持つキャラクターを導入することで、視覚的な識別が容易になる可能性がある。

b. カラーパレットの問題: 和菓子風の渋いカラーパレット自体は魅力的で問題はないように見えるが、脚本的理由でキャラクターの把握が難しい状況下では、困難さを一層増している。色彩を工夫することで、キャラクター同士の視覚的な差異を引き立てる手段があったかもしれない。

c. 似通った声優陣: 声優陣の声質や演技が似通っているため、キャラクターごとの声の違いが感じられず識別が難しい。キャスティングに際してはキャラクターに合った声という評価軸だけじゃなく、作品全体で聞き分けれる個性的な声を配置することが重要だと感じた、それが声質であれ、演技であれ。
伝わらない気がするので追記:
これは新人声優たちが下手とか、経歴の割にがんばっているとかそういう話じゃない。声を選んだ人/押した人、声の演技の指示を出した人の話をしている。
{/netabare}



3 分析と妄想

a. スタッフの能力不足?
監督や構成陣のスキルや経験が十分でないため、キャラクターの魅力や物語の構成に課題が生じている可能性が考えられたが、(敬称略)

古賀一臣  監督作品:てんぷる 久保さんは僕を許さない 彼女、お借りします。演出は数知れず
横手美智子 シリーズ構成作品:SHIROBAKO ツルネ お兄ちゃんはおしまい とんでもスキルで異世界放浪メシ 荒野のコトブキ飛行隊 ナイツ&マジック 監獄学園

お二人は十分すぎる経歴の持ち主みたいなので、単なるスキル不足というよりは、作品のアプローチや相性、制作環境などが問題を引き起こしている可能性の方が考えられる。

b. 掛け持ち?
監督が今期同時に監督している「てんぷる」との掛け持ちにより、そちらに力を注いでいる可能性がある。また、あえて言ってみると、ゆがんだAI風の作画崩壊背景や2000年代前半のエロゲーキャベツアニメ風の低品質な背景(たぶんこれは背景描きの人だけの問題ではなく、原画書きのLO[レイアウト/背景指定]に問題があるように思える)から感じ取れる制作への熱意の低さから、もしかしたらstudio五組が今期「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」や来季「星屑テレパス」など他の作品に優先度を置いており、本作は90年代、2000年頃にまことしやかに囁かれた噂の「捨て作品」「捨て企画」として扱われている可能性も浮かぶ。

c. 異常なテンポ
物語はものすごい勢いで進行している。通常1クール12話で3~5冊分の内容が展開される中、このアニメでは1話で1冊以上に相当するスピードで物語が進んでいる。約3倍の速さだ。そのせいで多重事故が起きている。なぜこんなに急ぐのだろう。

・昨今のアニメ業界での「テンポ最重視」の流れに影響を受け、無理にテンポを上げている可能性。
・今のアニメ視聴者が望む、原作の改変を嫌う傾向を受け、過剰に慎重になっている可能性。
・1クールで原作の最後の方までやらないといけない理由でもあるのだろうか。本当かどうかわからないけど、先ほど原作範囲を指定するのは制作(監督、シリーズ構成)の権限には無いと言うコメントを読んだ。
・4つ目、キャラクターの心理描写が多く、それを忠実にアニメ化するには大幅な変更が必要だったが、時間と予算の制約から断念したのかもしれない。
・5つ目、意図的な判断で、速度を重視する風潮へのアンチテーゼのつもりかもしれない。
・6つ目、同じく意図的に特殊な演出をして、心理描写カットの風潮への疑問を投げかけているのかもしれない。


4 結論
以上の分析を通じて、原作の改修は近年は控えられることがあるが、異なるメディアへの適応を成功させるためには、適切な改変が不可欠であることが示され、またアニメーションや映像化においては、内面的な要素を映像で表現することの難しさも浮き彫りになった。

適切なアプローチと改変は、キャラクターや物語の深みを引き出すために欠かせないものであると言える一方、原作の性質やメディアの適応性も考慮し、原作の選択や作品に合わせた手法には慎重さが求められる。

アニメ版「夢見る男子は現実主義者」の失敗は、これらの要素の見落としや適切な対処の不足に起因している可能性が高い。アダプテーションの成功には、原作の魅力を保ちつつ、何より新たなメディアでの表現を追求するバランス感覚が重要だと再確認した。

おまけ
https://i.imgur.com/wy4mx2z.mp4
https://i.imgur.com/qlM51OR.png
https://i.imgur.com/C0Qq2yl.jpg
https://i.imgur.com/ItVsdlG.jpg
https://i.imgur.com/EMMxZMJ.gif


2023/07 4話まで

投稿 : 2023/08/12
閲覧 : 260
サンキュー:

4

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