「神無き世界のカミサマ活動(TVアニメ動画)」

総合得点
67.3
感想・評価
199
棚に入れた
558
ランキング
2451
★★★★☆ 3.3 (199)
物語
3.3
作画
3.0
声優
3.6
音楽
3.3
キャラ
3.5

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.5 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

日本人の宗教に対する悪感情を逆手に取った面白いアイデア

『神無き世界のカミサマ活動』(かみなきせかいのカミサマかつどう)は、原作:朱白あおい、作画:半月板損傷による日本の漫画。略称は「カミカツ」。
2023年4月から7月までTOKYO MXほかにて放送された(wikipedia)

通常日本の創作ものは教会や宗教みたいな組織は大抵悪として描かれており、本作も悪の範疇であるにもかかわらずそれを裏手に取ったダークヒーローもの、といった印象。このアイデアは観た事が無いのでかなり新鮮だった。

宗教どころか神という概念がない世界に転移(転生?)させられた主人公の卜部 征人(うらべ ゆきと)、彼は自身が世話になったカクリの住人達を守るためにも宗教という概念を復活させ神である国之常世御霊大御神(くにのとこよのみたまのおおみかみ)通称ミタマを奉る。この世界では信者が増えれば増えるほど神のパワーがアップしていくという仕組み。この辺からバトルものとしての構造が顕著になってくる。大まかな流れとしては敵である皇国の特殊部隊「アルコーン」を撃破しつつ仲間にしていく感じになっているっぽい。

作画は結構癖があって、基本的には悪くないんだけど時折ドット絵のゲーム画面のようなものでお茶を濁すことが多々ある。これを低予算用の演出とみるか初めから狙ったものとみるかで評価は変わりそう。
問題はそれよりも何とも表現しづらい演出をするときがあってこれがあまり良くなかった。一番酷いなと思ったのは実写のトラクターの色を反転させてアニメに落とし込んでいたところ。あれはちょっとなあ……

アイデア自体は悪くないしそれなりにバトルものとして通用していると思う一方で先ほどの作画も含み演出面でちょっと難があるかなといった印象。ガイア戦でのバンド活動とか。
あとちょっとエロ描写が直情的すぎるので、宗教どうのこうのよりこっちの方が観る人選ぶ気もw

以降は余談ですが、印象的でもあったのはユキトが宗教と自由は相性が悪いと言ったところ。まあこれ自体否定するわけではないんですが自由という概念は意外と多義的で、キリスト教的な見方ではアウグスティヌス(354-430)の時代から大きく分けて二つの意味があったりします。一つは我々が普通にイメージする「好き勝手」できる自由。もう一つは大雑把に言うと「理性に従う」自由。つまり「好き勝手」できるという誘惑を振り払って信仰するということ。現代人的な視点では理性と宗教はむしろ相反すると感じるでしょうが古代ギリシャ時代以降の神学や哲学の世界では理性とはとある哲学者の言葉を借りると「神の出店」なわけで、誤解を恐れずに言えば劣化版神の思考力みたいなものだったりするわけです。(ちなみに当初は「理性」より「知性」が優位だったりしたわけですがマニアックなので割愛)。

……というような話をつらつら書き連ねてやろうかとも思ったのですが「あにこれ」でする話でもないよな……でもせっかく書いたので興味ある方だけどうぞ。

{netabare}
何となく昨今の海外リベラルさんなんかがやたらと押しつけがましく見えたりするのは自由の観念がこの「理性的」な方向に振れちゃってるだろうなあと思ったり思わなかったり。
そういえば日本のネット言論なんかでよく「反知性主義」なんて言葉が出てきますが、これを英語で書くとanti-intellectualismと言いまして、じゃあそのintellectualismとは何ぞやと言いますと普通は「主知主義」のことを指します。で、この主知主義は何ぞやと言うと通常はキリスト教神学上の立場の一つのことを指し、先述した自由を「理性に従う」方と考える人達です。トマス・アクィナス(1225-1274)なんかが有名です。だから本来ならば「反知性主義」ではなく「反主知主義」と書く方がより適切だったのだろうなあと思う一方で、もしそう書いてたらここまでこの言葉流行らんかったでしょうね。ぶっちゃけ日本ではこの「反知性主義」ってほぼ=「反科学主義」みたいな感じで捉えられてますもんね。本当はそんな単純な話でもないんですが、ある意味とても分かりやすい正解として見えちゃうので色々と齟齬が生じてる気がするんですよね。
{/netabare}

投稿 : 2023/10/29
閲覧 : 91
サンキュー:

8

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