「エルフェンリート(TVアニメ動画)」

総合得点
88.2
感想・評価
2896
棚に入れた
13765
ランキング
125
★★★★☆ 3.8 (2896)
物語
4.0
作画
3.5
声優
3.7
音楽
3.9
キャラ
3.8

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ネタバレ

hiroshi5 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 2.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

このタイプのテーマに触れたいなら「The Sky Crawlers スカイ・クロラ」を視聴することをオススメする。

無駄にグロくし過ぎだろ!ってのが率直な感想。そして、他のレビューアーが書いている「深いテーマ」というのも、なんだかイマイチピンと来なかった。

恐らく問題は三つある。
作画と説明不足、そして何よりもテーマがオリジナリティーに欠けているのに先駆者を超えられていない、また2004年以降の作品でもっと素晴らしいデキのが存在する点だろう。

作画崩壊は頻繁に指摘されている。そもそも私はエルフェンリートに似た作画(ゼロの使い魔など)が苦手であり、それがこの作品に対する凄まじいディスアドバンテージになっている。

次に説明不足だが、色々なテーマをぶっ込みまくって伏線を回収しきれていない。特にディクロニウスについての説明が少な過ぎる。
本編ではディクロニウスが人間社会の「悪」であることだけを証明できれば良かったので、詳細な説明は必要無いと判断したのだろう。

しかし、それは大きな間違いだと言わざるを得ない。
大体人間の進化系としてディクロニウスを持ってくるなら、それの根拠をもっと説明するべきだろう。
Wikiを読む限り、他にもっと色々説明されるべき重要ポイントがいくつか見つかった。それらを本編中に公表していればもっとこの作品は良くなっていた筈だ。

そして三つ目。この作品は簡単に説明すれば人間の持つ二面性をどう処理するか、だ。
存在が罪という設定の上、人物の長所短所を細かく描いた後、最後の審判を下す。

そこが難しいところであり、また面白い部分でもある。
しかし、この作品ではルーシーの二重人格が大きく視聴者の感情移入を妨げている。
にゅうになっている場合、彼女に過去の記憶は無くルーシーと同一人物として捉えるのは難しい。

にゅうが優しい人物だからルーシーも実は優しい女性なんだ、ということを証明するには1話あれば十分だ。

にゅうの人格で物語を進めても、本編に直接関係がないため逆に物語に澱みを作ってしまっている。

この手のテーマを真剣に感じて考えたいなら「スカイ・クロラ」を強くオススメする。
映画だが、この「エルフェンリート」が表現したい人間の卑劣さ、命の重さ、社会の異分子としての立場、その異分子の恋愛を上手く、またリアルに描いている。

■人間の卑劣さ
「エルフェンリート」:実験での虐待、過去の裏切り、ディクロニウス対する虐殺
「スカイ・クロラ」:社会が与えるキルドレの役割、ティーチャーという絶対的存在、キルドレという存在そのもの

■ 命の重さ
「エルフェンリート」:人が簡単に死ぬことによって、儚い命の重みを主張
「スカイ・クロラ」: 循環する命が生きることを無意味にさせている。その中で必死に足掻き苦悩する子供たち、そして結局全てを無にさせられる底の無い苦しみ。


■ 異分子としての立場
「エルフェンリート」:角の存在、ベクター
「スカイ・クロラ」:永遠の子供、無限の循環性

■恋愛
「エルフェンリート」:過去に家族を殺してしまった悔やみを抱えつつの恋愛
「スカイ・クロラ」:記憶と社会の流れと、永遠の循環から解放されることを願いつつの恋愛

どの分野でも「スカイ・クロラ」の方が勝っているのは明白だが、こう比較すると本当ににゅうという二重人格がいなければ中々良い作品になっていたのではないかと思う。

にゅうが緊張を解き、物語のシリアス感を消滅させてしまっている。
特に「エルフェンリート」は恋愛の点で失敗していると言える。恋することの幸せと苦しみをたった一つの過去編から描いている。それだけでも根拠に欠けるのに、にゅうになっている場合はその過去編がほぼ関係ない。

にゅうの場合の「好き」は「love」ではなく「like」に思えてしまう。

また、ルーシーにも女としての「生々しさ」がない。今を彼と一緒に生きているというつかの間の喜びを言葉では表現しつつも、行動に現れていない。

「スカイ・クロラ」の草薙水素に比べれば、まぁなんと幼いことか。


また、深い苦しみを「人の死」を扱ってエルフェンリートは内容を重くしているが、簡単に人が死にすぎるというのも問題で、見ている側からは軽く死を扱っていると思われてしまいかねない。

そういう意味でも人一人に対する命の重さを主人公の視点と社会的視点から対比させる「スカイ・クロラ」の方が一枚上手だ。

ちなみに、前述していた先駆者だが、「エルフェンリート」を越す作品は数えきれない程あるだろう。
ガンダムしかり、人・狼、ひぐらし。
正直「獣兵衛忍風帖」の陽炎の方がメッセージ性でルーシーより高いと思われるw

この作品は人の死とにゅうを巧みに扱うことで人間の苦しみや悲しみを表現しようとしているが、結果として空回りしているとしか言いようが無い。
残念で仕方が無い。

投稿 : 2012/11/30
閲覧 : 325
サンキュー:

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