「エルフェンリート(TVアニメ動画)」

総合得点
88.2
感想・評価
2894
棚に入れた
13754
ランキング
125
★★★★☆ 3.8 (2894)
物語
4.0
作画
3.5
声優
3.7
音楽
3.9
キャラ
3.8

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ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

1クールでこれだけ描けたら上出来かもしれない

舞台は鎌倉・江ノ島界隈。

側頭部に生えた2本の角とベクターと呼ばれる特殊な能力を持つ
女性型ミュータント(ディクロニウス)であるルーシーが
国家レベルでの極秘機密として隔離研究されていた施設から
実験中の事故を機に脱走し、大学生のコウタとその従妹ユカと
偶然出逢ったことから物語は展開していく。

ベクターという特殊能力が、現人類を滅亡させる「可能性」がある。
そんな理由から、そういう子どもが生まれるとすぐに殺されていた。
しかし中には研究施設に送り込まれ、外の世界を知らないまま拘束され
虐待としか言えないような残酷極まりない実験を繰り返される中で
育っていく命もあった・・・この現実をベースに、
ディクロ二ウスが温かな人の情というものに触れ、
どうなっていくかを追う話であり、決してバトルものではない。

この作品を観る前から知っていたOPは、
美しく神聖で物悲しい雰囲気を持っていて、すごく好みだし
一度聴くと耳からしばらく離れないので、この作品には前から興味があった。
しかし個人的には、少々馴染みにくいキャラデザだったため
なかなか取っ付きにくいものがあったのも正直なところだった。
でも、観終えた今・・・観て良かったと思っている。

ほとんどの方がレビューで書いているように、冒頭から頭や上半身が飛び
骨があらわになるような血みどろの殺戮シーンが続くので
そのグロさで中断してしまう人もいるかもしれない。
でも自分は元々グロ耐性はあるし、それよりも根底に流れる深い悲しみと、
救いをどこにも求められずにいる彼女の行方が気になり
すっかり引き込まれてしまった。

登場するミュータントはルーシーだけでなく、
あまり好戦的ではないナナや、ルーシー以上の能力を持つマリコのほか、
人間側も、親の愛情をあまり知らずに育った女の子マユや研究所の人間達などの、
過去と現在を描きながら、両者の想いや性質を対比させていく。

普通とは違う、奇形というだけで忌み嫌い、恐れ、いじめ、裏切り
遠ざける人間達の愚かさ。
それに対しての怒りと悲しみにより、凶暴さを発動してしまうルーシーは
乳幼児のような無垢さと純粋な行動をする別人格も持っており、
攻撃してこないとわかっている相手には能力が発動しない。
それはナナもマリコも同じだった。
結局、ミュータントを先に追い込んだのは間違いなく人間なのだろう。
昆虫だって人間だって猫や犬だって、驚異や敵意を目の前にしたら
威嚇し、恐れ、逃避するか攻撃するわけで、それはいずれも本能であり、
力の差こそあれ、人間もミュータントも実は変わりないのだ。
{netabare}
さらに、研究所の真の目的が明らかになっていくにつれ
トップに立つ人間だけじゃなく、ただただ命令に従うのみの者も含め
名誉欲、地位欲、支配欲、劣等感や嫉妬などを複雑に絡ませながら
人間の残虐で愚かな部分は、さらに浮き彫りになっていく。
{/netabare}

友だちも家族も、警察でさえ信じられない。
そうなったらいったい何を信じたらいいのか。
何を支えにしていくのか。どこに夢を見ればいいのか。
自分は確かにここにいる。でも苦しい、哀しい、逃げ出したい。
果たして救いはあるのか。
そんな孤独感と不信感は、同じような気持ちを抱いたことのある人なら
きっと理解できると思うし、共感できるところもあるのではないだろうか。

また、親の立場にある人なら特に、どんな子どもであっても自分の子は愛しく、
その子に何かあれば親である自分の責任を感じずにはいられないことを
実感した経験があると思うので、愛情をかけて育てていくことの大切さ、
というか愛情の示し方を、あらためて考えさせられるのでは・・と思う。

{netabare}記憶を取り戻した {/netabare}コウタとルーシー(にゅう)の
あたたかな時間、彼女が取り戻した感情に涙。
蔵間とマリコにはさらに涙腺が崩壊。すごく悲しいけれど、
ずっと見守り続けたこちらも救われた想いだった。

もしかしたらルーシーは脱走した時、何としてでもコウタに会って
自分が過去、彼にした仕打ちを謝りたかったのかもしれない・・
なんてことも思ったりした。

ただ、原作が青年漫画だから仕方なかったのかもしれないが
パンチラとか、胸を揉むとか、無駄にエッチなカットがやたらあって
個人的には、いささか興醒めしてしまい、残念だった。

あと、ナナだけなぜあのような性格だったのだろう。
ルーシーと違って生まれてすぐ施設送りになったからなのか。
他の子とは違った実験内容と目的だったのだろうか。
{netabare}担当であった蔵間氏を「パパ」と認識することで、
苦しみから逃れる手立てを自分で作っていたという説明だけだったので、 {/netabare}
そのあたりも、もう少しだけ詳しく知りたかった。

最終話、ずっと止まっていた柱時計の針が動き出したのは
新しい始まりを感じさせて、良かった。

置かれた立場や世代によっては心動かされる部分が違うだろうし、
もしかしたら、どこが良いのかわからないといった感想も聞こえそうな
賛否が分かれやすい、誰にでもはオススメできない内容だったが
自分の心の中にはずっと残り続ける、深みのある作品だと思う。
それだけは間違いない。

投稿 : 2012/12/04
閲覧 : 585
サンキュー:

53

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