「みどりのマキバオー(TVアニメ動画)」

総合得点
65.3
感想・評価
112
棚に入れた
589
ランキング
3306
★★★★☆ 3.5 (112)
物語
3.8
作画
3.1
声優
3.4
音楽
3.5
キャラ
3.7

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ネタバレ

ダレイオス さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

1996年ごろに作られたとは思えないくらい完成度は高い。

マキバオーは登場する競走馬が喋ったり意識を持っているファンタジー設定で
一見ぬるいアニメに見えるのですが、開始直後、強烈な作者のメッセージ性を
感じさせられるアニメですね。
いきなり誕生したばかりのマキバオーを関係者があまりにも駄馬っぷりに
馬肉にしてしまおうと考えてしまうんです。
このアニメ放送時には自分は知らなかったんですけど
実は競馬の世界は経済動物とも言いわれ当時で10000頭産まれても2000頭くらいは
競走馬にすらなれずに消えてしまうことなのでこういった競馬の影の部分を
さりげなく、伝えようとする作者には感心させられてしまいます。
様子するにファンタジーに見えて実はかなり現実の競馬の実状を反映させられたアニメだったんですね。

ストーリーはマキバオーが母親ミドリコを賞金を稼いで取り戻すために
競走馬として成長を描いたものなのですが
序盤こそはマキバオーとミドリコの親子愛が描かれたり愛情が見られる作風ではあるが
マキバオーの周囲の目は厳しい、マキバオーの関係者は駄馬だと思い
同じ牧場の競走馬には馬鹿にされ見た目相当の評価しかされない。
その評価を覆すためにミドリコが奮起してマキバオーに眠る力を証明しようと頑張る姿は泣けます。
ミドリコがヒゲに借金のカタで取られてからは、逆にマキバオーが自分の置かれている状況を
悟り立派な競走馬になろうとする姿は自分は心を打たれましたね。
序盤はのちのライバルになるカスケードにはまったく相手されず下から這い上がる展開もいいかな

レースに取り込む姿勢もこのアニメはかなり現実の競馬の問題を抱えているテーマも
あって良かったかな、レースに勝つために調教師の飯富がマキバオーに過酷なトレーニングをするのですが
わからなくもない、マキバオーが走れなきゃ借金は返せないわけだし
半端な仕上げは重賞レースは勝てないわけだから、砂袋を背負ってのトレーニングはやりすぎだけど
本筋は説得力がありました。
それに対して異をとなえて対立した木曽騎手はスーパーコンコルドやフウリンカザンを過去に飯富のハードトレーニング
に潰されたと信じていて、その意見には一理ありどちらの意見が正しいとは言い切れず
その対立は人間味があり良かった。
なんか泣けるんですよね。スーパーコンコルドの予後不良の原因は実は木曽騎手の騎乗ミスも絡んでいたのでは
という展開は乗っている騎手を責めるのはなんか心にくるものがありました。
実際の騎手だって好きで自分の乗る馬を予後不良にしているわけではない。
騎乗ミスだって好きでしているわけではない。
そういった騎手の心理を悟り最後は飯富は攻めずに木曽騎手を許した展開は本当に泣けましたね。
実際の競馬のデリケートな部分をテーマした話はやっぱりいいですね。

マキバオーだけでなくライバルの掘り下げも素晴らしかった。
カスケードの母親が死亡して孤独に生きる姿はカッコいいし
馬鹿にしていたマキバオーをライバルと認めるまで心理描写はかなり良かった。
アマゴワクチンにしても自身は最初はたいした馬ではなかったが
兄、ピーターⅡに励まされて覚醒する友情は良かったし
兄弟三冠制覇は実際の名馬ナリタブライアンとビワハヤヒデ関係にダブり
ナリタブライアンの菊花賞の「弟は大丈夫だ」とアマゴワクチンの菊花賞制覇は
なんかオマージュぽくて個人的にそういうのはいいなあと思いました。
モーリアローは貧乏な自分の牧場のため斜行をするのですが
いくら家族のためとはいえ許されることではないがその執念は凄くて心に来るものがあった。
サトミアマゾンは地方競馬の代表を背負って中央に挑むなど
とにかくマキバオーだけでなくライバル馬の掘り下げはしっかりしていたので
他の馬の物語としても成立はしていたと思う。
馬は喋らないんですが、騎手の代わりに馬が喋っていたくらいしか思えないくらい
おかしいなとかは思わなかった。

マキバオーがらみに関しても感動出来る場面は多かったかな
特に馬主の方の飯富ですね。彼は最初にマキバオーを馬肉しようと考えたのですが
マキバオーの成長や結果を残すにつれ、それが誤りだったと気付き成長が見られるんですよね。
借金を作ってしまったことに対してマキバオーに謝罪
ダービーにおいては結果うんぬんよりも出走出来た事に対しての感謝
処分しようと考えた馬がダービーという選ばれた18頭に入れたというだけでも
凄いという事は伝わってきたし、競馬やダービーにかける思いも伝わりとにかく心に身にしみました。
しかも彼の言葉は実際の競馬の関係者のような所がみられて、凄く素敵でしたね。

レースシーンも抜きつ抜かれつが多く実際の競馬ではあまりないのですが
競馬ゲームのダービースタリオン製作者の人がそのゲームも抜きつ抜かれつが多いことにたいして
その方が面白いからとインタビューで答えたのを見たことがあり一理あるなと思いました。
現実的とは言えないがやっぱり抜きつ抜かれつは面白い。
フィクションのレースにおいては抜きつ抜かれつは成功でしょう。

レース結果も故障や病気では勝てずカスケードやアマゴワクチンはボロ負けをしたり
奇跡が起きないのは現実的でいいし、マキバオーの菊花賞4着は妙にリアリティーがあり
競馬の難しさを表現していてそういった点は評価出来ると思います。
あとニエル賞は勝たせるが凱旋門賞はフィクションとはいえ5着すら許さない姿勢
そういう所も素晴らしい。
かと思えば凱旋門賞2着馬がジャパンCで日本では4番手の馬にすら勝てないとかも
現実の競馬ではよくあるのでそういった所も再現する所も作者は競馬をわかっている
と関心させられました。(凱旋門賞1着馬であの産駒は東京得意なトニービンですら自身は5着ですからね。)
函館記念に二冠馬が出走するのは、斤量は?などでおかしいかなと先入観で思ったけど
実は函館記念は当時は本賞金3億円稼いでも4歳馬は59キロで出走可能らしいので
本当は全然おかしくないという所も作者はちゃんと調べてるなと驚かされました。

また負けても感動出来る場面も多かった。菊花賞4着にしてもチュウ兵衛のために
頑張って走っても勝つ事が出来なかった無念さは伝わってきたし
チュウ兵衛が乗りたくても乗れない体になってしまったことに対しての
期待にこたえられなかった涙は何回見ても感動出来ました。

作画に関しては今見るとやっぱり見劣るかもしれませんね。
ただ個人的には競馬の殺伐としか感じにあっていて
かなり好きでした。演出も素晴らしいのでレースシーンで後ろから差してくる
演出は迫力が凄くて凄いなと感じました。
個人的に当時としてはこの演出は素晴らしい。
人を選ぶ作画かもしれませんが、演出が凄いので
総合的にはまずまずの評価は出来ると思います。

声優さんに関してはマキバオー、カスケード、アマゴワクチンどの声優さんも
上手かったし声も合っていました。演技力を問われる感動の場面でも
かなり良くて素直に感動出来ましたね。

音楽に関しても昔のアニメなんで盛り上がる曲が多かったと思う。
カスケードの曲なんかは特に良かったなと思いました。

正直マキバオーは1996年ごろに作られたとは思えないくらい完成度は高い。
今見てもこんなに凄いアニメだったのか・・・が感想ですね。
当時見てもいいアニメだなっと思ったのですが、今見直して驚きですね。
個人的には色々考えたけど悪い所は思い浮かばなかった。
思い浮かばないんですよね。
3頭で囲まれるのはありえないとかも考えたりはしたのですが
実際の競馬でも左右前後に囲まれ、東西の名手天才騎手も必要以上のマークを受けて
それでも強い馬は勝てるとか言われたりして現実の方が厳しいというのを目のあたりにして
逆に作者の強い馬は嫉妬で囲まれるのが当然だというメッセージ性すら伝わってきました。
感動も出来るし友情も素晴らしく、個人的には最高のアニメですね。

投稿 : 2015/10/22
閲覧 : 517
サンキュー:

9

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