「パプリカ(アニメ映画)」

総合得点
72.1
感想・評価
829
棚に入れた
3935
ランキング
1175
★★★★☆ 4.0 (829)
物語
3.8
作画
4.3
声優
3.9
音楽
4.0
キャラ
3.8

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ネタバレ

kurosuke40 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

東京の平日

誰にも心中に隠したいことはあるものですが、
実は本当に目を背けたいことは隠していることも自覚できないものです。
夢はその隠し事を唯一を覗き見れる穴であり、
穴から隠し事を知り、受け止めて人は成熟していくもの。

もし科学が夢の中を見れるようになったならば、
本人が本当に隠そうとしていることを覗き見る行為であり、
まったく無粋で、それは監視社会とどう違うのでしょうかね。なんて。
(理事長たちとの紛争の論点ではあるが、映画の主旨は成熟の方で、こちらの言及はあんまりしてないけどね)


DCミニから夢を守ろうとする立場の理事長たちだったけど、
彼らは守りたいという言葉よりかは、俺のものを奪うんじゃねぇというジャイアンスタイルに近く、
天才も原爆開発後の科学者に求められるような倫理観は持ち合わせていない。
刑事は過去の自分の夢と行為にとらわれ続け、
所長は原作同様頼りなく、
大人な敦子も、医者の不養生よろしく、どこか心を殺している。

そんな彼らが物語と夢という場を経て清濁併せ吞み、成熟していく。
理事長たちの夢も、小山内の幼さも、刑事の過去の逃走も、時田のすんげー子供っぽさも、パプリカも受け止めていく。

カウンセリングとは心を傷つけぬよう諦めを受け入れるようにすることだという。
夢の中で刑事は半ば追い立てられて一線を越えた。
直前に過去の逃走について思い出せたのもあるけど、
彼の現在の状況が、逃げとして逃走ではなく、前進としての逃走と捉えなおさせたんだと思う。
「続きはどうするんだよ」と批判する親友も「別によかったんだぜ」と肯定する親友も両方とも刑事の心が生み出したものだ。
もちろん親友が心変わりしたわけではなく、変わったのは刑事の自分の自分に対する評価。
一線を越えるとケロッと評価を変えるのは、自分に都合が良すぎて厚顔無恥だなと思うところがあるけど、
まぁ過去や他人にくよくよ悩みすぎてもしょーがねーし、適当にポジティブに考え直して生きろってことなんでしょうね。
仏教でいうところの「二の矢は受けるな」ですね。
別に諦めていいんだし、今それよりも大事なことがあるんじゃないの?

原作読んでから見た方いいよというレビューに沿ってみたけど正直失敗でした。
映画は原作の1.5次創作で、DCミニとそれを取り巻く人たちの枠を借りた別作品ですね。
特に敦子は、原作だと自分の心をちゃんと理解している女性なのだけど、映画はパプリカと分裂していたりするほどで、途中まで見誤ってしまっていた。
他にもいろいろと色眼鏡で見てしまった気がするので、もしこれからの人は基本的に別物と見るのが吉だと思う。

原作はエンタメ小説らしく、あらあらうふふ、わーわーぎゃーぎゃー、アスモデ!アスモデ!と進んで面白かったけど、
映画の方が、より舞台にあった心層的な表現と脚本だった思う。
とはいえメタファーに屈折がなく真っすぐで快活な印象があって、えぐいところまでは掘られてはいない。
この感想のタイトルには意味はあるが、なにかおぞましい深遠な意図はない。
映画は全体的にそんな感触の作品でした。
この監督はひねくれてない真っすぐな人なんでしょうね。
私は原作より映画のほうが好きかな。

ご精読ありがとうございました。

蛇足
林原さんが敦子にめっちゃ似合う。いろんなところで声を聴いているはずなのに、一番しっくりきた印象でした。

論理が夢の世界にも浸透しすぎかなと思った。
意味の分からなさも矛盾を元に組み立てており、結局論理の構造の上に成り立っている。夢の世界は、音の意味の横滑りなどの連想の世界で、論理構造自体が貧弱だと思う
そんな世界の表現の仕方なんてさっぱり思いつかないけど。

投稿 : 2017/12/06
閲覧 : 322
サンキュー:

9

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