ナルユキ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態：観終わった
ゲームファン納得の出来栄え
サバイバルホラーゲームの金字塔たる『バイオハザード(Resident Evil)』シリーズのフルCGムービー作品の第１作目。
主人公として『バイオハザード２』からレオン・Ｓ・ケネディとクレア・レッドフィールドが登場。２人があの地獄のラクーンシティ以来の再会を果たすのもシナリオに組み込まれている他、シリーズの原点たるＴーウイルスや『２』のキーワードだったＧーウイルスの再登場が懐かしい。ミラ・ヨヴォヴィッチの様なオリジナルキャラが無双するタイプではなく、きちんとゲーム中の史実に食い込むゲームファン垂涎物の作品に仕上がっている。
【ココがつまらない？：ゾンビが怖くない】
「ホラーとして怖くない」という評価が散見されるが、概ね同意する。2008年当時を鑑みても「ゾンビ」というのは恐怖感を煽るには最早“力不足”だ。緩慢な動作で低知能……頭を狙えばハンドガンで十分、対処可能である。ゲームシリーズでも４作目を最期にゾンビを推し出すことは止め、ザコでも人間離れしたものや動きの速いものにシフトしていく、そんな時代の移り変わりにゾンビ……懐かしさしか感じないな(笑)
ゲームファンからは不人気な実写版と比較しても、迫力があるのはエキストラの演技力に技術の高い特殊メイク、そして実写化にあたっての設定アレンジが加わったあちらの方に分があるのは明白である。
しかし登場シーンは凝っていた。今作の背景はラクーンシティの件以降、薬品業界が世界中の人々に不信を買っている状態だ。そんな情勢の中でアンブレラに代わり力をつけてきた製薬会社・ウィルファーマと該社を誘致した上院議員・デイビスにはデモ隊による過剰なバッシングが向けられており、その１つが「ゾンビの仮装」だったのである。うんざりしながら対処していくボディーガード。その中に何故か本物のゾンビが混じっており────という感じで開始から１０分、空港を舞台にＴーウイルスによる生物災害が描かれる。パニックに陥る空港ロビーに突っ込んでくる旅客機。そこから次々とゾンビのおかわりが用意されていくシーンは笑いと一抹の恐怖を誘う。
【ココが嬉しい：ゲーム主人公が主人公！】
繰り返しになるが、やはりオリジナルキャラではなくゲームシリーズのプレイアブルキャラを再び主人公に選んでくれたところがゲームファンにとって嬉しい。
レオンとクレアは共にラクーンシティの惨劇の生き証人であると同時に各々『バイオハザード４』や『コード：ベロニカ』での生物災害事件も経験したベテランでもある。その類い稀つつも説得力のあるサバイバル能力やアクションシーンを本作は劇場スクリーンでも披露してくれた。
彼らを主人公に抜擢したのみでなく、本作は『バイオハザード２』をやったことのある人が思わずニヤリとしてしまうような要素も散りばめられている。
{netabare}武器のないクレアが赤白ツートンカラーの傘を渡された時、「これに頼ることになるとはね…」と皮肉を呟く。これは護身具としての貧弱さを嘆いたのではなくＴーウイルスを生み出した会社「アンブレラ」のロゴマークが赤白ツートンカラーのパラソルだからであろう。そして出会い頭にレオンが「しゃがめ！」と指示してクレアの背後に迫るゾンビを射殺するのは『２』のＯＰムービーのオマージュである。{/netabare}
【総評】
十数年前にも遡るフルCGアニメーションの初作ということで現在のアニオタ向きではないかも知れないが、バイハザ好きなら見て損の無い作品だ。
上記の見どころに加えて国家や会社、デモといった政治的背景に渦巻く陰謀をサスペンス風に描いており１本の作品としてきちんとした面白さを持っている。{netabare}クレアが善かれと思って所属していたテラセイブの活動がワクチン認可の遅延を招き、被害を最小限に収めきれなかった時の落胆する姿が印象的だった。{/netabare}
そして本作のＴーウイルス散布事件にどんな真相が隠されているかは是非、その目で確かめていただきたい。「拍子抜けだった」という意見もあるが、私は「なるほど、バイオハザードらしいな(笑)」と妙に納得したものである。
