「望まぬ不死の冒険者(TVアニメ動画)」

総合得点
67.1
感想・評価
125
棚に入れた
390
ランキング
2528
★★★★☆ 3.4 (125)
物語
3.4
作画
3.3
声優
3.4
音楽
3.3
キャラ
3.4

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ネタバレ

7でもない さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

絶えず独り言をしてるガイコツ主人公

【地味な冒険】
【アンデッドってなんだ】
【言葉使いとリアリティライン、メタ】
【導入の落とし穴】
【結論と展望】


【地味な冒険】
本作はチートつええのショートカットを排し、地味で地道に歩みを進めるJRPG的作品である。主人公を持ち上げる為に作られた「異世界」ではなく、逆境を投げかけてくる中、挑戦する姿はファンタジーや冒険の感じさせる。おかげで物語を12話まで追うことができた。

【アンデッドってなんだ】
然るにその一方で、作品は不死という特性を最大限に活かせず、予測可能な展開にとどまっている。Re:ゼロや勇者死んだ!のように、自殺や相打ち、死、不死を戦術に組み込み、策略をめぐらせるような新しいアプローチは見当たらない。ただ「レベルを上げて物理で殴る」っている。
俺つええイズムは押し出されていないものの、主人公レントは恐らく5レベルから10レベルくらい低そうな敵と戦い過度に称賛されている。この作品なりの強さの(数値のデノミされた)スタイルを確立しているものの、結局なろう系作品の典型的なステレオタイプから逸脱していないように感じられた。

また、最終的に下級ヴァンパイアとなる葛藤は良い演出であったものの、不死の定義が明確に示されていない。ゾンビやスケルトンの利点や欠点は何か?ビジュアル的にはアンデッドは不死の存在であるが、彼らは普通に剣で倒される。このような根本的な疑問は適切に描写されておらず、物語の基盤が不透明であると感じられる。不死のデメリットで冒険者や一般人と交流しづらい事は描写されているが最初の女冒険者が安易に怪しい人物を信じすぎたり、パン屋の人物があれだけ盛り上がった割に再登場して物語に絡まない点は残念だ。用済みって事kか?などなど1クール途中からはデメリットが少なく物足りなく感じた。もっとゾンビ編でのしゃべりにくさとかを轢き連れば作品としてのアイデンティティになったと思われる。


【言葉使いとリアリティライン、メタ】
本作において「ボス部屋」という表現が登場した際違和感を覚えた。この世界にはテレビゲームやRPGといったものは存在しないはずでしょ。マーブル映画などでも、ゲームフィケーションや「ボス部屋」といったメタ的、現代の流行りの歌やブーム、別の映画の引用/参照は見受けられる。しかしながら、それらはテレビゲームが存在する現代設定における現代を意識したギャグであり、別の次元のファンタジー世界に属するキャラクターが真面目に「ボス部屋」と述べるのは、作品の世界観との整合性を欠いているように感じられた。

この世界の住人としての視点から考えれば、「残りは首領だけか」「お館様のご登場だ」「さてダンジョンの主か」といった言葉だったらまだ理解できるかもしれない。なろう作品において、世界にふさわしい言葉遣いを行うことができてない事には苦しむ。
もちろんピクサー作品などでも、ジョークとして時代や設定を超越したメタ的な発言やアナクロな要素を取り入れることがある。しかしながら、その度合いは作品ごとに異なり、リアリティラインは変化するものである。この作品ではエンディングや表紙の絵柄が極めてドシリアスである一方で、内容がその枠組みから乖離していることが気になる。なろう作品において、タイトルと内容が一致しないこともよく見受けられるが、このことから作者が自身の作品を客観的に捉えられているのか疑念を抱かざるを得ない。


【導入の落とし穴】
作品において最も気になったのは、豚のレバーは加熱しろでも気になったが、1話目の構成だ。これらの作りは没入感を覚えるどころか、冷水を直に顔面に喰らった気分になった。アニメやドラマ、映画において、1話は視聴者や読者を没入させるために極めて重要な部分であり、導入部分の構築には特に注意が払われる。しかしながら1話目では25分間、主人公が独り言を並べ立てながら設定を解説するだけであった。誰に向けて?

1話はまるでダークソウルの実況プレイ動画のような体験で、例えるなら「あ、死ぬぺこあっあっあっ。」「本当にこっちにいいぺこか?本当にぃ?」「お前ら嘘いいやがってえ・・・ファッファッファッファ」などといった体験であった。無論、不死もののホラーやサスペンス、尊厳などは皆無。主題にあるべきものが不在で恐ろしさを感じない。ファッファッファッファッファ。実況プレイが好きな人ならそれも良いのかもしれないけど自分は本末転倒だと思った。

導入の仕方に話を戻すと、例えばガルパンの1話で西住みほがカメラ目線で「この世界は大きな船の上で戦車戦をやるアニメで、私はかわいそうな女の子です。えーん。あ、人は死にませんよ」と語っていたら最悪だろう。しかしながらなろう作品やラノベではこのような手法がしばしば採用され辛い。
では水島努はどのようにしたのかというと、西住みほの転校一日目の慌ただしい出来事を描きながら、彼女の日常や性格、ガルパン世界の常識の一端を描き出し、視覚的に理解させる事に成功している。ナレーションによる説明を手短にすませる手段も可能だけど、キャラクターが「語る」のではなく、なるべくキャラクターが「見る」ことや「経験」することによって視聴者が徐々に理解していくのが理想的だと個人的に考えている。

ガンダムやエヴァンゲリオンなどでも、どのようにして自然にロボットに乗り込むか、短期的な目標を提示するか、作品世界設定の触りを視聴者に伝えるか、といった点について苦心して作られる中で、だらだらと30分かけて主人公が一人中空に向かって説明しているのを視聴するのは非常に困難だ。


また、別の例として映画タイタニックを挙げることができる。

0:01:13 タイトル表示。その後、小型潜水艦でタイタニック内の探検と発掘のシーンが続く。
0:02:54 映画の初めての会話。潜水艦内で二人の発掘家の間で行われる。
0:08:30 思い出の箱を発見する場面。
0:09:00 ジョジョの奇妙な冒険2部冒頭のディオの墓を空ける所でみたような箱の開封シーン。
0:10:10 本編のヒロインであり、ディカプリオの相手役である不倫女性の半世紀後の姿であるおばあちゃんが壺をつくりながら会話するシーン。

このように、場面の切り替えや登場人物の変更、テンポの調整、緩急の付け方を通じて、見る者に退屈な導入部を乗り越えさせようとする試みがなされている。

【結論と展望】
望まぬ不死の冒険者は地道な成長物語やファンタジーとしての可能性の欠片を持ちながらも、不死の能力やストーリー展開における新しいアイディアの導入や、不死の存在としての明確な定義の欠如、そしてリアリティラインの整合性など、改善点が山積みだ。しかしファンタジーとして正しい方向に梶が切ってある事や成長の可能性を考えると今後に期待されると思われる。

2024/01

投稿 : 2024/04/19
閲覧 : 48
サンキュー:

4

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